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2013年12月

文部科学省が検証すべき大問題 ~無免許教師の指導力~

 静岡県の中学校における「無免許教師の英語指導」がニュースになっていたが,

 多くの人が,「無免許教師の実力」自体にあまり疑問を投げかけないばかりか,

 「教えるのが上手な人,生徒から人望がある人の方が,免許があるけど教えるのが下手な人,生徒からの人望がない人よりよほど教育力・指導力があると言えるのではないか」

 ということに気づき始めている事態を問題として取り上げたい。

 「塾の先生」のように,限られた教材を限られた人数で指導する場合は,

 免許がなくても指導の効果が認められることは言うまでもない。

 しかし,「学校の先生」として,「英語の授業」を無免許ながら担当させられて,

 免許を持った教師と同等の指導ができてしまっていたとしたら,

 「そもそも免許は何のためにあるか」と思われて当然だろう。

 教師にはなっていないが,教員免許をもっている,という人は少なくない。

 そういう人が,採用試験なしでぱっと現場に送り込まれて,教えられるか,と言えば,

 よほどの海外経験とか,実務上で英語に常にふれていた,ということがなければ,難しいに違いない。

 また,学校現場では,採用試験に合格していない教師たちが,

 「非常勤講師」などとして活躍している。

 この教師たちは,教員免許はもっているが,採用試験には合格していない。

 子どもたちに,10分ほどの模擬授業のVTRを見せてから,教師を自由に選べる権限が認められるとしたら,どういう人を選ぶだろう。

 迷いもなく,「教え方が上手」だという印象をもてた人を選ぶだろう。

 管理職から見て,信頼できる教師もいる。学力調査などによって,「実績」が証明されている教師もいる。

 「教え方」ではなく,「学ばせ方」が上手な人も,教育現場にはたくさんいる。

 小中学校段階では,「教える内容の知識」も大事だが,「学ばせ方」の方がより大事であることを,教育に本当の意味での関心を持っている教師たちは気づいているはずである。

 「免許更新講習」の無意味さは,そう遠くない未来に露呈されるだろう。

 大教室に押し込まれて,一方的な話を聞く,というスタイルは,もはや「終わっている授業」である。

 それよりも,「10年経験者研修」を残すべきである。さらに言えば,「20年経験者研修」を増設してもよい。

 特に20年たって,初任者の段階と指導力がほとんど変わらないような教師が,免許更新講習でかろうじて「資格をもちこたえさせる」ことに,何の意味があるだろう。

 教師の日常的な授業の実態を,ぜひ明らかにしていってほしい。


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批判的精神を養うためでなければ,「詰め込み歴史教育」は逆効果になる

 高校の日本史必修が実現すれば,「日本人としての主体性」が育つかといえば,そう簡単な話ではあるまい。

 「加害者としての日本人の歴史」を延々と授業で紹介する教師もでてくるだろうから,などという単純な話でもない。

 そっちの方は,教育内容に関する調査が一層重要性を増してしまうという意味で,迷惑というか面倒くさい話に進んでいくだろう。

 大事なのは,「日本人としての主体性」とは何か,という問題や,

 それがどうして求められているのか,という背景にかかわる問題,そして

 そもそも「歴史教育」で大切なことは何か,という問題が,あまり「露骨」に語られる現実がないために,

 多くの高校生たちにとっては,「ただ暗記すべきことが増えるだけ」という結果になり,

 ますます「日本の歴史」が嫌いになる日本人が増えるだろう,というのが私の危惧である。

 理科とか数学とは違って,

 日本史には巨大な「マーケット」がある。

 『週刊 新発見!日本の歴史』のようなシリーズが,年をおかずに発刊されるような国が日本以外にあるだろうか。

 「本当にあなたが書いているのか?」

 と疑われるほど,日本史の本を出している高校の先生もいる。
 
 日本史の授業がつまらなくても,大人になってこういう本に夢中になる人は多い。

 そこには,様々な解釈が躍動し,史実を超えたところに面白さを感じるような「娯楽」の要素もふんだんにある。

 では,高校の日本史の授業に,受験のための暗記を超えたものを要求することは可能だろうか。

 私は残念ながら,そうとは思えない。

 年を重ねていくことで,・・・つまり,社会や人生での経験を積み重ねていく上で,自然と歴史というものへの関心が高まるというのが当然だと思う。

 今,小学校の歴史教育では,人物に焦点をあてて子どもたちに調べさせているが,それが本当に面白いと思えているのかどうか,私には疑問である。

 それよりも,大人社会の矛盾を歴史的事実から暴いていく方が,よほどためになると考えている。

 「残念なことを繰り返さない」ためには,実際に繰り返されてきた「残念なこと」を知る必要がある。

 津波が来ても,「堤防があるから大丈夫だ」という安心感は,本当に「残念なこと」である。

 相手との戦力差があっても,「がんばれば大丈夫だ」という信念は,本当に「愚かなこと」である。

 「日本史を必修にすれば,大丈夫だ」という信念をもっている人はいないだろうが,

 ヘンにそこを刺激すると,とんでもないものが学習指導要領に反映されかねないから,そっとしておく必要があるかもしれない。

 会議に参加するメンバーを見れば先がわかってしまうというのも,「残念なこと」の一つかもしれない。


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英語教育や道徳教育よりも重視すべきこと

 英語教育や道徳教育を重視すべきなのは言うまでもないが,

 仮に英語を中心に英語の授業をしたとしても,

 道徳の時間を「特別の教科」として授業をしたとしても,

 教える人間が変わらない限り,何の効果もないだろう。

 これは,「ゆとり教育」で実践済み,というか,実験済みのことである。

 「ゆとり」のもとで,どのような教育がなされるべきだったか,

 実際に,どのような教育がなされたかをしっかり検証しなかったために,

 同じようなことの繰り返しが起こる。

 間もなく,学習指導要領実施状況調査が行われる。

 前回までは教育課程実施状況調査と呼ばれていたものである。

 生徒はおそらく学校における学習の実態を一連のアンケートで明らかにしてくれるだろう。

 長い目で見れば,

 全国学力調査が廃止になる方向に動き,

 全教科が対象となる学習指導要領実施状況調査が,各自治体の判断で基本は全員を対象に実施される方向となるだろう。

 大切なのは,生徒の結果ではなくて,

 教師の指導過程であることは,もはや隠しようのないことで,

 それこそが本当の意味での調査対象にならない限り,

 学習指導要領を改訂しても何も変わらないわけである。

 社会科の事例でいえば,

 20年前の「教科書ワーク」と今のそれを比べてみてほしい。

 何がどの程度,変わっているだろうか。

 教科書をもとにして授業を進めるのは当然かもしれないが,

 「教科書」だけが教材となったり,

 「教科書」を使って配布したプリントの穴埋めをしたりといった授業が繰り返されている状況では,学習指導要領が示している目標を達成することは難しい。

 しかし,今の今まで,大多数の教師の「指導」を変える手立てが見つからなかった。

 全国的な中学校の社会科の研究会における研究授業の質をふり返ってみれば,毎年劣化しているというのが「ホンネ」だろう。

 だれもそういう「ホンネ」をもらすことができないというところは,戦時中の軍隊ととてもよく似ている。

 研究や研修が,本当の意味での授業改善に結びつかない。

 だからこそ,無免許で教師が英語を教えても,

 定期考査の結果が「本物の英語の先生」と変わらない,という結果が起こる。

 自治体は,生徒の結果の前に,教師がどのような授業をしているかという調査結果を堂々と示すべきである。


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すき焼きよりおかゆの方が体にいい

 マクドナルドが閉鎖した従業員専用サイト。

 本家本元が言うのだったら,間違いはないだろう。

 砂糖が大量に含まれている飲み物をセットで注文すれば,さらに・・・。

 昔の人は,貧しくて「さつまいも」を食べていた,と歴史の授業で教えるが,子どもたちにはぴんとこない。

 私なども,「石焼き芋」は,けっこう高価な「ごちそう」に思える。

 学校の校庭だけでなく,国会議事堂の前が畑になった時代は,今と比べれば「貧しい」時代だったと言えるだろう。

 しかし,「それが当たり前」「それでも満足」という感覚で生きてきた人は少なくないはずである。

 もしこれからの「道徳教育」を実践レベルで具体的に考えていくのであれば,

 「美徳」の価値を十分に実感できる教材を用意していきたい。

 そのとき効果的になるのは,「醜悪」な感覚の持ち主の具体的な言動の事例紹介である。

 「貧しいと心が蝕まれる」・・・・戦後間もない時期の日本人は,「心が蝕まれていた」のか?

 「心が蝕まれた」結果,あの「高度経済成長」が実現したのか?

 もちろん,そう言える面を探せば,

 「工場が付近の住民の健康を害しても,うちのせいかどうかわからないから,ほっとく」

 みたいな態度は,貧しい心そのものである。

 それが生んだ悲劇が水俣病などの公害病である。

 しかし,これは,「豊かさを追求する」過程での弊害であって,

 「経済的に貧しいまま」であれば,起こらなかった問題かもしれない。

 道徳教育に価値を見いだすとすれば,

 進歩だの発展だの成果だの,そういう「上昇志向」的な価値ばかりを追い求めている自分たちを

 一歩下がって冷静に見つめる目が育てられることにある。

 「本当にそれで幸せか?」

 という問いを自分に投げかけたとき,「高価なものの方が価値が高いに決まっている」などと言うような自分を戒めることができるようになる。

 腸炎で入院していたとき,点滴がはずれて最初に口にした「おかゆ」のおいしさは,それまで食べたことがあるどんな食べ物よりも際立っていた。

 「ありがたい」と感じる人間の心のはたらきが,どんどん鈍くなっていっている。

 それをどうにかしたい,と感じている人間に,ぜひ,道徳教育の構想を練ってもらいたい。


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「貧しいと心が蝕まれる」という感覚の人は教師をしてはいけない

 そういう感覚の人は,ぜひ私立学校の教師になってほしい。

 それは私立学校の教師を軽蔑しているわけではなくて,

 とりあえず学費が払える家庭の子どもが集まってくるということで,

 経済的に厳しい子どもや家庭への蔑視によって

 子どもの心が蝕まれる心配が少なくてすむだろうから,という理由だけである。

 できればそんな感覚の人間は教師になるべきではない。

 学校の教師がさまざまな犯罪をおかしていることが報道される。

 こういう教師たちは,「貧しい」からそうなったのか?

 「心の貧しさ」と,「経済的な厳しさ」を簡単に結びつけようとする人間がいるのは日本の恥である。

 「心」の問題を非常に軽く見る態度が多くの教師に見られているが,

 その影響は直接的に子どもたちに及んでしまう。

 40年とか50年前なら,

 経済的に厳しい子どもが

 「あいつんち,貧乏なんだぜ」

 などと自分たちよりさらに厳しい家庭の子どもを「下に見る」ことがあったかもしれないが,

 今は同じような目が途上国の人々に向けられるおそれがある。

 社会科の授業ではどのような子どもを育てようとしているか,と問われたとき,

 たくさんの目標があることは言うまでもないが,

 私がこのブログで主張しているように,

 「べからず」の内容も非常に多い。

 「べからず」ばかり繰り返していているようでは,極端な話,社会科の教師は何もしないで読書の時間にする方がよほどましである。

 「貧しいと心が蝕まれる」などと

 何の迷いもなく口にするような人間が教える社会科とは何か。

 想像するだけでもおそろしい。

 私が11年間つとめていた東京都の足立区というところは,経済的に豊かとは言えない家庭が他の区よりも多い。口の悪い人は,だから学力調査の結果が一番悪いんだ,という。

 確かにペーパーテストの結果と家庭の所得水準を統計的にまとめてしまうと,相関関係はあるだろう。

 しかし,あくまで一定の範囲の所得の子どもの成績の平均であり,所得に幅もあれば,成績にも幅がある。

 こんな当たり前のことを説明しなければならない人間がいるのが哀しい。

 今回取り上げているのは「テストの成績」ではなく,

 「心の貧しさ」である。

 かつて,この足立区というところで教員をしていた人間(他の区から異動してきた教員)が,タクシーに乗って同僚と足立区の家庭の悪口を言っていて問題になったことを紹介したことがある。
 
 タクシーの車内という空間が,公的な空間だとは思っていなかったらしい。

 「タクシーの運転手さん」自体を「人間だと思っていなかった」と考えるのに等しい行動である。

 その運転手さんは,足立区内の学校に子どもを通わせている保護者だった。

 怒るのは当然である。

 教員は,学校外で,自分が勤めている区の家庭の「貧しさ」をバカにして歩いているような人間なのだ。

 たった1人か2人のこのような行動が,教員全体,学校全体への信用を失わせる結果となる。

 本当に恥ずかしいことに,足立区内の教員に向けて,教育委員会から

 「公的な場所での会話のマナー」に関する通達が出された。

 心が貧しいのは,どういう人間か。

 私はこういう話を「道徳」で取り上げる。

 「大人」の醜さを決して隠さない。

 そういう教師の存在自体が,立派な「社会科の教材」「道徳の教材」になってしまっている。

 「差別を許さない」という気魄を堂々と「公務員」にも向けられる教員になりたいものである。

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小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科の方法」

 いよいよ序論の最後の一節。

 小学生が,その生活の中で直面する「切実な諸問題」って,いったい何を想定していたのでしょう。

 隣の席の子どもが勝手に鉛筆や消しゴムを使って困る,とか,授業中のおしゃべりをやめない子がいて困るとか,そういうレベルの話ではないことだけは確か。

 社会科を勉強すればするほど,他の教科の必要性を感じる・・・ようにするためには,子どもが直面している問題ではなく,社会が・・・世界の人々が直面している問題をぶつけてあげなければ,自国民優先的「民主主義」レベルでとどまってしまうおそれがあることに気づくべきでしたね。

 もっと早く気づいていれば,水俣病をはじめとする公害病の被害がもっと小さいものに抑えられていたのかもしれないし・・・戦争の惨禍だけを繰り返さなければそれでいいというわけではもちろんなく,公害病の拡大も抑えられなかった社会をつくってしまったことに,社会科の教師だけではなく,このころの教育を受けてきた国民すべてが責任を感じていくべきです。水俣病患者の救済はまだ現在進行形です。

***********************

四、社会科の方法

 建設的な社会生活に参加するために必要な理解や態度や能力を児童たちの身につけさせるには、民主主義に徹底した学習環境の中で、児童たちを実際に生活させるよりほかにしかたがありません。実際に生活しながら、その生活の中で切実な諸問題に直面したときにだけ、児童たちはその自主性を発展させます。したがって社会科では、そのような問題解決の活動を通じて児童の経験を発展させていきます。

 一般に小学校の教育方法の原則は、なすことによって学ぶということであります。教室は児童たちの作業場となり、児童たちは自分たちにとって意味のある各種の活動に参加するのであります。そしてそのような活動を通じて、児童たちは知識・技能や態度や理解を得、現在の環境に適応することができ、さらに社会生活を不断に進歩させ、文化をおしすすめるのに必要な能力を身につけます。この場合児童たちにとって意味のある活動は、これを根本的に考えれば、彼等が生活上直面する問題の解決の過程の中に起ってくるものであります。社会科は、児童に問題解決の活動をいとなませ、その生活経験を発展させていこうとするものでありますから、児童は社会科を勉強すればするほど、他の教科の必要をも感じてきます。そしてまた他の教科で得た知識や技能は、社会科の中で生かされ、さらに反復練習の機会が与えられるわけです。

 以上で、社会科がその方法の上からいって、他の教科とどんな関係にあるかということのあらましを述べたのでありますが、前項であげた社会科学習の系統とも関連して、児童の発達、なかんずく興味の発達に即して、方法上の着眼点を少しく述べておきます。

 児童の能力や興味は発達するものですから、年齢の進むとともに、ますます深い意味をもった概念をつかむことができるようになります。したがって指導方法や用いられる材料も、かれらの能力と必要に応ずるようにかわっていかなくてはなりません。

 一年生は身体的に非常にかっぱつであり、学習はすべての感覚を通して行われます。かれらは事物を視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚等を通じて認識します。遠足にもいかなくてはなりません。物を作ったり、それをごっこ遊びに使ったりしなくてはなりません。注意の持続時間は短いので、学習の動機がたやすくみたされなくてはなりません。微細な筋肉は十分使いこなせないので、仕事は粗雑ですが、自分の作ったものがとにかく使えさえすれば、精巧さがなくても意に介しません。木片がトラックの役目をするし、床の上にかかれた線が車庫にもなります。動くものに非常に興味をもつので、ごっこ遊びをするときには、多く汽車や四輪車やトラックや二輪車や動物などを使います。大きな集団といっしょにうまく仕事をすることはできません。熟練した教師は、それゆえ小さい集団で仕事をする機会を与えます。時間や空間を理解する能力は限られたものですから、ただ身近な社会を、しかも現在あるがままに学ぶに過ぎません。伝染病やちょっとした病気で学校を休みがちです。それゆえ一年生の仕事は、数名の児童が欠席しても、学級のプログラムにたいして支障をきたさないように、また欠席した児童が学校にでるようになったら、容易にグループの中にはいってうまくついていけるように計画されなければなりません。またおとなの生活をごっこ遊びにすることが好きで、自発的にやります。そしてごっこ遊びをしたいために周囲の生活を学びます。

 四年生ぐらいになると、活動的なことを好むことにかわりはありませんが、相当長い時間じっとしていることができるようになります。高度に組織化されたごっこ遊びを行い、なかまやおとなたちの意見にいっそう関心をもつようになります。興味も相当長く持続できます。過去のことや遠くはなれた土地に関して好奇心をもつようになります。またこのころは、一生のうちでもっとも健康な時代ということができるでしょう。教師がこれらの事実を社会科の計画に利用するとすれば、組織化されたごっこ遊びに使うものを作らせ、とくに正確さについて指導すべきです。また児童の学習やごっこ遊びを指導するときは、過去の人々や遠く離れた土地の人々の生活を理解させるようにしなくてはなりません。グループで計画を立てたり、評価したりする機会を多く作らなくてはなりません。出席も規則的になってきますから、全級の者にとって非常に重要な意味をもつ仕事の一部面を各個に分担させることができます。おとなの生活を劇化することを好むことは依然としてかわりがありませんが、いっそう多くの材料を用い、準備により多くの時間をかけます。

 六年生程度になれば、もっともっと集団意識が強くなります。依然として活動を好みますが、より長時間静かに勉強することができます。科学に好奇心をもち、物事の理由をせんさくすることを好みます。高度に組織化された劇的遊戯を好みます。劇化することが好きですが、自己意識的になります。それゆえ劇の準備も非常に周密にやります。人々の生活を劇にするために衣しょうを作ったり、背景をかいたり道具を作ったりするのに、興味が長時間続きます。また発明や機械には非常に興味をもちます。

 このような発達段階を心得ている教師は、教材を広く選択することができ、児童に強い興味と正確な仕事を期待することができます。学習の題材としては前項にあげた経験領域から選ぶのが適当でしょう。

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 これだけ高度なことを要求できる教育ができていたのは,昭和20年までの話だった,ということにならないようにしたいものです。

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小学生は社会科の学習が苦手で当たり前

 理科や算数なら,どこからどう見ても「小学生レベル」の学習内容として扱うことができる。

 しかし,社会科ということになると,対象となっているのは「子ども社会」ではなく「大人社会」だから,それは難しくて当然である。
 
 小学校の教師の中には,「子どもは社会科が苦手」だといって嘆く人もいるらしいが,

 そもそも教師自身も完全に理解しているとは言えないだろうし,決着がついていない問題,解けていない疑問もたくさん残されているのが「社会」科である。

 本当に「分かった」と言える気がしない,という子どもは,実はとてもとても鋭く,正しい認識が持てている「大人以上の存在」だと思う。

 読書編で紹介したい内容だが,

 たとえば6年生の歴史では,

 「源頼朝はなぜ鎌倉に幕府をおいたのだろう」

 という学習課題を設定する場合がある。

 小学生でも,京都から離れているメリットとデメリットは何となくわかるだろう。

 教科書では,鎌倉の地形を鳥瞰図などで示しており,

 「三方を山で囲まれ,海が開けている」という模範解答らしきものが用意されている。

 この程度の答えで満足しているようでは,「社会科が得意」などとは呼べない。

 鋭い子どもなら,「山で敵が防げるのか」「海から一斉に船で攻め込まれたら逃げ道がないのではないか」

 と疑問に思うはずである。

 「海からの攻撃」に関しては,鎌倉の前に広がる由比ヶ浜が,遠浅の浜であることから,攻める側にとってなぜ不利になるかは海水浴をしたことがある子どもになら納得させることができる。

 では,「山で防げるのか」の方はどうか。

 ちなみに,高校の教科書だと「山」ではなく「丘陵」と表現されている。

 ただ,これでも同じである。「丘陵」で鎌倉を守れるのか。

 義経の「逆落とし」(一ノ谷の戦い)を知っている子どもなら,山から大軍が下りおりてくるイメージができるだろう。

 ただの「山」では,防御にならないのである。

 防いでいるのは,「山」ではない。

 それは何か・・・。

 ・・・・興味のある方は,読書編をご覧いただきたい。


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小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科学習の系統」

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三、社会科学習の系統

 社会科学習の系統はどんなものであればよいかということは大きな問題であります。

 この問題について熱心に研究している人々の中には、学習の系統はあらかじめ学年ごとに固定させられてしまうべきものではなく、むしろそれは児童の活動の中から生じてこなければならないと説く人々があります。一方これに対して、学校は児童を導いて十全な公民にする重大な社会的責任をもっていますから、そのような不確かなものではいけない、学習の系統は学年ごとに一段一段、注意深く予定されなければならぬと主張する人々もあります。これもたしかにうなずかれる主張です。現在のわが国のように、学級の人員が多く、しかも教師に社会科指導の経験が乏しい状況においてはとくにしかりです。

 だからといって、学年ごとに固定した、しかも全国一律に通用するというふうな知識や活動の系統案を予定することは、単に望ましくないばかりでなく、事実不可能のことです。したがって社会科学習指導において考えられる系統は固定したものではなく、大きな融通性をもった弾力的な系統でなければなりません。各学年の児童に解決を要求してくる問題や、その解決の活動や、その際必要になってくる理解や知識が、どんなところから生まれてくるか、どんなことに関連しているかという予想に基づく系統であります。それは結局児童の経験領域の発展の系統です。

 児童たちの社会生活の経験は、年とともにしだいに広くなり深くなっていきます。それはまず自分たちに親しみ深い家庭や学校や近所の社会とか地域社会の経験からはじまっていきます。そしてやがて空間的に広がって国全体の、また世界の他の社会の生活やその相互依存関係などにおよんでいくと同時に、時間的に広がって、時代をさかのぼり、原始時代から現代に至るまでの文化や社会生活の発展を学ぶことに興味をもつようになります。

 このような経験の範囲の広がっていく順序を考慮しておくことは、社会生活の理解を指導するために有効なことでもあり、必要なことでもあります。

 学習指導要領社会科編(一)には、各学年の児童の経験する社会生活の領域が示されています。これは各学年の児童の心身の発達やその特性、また学年の目標および参考とすべき問題の例を通じて示されております。これを簡潔にまとめると、次のようになります。

 第一学年 家庭・学校および近所の生恬(この時期の児童は自己中心的であって、身近な社会を、かれらに直接関係ある限り、行動を通じて理解することができます。)

 第二学年 家庭・学校および近所の生恬(一年に比べて経験が一段と広まり深まってきます。ことに近所の社会生活の経験が深くなります。近所の社会での人々の協力や種々な職業や公共施設をある程度まで理解できます。)

 第三学年 地域社会の生活〔大昔の生活比較として〕(経験領域が身近な生活からしだいに広がって、村や町にまでおよんでいきます。自然環境と人間との間の相互の適応が興味の中心となります。そして全く文明の開けない不自由な時代の人々の生活にも、しばしば興味を示すことがあります。)

 第四学年 私たちの生活の現在と過去(経験領域はさらに広がって県あるいは日本にまでおよぶでしょう。自然環境と人間との相互の適応が、依然として興味の中心でありましょう。歴史的な意識がようやく芽ばえますが、時代の観念はまだ分化せず、過去の時代はすべて現在と対比された昔として一概に考えられる程度であると考えられます。)

 第五学年 現代日本の生活(発明発見に興味をもち、日本の生活が発明発見によって変化して現代に至った点を理解するでしょう。)

 第六学年 日本の生活と諸外国(発明発見に興味をもつことは、前学年と同様でしょう。そして、発明発見によって、世界的規模をもつようになった産業・交通・通信等の理解を通じて、わが国の生活を、とくに世界との関連の上でみることができます。)

 このような経験の領域は、青少年の社会生活の経験の発展のおおよその基準であって、決して絶対的、固定的なものではなく、児童個人により、また児童の生活する社会生活の状況によって変動してくるものです。したがってこれを、重点をおくべき一般的経験領域、あるいは簡単に主要経験領域と呼ぶことにします。それはこのような領域についてのさまざまな経験が、その学年の児童たちに与えられるのが自然であり、また児童たちがそれを必要としてくると予想されるからであります。
 このような経験領域の系列を考えておくと、教育の全体計画に対して一般的な大きな方向を与えたり、その学校の児童がとくに触れるべき材料を見とおす基礎を与えますし、社会科として取り上げる学年ごとの重要な理解や知識の範囲を選ぶ助けになり、無意味に重複したり反復したりするのをふせぐことができます

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 同じ年齢の子どもが,みんな同じような社会生活を経験しているわけではありませんから,このような発想でカリキュラムを編成しようとすると,とても大きな困難が伴うことは言うまでもありません。

 今,話題になっているのは,「相対的貧困」の中で暮らしている子どもたち。

 「相対的貧困」とは,一般社団法人チャンス・フォー・ チルドレンの代表理事,今井悠介さんによれば,国民の標準的な所得の半分以下で生活し ている人たち・・・4人世帯でいえば,年収250万円以下くらいの方々・・・のことで,「相対的貧困」の中で暮らしている日本の子どもは約6人に1人の割合でいる,ということです。

 いわゆる「教育格差」が,どのようなかたちで子どもの将来に影響を与えているのか。

 何だか公教育の存在価値が本当に薄れてしまって,教育の民営化が本格的に始まる気配を感じてしまうような話でした。


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教師の「個」の力に依拠する小学校の教育モデルの終焉

 私の過去の記事で多くの方に読んでいただいているもののうち,

 少なくないのが,

 「小学校教育の問題」にかかわるものです。

 たとえば,「担任のはずれ」の問題。

 保護者としては,不公平感があまりにも強く,4月から「担任外し」の「運動」が起こる学校もあるようです。

 こうした問題に,学校側がとる対策として増えているのが,

 「1年ごとの担任交代=クラス替え」です。

 どのくらいの小学校で,これが実施されているかわかりませんが,

 昔は少なくとも「低学年」「中学年」「高学年」のそれぞれ2年間はクラス替えがなく,同じ教師が担当したものです。

 しかし,「年間指導計画」だったり「評価計画・評価規準」などを提出しなければならなくなって,

 みんながみんな同じような指導と評価をすることで,

 「だれがやっても同じ」が原則の教育になり, 

 それなら1年交代でもいいじゃないか,だれがやってもいいじゃないか,ということになりました。

 本当の意味での教師の「特色」「長所」「創意工夫」が発揮できない仕事場になってしまいました。

 頻繁に担任が変わると,

 「この先生のおかげでこんな力がついた子ども」とか,

 「この先生のおかげで本当に学力がつかなかった子ども」の区別がつけられないようになり,

 教師は安心して手が抜けるようにもなったのです。

 もしこのような体制をとるのであれば,

 もはや「学級担任制」にこだわる必要はないでしょう。

 「学級担任制」のよさはどこにあるのか。

 「教科担任制」にすると,どんな問題が発生するのか。

 両方を天秤にかけたとき,少なくとも,高学年における「教科担任制」の実施は

 法律でしばりをかける方向にいくのではないでしょうか。

 最終的な決断の最大の根拠は,「個」の力ではどうにもならない,というものになるかもしれません。

 ここから先は,フィクションです。

*******************

 英語の授業を担当できる小学校教師は,留学の経験がある者に限ります。

 国語と社会科の授業を担当できる小学校教師は,5タイプの小論文で評価がAの者に限ります。

 算数の授業を担当できる小学校教師は,指導法における基礎知識に関する試験で,評価がAの者に限ります。

 理科の授業を担当できる小学校教師は,10種類の実験の実技テストで,評価がAの者に限ります。

 ・・・そして,これらの授業を担当する人間の多くが,外部からの非常勤講師に変わっていきました・・・。

 
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なぜ「小学校のときにいい子だったのに,中学生になるとダメになる」のか?

 小学校の教師にとって,教える子どもの人数が少ない分,その子どもたちがどのような進路をたどっているか,どんな成長をとげているかを実際に知ることは難しくない。
 
 そうやって情報を探すと,ときどき残念な様子,予想外の状況を知ることが少なくないようである。(もちろんその逆も大いにある)

 露骨に中学校とかその教師たちのせいにしたがる人は少数派だろうが,

 「なぜそんなことになってしまったのか」,家庭環境というファクターに影響されない子どもの場合,どうしても納得できない問題のようだ。わざわざ中学校の方に問い合わせてくれる人は少ない。
 
 中学校の教師と違い,小学校の教師は,20年勤務して毎年必ず40人学級の担任をしていても,最大でのべ800人の子どもにしか教えられない。

 だから,それぞれの子どものことは,だれよりもよく知っている,という自負もあるだろう。

 (しかし,中学受験のための学習をしている小学生の学力レベルがどの程度なのか,小学校の授業ではほとんどうかがい知ることはできないだろう)

 中学校の教師の場合,「学級担任」なら状況は同じだが,教科指導,部活動,生徒会活動,学校行事などで,担任以外の多くの生徒もよく知ることができるようになる。

 人数が多いから,個々の様子があまり分かっていないかと言うと,そうでもない。

 教科の担任なら,私は約20年間,毎年400人を対象に教えてきたので,これまでだけでも,のべ8000人である。学年主任や進路指導主任をしていたことや学年で成績処理を担当していたことが多かったので,学力面は担当する社会科以外のものもだいたいわかっていた。

 8000人分の成長をすべて頭に入れているわけではないが,「よくある話」がある。

 小学生のころ,とても輝いていたらしい(勉強もできていた)生徒が,中学校では伸び悩んでしまうことが少なくないのは確かである。

 その原因に心当たりがない小学校の教師も,少なくない。

 しかし,実は特別な理由があって伸び悩んでいるわけではない。

 主な理由は,「活用力・応用力がない」ことによる。

 中には,単純な四則計算すらできない子どもや,人の話を聞けない子どもに高い評価をつけてくる小学校の教師がいる。

 何でも,「目の付け所がいい」「授業に積極的である」ことがその理由らしい。

 しかし,さすがに計算ができなかったり,人の話が聞けなかったりすると,中学校ではすぐに挫折する・・・というか,前に進めなくなる。

 小学校時代に特定の子どもが「輝く」のは,たいてい,他の子どものレベルが低いからか,単純に教師がその子どものことを「気に入っている」から,という場合もある。ある口の悪い生徒は,担任はその子ではなく,その子のお母さんが「気に入っていた」らしい,などと言ってくる。

 これ以上わかりやすいものはない。「ひいき」の目が実態を曇らせてしまっているのである。

 話をもとに戻すと,「活用力」「応用力」があるかどうかは,たとえば全国学力調査のB問題の結果でうかがい知ることができる。

 これができない生徒が中学校の学習で「輝く」ことはなかなか難しい。

 もちろん,暗記だけですんでしまうような授業しかできない学校は別の話である。

 さて,もう一つ,「中学校でダメになる」生徒の共通点は,

 小学校の担任教師への依存心がとても強かったか,

 「担任は自分のために何でも言うことをきいてくれる」という信念のもとでわがまま放題生きてきたか,のどちらかである。

 実は私にも「担任の先生に褒めてもらいたい」一心で,一生懸命に家庭学習ノートを書いていた,という

 「前科」がある。小学校1年生のときの話。

 1日に1冊ノートを字で埋めてしまう。全部のページに担任は○をつけて返してくれる。

 励ましのコメントも入っている。それがうれしいから,という理由だけで,よく勉強していた。

 中学校では,テストが終わった後に,解き直しを行い,さらに,「このレベルの問題が出ていたら解けたかどうか危うかった」類題を問題集から写し取り,解法を複数考えて,ノートに書いて,提出した。

 先生の驚く顔が見たくて,そんなノートを作っていたのである。

 「どうせなら,テスト前にやれよ」

 という話だが,私なりの言い訳は,「テスト前は他の教科の準備で忙しくて無理だから」というもの。

 つまり,本当はやりたかったのに,時間がなくてできなかったから,あとでやった,ということ。

 実際,力はついたと思うが,本当の勉強のおもしろさに気づいたわけではなかった。

 それに気づいたのは高校生になってからである。

 どうしてそういう後悔が強いかというと,たとえば中学生のときに学んでいた社会科も,実はとてもおもしろく学べた教科だったはずだ,ということに後で気づいたからである。

 小学校の教師は,中学生でどうだった,ということにこだわる必要はない。

 高校生や大学生,社会人になったあとで,自分が教えたことの意味を生徒が語ってくれるのであれば。

 そもそも中学校3年間の子どもは,他の時期と比べると「激動」そのものである。

 勉強でもスランプに陥ることがあっても,いつの間にかよくできるようになっていたりもする。

 ある時期はとんでもなく落ち込んでいても,いつの間にか,ふっきれて生き生きしてくる子どももいる。

 要は,「自己教育力」のあるなしが重要なのである。

 いつでも教師の力で何とかする,とは考えない方がよい。教師は,成長する環境を整えるのが仕事である。

 意見がたくさんでるのがいい,とかいうのが信念で,他の子どもの発表にしっかり耳を傾けることをせず,ひたすら自分の考えだけを発表しまくるクラスを見たことがある。

 こういう学級・・・本なんかを書いている有名な小学校教師の学級・・・の子どもに限って,中学校ではまるで力がつかなかったりする。

 ただの奴隷生活に慣れていた人間がいきなり自由の世界に投げ出されても,それは戸惑うばかりであろう。

 小中連携とかいっても,小学生が中学生になってどうなった,などという近視眼的な見方ではなく,

 9年間で将来のためのこういう力をつけさせたい,という大きな目標をもって教育をすべきである。

 もちろん評価は行う。常にそれは形成的評価でよいのである。

 「中学生でダメになった子どもほど,その後の成長が著しい」なんてことが言えれば,少しは安心してくれるだろうか。

 
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小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科の内容」

 私が太字にした部分は,私なりに重要だと考えた箇所です。

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(第一章 序説  第二節 小学校の教科課程と社会科より)

二、社会科の内容

 社会科の内容としては、広く人類学・経済学・歴史学・地理学・政治学・社会学等の対象である各種の分野が考えられます。もちろんそれは、たがいに関連しあってより広い領域の一部をなしているものとしてです。それは、このような分野の理解が現代のわれわれの生活にあらわれている社会的な諸問題の解決に役立つからです。社会科の中には、あらゆる人間社会についての知識や思想はもちろん、人間が生活し、活動している自然環境と人間との関係についての知識や思想も含まれているわけです。社会科は人類がどのようにして自然を利用して、人間としての基本的な要求をみたしているかを問題にしており、歴史的に発生してきた慣習や制度を問題にしており、現在人類の直面している諸問題を問題にしているのです。

 社会科はその対象として、きわめて多くの部面をもっています。人類が過去何千年来追求し経験し実験して作り上げてきたものはすべて社会科の内容を選ぶ基盤であります。小学校の児童にむずかしい社会概念を理解させようとすることが適当であるかどうかということは、しばしば問題になります。しかしこのような概念も、児童にわかりやすいようにして与えられれば、児童はそれを実によく理解します。しかも幼少のときにできた態度は、のちのちまでも持続されて、成人した後の全人格を支配することが多いものです。

 たとえば、人と人、あるいは国と国との相互依存の概念などは、複雑な社会概念ではありますが、児童たちは、家庭とか農家とか郷土の生活とかいうような領域について生活し経験するうちに、家族の人々の間の相互依存を理解することができます。また郷土社会の各種の人々の間の相互依存を発見することができます。また都市の人々が農家の作りだすものに依存し、農家の人々が都市の工業に依存して肥料や農具を手にいれることや、わが国がゴムや綿などの商品を他の国に仰ぎ、そのかわりに絹を外国にだしていることなどを知ることができます。そのほか美術や音楽・文学などの作品を交流させることでは、世界中の人々がたがいに依存しあっていることも知ることができましょう。

 しかもそのようにして正しい理解を発展させることによってのみ、児童はやがて世界人類の幸福のために、平和な寛容な世界的協力組織を実現しようとする強い意志をもつに至るでありましょう。この意味において児童の発達程度に応じ得るかぎり幼い時期からこのような理解を適切に導入し、また急速に発達させることは、教師の常に心すべきことといわねばなりません。

 社会科の学習領域は人間の基本的欲求をみたすために人間のいとなむあらゆる社会事象を含んでいます。その基本的欲求についてはいろいろな分類が可能ですが、次のような社会的機能による分類もその一つでありましょう。

一、生命・財産および資源の保護保全

二、生産・分配・消費

三、運輸・通信・交通・交際

四、美的および宗教的欲求の表現

五、教育

六、厚生慰安

七、政治

 世界の歴史のいかなる時期のいかなる社会生活を考えてみても、このような根本的な機能をみたすことが必要でありました。人間の基本的な欲求を満足させる具体的な方法は、いろいろな時代いろいろな環境でそれぞれ異なっていますが、いやしくも満足な社会生活が営まれる場合には、その社会生活の中で以上の各機能がそれぞれの位置を占め、十分な意味をもっていることにはかわりがありません。
 社会科の学習指導要領に示されてある小学校各学年の参考問題は、この主要な社会機能に即しているもので、児童たちに社会生活の各部面を理解させる出発点として役立ちます。この事についてはのちにやや詳しく述べます。

 前にあげた学校教育法第十八条は、小学校教育の目標を示すとともにその教育内容をも示していますが、その内容はすべて社会生活のこれらの機能に関係しています。すなわち新しい小学校教育の諸教科は、児童に、個々の領域に分離したいろいろな知識技能を授けるのではなしに、社会生活という共通の基盤の上に立ち、その各部面の形成に必要な諸種の理解・態度・能力をそれぞれの角度から内容として取り上げます。そして社会科は、社会生活のこれらの諸機能を全面的に学習の領域とするのでありますから、社会科の中に各種の教科の内容がはいってくること、またいろいろな教科の内容を与える際に、どうしても社会科で取り扱う社会の実際生活の問題の研究から出発してくる必要のあることを、考え深い教師たちは十分知っています。

***********************

 社会科にあまり関心のない教師の中には,

 「私は考え深くないというのか」と不満になった人がいたかもしれません。

 私がここで強い関心をもったのは,

 人間の基本的欲求を満たすための社会事象のなかに,「教育」があることです。

 「教育」自体も,実は社会科で扱わなければならない社会事象であることに,どのくらいの人が気づいているのでしょう。

 今の学校制度は,ここに「気づかせない」ための努力は怠らずにやっているかのようです。

 それではいけませんね。


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バズワードだらけの教育界

 政治の世界でも,教育の世界でも,行き詰まり感の強いところでは,

 「バズワード」が幅をきかせています。

 「バズワード」とは,よく使われている言葉ではあるが,その意味や定義があいまいで,「つまりこういうこと」と説明してみることが難しい,あるいは,その説明が人によって食い違ったりする,というキーワードのことです。

 「バズ」ですから,多くの人が・・・それも,あまり頭を使って考えることが苦手な人たちが,

 流行に乗り遅れまいとして必死に使っている言葉・・・そういうイメージがあります。

 「学力」というのは古典的な「バズワード」で,近いところでは

 「生きる力」とか「人間力」,

 最近では「言語活動の充実」などが教育界では挙げられます。

 「バズワード」そのものが「バズワード」という話は置いておき,

 たとえばITの世界では

 「クラウド」という言葉がありますね。

 「雲」って何?・・・これを,的確な言葉で説明できる人はいるでしょうか。

 インターネットのサーバー上で作業ができること?

 そうではなくて,なぜそれが「雲」なのか?

 「雲」って消えてなくなったりしないの?なんてのは,案外,妥当性のある心配?

 インターネットにつながらないと,作業ができないってことは,不便なのでは?

 話が横道にそれました。

 教育の世界では,「学び合い」も立派なバズワード。

 こういうバズワードのオンパレードに,中高の教師たちというのはかなり冷ややかな目を送るのですが,小学校の先生というのは気持ちが若いからか,すぐに飛びつくという傾向が強いですね(私の知る限りの情報ですが)。

 社会科には長年続く,主に小学校向けの立派な雑誌がありますが,そこは蜂の巣のようなところです。

 これだけ統制のとれていない,バラバラな原稿が数だけたくさん並んでいるのは,本当に日本が平和で豊かな国である証明となっています。ゆとりの象徴のような雑誌です。

 昭和22年から言われることが,六十数年たってもまだ同じように繰り返されている。

 ・・・・なんていって,「教育創造学」なんていうのは定義すらなく,ハエすら飛んでこない言葉ですが,まず昭和22年のころに戻って,一から考え直してみよう,というだけでも,立派な「教育の創造」になりそうな気がしているのは・・・私だけですね・・・。


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小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された社会科の目標

 まずは,私の方で太字にした箇所にご注目ください。

 整理しやすくするように,一部,改行も施してあります。

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(第一章 序説より)

第二節 小学校の教科課程と社会科
 
 小学校の教科は学科分立の組織では十分にその教育の目的を達成することができないので、しだいに生活経験の総合的な発展をめざす新しい教科課程にうつりかわろうとしています。従来の修身・地理・歴史にかわって、社会科が生まれてきたのも、その線にそってであります。このことがはっきりすれば、社会科と他教科との、関連も、社会科の本質も、正しくとらえることができるはずです。学習指導要領と多少重複しますが、以下に社会科の目標、内容、学習の系統および方法に分けて、そのことを考えてみましょう。

一、社会科の目標

 社会科の主要目標を一言でいえば、できるだけりっぱな公民的資質を発展させることであります。これをもう少し具体的にいうと、児童たちが、

 (一)自分たちの住んでいる世界に正しく適応できるように、

 (二)その世界の中で望ましい人間関係を実現していけるように、

 (三)自分たちの属する共同社会を進歩向上させ、文化の発展に寄与することができるように、児童たちにその住んでいる世界を理解させること

 であります。そして、そのような理解に達することは、結局社会的に目が開かれるということであるともいえましょう。

 児童たちが社会的に目を開くためには、社会の根本的諸機能と、それらの機能が相互に関係しあって作っている社会生活全体を、人間らしい生活をいとなみたいという人間の根本的欲求、すなわち人間性に関係させて深く理解しなければなりません。なかでも、社会生活を成立させ発展させている重要な条件として、

 (一)人と人との間の相互依存関係、

 (二)人間と自然環境との間の相互依存関係、

 (三)個人と社会制度や施設との間の相互依存関係、

 を理解することが肝要であります。

 しかし、りっぱな公民的資質ということは、その目が社会的に開かれているということ以上のものを含んでいます。すなわちそのほかに、

 人々の幸福に対して積極的な熱意をもち、本質的な関心をもっていることが肝要です。

 それは政治的・社会的・経済的その他あらゆる不正に対して積極的に反ぱつする心です。

 人間性及び民主主義を信頼する心です。

 人類にはいろいろな問題を賢明な協力によって解決していく能力があるのだということを確信する心です。

 このような信念のみが公民的資質に推進力を与えるものです。

 社会的に目が開かれていることは、民主社会を建設し維持するのに欠くことのできない条件です。しかし社会的に目のあいていること、社会的な関心をもっていることは、さらに、よい共同生活をするのに不可欠なさまざまの技能や習慣や態度と結合していなければなりません。すなわち

 その時々の事態に応じて適切に処理すること、

 建設的に協力すること、

 他人の権利を尊重すること、

 疑わしい意見や正しくない意見とたたかうことなど、

 総じて民主的社会の有為な公民として必要な数多くの特性を身につけていなくてはなりません。

 社会科は右に述べたような公民的資質の発展を目標とするのでありますから、それが小学校教育の教科課程の中で占める位置はおのずから明らかであります。

 学校教育法第十八条によれば、初等普通教育を児童に与えるためには、左の各号に掲げる目標の達成に努めなければなりません。

一、学校内外の社会生活の経験に基づき、人間相互の関係について、正しい理解と協同・自主および自律の精神を養うこと。

二、郷土および国家の現状と伝統について、正しい理解をもつように導き、進んで国際協調の精神を養うこと。

三、日常生活に必要な衣・食・住・産業等について、基礎的な理解と技能を養うこと。

四、日常生活に必要な国語を正しく理解し、使用する能力を養うこと。

五、日常生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する能力を養うこと。

六、日常生活における自然現象を科学的に観察し、処理する能力を養うこと。

七、健康・安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的な発達を図ること。

八、生活を明かるく豊かにする音楽・美術・文芸等について、基礎的な理解と技能を養うこと。

 これによりますと、小学校教育の目標は有為な社会形成者を作ること、すなわち社会の中での生活を、幸福に、能率的にいとなむのに必要な諸種の理解・態度・能力を養うことにあるということができます。これと前に述べた社会科の目標とを比較してみますと、社会科が小学校の教育目標達成のために重要な位置を占め、そしてすべての教科の主要目標とかたくむすびついていることは明らかです。

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 「公民的資質」の「推進力」という言葉は,今読んでもとても新鮮な気がします。


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小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された当時の課題

 日本で社会科が誕生したときの様子を伝えてくれる,歴史的な資料のようなものです。

 私が注目したかった部分は,太文字で示しました。

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 (第一章 序説より)

第一節 現在の問題
 
 社会科の学習指導要領を手がかりとして、全国の教師たちは社会科の教育を開始しました。全く新しい教科なので、さまざまの疑問や困難につきあたっていますが、教師たちの努力はそれを乗りこえて、学校に生き生きとした新しい気分を生みだしています。
 その疑問や困難のもとになるものをだんだんつきつめていくと、それらの原因は、次のようないくつかの問題がまだ正しく解決されていないからだと思います。

 すなわちその問題は、

一、小学校の教科課程の中で、社会科はどのような位置を占めているか。

二、社会科の目標と地域の要求との関係はどうなっているか。

三、社会科の学習内容の選択およびその指導に対して、児童生活の研究はどのような意味をもつか。

四、どのようにして作業単元を作り、どのように展開するのが適当であるか。

五、社会科の教育の効果を判定していくのにはどうすればよいか。

六、社会科を実施するのにどんな資料や設備をととのえればよいか。
などであります。

 もちろん学習指導要領には、これらの問題に対する解決が示されていますが、それだけでは十分なっとくできないという人も多いようです。

 ことに三と四の問題は、学習指導計画の立てかたあるいは作業単元の選びかたとして、重要な問題となっており、どうも学習指導要領だけによっては解決しにくいという意見が強いのであります。

 したがって、これに対するもう少し詳しい説明をする必要があります。これがこの本の作られるようになった理由の一つです。

 前にあげた六つの問題は、決してばらばらのものでなく、たがいに入りくんでいるものであります。社会科の目標が具体的に理解され、児童の生活の動きやその発展のしかたがはっきりしてくれば、学習活動の選びかたもその展開のしかたもわかってきます。すなわち作業単元のありかたがきまってくるわけです。また作業単元のありかたがきまってくれば、その効果の判定方法もはっきりしてきますし、どのように資料や設備を準備したらよいかという目やすも立ってきます。さらに他の教科とどのように関連させるか、すなわち社会科を具体的にどんな位置におくかという見当もついてきます。

 作業単元はどのように実施したらよいかという目やすが立てば、逆にそれを手がかりとして、社会科の目標をその土地の実状に即して具体化していくこともできますし、児童の動きの中ではどのようなものを調査すればよいかという見当もついてくるわけです。

 そのようなわけで、作業単元の作りかたや展開のしかたが現在の社会科の第一の問題になっているといえます。

 学習指導要領では、その学習指導計画の立てかた、作業単元の作りかたについて簡単な説明を加え、作業単元の実例を三つあげてあります。そして教師がそれぞれ自分で学習指導計画を立てることを要求しております。

 ところで、その要求に基づいて各学校で作った作業単元なり学習指導計画なりの一般的傾向を見ますと、はじめてのことですから当然のことともいえますが、小さな題目の下にいくつかの学習活動がぽつぽつとならべられていて、学習活動が次から次へと展開していくようになっておらず、その小さな題目ごとに無理にまとめてしまおうとして、活動が表面的なものになり、児童に十分その問題を解決させる余裕を与えず、安易に社会道徳がおし売りされるようなきらいがみえます。もちろん非常によくできている学習指導計画もあり、適当な作業単元も多数生みだされてきていますし、たとえ小さな題目がならべられていても、その間に自然なそしてしっかりしたつながりがあり、学習指導が深く展開され、人間生活、社会生活の理解を一歩一歩深めていくものも相当見受けられます。

 それゆえ作業単元の作りかたや実施のしかたを説明し、適当と思われる作業単元の実例を示して一般の先生がたの参考に供することは、この際たしかに有益なことでありましょう。これがこの本のつくられたいま一つの理由であります。そのためにはまず、さきにあげた問題とも関連して、小学校の教科課程と社会科との関係を、

一、社会科の目標

二、社会科の内容

三、社会科学習の系統

四、社会科の方法

 の諸項目に分けて説明することが必要であると思います。


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 大学の先生でもつくるのは難しそうなことを平気で要求していますね。

 チャレンジングな先生たちもたくさんいて,そういう人たちが,一時期の社会科教育界をリードされてきたのはわかりますが,これを全国の先生に一律に求めるのは,無理がある。

 次回は,「社会科の目標」に注目です。キーワードは「公民的資質」。


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想像力・創造力の欠如がいじめや体罰を生む

 いじめや暴力などの生活指導の問題が起こって生徒に説諭するとき,

 教師は「想像力が足りない」ことを指摘することがあります。

 「こうすれば,どういう結果が起こり得るのか,考えてみればわかるでしょう」

 というタイプのもの。

 (それをそっくりそのまま,体罰教師にお返し申し上げたいという方もいらっしゃるでしょう。)

 最近は,何でも「脳のせい」にするのがはやりのようですから,

 「想像力の欠如」の問題も,どこかのはたらきが弱いから,と説明できてしまうかもしれないのですが,

 ではどうしたら想像力を高めることができるのか,などと真剣に考えて,
 
 実際の指導にうつさなければならないのが現場の教師です。

 指導する現場でやりにくいのは,

 「想像力」がとても大切な,本当に人間らしい機能であるのに,それを「フィクションだ」などというとんでもない解釈をする子どもがいるからです。

 「相手が何を感じているかを知ることができるのは神のみ」などと訳のわからない言葉を発しつつ,何の反省もしない子ども。

 フィクションには,確かに「想像上のもの」「虚構」という意味がありますが,

 「捏造」というと,またちょっと意味が違ってきます。

 人間は,よく自分の都合がよくなるような解釈を人にせまったり,自分自身で意識もなくしてしまったりすることがあります。

 自己防衛本能とでも呼べるものでしょうか。

 しかし,相手を傷つけるような行為をしておいて,「相手が傷ついているかどうかはわからない」などと開き直る子どもを前にすると,

 「自衛のための戦争」の話を延々としてみたくなってしまいます。

 残念ながら,そういう話をしても,「~は自衛のための戦争だった。だから正しい戦争だ」などと言いかねないことです。

 戦争の場合は,そのように解釈することも不可能ではありませんし,そういう解釈があることを認めることも大事ですが,

 相手を傷つける行為をしても平気でいられる人間を認めるわけにはいきません。

 仮に,幼児期に想像力の生成システムが破壊されてしまった人間だったとしても,

 それを最初からつくりなおす必要にせまられているのが学校現場なのです。

 そのうち,教育公務員には臨床心理士の資格も必須になる,という時代が来るかもしれません。

 それくらい,今までは体罰で「けり」がつけられてきたような事態が,体罰など許されない今となってますます増加しているのが現場の状況なのです。

 想像力や想像力を鍛えることは,単語を覚えさせるのとは違い,そう簡単にできるものではありません。

 結局のところ,大きな問題を繰り返しつつ,徐々に理解していく,というのが現状である子どもがたくさんいます。

 長期的に見て,中学校時代に問題を起こすことを抑えることに成功してしまった結果,

 「学ぶことができないまま」に年齢だけ増している「大人」になり,そして・・・・

 という事件・事故が相次いで発生している。

 「考える脳」をつくるために,どんな教育をすべきか。

 答えはそう簡単ではありません。

 
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中学受験前に学校に通わなくなる小学生の皆さんへ

 *この話はフィクションです。

***************

 本校では,入試の当日に,前日までの「出欠席数」を記入した書類を提出してもらいます。

 欠席が7日以上ある場合には,詳しい欠席理由書をつけていただきます。

 すべて,前日に小学校の公印をもらっておいてください。

 私たちの学校で重視している内申書のデータは,欠席数,遅刻数,学校で果たしていた役割とその成果です。

 教科の学習成績は,そのまま入試得点に反映されますが,長年の経験から,この評価は信頼性に乏しいことが分かっていますので,合否判定にはそれほど影響がでない割合になっています。

 最近,保護者の判断で,

 「風邪をひかせないように」

 「インフルエンザにかからないように」

 「受験勉強の時間を確保するように」

 という目的で,受験前に小学校を欠席させられる人が多いと耳にします。

 小学校に通っていなくても,

 学力が高ければそれでよい,という中学校もあると思いますが,本校は異なります。

 受験の前日も小学校に通っていることを前提とした提出書類があることや,

 面接試験で,試験の前日から一週間前までのどこかの1日を指定されて,

 その日に学習した内容などを質問することになっているのは,

 「小学校生活がどれだけ充実したものであるか」

 「学校生活をどのような態度で過ごしている人であるか」を

 確かめたいからです。

 受験生のなかには,本校が第一希望ではない人もいます。

 だから受験前に欠席数が多くなっている人も見受けられますが,

 こういう小学生は,これまでだいたい不合格になっていることからも,

 「出欠席数」が合否判定に大きな比重を占めていることがわかるでしょう。

 ご存じのように,本校では他校では実施していない教科の受験もあります。

 小学校で培った力のすべてを受験で発揮できるよう,最後の最後まで,

 小学校でがんばってきてください。

 みなさんの健闘をお祈りしています。

 
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学習指導要領 一般編(試案)=昭和22年版 に示された「学習指導法」(その3)

 ポイントになることを太字で示しました。

 初等教育と中等教育という分け方がいかに大事か,本当の意味で自覚のある人が取り組んでいるのが

 「小中一貫」でしょうね。そんなに簡単にいくわけがない。

 学習指導要領を読むだけでわかるのですが,

 「義務教育」という形でひとくくりにされるこの仕事は,そもそも「発達に即して」「経験に即して」と言っている段階で,学校制度そのものが成立しにくいことに気づかないといけません。


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三 具体的な指導法はどうして組み立てるべきか


 以上のような学習指導のいろいろな問題を考えてみると,それらを通じて,具体的に指導法を組み立てて行く上に,考えておかなくてはならない幾つかの事がらが見出だされる。

1.学習の目的を自分の目的とするにも,学習についての意欲をよび起すにも,児童がみずから学んで行くにも,すべて,児童や青年の自学的な活動が求められる。だから,指導法の問題は,いかにして児童や青年の活動をその方向に起こさせ,また,それを続けさせるかが,その中心の問題となる。指導法とは,すなわち,このような方向を持つ自発活動を,どのように取り扱うかの工夫だといっても過言ではない。

2.しかし,この活動は,児童の発達によって異なったものが見られる。したがって,活動の取り扱い方は,児童の発達に即して考えられなくてはならない。

3.学習は一つの過程をとって進められる。そして,この過程の移り行きに従って,児童の動き方が違って来る。だから,児童の活動の取り扱い方も,学習の進行につれて,変わって来なければならない。

4.なお,学習には,児童のすでに持っている経験や,知識がたいせつな役割を持っているし,児童の活動も地域によって違うし,また,そういったことは,個人的の相違もあるから,以上のようなことを考えて行くにあたって,教師は直接に,自分の指導する児童について絶えず観察をし,その状態を確かめて行くことがたいせつである。

 これらのことを基にして,ここに,いっそう具体的に,指導方法をどんなふうに系統づけて行くかについて,参考になることを述べておこう。


(一)児童や青年の自発活動を考える

 先に述べたように,学習の指導は児童や青年の活動を,いかに取り扱うかが中心の問題になる。しかも,それは児童自身の積極的な,また学習の目的に合った活動を求めなくてはならない。すなはち,学習の目的に合った興味による自発活動を中心として,これを考えて行かなくてはならないのである。そこで,いまこの種の自発活動のおもなもの―特に生まれつき持っている活動―を考えてみると次のようなものがあげられる。

1.身体的な活動。

 児童や青年には,筋肉的な活動を喜ぶ性質がある。駆けたり,なわとびをしたり,飛んだりすることをおもしろがり,また歌いながら踊ったり,歩いたりするような運動のリズムを楽しむことは誰でもよく知っている。こういったものは,特に競争の要素がはいっている場合は,それでいっそう興味を感ずるが,そうでなくても,運動やリズムを持った運動をおもしろがる性質は,十分に認められる。われわれは,児童や青年の自発活動を,ここに求めることができる。この意味から,あらゆる運動遊戯―走る,飛ぶ,踊る,投げるなどの―に注意して,そこにねうちのある活動を,学習の指導において取り扱うことが,たいせつである。

2.好奇心を満足させる活動。

 児童や青年が,好奇心を満足させるために,懸命な活動をすることは,これまた,だれでもよく知っていることである。かくれているものをうかがってみる,物を分解してみる,不思議だと思うと手を出したり,質問したりする,といった活動がそれである。このような生活は,いわば,一つの求知心の動きであって,児童や青年の自発的な学習を動かして行く力として,極めてたいせつなものである。だから,学習指導の方法として,この種の活動を重んずべきことはいうまでもない。いわゆる,児童のいたずらと見られている,物にさわってみたり,つついてみたりするようなものから,いろいろな質問をするような動き,更には,児童の知的な発達に従って,調査すること,実験すること,書物を読むことなど,この種の活動として考えらるべき多くのものがある。これらは,いずれも,児童や青年が好奇心を起すことに根本があるので,学習の指導にあたっては,かれらを,そういう興味を起すような事情におくことがたいせつである。

3.社会的な活勧。

 児童には,すでに,幼い時から,おたがいにいっしょになろうとし,また,おたがいにつながりを求めようとする動きがある。児童が独りでいることを嫌い,他を求め,いっしょに話し合ったり,遊んだりする強い要求をもっていることは,だれでも知っている。このような,社会的な動きは,先に児童の生活として述べたように,一般として,幼い児童では,極めて小さい集まり―二人または三人―に過ぎないし,またその関係も浅い。おたがいは,だだいっしょになるというだけで,そのつながりは,しっかりはしていないのである。しかし年をかさねるにつれてだんだん,そのなかまの数も増して,四年ごろになると,たがいのつながりがはっきりして来る。そして,五年ごろには学級という集団さえわかるようになって来るし,青年期になれば,この要求はますます強くなって来る。―ただ女児では,この傾きが少し違っていて,一般として,そのなかまが小さい―このような児童や青年の社会的な動きや,その男女による相違や,更に,年齢によっての相違は,児童や青年の遊びについて観察すれば,よく知られる。社会的な活動は,かれらの生活を通じてみて,極めて著しいものの一つだといってよい。だから,この種の活動に注意して,これによって,学習を進めることは,極めてたいせつである。話すこと,聞くこと,話し合ひ(討議)をすること,手紙を書くこと,共同の遊び,共同の仕事,共同の調査など,いずれもこの社会的な活動として,注意さるべきものである。この社会的な活動は,ただ児童や青年の自発的活動として,他の活動とともに,学習指導において,取り扱うべきだというばかりでなく,それが,一つには社会的な活動の訓練となり,民主的な精神を植えつけて行く上に,大きい意味を持っていることは,注意すべきだろう。すなわち,児童や青年は,このような活動によって,おたがいが他人の自由を尊重し,人格を重んずべきことを学び,また,みずからの社会における責任を自覚するようになって行くことができる。たとえば,ひとの話しをよく聞き,自分の考えをよく話し,たがいに意見をはっきり話し合って,譲るべきはゆずり,仕事をいっしょにする時には,自分の責任をしっかり果たしながら,他人と力を合わせるといったことは,このような活動の導きによって得られるところで,どれも民主的な国民のたいせつな態度だといわなくてはならないのである。

4.ものをもてあそんだり組み立てたりする活動。

 児童には,好奇心から,眼の前にあるものに手を出してみたがる動きがあるが,同時にそれを手にしていじってみたり,形を変えてみたり,時には組み立てて何かを作ってみようとする動きがある。砂で山を作って,トンネルをあけたり,積み木に一生懸命になったりするのは,つねひごろ,われわれの見ている,児童の生活であるが,それがつまり,この種の活動なのである。これらの活動はまた児童や青年の自発的な活動として,学習を進めて行く上に,たいせつな働きを持つものである。しかも,これらは,児童や青年の思考を練り,工夫考案の能力をたかめ,手先の運動をたっしゃにするねうちを持っているのである。このいろいろなものを組み立てることや,また,いろいろなものを作ることなどは,この種の活動として,これまでも学習指導法のうちに取り入れられているが,これからも十分に注意して行くべきものということができる。

5.劇的な遊びの活動

 児童は幼いときから,ままごとや人形遊びに興じ,長ずるに従って,いわゆる劇的な遊びをしたがるものであることは,これまた,だれもが知っているところである。この動きは児童の自発活動として,また学習活動として,大きなねうちを持つものである。対話のようなものから,室内劇,野外劇などにいたるまで,このような活動としてあげることができる。

6.表現の活動。

 児童は,自分の見たことを絵にかいたり,感じたり考えたりしたことをしゃべったり,文章にしたり,時にはうたって見たりすることに興味を持っている。やや長ずれば,絵をかき,詩を作り,歌を作り,メロディを口ずさみ,論文を書くなど,さまざまな表現に,強い興味を持って動く。このような自発的な活勧は,児童や青年の学習に,大きい役割を持って働くことはいうまでもない。絵をかき,歌をうたい,曲を作り,装飾をし,詩や歌や文章を作るなどの美的な表現から,図をかき,表を作り,論文をかくような知的な色合いを持つものまで,学習指導の方法として,注意すべき活動がきわめて多いのである。

7.物を集める活動。

 児童や青年が,いろいろなものを集めることに興味を持っていることは,これまたよく知られていることである。千代紙や,絵はがき,切手のようなものから,時には,石ころや,紙切れのようなものまで,はじめはただ数の多くを集めることを楽しむが,長ずるに従って,色や形の違ったものを集めたり,何かの系統によって集めることに興味を持つ。この種の活動も,また学習の活動として,たいせつな意味を持っている。すなはち,貝がらを集めたり,こん虫を集めたり,植物のおし葉をたくさん作ったり,新聞の記事を集めたりするような活動は,学習活動を形作るものとして,注意すべきものなのである。

 以上述べたような,いろいろな種類の自発活動は,いわば児童に一般的に見られるものであって,これらは,ところどころでふれたように,もちろん,幼児から青年までの発達に従って,そのあらわれは異って見られる。たとえば,運動的な活動の一つとして,幼い児童はただボ-ルを投げて興ずるが,長ずれば投げたり受け取ったりして遊ぶだろうし,更に,青年期に近づくに従って,野球のような規則のむずかしい,しかも社会的なつながりの複雑な形の遊びになって行く。また,劇的な活動も,幼い時には,ままごとなどの形であらわれて来るが,長ずると,いわゆる劇としての形をもったり,実際の活動―炊事をするような―となって来る。積み木遊びも幼い時は,単純にただ積み重ねることに興味を持つが,やがて意味のあるものを作るようになり,更に長ずれば実際の小屋を建ててみるような,成人の実生活に近い営みをしようとするようになる。だから,これらの活動は,いうまでもなく,児童や青年の発達に従って,その学習活動としての形が違って来なくてはならない。われわれが,児童や青年の生活をよく見て,その自発的な活動に注意すれば,おのずから,どういう活動が注意さるべきであるかが,わかって来るに相違ない。上に述べたようなことは,ただその場合の参考であるに過ぎない。

*******************

 今では,こうした「活動中心」の指導で力をつけるには膨大な時間が要することが知られているが,このような「活動中心」で無理矢理に教科の「詰め込み学習」を行わせる「学び合い」のような,そもそも「学習指導」などとは呼べない代物も登場する時代になっている。

 おそろしいこの「学び合い」の指導法事例は以前にも紹介したが,一例を挙げれば,

 グループで教え合う。教卓の上には教師用の指導書を開いておいておくので,見たい人は見る。終わり。

 これで給料をもらっている「教科の専門職」としての公務員がいることがばれたら,それこそ教師バッシングはとどまるところを知らないものになるだろう。
 

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脳のせいにすれば仕事になる

 小学校では,姿勢が悪い子どもの増加が話題になっているという。

 家庭で机に向かって勉強をしているとき,親から「姿勢が悪い!」と注意された人はどのくらいいるだろう。

 年代別に見たら,どうだろう。

 昔から,「姿勢が悪い」=「やる気が足りない」のような考え方があった。

 「しゃきっとしなさい!」

 という言葉の裏には,

 「気持ちをしっかりもてば,おのずから姿勢はよくなるもの」

 という考え方があったものと思われる。

 最近では,姿勢が悪いのは

 「大脳前頭葉の発達が遅れているせいだ」

 という考え方があるらしい。

 また,「セロトニン神経が十分にはたらいていないから」とも考えられるという。

 背筋などの抗重力筋に緊張を与える役目をもったセロトニンは,太陽光を浴びることで増加し,それをもとにして夜にはメラトニンが生成される。メラトニンは,体温を下げて眠りを誘うホルモンだそうだ。

 夜にゲームをして光の刺激を受け続けると,メラトニンの分泌が抑制される。そして,昼に太陽の下で動いていない子どもたちは,原料であるセロトニンが足りない・・・だから・・・

 と親に向かって話していれば,「仕事」になる人がいる。

 権威が下がってありがたみがない教師から聞くよりは,

 お金を払ってきてもらった人から聞く方が効果がある。

 雇用の裾野を広げるという意味で,教育現場もそれなりの役割を果たしているようだ。

 専門家には,子どもを見て,

 セロトニン不足でそういう姿勢になっているのか,

 前頭葉に課題があるのか,

 即座に判定してもらいたい,というのが親や教師の願いだが,そうもいかない。

 最近,学力低下の問題でも,

 「そもそも子どもの脳の問題だ」ですまされてしまうようなケースが増えてきた。

 これはいわゆる「思考停止ワード」である。

 このような「脳の問題」をコツコツとブログで解説してくれている人がいて,

 「脳に課題がある人とはかかわるな」などと書いているが,

 こういうタイプの人間が,実は教師の中にも多い。

 「教育」という仕事につくには最も不向きな,子どもや親からすれば迷惑極まりない人々である。

 「教育」は,そういう課題がある人とどう付き合うか。

 そういう課題をどう乗り越えていくか。

 それを子どもや親と格闘しながら?探っていくのが教師の役割である。

 学校見学で参考になる一場面は,校庭で行われている集会である。

 その「立ち姿」で多くの部分がわかる。

 残念なのは「朝礼」がほとんどなので,時間が早くて見に行きにくい。

 しかし,教師の「立ち姿」で参考になるのは,この朝礼のときである,
 
 というのが20年の私の経験から言えることだ。


 まっすぐ立てない若者が増えているかどうか,

 企業の採用(面接)担当者にも聞いてみたい。

 

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学習指導要領 一般編(試案)=昭和22年版 に示された「学習指導法」(その2)

 今から振り返れば,昭和22年版の「試案」で示された学力観は,平成10年版のそれに近い。

 学習指導とは,児童生徒が行う学習に対する指導のこと,という表現をした方が分かりやすいかもしれない。

 さて,児童生徒の学習過程に沿って,どのような点に配慮して学習指導を行うべきなのか。

 下線は私が注目するために引いたものである。

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二 学習指導法を考えるにどんな問題があるか

 以上述べたような立場から学習指導の方法を工夫しようとすると,われわれはいろいろな問題について考えてみなくてはならない。いま,これを簡単に,学習の進められる道筋,すなわち,学習の過程に従って述べてみよう。

1.学習の進められる実情を調べてみて,その発端になるものを求めると,それは目的が知られるということである。学習は,この目的を知ることと,同時にその目的に向かって進もうとする意欲を持つことからはじめられるのである。そして学習がほんとうに進められるには,この目的が児童や青年自身の目的として,学習のはじめから終りまで持ち続けられ,意欲が,また,しょっちゅう動力として働くのでなくてはならない

2.こうして,学習の発端がつかまれると,児童や青年は,これによって自分の計画をたてて,これを試みるようになる。この場合,計画や試みは,かれらのすでに持っている経験や知識を基礎としてなされる。だから,この基礎になる経験や知識が正しく豊富であれば,学習はなめらかに進むが,そうでなければ進まない。ここに,学習の基礎となり素材になる児童青年の経験や知識の問題がある。

3.上に述べたような計画や試みは,児童や青年自身で営まなくては,真の学習とはいわれない。この計画や試みは,その思考活動によるのであるから,ここに,学習の指導を考える場合には,児童や青年の思考活動の本性の如何が問題となる。

4.児童や青年はこの試みによって正しい理解に達し,結局そこに一つの知識のまとまりなり,考え方なり,技術の形なりを形作るのであるが,学習は,これが更に習熟することによって,身についたときに,完成される。身につくに至らない場合は,その理解はくずれ,忘れられて,学習の効果はみとめられないことになる。ここに,学習の完成のために,練習ということのたいせつな意味がある

 いま次に,これらの問題からみて,指導の方法を考える上に必要と思われることを少しく述べてみよう。


(一)学習の目的と意欲

 学習は,どんな場合でも,何かの目的をもっている。だから,児童や青年が学習を進めるには,この目標を知ることが,第一に,たいせつになる。ただしかしこの目標を知るということは,「これを学ぶのだ」と知りさえすればよいのではない。かれらは,その目標を自分の目標として,自分のものにしなければならないのである。そこで,学習の指導をするにあたっては,児童や青年が,ほんとうに,その目標を自分のものとして取り入れるような方法を考えて行かなければならない。そのために,われわれは,かれらがどんな場合にそれを自分の問題として活動を起すかを知って,それを考えあわせて,自分の学習の目的をほんとうに知ることのできる方法を工夫する必要がある。たとえば,音楽を学ばせる場合に,児童のこれから学ぼうとする音楽を,美しく奏したり,うたったりしてみせて,児童に,それを学ぶことが自分にとってどんなに楽しいことかを感じさせたり,粘土細工を学ばせるときに,りっぱにできたものを見せて,児童を刺げきすること,などがその一つで,これらは児童や青年が,その身のまわりに,実際のものを見たり,聞いたりすることで刺げきされて活動する事実を知れば,当然考えられる方法といってよいだろう。

 このような事を考えると,それは当然,先にいった児童や青年が積極的な活動を起す動力になる学ぼうとする意欲の問題に関係して来る。つまり,かれらは学習の目的を知るだけでなく,それについての意欲を持たなければならない。この意欲は興味と関係し,そこに自発性が現れて来るのである。この自発性は,単に目的を自分のものとして学習を出発させる動力になるばかりでなく,学習のはじめから終りまで,学習進行の動力として,極めてたいせつな意味を持っている。もちろん,そうはいっても,学習の指導は興味の問題だけに左右されるのではなく,目的によっては,興味がなくても,これを進めなくてはならない場合もあるし,また,興味だけにひきずられて方向をあやまってはならない。ただ,ここでいうのは指導の方法を考える場合には,興味の問題,ひいては自発性の問題が極めて重要であるということを考えておきたいのである。

 このような点から,学習の指導法を考える場含には,児童や青年の興味,ないし,自発性がどういうところにあるかを知ることは,極めてたいせつなことであるが,いま,その一般のことを次にあげてみよう。

1.まず,児童や青年がみずから進んで学ぼうとする自発性の源は,その一つをかれらが生まれつき持っているいろいろな活動の興味のうちに見出すことかできる。そこで,学習指導の方法を工夫する場合,このような活動に注意して行くことがたいせつになる。この児童や青年の興味による活動の最もよくあらわれているのは,その遊びの生活である。というのは,遊びとは一つの活動によって生まれるおもしろさが次の活動を誘い出すような形のものであるから,そこに,かれらがどんな事に興味を持って活動するかがよく示されているのである。われわれは,この意味から,児童や青年の遊びをよく見て,その活動を指導方法のうちに取り入れて行くようにすべきである。たとえば,児童がものを組み立てたり,作ったりするような,いわゆる,構成的な遊びをするのを見れば,このような作ったり,組み立てたりする活動を,指導方法として取り扱っていくといったふうにである。

2.次に,児童や青年の自発性の源として考えられるのは,その生活での必要性である。ことに,やや成長した児童または青年になると,必要ということがよく感ぜられるようになるので,このことはいっそう著しい。たとえば,遊びに必要なものを作る時の態度,必要なものをなくした時のそれをさがす態度といったものを見れば,このことがうなずかれるだろう。こういうことを見れば,われわれは,児童または青年がどんな生活の要求を持ち,その要求を満足させるためにどんな活動をするかをよく知って,そのような活動を,指導方法を考える時に,取り入れて行くように工夫することが大切である。たとえば,絵本にある絵を見た児童に,そこに書いてある文字を読みたいと強く感じさせて,児童の求める心持を起させ,そこで文字を学ぶようにするといった工夫が求められるのである。

3.児童や青年の自発性は,かれらがある困難にうちかって,それに成功した場合にもあらわれる。幼い児童が苦心して高いところにのぼった時の喜び,書き取りのできたときの児童の喜びは,次の活動を自発的に起す大きい力となるものであることは,だれでも知っているところである。この意味で,学習指導は児童や青年の能力の発達を考え合わせなくてはならないのであって,能力からとびはなれた指導法をとって,いつも失敗をくり返させるようでは,自発性は失われることになる。そこで,われわれは,児童または青年の精神や身体の発達について知り,その個人による違いに注意して,指導方法を工夫することがたいせつである。すなわち,教材はもちろん,方法の難易についても,その成長や能力にふさわしいものを選び,いつも努力すればうまく行くという心持が持てるように,工夫して行くべきで,かれらはこれによって,いっそう自発的に努力するようになるのである。

 凡そ以上のようなことは,たがいに関係していることで,これを分けて考えることは,適当ではないとも思える。たとえば,成功の喜びは,遊びになって行く動機だといえるし,必要への努力は,遊びの中にみられるといえるのである。ここでは,ただ説明のために分けてみただけである。

 こうして目的を自分のものとし,学習の全体が自発的に営まれる事情を見渡すと,どれを見ても,児童や青年の生活活動に注意しなくてはならないことがわかる。先にかかげた児童生活の特徴のあらましは,その意味で参考になると思うが,教師はただこの表だけにたよるようなことなく,その地城の児童,または,青年の生活をよく見て,そこに以上のような点から見て,指導方法としてねうちのある活動をたくさんに見出だすことにつとめることがたいせつである。


(二)児童青年の経験と知識

 学習が進められるためには,その基礎になる知識経験を,児童や青年が持っていなくてはならない。というのは,結局学習は,この今までに持っている知識経験を基礎として,新しいものをつかんで行く働きだからである。たとえば,5+3を学ぶには,5や3の数観念,加えることの意味が児童にまえもってわかっていなければならない。これを無視して学ばせようとしても,学習は進まない。児童が学ぶのだということは,このような点に関係しても,考えられなくてはならないのである。

 このようなことから,学習指導の方法を考える場合には,次のようなことに注意する必要がある。

1.児童や青年の生活経験について注意すること。

 児童や青年の知識経験は,その生活から得られるものが多い。そこで,われわれはその地域の児童青年がどんな生活をしているか,そこでどんな知識や経験を得ているかを知って,それらに応じた指導をすることが必要である。たとヘば,理科の指導には,その地域で児童が経験する動植物や気象,あるいは機械などに,どんなものがあるかを見て,指導の内容や方法を考えなくてはならないし,交通機関について学ばせようとすれば,まず,児童の身ぢかな交通機関についての経験を基にしなくてはならない。鉄道のない地方では,自転車や,馬車や,牛車から出発して行く必要があるのである。

2.児童や青年のすでに持っている知識に注意すること。

 上のように,児童や青年の経験世界に学習を出発させることは,いわゆる知識といわれないものをも含んでのことであるが,知識といわれるものについても,もちろんそのことが注意されなくてはならない。たとえば,新しく入学した児童に算数を指導しようとすれば,これらの児童の持っている数観念がどんなものかを確かめて,それで,指導をどんなふうにするかを考えなくてはならない。もし,そういう知識が弱い場合は,指導のはじめに,いろいろと方法を講じて,その知識を確かにしておくことも考えなくてはならない。たとえば,ぼんやりした知識をはっきりさせるために,お話しをしたり,絵を見せたり,また思ひ出すような刺げきを与えたりするようなのも,かような方法の一つだし,遠足や見学などをするのも,この意味で必要な場合があるわけである。


(三)児童青年の思考の性質

 先に述べたように,児童がほんとうに学ぶには,自分でやり方の計画をたて,それをみずから試みて,それで理解するようにならなければならない。つまり,児童や青年が自分で考え,自分で試みて,一つの知識に達し,考え方に達し,技術に達しなくてはならない。このことは,学習の進められる中心の動きとして見のがしてはならないたいせつな点である。これまでの指導は,ともすると,この点を無視して,教師だけが活動して,児童や青年が自分で考え,試みるかどうかをかえりみないで,うわすべりでもなんでも,無理にもひっぱって行こうとし,そのために,かれらがほんとうには学ばないことが少なくなかった。われわれは,これからの学習指導において,この児童や青年が,みずからの活動によって学んで行くように注意することが特にたいせつである。

 このようにして,児童や青年みずから考え,みずから試みて学習することが欠くことのできないことだとすると,この考えたり試みたりする働きは,その思考の性質によってきまって来るのだから,学習の指導には,どうしても,児童や青年の思考が,どんな働きをするかを考え合わせなくてはならないこととなる。しかし,また,かれらの思考の働き方は,その発達によって違っているから,われわれは,この思考の発達について知って,そこから,学習活動を導いて行く道を見つけ出すことが必要になる。このことは,児童や青年が,毎日の生活で,どんな活動をするかをよくみれば,自然にわかることだが,参考のために,その発達の概略と,それにもとづく指導法の工夫について,簡単に述べておくこととする。

1.一二年くらいまでの児童は,先に第二章で見たように,いわゆる自己中心的で,普通にいう論理をたどって考えることをしない。物事を知るのは,やってみて知る,つまり行動で認識するものだといってよい。しかも,この行動は児童の興味によって出て来るのである。だから,このころの児童は,興味を持って行うことで,はじめて学ぶことができる。児童はこのような活動で,その身のまわりと融け合った一つの世界を作りながら,自分というものを見出だし,また自分とその世界との関係がわかって来る。児童は,こうして,ほんとうに学ぶのである。たとえば,積み木に興味を持って,いろいろやっている児童は,積み木と自分との間に,なんのへだたりもない。それと一体になった一つの世界を作っている。しかも,自分の思うように行ったり行かなかったりするところで,問題がわかると同時に,そこにあるいろいろな関係がわかって来る。そこで,ほんとうに積み木について学ぶことができるのである。

 こうしてみると,このころの児童の指導方法を考えるには,まず,なんといっても児童の興味に注意し,それから生まれて来る自発的な活動を見出だし,そこに児童の学習活動が営まれるように工夫することがたいせつである。

2.三年あるいは四年くらいの児童になると,自己中心的な傾向はやや脱けて来るので,簡単な論理のすじをとって考えることができるようにはなるが,なお行動によって物事を知ろうとする傾向は著しい。そこで,多少とも知的に考えるような指導方法もとり得るが,なお,興味によって生まれて来る行動によって学ぶことは,その学習の中心の動きとして考えて行く必要がある。したがって,ここでもなお自発的な行動に注意して,指導を工夫することがたいせつである。

3.五年以上では,その発達の上からみて,自己中心的な思考から離れ,論理的な考え方ができるようになるし,あながち,行動しなければわからないともいえなくなる。

 このころから,児童の興味は多少とも知的なものに向かって来る。したがって,その活動も,単に行動的なものばかりではなくなって来るわけである。そこで,このころ以後では,行動によって学ぶといふ方法のほか,いわゆる知的な活動―たとえば,説明を聞くとか,調査をするとか,話し合い(討議)をするとかいうような―によって学んで行くことを,指導の方法に取り入れることができるようになる。そして,この傾向は,青年期が近づくに従って著しくなって行くのである。だから,中学校の生徒の指導方法としては,行動的な学習とともに,いわゆる知的な活動による学習が,いろいろ考えられることが当然なのである。

 以上のようなことは,もちろん,発達に個人差があるので,ただ単純に年だけにたよって考えたのではこまるが,一応のことは,これらによってわかると思う。要は,児童や青年が,その発達に応じた自発的な活動によって,不自然でない学習をし,それによって,ほんとうに,みずからのものになる学習をするような指導方法を,工夫するようなことがたいせつなのである。


(四)練習

 児童や青年は,上に述べて来たように,まず学習の目的を自分のものとして,それに到達しようとする意欲をもって,一つの自発的な活動を起し,それによって,試みを重ねて,理解に達するのであって,ここに,知識や考え方のまとまりができるのである。しかし,それをそのままに放っておくと,その理解はくずれて,再びわからなくなってしまう。ここに練習が必要になり,練習によって,これが身についたものになって来るのである。学習は,これではじめて,完成したということができ,習熟の域に達するのである。

 このような練習には,そのことを,だだそのままくり返して行く形のもの―たとえば,書き取りの練習とか,計算の練習とかのように―もないわけではないが,単純なくり返しは,多くの場合,むしろ無駄な努力になりやすい。学んだことを,直接に,いろいろなことに,適用してみるようなことが効果が多いのである。たとえば,ことばを学んだら,そのことばを使って,いろいろな文章を作ってみるとか,一つの形の面積の計算法を学んだら,それを,いろいろな実物の形の面積の計算に適用してみるということが,真に練習の効果をあげる方法となる。いわゆる,応用こそ,練習のたいせつな方法なのである。これらについても,指導法を考える場合に,注意しなくてはならないものがあるのである。

 このような練習の形を考えて,指導法を工夫するについては,なお,次のような注意が必要であろう。

1.同じことをくり返して練習する場合には,それを一時に長い時間練習するよりも,短時間長い時期にわたって練習する方が効果が多い。たとえば,運針の練習,計算の練習などをする場合には,できれば,毎日数分の練習を長く続けることが望ましい。

2.この種の練習を,長期にわたってする場合には,とかく,児童でも青年でも,興味を失いやすい。そこで,この興味を持ち続けるような工夫をすることが,たいせつである。たとえば,毎日の成績を記録して,その進歩を自分で知りながら,勇気づけられて練習を続けるといった工夫がいるのである。

3.応用的な練習も,種類によっては,できる限り少しずつ,長期にわたって練習をするように工夫することが望ましい。たとえば,一つの数理の理解についての応用問題を,時々課して,練習を重ねるようなのがそれである。しかし,この種の練習は一つの複雑な活動を工夫することによって,児童や青年の自発的な活動を促すとともに,深く身につくようにすることも,考えらるべきである。学習したことを劇化してみるとか,応用的な問題について話し合い(討議)をしてみるとかいうような方法がそれである。

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 当時の教育の理念,学習指導の理想がすばらしいものであることは言うまでもありません。

 今でもこのような理想は大切にすべきです。

 しかし,それを「学校」という場で実践させることがいかに難しいものか。

 教師に限らず,親も,企業の研修担当者も,みんなが感じていることでしょう。

 興味を持ち続ける工夫として「記録をつける」というのも,ダイエットなどの例を出すまでもなく,実践している人はいるでしょう。

 しかし,「学校」は,結局のところ,そういう「工夫」でも「強いる」結果になってしまう場所です。

 「自発性が大事」なのですが,それがなかなか発揮できないものだから,「学校」というものが必要になる。

 こうした教育の理念なり理想なりは,やはり「理想」なのです。

 現代では,こういう「理想」に最も近いことをしているのが小学校ですが,

 この通りにやろうと思えば思うほど,「力がつかない」という現実に襲われる。

 一番わかってほしいのは,まずは「親」でしょうか。

 そして,「子ども」自身です。

 このような教育の「理念」を理解できるような子どもが集まり,それを実践できる能力がある教師が集まり,学校での活動に理解を示せる保護者が協力してくれる,そういう環境をつくるのが,

 教育行政の使命なのでしょう。


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学習指導要領 一般編(試案)=昭和22年版 に示された「学習指導法」(その1)

 学習指導の基本は大学の教職課程で学ぶことができる。

 ここでは,敗戦から2年後の昭和22年に出された学習指導要領(試案)の「一般編」から,学習指導の方法に関する一般論を紹介しながら,現代の教育でも取り組みたいことを述べてみたい。

 下線は私が引いており,番号がついている内容について,後でふれることとする。

 まずは,学習指導の目標について。(「第四章 学習指導法の一般」より)

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一 学習指導は何を目ざすか

 学習指導とは,これまで,教授とか授業とかいって来たのと同じ意味のことばである。このことばを聞いて,その意味をごく常識的に考えると,知識や技能を教師が児童や青年に伝えることだと解するかも知れない。しかし,教育の目標としていることがどんなことであるかを考えてみれば,ただ知識や技能を伝えて,それを児童や青年のうちに積み重ねさえすればよいのだとはいえない。学習の指導は,もちろん,それによって人類が過去幾千年かの努力で作りあげて来た知識や技能を,わからせることが一つの課題であるにしても,それだけでその目的を達したとはいわれない。児童や青年は,現在ならびに将来の生活に起る,いろいろな問題を適切に解決して行かなければならない。そのような生活を営む力が,またここで養われなくてはならないのである。それでなければ,教育の目標は達せられたとは言われない。

 このような学習指導の目ざすところを考えてみると,児童や青年は,現在並びに将来の生活に力になるようなことを,力になるように学ばなくてはならない。そこで,われわれは,その指導にあたって,このような生活についてよく考えた教材を用意して,これを将来の力になるように学ぶよう指導しなくてはならないのである

 では,このような学習の指導を適切にするには,どうしたらよいだろうか。この問に対して第一に答えなくてはならないのは,このような教材をこのような学び方で学んで行くように指導するには,まず「学ぶのは児童だ」ということを,頭の底にしっかりおくことがたいせつだということである。教師が独りよがりにしゃべりたてればそれでよろしいと考えたり,教師が教えさえすればそれが指導だと考えるような,教師中心の考え方は,この際すっかり捨ててしまわなければなるまい。

 次に,第二に答えなくてはならないのは,児童や青年をそういうふうに学ばせて行くには,かれらがほんとうに学んでいく道すじに従って,学習の指導をしなくてはならないということである。児童や青年がほんとうに学ぶには,一つの道すじがある。学習の指導はこの道すじに従って,その要点をとらえてなされなくてはならない。

 このようなことを考えてみると,ほんとうの学習は,すらすら学ぶことのできるように,こしらえあげた事を記憶するようなことからは生まれて来ない。児童や青年は,まず,自分でみずからの目的をもって,そのやり口を計画し,それによって学習をみずからの力で進め,更に,その努力の結果を自分で反省してみるような,実際の経験を持たなくてはならない。だから,ほんとうの知識,ほんとうの技能は,児童や青年が自分でたてた目的から出た要求を満足させようとする活動からでなければ,できて来ないということを知って,そこから指導法を工夫しなくてはならないのである。

 以上のような見方から,ここに学習指導の方法について述べてみたいと思う。この委員会の案は,いわば,一つの試案に過ぎないのであるが,これから,これを手がかりとして,実際家各位が実地の経験による協力をおしまないならば,やがて完全なものに近づくことができようと思う。

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 ①,② 「生きる力」を身に付けさせることが大切であることは,半世紀以上前から言われていることである。
 
  現在では,「総合的な学習の時間」の指導がこれに該当する。果たして,趣旨どおりの教材が準備されているかどうか。

  「ゆとり教育」が出てくるころから,さかんに言われるようになったことである。「詰め込み教育」が問題だと。

  これは,教師の「教え方」に問題があったのであって,学習指導要領の示す内容に問題があったわけではなかった。

  この点の誤解がまだ存在する。というか,理解されていない状況が続いている。

  だから,新しい学習指導要領に変わっても,同じような混乱が繰り返されるだけである。

 ⑤,⑥ ここに,学習指導法の大原則が示されている。

  分かりやすいたとえを用いれば,「教科書」読むような学習ではなく,「教科書」に書かれているようなことを自ら調べ,まとめ,理解する,そういう学習が求められているわけである。

 「教科書」学ぶ・・・というレベル以上のことを児童生徒はしなければならない,ということである。

 「そんなことができるか!」という話なのだが・・・。(その2に続く)

  
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学習を「破壊」しているのはだれか?

 「君たちはサッカーを破壊している」・・・これは,FIFAクラブワールドカップの準決勝で敗れた中国のチームに向けて,ドイツ人の記者が語った言葉だそうです。

 さらに,「中国とドイツのサッカーの差は20年はある」「守ってばかりで,勝ちたくないようだった」との言葉も。

 これを読んで私がすぐにイメージしたのは,

 中学校で多くの教師がしている社会科の授業のイメージです。

 「たくさんのことを教えること」は,教師側にとっては「守り」の授業。

 「教えたんだから,理解できないあなたが悪い」という生徒への「言い訳」を準備しているに過ぎないかもしれない授業。

 では,「攻め」の授業とは何か。

 それは,生徒の「学習」を保障する授業。

 生徒の「学習」とは何か。

 それは,歴史の授業であれば,

 「歴史的事象の意味・意義や特色,事象間の関連を説明したり,課題を設けて追究したり,意見交換したりするなどの学習」がその一例です。

 生徒がうまく連携を取り合い,ゴールに向かってシュートを放つ。

 たとえ「得点を決める」ことはできなくても,シュートが打てない授業では,「学習」にはなりません。


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学習指導要領・社会科編Ⅱ(試案)=昭和22年版 に示された現在の高1・社会科の学習活動例

 今回が昭和22年にイメージされた「社会科」の総仕上げ。

 第10学年・・・現在でいう高校1年生が学ぶことを想定していた内容です。

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単元一 市場・仲買い業者・貸し附け・取引所及び経済的企業は,われわれの経済生活においてどんな機能を果たしているか。

~学習活動の例~

(一) どんなところからでもよいから,日本の国民所得についての知識を集めること。収入源,平均家庭の収入など,国民所得の平均と,自分の地方のそれとを比較すること。

(二) 労賃,株の配当,職務の提供(医師・弁護士など)によって収入を得ている人々の実例を見出だすこと。

(三) 自分の地方の一定の範囲を限って調査を行い,無収入者を(類型により)表にしてみること。

(四) どこからでもよいから,役に立つ知識を得て,自分の地方のおもな職業と,その職業に従事する人々が通常受けている収入のおよその額とを表にすること。その表を,日本全体としての同様の表と比較すること。

(五) 自分の地方の人々の収入が,どのように消費されるかを明らかにするため,調査すること。わが国の平均所得に関する数字を得ることに努め,この所得を支出する正常な方法について,学級で討議すること。一家庭の生計は,どれくらいが満足すべき水準と考えられるかということをも,討議すること。満足すべき最低生活水準に必要な一定品目とその量とを示し,その価格をきめ,平均所得を基礎として,それらの品物がどれくらい手に入れられるかを明らかにすること。満足すべき最低水準の生活必需品の表を作り,地理その他の教科書から,それを生産するためのわが国の天然資源について,知識を得ること。どの程度まで必需品が実際に得られるか,その大略を明らかにすること。日本は,表中のどの項目について,全人口化対し十分に供給し得ると考えるか。国は,輸入品に対し,どんな余剰物資で支払うことができるか。

(六) 手工業の方法が用いられている家庭や小工場をたずねること。生産の質や量,労働者の収入,労働条件などについて,手工業の方法と工場のそれとを比較すること。手工業はどの程度まですたれて来たかを,明らかにすること。

(七) 工場に行って,近代的な機械の活動を観察すること。短時間に多量の製品を生産することのできる機械の見本・写真などを集めること。人が手で同じ仕事をするのに要する時間数を機械の生産と考え合わせて比較すること。

(八) 日本で,市場はいつごろ発声したか。奈良(なら)時代,鎌倉(かまくら)時代,室町(むろまち)時代及び江戸時代には,どんな市場があったか,そこでは,どんな品物が取り引きされていたか,以上のことがらについて,市場の分布図を書き,また,市場の歴史的な発展を作文に書いて報告すること。

(九) 近隣に,二日市とか五日市とかいう地名があれば,それは,昔の定期市のたった地点が地名となって残っているものであるから,そこにいって,その立地条件,市場の歴史,取り引きされた品物,集まった人間の地理的範囲などについて調ベ,現在はどうなっているかも考え,学級に報告すること。(県史,地方に関する古文書,古老からの話などによるがよい)。

(一○) 附近に歳の市や縁日の市などがあったならば,その歴史的な事情,立地条件,交換物資,商人はどの方面からくるか,それが現在の生活にどんな役割を果たしているかなどについて調ベ,学級に報告すること。特に古老などについて,昔の市と現在のそれとを比較して,話を聞くこと。

(一一) 常設の市場にいって,そこで売っている品物,価格及び市場に品物がはいってくる場合,その出荷方法,出荷範囲,配給方法などについて調ベ,それが,われわれの経済生活に対する意義について,学級で討論すること。

(一二) 露天市場について,そこで売っている品物・価格・組織などについて,調べること。特に封建的な親分・子分の関係について調べ,その可否について,学級で討議すること。

(一三) 百貨店が品物を入手し,販売するまでに,どんな方法が採られているか。百貨店が現在の経済生活に対して果たしている役割について,学級で討議すること。

(一四) 消費組合の歴史や機構・機能について調ベること。

(一五) 魚市場や野菜市場にいって,その評価方法につき話を聞くこと。

(一六) 職業(労働)安定所の人を招いて,その組織や機能,一年間の就業実績に関し話を聞き,職業(労働)安定所をもっと能率的に働かすためにはどうしたらよいかについて,学校で討議すること。

(一七) 市場に対して政府がとっている政策について,経済学者から講義をしてもらうこと。

(一八) 問屋について,その歴史・機能及びそれが当時の経済界に果たしていた役割に関し,作文を書いて報告すること。

(一九) 統制組合,統制会社をおとずれて,物資の統制はどういうふうに行われているか,現在,物資は相当横流れしているが,それは機構にどんな不備があるかを調べ,それをもっと効果的にするにはどうしたらよいかについて,学級で討議すること。

(二○) 現在われわれの経済生活に対して,ブローカーはどんな役割をしているか,それは日本の経済再建に対しどんな得失があるかについて,討議すること。

(二一) 農業会の役員を訪問し,農業による物資の売買・配給・所有工場・金融のことについて,できるだけ調べること。

(二二) 自分の町や村の小売業を調査し,そのなかで,農業生産品の売上高の占めている割合は,全体のどれだけかを明らかにすること。五つの農産品について,数箇月間における小売値段を示す表をつくること。農民が買わなければならない品物の価と,それらの値段とを比較すること。

(二三) 日本における近代産業の発展に関する文献を読むこと,例えば織物工場の設置,製品,各種産業の成立,それが消費者の手にわたるまでにどんな径路をとるかを調ベて,学級に報告すること。

(二四) 政府の経済政策,例えば,経済安定本部や物価庁などの活動について新聞記事を勉強すること,できればそこの人を招いて話を聞くこと。

(二五) 自分の家で通常用いられている品物について,それがどのような径路をたどって入ってきたかを調べること。製造,卸売及び小売りまでの経過,即ち商品の出所,原料の価格を調ベ,生産価格と消費者価格を比較してみること。

(二六) 衣食に関する商品の一つを取りあげ原料価格,労貸,運賃などをできるだけ正確に算定してみること。

(二七) 運賃が,家庭で購入する商品の価格に及ぼす影響を明らかにすること。現在の商品の価格を戦前のある時期の価格及びその時期の運賃と比較してみること。輸送組織を改良する可能性について討議すること。

(二八) 現在の各家庭の生活費と,戦前のある時期(昭和五年ごろが適当である)のそれとを比較し,現在の生活を合理化するためには,どうしたらよいかという問題について,討議すること。

(二九) 町や村の人たちが小売市場で購買する品目,その価格を,思いつけるだけたくさん表につくり,あらゆる方面から手をつくして,同じ品物の一箇月前,六箇月前,一年前,五年前の正確な価格を入手して,商品ごとに価格の変化を説明し,それを供給の変動と関連させてみること。物価指数について,先生から話を聞くこと。

(三○) 自分の町の小売業のもうけを調べること,農夫が,生産価以上の値段で自分の生産品を売ろうとする状況,くつ屋が,同じく高く売ろうとする状況など正確な数字が得られる場合には,種々の品目について利益の歩合いを算定してみること。

(三一) 自由価格は,何を標準にして決定されるか,需要と供給の関係がら,調査討論すること。米の自由価格の変動を調ベ,その理由を考えること。附近の市場について,その種類・組織の機能を明らかにするために委員会をつくること。その詳細な報告を得て,市場の価値及び改良案を,討議すること。

(三二) 自分の市・町・村の小売販売で,商品が掛け売りされている程度を明らかにすること。適当な品物の値段について現金販売と掛け売りの場合の相違を調べること。

(三三) 物便の変動の表,主要物資生産高の変化の表,及び通貨発行高・銀行預金高・貸出し高の表を作製し,その相互関係を調べること。「グレッシャム」の法則について,先生から話を聞くこと。

(三四) 価格統制について政府の施策を調ベること,食糧品の取り扱いについて,法律あるいは規定があるかどうか,あれば,それらの性質を調ベること。

(三五) 貸付金の利子,株式の配当率などを,いろいろな方面からできるだけ多く集めて比較し,学級に報告すること。

(三六) 日本における信用機関について,できるだけ勉強すること,利まわりに注意して,貯金したり投資したりするために,町につくられている施設を調査すること。

(三七) 自分の町の銀行の位置と名を示し,銀行員の仕事を調査すること。銀行に勤めている人を学級に招き,銀行業務の技術について,説明してもらうこと。銀行の営業種目について,表をつくること。銀行を町の役に立たせる方法について,論ずること。自分の学級で,仮の通貨を発行し,銀行を設立して,実際に行われている方法で,それを運用してみること。利率を調ベ,自分の町の生活上信用の演ずる役割を調ベること。郵便局の業務のいっさいを表につくり,電報をうったり,為替をくんだりする手続き,その他を実習してみること。郵便局と銀行の仕事とを,比較してみること。

(三八) 日本における銀行発達史の要点を書いて,報告すること。それを学校に読んでもらうために提出すること。

(三九) 江戸時代の両替商の歴史を調ベ,報告を書くこと。両替商は,明治時代になってから,どういう近代的な企業を始めたか。

(四○) 生命保健や損害の保険は,どんな点で役に立っているか。また,その種類や,組織や機能を調ベること。信託会社・信用組合・無尽会社とは,どんなものか,いろいろな方法で,その組織や機能を明らかにすること。保険のことについて,専門家から講義を聞くこと。

(四一) 現在流通している各種貨幣の見本を集めること。日本の戦前の貨幣制度の知識を得て,比較すること。自分の家族で現金取り引きでないものと比較してみること,貨幣の用途を明らかにするため討議すること。

(四二) 日本における大きな産業会社の起源及び歴史のあとをたどること。大きな産業会社が国家にもたらした利益と,会社によって引き起された悪弊とについて,論ずること。同一商品に対する大規模の生産と小規模の生産の優劣を例にとり,それを比較することによって,資本の集中について討議し,それと関連して,財閥会社の発達を調査研究するにと,大企業の発展を,特定の企業について調査し,その発展の経過の表をつくり,さらに,それが国民経済及び世界経済に及ぼす影響について,討議すること。

(四三) インフレーション,デフレーションとは何か,また,その原因をいろいろの人に聞いて調ベ,その経済生活全体に及ぼす影響を,調査してみること。これらの現象で,歴史上著名なものについて,勉強すること,前大戦後のいわゆる恐慌とは,どんなものであったか。種々の資料を調ベ,その対策について専門家の意見を聞くこと。

(四四) 質屋について,質入れ品物,融通金額,利子,質に入れる人はどんな収入程度の人たちかということ,などについて聞き,それが,現在の生活にどんな役割を果たしているかを考えてみること。

(四五) 質屋の歴史を調べること,できれば中国,朝鮮のそれについて,専門家から話を聞くこと。また,それに関する文献を学級で読むこと。質屋は必要であろうか,またそれはわれわれの経済生活の正常な部分だろうか。

(四六) 昭和二年発布の銀行法を学級で読み,銀行について,その定義や,その許されている業務,禁止されている事項などについて,研究すること。

(四七) 高利貸の利率附加の方法につき,その道の人に調を聞くこと,また,高利貸の存在意義,可否の点について,学級で討議すること。

(四八) 自分の町の銀行の意義,一箇月にどれくらいの資金が,どんな事業に融通されているか,また,預金はどのくらいあるか,それによって,町や村の経済状態を考え,それについて報告を書くこと。

(四九) 日本における株式取引所の歴史について,報告を書いたり,口頭で報告すること。

(五○) 株式取引所の人,または株式にくわしい人を招き,取引所の機構・機能・取引方法・取引物資及びおもな証券の種類などについて,話を聞くこと。

(五一) ロンドンのロンバート街及びニューヨークのウォール街は,世界的金融市場であるが,それが世界の経済界に及ぼす影響について専門家から話を聞いたり,その機能や影響について,書物によって勉強すること。

(五二) 日本における資本主義の発展について,専門家から話を聞いたり,広く本を読んだりすること。

(五三) 企業の社会化ということについて,専門家から話を聞いたり,本を広く読んだりして,これまでの日本の企業について,特に社会化の得失を主題として,学級で討議すること。

(五四) 自由経済の長所と短所とについて,できるだけ多くの意見をまとめて,討議すること。独占企業には,どういうものがあるか,それがどうしてできたか,どのような影響をもつかなどについて,先生の講義をうけ,その長短,必要の有無,国民に対する利害などを,論じ合うこと。

(五五) ある生産企業体について,その会社が生産を行うためには,どんな要素が必要かを調ベ,自然・労働・資本の三要素が,業種によってどんな割合を占めるかを調査し,表をつくること,また総収益が,どんな部面に,どんなに分配されているかを,実際について調べ,おもなものについて,その割合を調査すること。

(五六) 最寄りの倉庫に行き,倉庫業とは何か,その仕事にはどんなものがあるかを調査すること。運搬業について町の組織を調ベ,倉敷き料及び運賃と小売り価格との関係を,ある製品について,明らかにすること。

(五七) 自分の町,または近隣の生産会社の表をつくり,そのいくつかをたずねること。いろいろな型の生産を研究するため,種々の委員会を組織すること。直ちに調査するに先だって,その産業について,十分研究しておくこと。学級の者が,興味をもっている問題の表を作り,その調査を進めること。例えば,各産業企業について,原材料の出所,製品を生産する工業の問題,商品の市場,機械生産の過程,手工業生産の過程,会社に対する財政的援助,広告,産業に影響する政府の統制,生産品配給の方法,労働問題などを,研究すること。委員会の仕事がすっかり終れば,各委員会は,学級に報告すること。どの報告についても,学級で討議を行うこと。学級への報告に当たって,通常,絵入りその他のわかりやすい資料を添える必要がある。

(五八) 産業革命について勉強し,簡単な世界地図によって,それが全世界及び日本へ波及した状況を示すこと。他の諸国における重要な工業の進歩について,おのおの報告を用意して,学級に提出すること。日本で現在使われている多くの機械の起源をたどってみること。綿繰り機・紡織機・蒸汽機関などの発明を論ずること。日本における産業革命の功罪を論ずること。産業革命によってどんな問題がもたらされ,未解決のまゝになっているであろうか。


単元二 われわれの経済生活に対して,政府はどんなことをしているか。

~学習活動の例~

(一) 自分たちに関係のある経済史の上の重要な出来事について,先生から話を聞くこと。またいろいろな書物,雑誌その他から,日本の過去の経済生活について,知識を得ること。過去と現在の経済生活を比較すること。

(二) 自分の家の一箇月または一年の収入と支出とを記録しておき,どの程度まで自給自足できるかを調ベて,報告すること。

(三) 自分の部落または村内で,自給自足はどの程度まで行われているか。また自給自足できる品物にはどんなものがあるかを調ベて,報告すること。

(四) 自分の村から近隣の都市に,どんな品物を,どれくらい出しているか,また,都市から,どんな品物を,どれくらい受けているか,その間の収支はどうか,輸送機関及びその賃銀はどうかを調ベて,報告すること。(都市の生徒はその逆を考えてみること)。

(五) 明治のはじめから,外国との貿易に,日本からどんな品物を,どれくらい出し,国からどんな品物を,どれくらい買っていたかを発達史的に調ベて,作文をつくること。との作文を学級に読んで聞かせ,それにもとづいて,学級討議を行うこと。

(六) 農業に関する官庁や団体をおとずれ,自分の村に対して,どんな施策が行われているかについて,話を聞くこと。

(七) 農業会や水産業会や森林組合などをおとずれ,事業の性質について話を聞き,集めた資料にもとづいて,さらに自分の村を発展させるためになし得るいろいろなことを,学級で討議すること。

(八) 附近の農業学校・農事試験場・水産試験場・研究所をおとずれ,そこではどんなことを研究しており,それがどの程度具現されているかについて話を聞き,それをまとめて報告すること。農業学校や,農事試験場などは,どのようにして農業技術の改良について,農民の力になっているだろうか。

(九) 最近五年間の農産物の公定価格とやみ価格とを調ベ,グラフに表わして報告すること。

(一○) 政府による農産物の配給は,どの程度に需要をみたしているか,不足分を各家庭ではどうしているか,不足分の買い出しは,どんなものを,どうして行っているか,配給の改善についてどうしたらよいかなどを,学級で討議すること。

(一一) 青空市場で,農産物の種類・価格,その移入径路などを調ベてみること。

(一二) 商・工・鉱業に関する官庁,例えば商工省・地方商工局・県庁の商工課,鉱山監督局などをおとずれ,それぞれの施策について話を聞くこと。

(一三) 日本の主要工業について知識を集め,製品の価格,国内消費量,国外輸出量について,統計を作って報告すること。

(一四) 附近の土揚や鉱山を見学すること。

(一五) 附近の経済関係の専門学校の先生を招いて,統制経済と自由経済及び計画経済について,講義してもらうこと。その際,特に社会主義的計画経済について,理解を深めること。

(一六) 交通関係の官庁や団体をおとずれ,一般に交通についての話を聞くこと。ある問題を選んで自分の地方によい影響を与えるようにその問題を解決する方法について,討議すること。

(一七) 最近十箇年における国有鉄道及び国道の増加を,グラフに表わして報告すること。それは,どんな問題を生ぜしめたろうか。これは国民生活をどのように変えたたろうか。

(一八) 交通に関する規則――道・自動車・車・道路などについて,できるだけくわしく調べて,学級に報告すること。

(一九) 貨幣使用の発達の歴史を調べ,作文を書くこと。

(二○) 自分の銀行・信託会社・農業会・郵便局をたずね,村の財政状態について知識を得ること。

(二一) 政府の物価対策につき,物価庁や経済安定本部の当事者や県庁の経済関係の人を招いて話をしてもらうこと。新聞やその他の出版物から,物価統制について知識を得ること。物価統制の目的は,どこにあるのだろうか。

(二二) 近隣の代議士を招き,予算と決算につき,最近の議会のそれをもとにして,簡単な説明をしてもらうこと。

(二三) 租税の種類を調べること。自分の村,あるいは町では,どのような租税が,一年間にどのくらい,支払われているか。村の予算と決算はどうかにつき,報告すること。予算表に表われている費用が,村民にどんな恩恵を与えるかを明らかにすること。

(二四) 官営の企業,例えば塩・たばこなどによる収入が,どの程虔政府財政に役割を果たしているか,最近五年間のそれを統計に作り,報告すること。

(二五) 政府は,繊維製品の統制を,どのようにして行っているか。近くの繊維統制会などに行って話を聞くこと。なぜ配給制は必要か。自分の地方ではその目的通りにうまく行われているだろうか。

(二六) 食糧の統制について,食糧営団をおとずれ,詳細に話を聞くこと。食糧の不足分に対しては,どうしたらよいか。各自で調ベ,学級で討議すること。

(二七) 自分の村の供出量と消費量を調ベ,需給関係はどうなっているか,また供出を理想的に行うにはどうしたらよいか,それは収穫量によるべきか,耕地の質を考慮して,あらかじめ割合を決定しておくべきか,などについて討議し,結論を得て学級で発表すること。

(二八) 住居に関し,一般にその統制及び法規はどうなっているか,なお戦災都市住居の復興に対して,政府は,どんな具体的な施策をすゝめているか,戦災復興院・建築会社などをおとずれて特殊な問題について質問し,話を聞くこと。住宅問題についての対策を,学級で討議すること。

(二九) 最近・数箇年の間に,公定価格は幾度か改変されているが,その変化の原因である社会的,経済的事情について調べること。公定価とやみ価格とのへだたりについて,なぜそうなるのかを討議すること。対策としてはどうしたらよいか。

(三○) 日本経済民主化の出発点は農業の近代化と,農民の生活水準の向上にある。現在及び将来にとって農民が多すぎることは一つの問題であるように思われる。自分の村の耕地と農民の数によって,ひとり当たりの耕地面積を算出し,その過剰人口に対して,附近都市の工場に収容能力があるかどうかを調ベ,なお余剰があるときは,これをどうするか。この問題について十分知識を得た後,学級で討議し,結論を出して報告すること。

(三一) 自分の村に未開発の土地がどのくらいあるか,その開発によって過剰農村人口は,どの程度緩和することができるか,詳細な調査を行った後,学級討議にもとづいて開発計画を立て,これを村役場,あるいは県庁に提言すること。

(三二) 経済の民主化の内容につき,近隣の高等専門学校の先生を招いて,話をしてもらうこと。経済の民主化の最も重要な問題の一つを選び,いろいろなところからその問題について知識を得た後,それについて討議すること。

(三三) 世界経済への参加は,将来許されるであろうが,その際,日本が世界の経済に寄与するにはどうしたらよいかを学級で討議研究して,報告すること。

(三四) 日本の満足すべき最低生活水準と考えられるものについて明らかにすること。各自の家の最低生活費はどのくらいを要するかを調ベて,学級に報告すること。自分の地方の普通一般の家庭は,最低生活水準にどのくらい近いだろうか。

(三五) 過去の日本の従業員の不合理な状態について,学級で討議すること。今後それに対して,どんな対策がなされなくてはならないかを調ベ,作文に書いて報告すること。

(三六) 労働組合法について,また,現在しきりに起っているストライキの問題について,学級で討議すること。従業員と雇よう主とは,いすれもどんな権利と義務とを持っているか。このごろストライキが起ることにはどんな理由があるだろうか。

(三七) 経営管理・経営協議会・資本攻勢などという,現在の社会上の問題になっている事について,説明してもらうこと。

(三八) 日本の現在直面している大きな問題の一つは,金融財政の建てなおしである。この点に関し,だ換券・不換紙幣・金本位制・健全財政などの問題について,近隣にいる経済学者を招いて,講義をしてもらうこと。

(三九) 日本においては,農業と工業との均衡は重要な問題である。いろいろのところからこの問題について知識を得,学級でそれについて討議すること。

(四○) 農地調整法を,学級で研究討議すること。自分の村の地主の数と,その所有反別及び小作人の員数を調ベ,農地調整法によって,自作農は,どの程度,創設できるかをくわしく数字に表わし,報告すること。

(四一) 自村の農村人口が過剰である場合,それが,牧畜業や蚕業などにどの程度転換できるかを調ベて,報告すること。

(四二) 消費組合の目的と働きについて研究すること。従来の仲介業者を通した不合理をどの程度排除できるか。各自が,健全な消費組合の発達を計るには,どうしたらよいか考えること。

(四三) 貿易は,わが国の将来にとって死活の重要問題である。将来,わが国から輸出され得るものは,どんなものが,どの地方に輸出されるか,また輸入物資としてはどんなものが,どの地方からはいるか,貿易再開のときにわれわれがとるべき国際信用の問題などについて,作文を書いて報告すること。

(四四) 日本の行政制度については,これまで種々の非難があった。これから日本の経済を再建するために,これをどうしたちよいか,学級で討議し結論を出して,先生に報告すること。

(四五) 近年における日本人の生活水準は,次の表の通りである。この表にならって,現在の日本人の満足すべき最低生活水準の表を作ってみること。またそれを維持するにはどれだけの収入が必要か。一家平均五人として算定してみること。

(四六) 日本の産業経済の再建のためには,徹底的な国土計画が必要である。この問題について,できるだけ多くのところから知識を見出だし,また読書すること。それはどうしたらよいかについて,学級で討議し,各自作文を書いて先生に報告すること。

(四七) 同本人の消費生活は,あらゆる意味において,近代化する前のよくない要素を含んでいるが,これは取り除かれなくてはならない。衣・食・住生活の改善について,学級で討議すること。

(四八) インフレーションの抑制に対し,われわれは今すぐ役だち,自分たちで,すぐできると思われることを考え,学級で討議し,結論を得て,それを実行すること。

(四九) 次の諸点を考慮して,郷土を中心とし,理想的な地方計画を作ってみること。

 (1) 人 口。

 (2) 地 勢(平野・山地)。

 (3) 動 力。

 (4) 資 源(地上及び地下)。

 (5) 鉄道・道路・河川。

 (6) 産 業。


単元三 従業員と雇よう主とは,相互にどんな権利と義務とをもっているか。また,両者は社会に対してどんな義務をもっているか。

~学習活動の例~

(一) 従業員・雇よう主の関係は,学級のものたちにどんなふうに感じられているだろうかということについて,討議すること。この討議は,定時制で,あるいは季節によって従業員として働いている生徒の経験や,両親の仕事についての問題を含むようにしたい。

(二) 勤労に対するよくない労働条件について書いている記事を読むこと。

(三) 労働条件の安全を強調するために,従業員に見せる事故の種類を示すポスターを書くこと。

(四) 「雇よう主は,従業員に対して生活の安定について義務を負っているであろうか」という問題について意見を述ベてもらうために,雇よう主と従業員の双方を招待すること。

(五) その問題について,いろいろなものをたくさん読んだり,討議をしたりして,雇よう主が従業員に対してもつ義務の表をつくること。それから,従業員が雇よう主に対してもつ義務の表をつくること。

(六) 次の勤労者の一群の労働条件について研究し,雇よう主は,その健康と幸福とに対して顧慮を払っているかどうかを知ること。

 (イ) 家事使用人及び徒弟

 (ロ) 工場勤労者

(七) 工場をたずねて,従業員の労働条件を記してくること。給料・労働時間,事故の危険,勤労者の健康に対する作業の影響,及び従業員と雇よう主との関係について,調ベること。

(八) 雇よう主の負担金(借地料・使用料など)税・労賃などについて当面している問題を明らかにする事実を,分団のものたちに話してもらうように,事業家のだれかに頼むこと。

(九) 勤労階級と普通よばれている人々は,経済的にまた社会的にどういう立場にある人々をさすのだろうか。工場労働者・農民・俸給生活者などで,勤労階級といえる人々の範囲を明らかにすること。階級としての労働者という概念をなくすことは,なぜよいことだろうか。

(一○) 附近の工場をたずねて,一つの職場における労働の組織について調査すること。熟練工と未熟練工(見習工)との割合。職場指導者と一般職工との関係。職工の経験年数と仕事の分担。技術教育の方法。労働の能率。それぞれの職工について,その家と親の職業(親子の間に職業上の関係があるかどうか)。以上の資料にもとづいて,日本の工業労働者の特殊な質について,討議すること。

(一一) 合衆国の労働者の賃金と,インドや中国の労働者の賃金を比較すること。合衆国の労働者の賃金の高い理由を表に示すこと。日本の労働者の賃銀は他国に比較してどうだろうか。

(一二) 労働者あるいは従業員の賃銀は,その労働や仕事によって差がある。それぞれの仕事の種類によって平均賃銀を調ベ,表をつくること。なぜ仕事の種類によって賃金に差ができるのであろうか。その理由をできるたけ多く挙げて,学級に報告すること。

(一三) 雇よう主が払う最高賃銀,従業員が受け取る最低賃銀は,どうしてきまるのであろうか。附近の工場の雇よう主と労働組合の役員をたずね,雇よう主と従業員とともに,賃銀の問題について討議すること。

(一四) 教育程度(技術の習得をも含めて)と賃銀との関係について,調ベること。

(一五) 工場労働者の技術習練の方法を調べること。また職場における一般的教養の向上に対して,どんな配慮がなされているかを明らかにすること。徒弟制度が残っているかどうか。いろいろの職種について,一人まえの職工になるまでに,どのくらいの年数がかゝるか明らかにすること。

(一六) 附近の小学校,あるいは駅をたずね,女性の職業と給料を調べ,それを同じ,あるいは類似の仕事をしている男性の賃金と比較すること。差があれば,その原因がどこにあるかについて,討議すること。「なぜ,性に関係なく,同じ仕事には同じ給料が支払われなくてはならないか」という問題について,討議すること。

(一七) 中央労働委員会の算出した適正な質銀は,どういう計算の条件に立つものであるか。生活給と能率給について,賃銀の適正化という見地から,討議すること。

(一八) ギルド制度のもとにおける勤労者の待遇と,現在の大工場で働いている人の待遇とを比較すること。大量生産によって,どんな問題が勤労者にとって生じて来ただろうか。

(一九) 労働組合と昔の株仲間との違いを調ベて,学級に報告すること。

(二○) 労働運動の歴史を調ベること。ヨーロッパ・アメリカ及び日本におけるその簡単な歴史を調ベた後,労働運動はなぜ起ったかという原因についてできるだけくわしく知って,これを学級に報告すること。

(二一) 書物を読んで,わが国における労働運動で重要であった人々について知ること。

(二二) 資本主義社会の発展とともに,労働運動が盛んになったという観点から,いろいろの社会改革の思想について概略を調ベてみること(社会主義・共産主義・国家社会主義など)。労働及びその問題に関係をもっている現在の日本の政党の綱領を集めて,比較検討すること。

(二三) 歴史の本で,日本における労働者の組織に政府が反対した話を読むこと。なぜ政府が労働組合に反対したか,その理由について考えることができるであろうか。現在は,政府は労働組合にどんな態度をとっているか。

(二四) 戦争によって,労働者はどんな利害を受けたかについて調べること。戦争以来,労働者の社会的地位に生じた変化について,討議すること。

(二五) 読書によって,労働組合がなぜ生まれたかを明らかにすること。

(二六) 日本における主要な労働組合に属している勤労者の数を示す統計を,探してみること。どの組合が最も有力であろうか。いろいろの労働組合の宣言・綱領の文書を手に入れ,宜言・綱領について,組合員と討議しその人たちが,その目的を実現するのどんなに計画をしているかを明らかにすること。その目的は,社会の一般公共の福祉と一致しているだろうか。

(二七) 「民主主義では,労働者は,その権利と利益を守るために,組織をもつ権利がある」ということについて,学級で討議すること。

(二八) 新憲法から,勤労者に,ある権利を保障している文章を選び出すこと。このような憲法の条項の意味について,討議すること。

(二九) 近くの農民組合,労働組合の役員を訪問し,その組織・目的・機能について質問すること。組合の活動を調ベ,それによって改善された状態を調査すること。

(三○) 自分が労働者であると仮定し,組合に加入することの利害について,考えてみること。その理由をあげて,討論をすること。

(三一) 組織された労働者の賃銀は,組織されない労働者の賃銀より,一般に高いといわれている。その例を探してみること。なぜだろか。その理由について研究すること。

(三二〉戦争中,労働組合の運動はどうなっていたか。その状態に立ち至った理由,及び戦後の状態をひき起した理由について,討議すること。

(三三) 産業上の紛争を回避するために払われて来た努力について,調ベること。団休契約あるいは争議調停のために,どんな機構があるだろうか。争議を解決するのに,調停は効果があったろうか。

(三四) ある組合員に,学級に来て,その仲間の当面している問題,インフレーション,生活費の高いこと。よくない労働条件などについて,説明してもらうこと。

(三五) 次のことがらについて,できるだけたくさんの情報を手に入れ,それを学級で討議すること。

 (1) 勤労者が組織をもつのは,なぜ必要であるか。

 (2) 雇よう主はその従業員に対して,どんな義務をもっているか。

 (3) 従業員は,雇よう主に対して,どんな義務をもっているか。

 (4) 一般公共の健康や福祉が,本質的に維持きれる時には,勤労者は,罷業の権利をもっているだろうか。

 (5) 勤労者は企業の利潤の分けまえを得る権利をもっているであろうか。

 (6) 勤労者の組織に対して,政府は態度を変える必要があるだろうか。

 (7) 十五才以下の子供が,工場で働くことは許さるべきであろうか。

 (8) 従業員の不合理な不正な態度が,罷業の原因になることがあるだろらか。

 (9) 民主主義では,なぜ勤労者の組織は必要なのだろうか。

(三六) 罷業・怠業・工場閉鎮・ボイコットの歴史を調ベること。一般公共の立場から,罷業について討議すること。公衆は,勤労者が,その仕事にある収入高の公正な分けまえを受けとることに,関心をもっているだろうか。

(三七) 附近の労働組合をたずね,その組合は,組合員の教育及び技術の向上,またはその休養・娯楽のために,どんな事業をしているかを話してもらうこと。調べた結果を報告すること。組合による組合員の教育的・教養的向上について,討蟻すること。

(三八) 雇よう主と従業員の利益は,どの程度まで一致するであろうか。いろいろの情報を集めて調ベてみること。

(三九) 政府は,雇よう主と従業員の協調を推進しようとしているだろうか。労働者と資本家は,それを欲しているだろうか。最近の新聞の記事に注意して,調ベてみること。

(四○) 新聞の記事あるいは論説から,労働委員会の活動について知ること。その調停案は妥当であろうか。いろいろの場合について研究すること。

(四一) 合衆国の労働協約について学ぶこと。それは,従業員・雇よう主及び一般公共にどんな利益をもたらすかということについて,研究すること。

(四二) 「日本経済の再建と労資の対立」という題で,作文を書くこと。

(四三) 社会の福祉と労働者の利益とは,どの程度に一致し,どの程度に矛盾するか,表にしてみること。それにもとづいて,理想的な労動組合,あるいは従業員組合の綱領と規約とを,学級で討議した後,作成してみること。

(四四) 雇よう主,あるいは従業員の社会に対する義務について,研究すること。よい雇よう主,よい従業員の資格を討議して,表にしてみること。

(四五) ソ連には,失業者がいないといわれている。このことについて確かめるか,またはその反証をあげてみること,そして失業者がないということの理由を考えてみること。

(四六) 自分たちの地方で,経営協議会をもって経営を行っている実例を探し,そこを訪問し,その運営についての利害及び困難などについて,実情を知ること。その報告をもとにして,自分たちの気づいた欠陥及び改善の方法について,討議すること。

(四七) 土建労働者や,鉱山労働者の労働組織について,調ベること。飯場組織はどういうものか。親方と普通労働者の関係は,民主的に組織されているだろうか。その改善案を考えてみること。

(四八) 現在公布されている労働関係の法令を集めて,研究すること。労働者の保護について,政府はどんな方法を講じているか。特に,少年及び婦人の場合について明らかにすること。

(四九) 欧米の労働に関する社会政策の現状を知ること。それらは日本にとっても役だつであろうか。その理由について、検討すること。

(五○) 組合と政党との関係について調ベること。組合運動と政党運動の境界(もしあるとすれば)について明らかにすること。

(五一) 地方の産業復興協議会,中央産業復興協議会の情報を集め,日本の経済再建のために,従業員と雇よう主が,そこでどんな義務を負うかについて,研究すること。

(五二) 争議が制限され,あるいは禁止きれる事業について知り,その理由について,討議すること。

対する生徒の態度を観察して,勤労者とその仕事の尊さに対して,生徒が尊敬の念を示しているかどうかを明


単元四 貧困や生活難から,社会や個人を助けるために,どんな手段がとられているか。

~学習活動の例~

(一) 最近一週間における新聞記事の中から,われわれの援助を必要とするような,同情すべき不幸な人々に関する記事を調ベ,整理して学級に報告すること。このような問題が自分たちの地方にあるかどうか決定する。

(二) 最近,自分が路上で見たり,人から話を聞いたりしたことのうちで,同情すべき不幸な人々のことについて,なにか情報を得なかったか。あれば,それを学級に報告して,これを援助する方法を討議すること。

(三) 貧困ということばが何を意味するか,適当な定義を与えてみること。衣食住の各条項の生活の最低水準と考えられるものについて,情報を手に入れること。できるならば,わが国における平均生活水準以上にある家族数,それ以下,あるいは平均に近いものについての統計を手に入れて調ベること。自分の町(村)の中程度の家庭は平均水準に比して,どこに位置するかを決定すること。

(四) 水準以下の生活を営んでいる家族は,なぜ貧窮に悩むと思われるか。

(五) まちの浮浪者について,その数・年齢・性・浮浪者となった原因について調ベること。特に,青少年浮浪者に注意すること。かれらは,毎日何をたベているか,何を喜びとし,何に悩んでいるか。その性格はどうか。かれらにいかなる援助を行い得るか,その方法において討議すること。

(六) ヘレン・ケラーの伝記と,その著述と読み,そのなかで感銘を受けた部分を選び,学級に報告すること。通常の人に比べて,かの女のなみなみならぬ忍耐について,評価すること。

(七) 去年一年間における自分の町(村)において行われた犯罪について,調ベること。罪を犯した人々について,その理由や事惰を知り,貧困と犯罪の関係を決定すること。それらの罪のうちで,財産に対する侵害はどのくらいか。

(八) 貧窮が,個人と社会に与える望ましくない影響について,表にすること。

(九) 委員を選んで,社会事業家を訪問し,話を聞き,貧民街や,簡易食堂や,無料宿泊所,セツルメント,質屋などについて,知識を得ること。学級において,現在の私的な社会救済施設について討議し,それらが適切に管理されているかどうかを決定すること。

(一○) 「危険な細民街の改善について」という題で,学級討論会を開くこと。

(一一) 最近における捨て子とこじきの数を調ベ,その拾てられた原因と,市(町村)におけるその原因を取り除く方法について,討議すること。

(一二) 現在の広範囲にわたって存在する貧困の原因について,多くの情報を得た後,その特殊な原因についての表を作り,それについて討議すること。戦争の準備と,その遂行が,いかに今月の経済事情を招来するのに影響を与えただろうか。

(一三) 大きな戦争の後には,いろいろな社会問題が起るものだということについて,歴史的に研究し,これを現在の状態と比較すること。

(一四) 生産力の急速な回復は,自分や,自分の級友に,どのような影響を与えるであろうか。

(一五) 自分の町(村)で,戦災をうけて家を失った人々の家の数を調ベ,町の総人口に対する割合を計算すること。また自分が住んでいる地方の者についても調ベること。戦災を受けて後,日用品としてどのような品物の配給を受けたか,表にしてみること。学校の生徒のうちで,戦災者はどのくらいあるか。戦災後の生活状態と,多くの困難にどのようにして戦っているかについて口頭か,あるいは文書による報告を求めること。

(一六) 日本の天然資源につき,諸外国のものと比較し,国民所得に対する人口圧の強さについて,研究すること。

(一七) 図民の所得は,農業や,工業の不適当な管理によって,いかに影響されるであろうか。戦争準備のために,国民所得の何パーセントが消費されたであろうか。もしそれが,戦費と同じ割合で社会の福祉の方にまわされていたとすれば,われわれの生活水準は,どれくらい向上していたであろうか。

(一八) 戦前において,日本の労働者は,最大の利潤を収めるために強行された海外貿易によって,いかに低賃銀労働にかりたてられたであろうか。

(一九) 新聞のつゞりや,雑誌のとじこみの中から,日本における産業の独占的な統制を取り除こうとして行われて来た種々の処置についての話を,読むこと。これらの処置が,なぜ取られたかを調べて,それが所得の分配にどのような影響を与えるであろうかを,討議すること。

(二○) 一家の収入と,物の値段とのつりあいが,現在は適当であろうか。物の値段が安く,生活が楽で豊かになるためには,どうすればよいであろうか。国家全体の立場について,研究してみること。日本人ひとり当たりの生活費と,外国のそれとを比較して,生活水準の向上ということについて,研究討議すること。日本人は,ひとり当たり,ふとん・着物・くつ・帽子・雨がさなどの必要な身のまわり品を,どのくらい持っているであろうか。また,一戸当たり,ラジオ・冷蔵庫・自動車・自転車などを,どのくらいの割合で持っているであろうか。これを,外国のものと比ベて,差のあることについてその理由を考えてみること。この際,便利な科学的な生活を営むということと,ぜいたくとは,厳密に区別する必要がある。

(二一) 日本人の食物・衣服・住宅などの生活条件は,戦争の結果,いかに貧弱になっただろうか。生産力の崩壊と,生活条件の困難との関係について,討議すること。

(二二) ラジオや,新聞や,雑誌から,住宅建築計画について情報を得ること。将来,住宅の数を増すことについて,どんな計画や活動が進められているだろうか。自分の町には,適当な住宅を持たぬ人々が,どのくらいあるだろうか。それらの人々に,いかなる処置が講ぜられつゝあるか。

(二三) 自分の町や村に,疎開している人々の生活を調ベること。疎開前は,どこに住んでいたか,家が戦災をうける以前から疎開していたか,それとも戦災の後であったか。この町村に親類があるか。疎開者の世帯主はどこに住んでいるか。疎開者が困っているのはどういう点か。町村に対する希望はないか。どうして疎開者は,町や村の生活にとけこんで行くであろうか。調ベた結果を,学級に報告すること。

(二四) 最近の新聞や雑誌から,インフレーションと生産力,特に,生産財(鉄・石炭) と消費財(なベ・衣料)との生産率に関する情報を得て,日本経済の現状について研究すること。

(二五) 自分の学校の教科課程について研究すること。学校で教育される教科目の表を調ベて,学校にいる間におぼえられる種々の有効な経験を,表にすること。これらの経験のうちで,自分の就職のために準備されたものは,どういうものか。就職に役だつものとして,現在の学校の教科課程に,さらにいかなるものを附加すべきであろうかということについて,学級で討議すること。

(二六) 最近の自分の学校の卒業生のどのくらいの人々が,職に就くことができたか。どんな仕事に従事したか。自分の学校では,職をみつけるのに役だつような何か指導をやっているか。一九四七年二月の卒業生を,一九四六年,及びそれ以前の卒業生と比較してみること。

(二七) 議義を聞いたり,書物を読んだりして,なぜ貧窮というものが生じて来るかを研究し,貧困者を生ずる直接の原因について,くわしい表を作ること。また,学校あるいは学級の各員が分担して,町の貧困者につき,貧困の原因・状況・将来の見こみなどにつき,具体的に調査し,前の表と参照して研究すること。いかにして貧困を打開すベきがについて,個人及び社会の立場から,討議すること。

(二八) 一般に,日本の家庭では,収入をじょうずに使うために,家計簿をつけているだろうか。家の経済をたくみに処理するためには,どのような教育が必要であるか,討議すること。

(二九) 海外引揚者の援護機関を訪問して,その事業の現状について情報を得ること。自分の学級や学校の中にいる海外引揚者の級友や生徒の生活調査をなすこと。学校に通うのに最も不自由な点は何か。また,現在希望していることは,どういうことかを明らかにして,委員会を設けて,その援助の具体的実行計画をたてること。また,在外同胞救出学生同盟や,引揚援護院(厚生省内)と連絡をとって研究したり,また実地調査にもとづく,引揚援後事業の改善案を定義すること。

(三○) 自分の地方でそれを必要とする人に援助の手をさしのべる私的な施設を,表にしてみること。それらの事業について,討議すること。

(三一) 種々の社会問題に関する政府の社会政策や,公共施設の統計的な表を作り,その効果について研究すること。現在あるもののほかに,政府によって実行されなければならない社会政策・公共施設や機関について,討議すること。

(三二) 日本経済の再建は,国民の現在の生活水準を向上するのにいかなる影響を与えるか。その目的を達するために,どんな具体的な手段があるかを,討議すること。

(三三) 最近の新聞や雑誌の記事から,日本産業の再建計画についての情報を集め,あらゆる利用の可能な資源を有効に使うことについて,討議すること。この際,狭い国土と貧弱な資源しかないにもかゝわらず,高い人口圧を支え,その上に将来,賠償を誠実に行わなければならない不幸な条件を,考慮すること。

(三四) 土地所有制度の民主化と,日本農業の発展との関係を調べ,それが,日本経済の再建に与える影響について,討議すること。

(三五) 工業原料と食糧との輸入の見返りに,国内生産物資の輸出は,きわめて重要である。日本が,将来,外国貿易を許されたとして,それが,われわれの生活条件に与えるよい影響について,討議すること。

(三六) 独占企業の欠陥について調ベ,その解体によって,日本経済の再建にいかなる影響を与えるかを,討議すること。

(三七) 国家再建のために,われわれは,戦前の二倍も三倍もの努力をしなければならない。雇よう主と従業員は,そのためにいかなる責任を負うべきか。

(三八) 戦後における均衡を失った国民経済を克服するために,租税は,いかに徴収され,そして,支出されるベきであろうか。

(三九) われわれの就職のチャンスという題で,学級討論会を開くこと。

(四○) 新聞や雑誌から日本における失業問題に関する記事を集め,その中で興味のあるものを学級で読み,失業問題について討議すること。

(四一) 自分の町の失業者の数・年齢・失業の原因,現在の能力と希望する職業を調ベて,失業救済の方法について,討議すること,過去における日本の失業問題を研究して,これを戦後のものと比ベること。

(四二) 読み物や,先生からの講義によって,英国における産業革命についての知識を得,近代機械生産組織の発達と,失業問題の関係を研究すること。

(四三) 合衆国においては,なぜ日本に比ベて,より広く,より著しく機械の使用が進んでいるのであろうか。人口の過剰と低賃銀が,労働の組織に及ぼす影響について,調ベること。

(四四) 自分の地方の職業補導所を訪問して,その事業の概略について知識を得るとともに,補導生と話し合って,かれらの略歴や,どうしてこの補導所にはいったか,現在何をしているか,将来何をやりたいかについて,調ベること。全国の補導所の所在地,補導生の数,補導科目,及び方法を調ベて,学級に報告すること。

(四五) 自分の町(村)で,現在以上に人を雇うことのできる産業はなんであろうか。正常な生産活動を再開するには,いかなる困難があるだろうか。

(四六) 失業が,個人や社会に及ぼす影響を表わした漫画や,絵を描くこと。

(四七) 「職業教育はなぜ必要か」という題で,討議すること。

(四八) 自分の地方の主要な職業について,それが労働に安定をもたらすか,あるいは安定をもたらし得ないかを明らかにする目的で,それを研究すること。

(四九) 失業保険や,農業保険などの諸制度について,書物を読み,人の話を聞き,知識を得て,このような社会に起る不慮の災難や,不可避な危険を,社会のすべての人々が協力して負担しようとする制度の得失について,討議すること。わが国において,すでに行われているものにどんなものがあるか,その成績や効果は,どうであるか。また,現在準備中のものに,どのようなものがあるか,それはどんな構想を持っているか。これらについて,外国(米・英・ソ連・仏等)のものと比較研究すること。

(五○) 地方の民生棺(従来の方面館)を訪問して,民生委員の仕事について情報を得ること。いわゆる「カード階級」とは,どういう人々をさすのか,どのようにして,ある個人をこの階級に属するかどうかをきめるのか,民生館によって,それらの人々の救助に,いかなることがなされているか。民生委員から案内してもらって,民生館からの扶助を受けている世帯を訪問しその人々の生活について調ベること。直接的な社会扶助を与える現在の制度について討議し,それが適切に管理されているかどうかを決定すること。どうすれば,公の扶助に頼らなければならない人々に対するわれわれの偏見を取り除くことができるであろうか。

(五一) 町の授産場を訪問し,その事業の概要を調べること。毎日幾人ぐらいの人が働きに来るか,働きに来る人々の性別・年齢・生活状態,どんな仕事を現在やっているか,一月にどのくらいの仕事をするか,それによってどのくらいの収入になるか,それだけで生活できるか,特来の希望は何か,などについて調ベ,学級に報告すること。この仕事は,失業問題の解決に,どれくらい役に立つだろうか。

(五二) 公共職業(労働)安定所(職業案内所・口入れ屋)をたずね,その事業についての情報を得て,学級に報告すること。その機構・執務時間,事業の種目,料金をとるか,どうか,従業員はどのくらいあり,その任用法はどうか,などを調べること。利用者の数,職業紹介の方法,就職率,利用者の男女別,年齢,教育程度,生活程度,希望職業と紹介の成立する率のよい職業などについて調査し,報告する。

(五三) 生活困難な人々を扶助するために,村・町・県・国家において行っている種々の施設と機関について調べること。その組織・事業の内容,事業の概要について明らかにすること。集めた資料を手がかりにして,これらの施設によって扶助を受けつゝある貧困者は,どのくらいになっているか討議し,扶助方法の改善について,研究すること。

(五四) パネル討議法(数人の代表が討議し,他の者は傍聴する形式の討議法)によって,政府はいかなる医療制度についての配慮をなしているかを,論ずること。

(五五) 学校へ,社会厚生事業にたずさわっている人を招き,日本における種々の社会福祉の増進に関する事業について話を聞き,町村における改善すベき問題について,話し合うこと。

(五六) 委員を選んで精神病院を訪問し,そこで,医者から患者の取り扱い方法について話を聞いて来て,学級に報告すること。

(五七) 自分の地方で,子供が働きに行くようになる普通の年齢について知識を得,早くから子供を働かせることによって起る悪い影響について,調ベること。

(五八) 自分の地方における青少年に対する公の保護施設を挙げること。孤児院・感化院・少年審判所を訪問し,青少年保護に関する仕事について,知識を得ること。自分の地方に,才能はあるが貧乏な青少年を助けて学校に通わせる奨学資金制度が,あるかどうか。

(五九) 自分の町の浮浪児収容所を訪問し,その事業の概要,勤務者の数とその仕事,収容児童数とその消長・年齢・教育・体格・指導上の困難な点,食物・衣服・布とん,その他児童に課する仕事の種類などを調ベること。調査の結果を学級に報告し,現在の制度における欠陥と思われるものについて討議し,その改善につき提案すること。

(六○) 自分の町には,休養と娯楽(レクリエーション)の機会を与えてくれるものとして,いかなるものがあるか。それは,町の子供や自分たち,また,大人の要求に合するものであるだろうか。大人から見て,思わしくないと思われるようなレクリエーションの施設があるだろうか,これらの施設を改良させるためには,いかなることが必要だろうか。

(六一) 町の少年の不良化について,その種類と,原因とを調査して,その対策を論ずること。この目的のために,近隣の学校と協同して,合同の委員会を組織し,その対策を実行すること。

(六二) 養老保険(年金)・生命保険・傷害保険に関する知識を得て,保険制度で,私的企業組織によるものと,政府の公共事業として行うものと,いすれが国民にとって利益になるかを,討議すること。

(六三) 不具者・貧窮者・失業者・戦災者・海外引揚者を扶助する場所として,日本の家は,どのような役割りを果たしているであろうか。五,六十年前から現在に至るまでに,この点について,家の機能は,どのように変化して来たであろうか。どんな変化が現在みられるか。書物を読んだり,年長者から話を聞いたりして知識を得て,学級で討議すること。

(六四) なぜ自分の町(村)は住みやすい所なのか。どういう点がよくないところか,どういう点が改善できると思うか。

(六五) 文明の進歩によって,いかに肉体の欠陥が除かれるかについて調ベ,学級に報告すること。また,発明と文明の進歩は不幸な人々の救助に,いかなる程度に役だつか。政府または私的な社会施設は,これに援助を与えつつあるかどうかを明らかにすること。

(六六) 種々の肉体的欠陥について挙げ,それらの欠陥を持つ人々に対して,いかなる便宜が講ぜられているかを調ベて,報告すること。

(六七) 公立の病院や診療所を訪問して,無料で施療してもらいに来る人々について調べること。その職業・男女・年齢の割合,病気の種類はどうか。特に多い病気は何か。医者の忠告が,患者によく守られるかどうか,調ベること。

(六八) 傷い軍人の数を調査し(現に入院中のものと,そうでないものとに分かつ),最寄りの病院を訪問して,その状態を調ベること。再起の道は開かれているだろうか。政府はどのような保障を与えているか。過去における廃兵問題を研究すること。

(六九) 自分の知っているめくら・つんぼ・おし・不具廃疾者について調ベ,仮名または氏名を符号で表わしてみること。どうすれば,かれらみずからも満足し,社会にも役だつようにこの人々の生活を向上させるように指導することができるか。

(七○) めくら・つんぼ・おしの学校を参観し,教育の特別な方法を明らかにすること。点字の歴史を調ベ,点字の新聞や書物を集めて研究すること。現在の教育制度は,かれらを社会の有用な一員となすに十分なものだろうか。

(七一) 日本におけるめくら・つんぼ・おしの学校の数と,このような特殊な教育の沿革を調べて,表にしてみること。できるならば,その生徒数をも調ベて,学校に入って特別の教育を受けることのできる人と,できない人の割合を算定してみること。特別の教育を受けた場合と,受けなかった場合とで,その人の一生に,どれほどの差ができるであろうかを研究すること。それぞれの学校の生徒数の変遷を調ベて,表にしてみること。

(七二) 身体の欠陥と,知能の発達の問に関係がないであろうか。自分の知っている例について,話し合ってみること。頭の悪い子供のために,特別の教育がなされているだろうか。あれば,その教育機関を訪問して,調べて来ること。子供たちは そこで適切な取り扱いをうけてるだろうか。

(七三) 異常児童や,精神薄弱児について書いた書物を読み,その教育にたずさわる人々の苦労や努力を,明らかにすること。

(七四) 刑余の人々を収容して補導する所や,感化院を訪問して,上にならって調査すること。「みかえりの塔」という書物を読んで,感想を発表すること。

(七五) 最近の大きな災害(例えば,関西地方の大地震)についての詳しい情報を得て,その救助に協力した団体の名を挙げること。このような損害を軽減するため,可能な種々の手段について,討議すること。

(七六) 町の復員者及び引揚者の数を調ベ,その人々を訪問して現状を明らかにすること。困っている人たちの数は,その人々の何割ぐらいか。また,どの程度に困っているか。自分たちでできる援助の方法と,政府のとるベき処置について,討議すること。傷い者や,遺家族や,引揚者などの要救護者援助のために委員会を組織して,全生徒が任務を分担して活動すること。

(七七) 遺家族を慰問し,困っている人たちに対する援助について考えること。政府として,また,地方の市・町・村団体として,どのような施策をなすベきかについて討議し,提案すること。

(七八) 日本の歴史,特に,社会史・経済史を読み,過去において,上に述ベた活動のような種々の施設で実施されたものにはどんなものがあったかを調べること。最近の新聞・雑誌・報告・書物を読んでくわしい情報を得,現在行われているもの,将来,実施の予定で論議されつゝあるものについての具体的な計画を集めて表にし,その重要と思われるものの順に,しるしをつけること。

(七九) 貧困や,生活難から起って来る問題を解決するために日本において採用可能なもので,外国において,すでに実施しつゝあるものにどんなものがあるか。新聞や雑誌を読み,映画や写真を見たり,ラジオを聞いたり,また,外国の事情に通じている人を訪問して情報を得,日本の計画と比較し,討論会を学級で開いて,その改善策を考えること。次のようなものについて,明らかにすることは有効である。

 (1) 合衆国・スエーデン・イギリス,その他の国でやっている実際の計画。

 (2) 社会安定方策。

 (3) 直接的救助方法。

 (4) 公共援護事業。

 (5) 失業保険制度。

 (6) 養老扶助と恩給。

 (7) 住宅建築計画。

 (8) 私設の社会福祉の増進と救助のための団体。

 (9) 教会・寺院と教団の事業。

 (10) 病院・孤児院・養老院・不具廃疾者収容所などの公私の施設。

 (11) 公共団体の中心的施設による配慮。

 (12) 合衆国における地方団体の社会厚生基金制度。

 (13) 青少年団(Y.M.C.A,Y.W.C.A,4Hクラブ)。

 (14) 健康・傷害保険。

 (15) 母子保護施設。

 (16) 職業補導。

 (17) アンラ・ララの事業。

 (18) 赤十字社。

(八○) との単元の学習の活動の間に集めた資料をまとめ,展覧会を開いて,両親やその他の人々を招待して見てもらうこと。


単元五 日本国民は民主主義をどのように発展させつゝあるか。

~学習活動の例~

(一) 広く書物を読んで,世界の偉大な民主的な指導者のくだした民主主義の定義,日本の新憲法,合衆国の独立宜言やフランスの人権宣言のような文書から,民主主義の定義をたくさん集めること。学級で討議した後,一般に民主的な政治や,民主的な生活に通じると考えられる特色の表をつくること。この単元の学習を通じて,民主主義の生活について学ぶにつれて,項目を加えたり削ったりすること。

(二) 民主主義の実際の特色の表がだいたいできたら,この基準にもとづいて,日本の伝統的な家庭生活について,討議すること。

(三) 自分の学校には,非民主的な点はないだろうか。この単元の学習を通じて,自分のつくった民主主義の基準によって,自分の学校の生活を計ってみること。

(四) 自分の市町村当局や,自分の市町村の民間社会団体の働きについて研究すること。自分が観察して非民主的だと考えるもの,民主的だと考える行動の表をつくること。

(五) できれば,会合や市町村会,地方の政治の会をたずねること。このようなグループは,一般の人をどのように代表しているだろうか。かれらの活動は,公共の福祉をどのように高めているだろうか。

(六) 自分たちが観察した非民主的な行為と,自分の注意をひいた民主的な行為について,学校新聞の論説を書くこと。

(七) 日本における民主主義の改革遂行について論じている新聞の記事や論説の切り抜きをつくること。それについて,学級で討議すること。

(八) 民主主義の発展に助力した世界の有名な指導者を選び出すこと。これらの指導者の一生や仕事について,学級に口頭で報告すること。

(九) 歴史の書物を読んで,百年前の日本の国民の日常生活について知ること。百年前に比べてどんなふうに自分たちの地方の人々は,前より自由になっているだろうか。

(一○) 戦争中には許されなかったことで,現在では自由にやれるようになったことがらについて表をつくること。

(一一) 西洋古代史の書物や先生の講義から,古代ギリシアやローマの政治的な事情について,知識を得ること。古代におけるギリシアやローマの,ある民主的な発展について,報告すること。そこで発展した民主主義は,国民の大きな団体にまでは拡がらなかったのは,どうしてだろうか。

(一二) 西洋の中世史で,封建君主の支配権がどれほど強かったか,人民の状態はどうだったかについて,調べること。それについて報告すること。わが国の封建時代の状態と比較すること。どんな相違と類似が見られるだろうか。

(一三) 歴史の本を広く読んで,イギリスにおる民主主義が,次第に発展したあとをたどること。

 (1) サクソン人の諸王のもとで,イギリス国民はどの程度の自治をもっていたかを示すこと。

 (2) ウイリアム征服王治下のイギリス国民の生活について,書物によって勉強すること。わが国の封建時代の国民生活と比較して,封建時代のイギリス国民の日常生活はどうだったろうか。

 (3) 大憲章(マグナ・カルタ)について,また,それができた事情について,勉強すること。いわゆる「イギリスの自由のとりで」としての限界について,討議すること。

 (4) 下院の成長について調ベること。大地主や大商人を代表する狭い団体から,国民を代表する団体に,どういうふうにして発展して来たかを示すこと。

 (5) 国王は統治の神権をもつ,という思想は,イギリスでは,いつ,またなぜ棄てられたか。

 (6) イギリスでは,普通選挙になるまで,どのようにして参政権は次第に拡大していったか。

 (7) イギリスの議会制度を,日本の現在の国会の制度と比較すること。

 (8) 近代のイギリス国民の日常生活を解説している物語を見つけることができたら,それを読むこと。それを,封建時代の庶民の生活について書かれた,歴史的な記録と比較してみること。庶民は,昔はもっていなかったどんな自由を,現在もっているだろうか。そういう自由は,庶民の生活をどんなに豊かにしているだろうか。

(一四) アメリカにおける民主主義の発展のあとをたどること。

 (1) 読書によって,アメリカ入植の動機について学ぶこと。入植に際して,信教の自由に対する欲求が,どんな役割りを演じたろうか。金持になろうとする欲求は,どんな役割を演じたろうか。

 (2) アメリカへ封建制を移植しようとして,どんなことが企てられたか。この試みはついに失敗したが,どのように,また,なぜ失敗したかを示すこと。

 (3) アメリカにおける最初の民選議会(ヴアージニアの市民議会)の組織について,勉強すること。

 (4) なぜアメリカ植民地は,イギリスに反抗したか。

 (5) 合衆国の独立宣言の前文を注意して読むこと。この文書の中に,民主主義の本質を最もよく表現したものを見出だすであろう。この原則について,また,これが自分たちの地方にそのまゝ適用されたらどういうことになるかについて,討議すること。

 (6) 合衆国憲法の主要点を研究すること,――どのように書いてあるか――違った利益の間の妥協を,どういうふうに表わしているか。合衆国憲法の権利条項を,特によく読むこと。日本の新憲法に保障されている権利の中で,どういうものが合衆国憲法でも国民に保障されているか。

(一五) ドイツのワイマール憲法を研究すること。それは民主的であろうか。なぜ最近ドイツは,民主的な生活を選ぶことに失敗したのだろうか。その原因を表にしてみること。また,日本の現状の中に,似たような条件があるかどうかを明らかにすること。もしあるとすれば,失敗を避けて,われわれの生活の民主化を進める道について,討議すること。

(一六) 日本の主要な政党によって表明された党の原則や政綱を,研究すること。いろいろの政党は,いろいろの人々の信念を,だいたいどのように代表しているだろうか。日本の多数党組織を,合衆国の二党制と比較すること。一党政治は,なぜ国民をうまく代表することができないだろうか。一党制のもとでは,ドイツ・イタリヤ・日本の国民の権利はどんなにしいたげられたか。民主的な政治の働きにとって,なぜ多数の政党が必要なのだろうか。

(一七) 憲法で自分たちに保障されている政治的,社会的,経済的,権利の表をつくること。この表の各条を,自分たちが果たさなくてはならない責任と比較すること。

 例‥自分は言論の自由の権利をもっている。しかし,自分はこれを用いるに当たって,中傷とか悪口とかを避ける責任をもっている。

(一八) 日本における民主主義の漸次的な発展のあとをたどること。

 (1) 江戸時代における庶民の勢力に反映した民主主義が,相当に発展したことについて,報告を書くこと。

 (2) 日本国民は,明治維新で,どのくらい民主化されたであろうか。どんな原因によって,わが国民は,高度に民主化するのを妨げられたのであろうか。

 (3) 明治憲法の発布及び代議制度の設立は,どういう理由で行われたのであろうか。

 (4) 福沢諭吉や板垣(いたがき)退助のような,日本における民主的指導者の伝記を研究すること。

 (5) なぜ日本は,特に昭和六年から昭和二十年まで,民主主義に反する方向をたどったのか。

 (6) 明治憲法と比ベて,新憲法の発布は,日本史においてどんな意味をもっているか。

(一九) 労働組合は,生活水準を高めるのに,どのような力となっているだろうか。イギリス,合衆国,あるいはヨーロッパ諸国の労働組合の歴史を研究し,日本の労働組合の歴史と比較すること。

(二○) 産業革命は,どのように国民の力を拡大しただろうか。イギリスを例にとって作文を書くこと。なぜそうであるかについて,討議すること。

(二一) 6-3-3学校制度について,いろいろな方面から広く知識を得た後,わが国の教育の民主主義にとって,それがどんな意味をもつかについて,討議すること。

(二二) 学級の指導者をきめる学級選挙をやりながら,民主的生活を進めるのに,力となるような指導者の資格や義務について,討議すること。

(二三) 新憲法の重要な条項の研究のための委員を指名して,その報告にもとづいて,自由討議を行うこと。特に次の点を考慮すること。

 (1) 人権条項。

 (2) 戦争放棄。

 (3) 参政権の拡大。

 (4) 主権在民。

 (5) 政府の民主的機構。

 (6) 地方行政度の改革条項。

(二四) 各国(合衆国・イギリス・フランス・ソ連及び中国)の生活における,違について,また,各国の民主主義の程度について,学級で討議すること。

(二五) 警察官あるいはその他の官吏を教室に招いて,最近の警察行政その他の制度や機能や,また,公僕の義務の変化について,話をしてもらうように頼むこと。そのあとで,わが国の役所や官吏がどのくらい民主化したかについて,討議すること。

(二六) 自分の地方の政治の組織について,明治の後期から現在に至るまでの変化を研究すること。住民が政治活動に参加する機会は,どのように大きくなったろうか。外国の地方政治組織について研究した後,それと自分の地方のそれとを比較して,自分の地方の政治組織で改良すべき点を,明らかにすること。

(二七) 一般投票と普通選挙について研究すること。わが国の民主的な生活を促進するために,なぜこのような政治機構を採用する必要があるのだろうか。自分のもっている知識をもとにして,討議すること。

(二八) 自分の地方に在住する代議士を招いて,議会と選挙について,話をしてもらうこと。市・町・村議会・都道府県会・国会の議員選挙の資格の表をつくること。

(二九) 模範的な討議を行い,数名の生徒を選んでそれに参加させること。他の生徒は,傍聴者あるいは批判者として出席すること。その際,討議をしているものについて,次の諸点に注意して,自分の反省の資とすること。

 (1) 他人の意見をよく理解しているか。

 (2) 自主的な意見を述べているか。

 (3) よく自分の考えを表現しているか。

 (4) 違う意見に対して寛容であるか。

 (5) 協力的,建設的な態度を示しているか。

(三○) 日本における政党の発達史を研究して,報告すること。現在の政党の政綱を集め研究すること。また,その政綱のおのおのがどの程度に世論を反映しているかについて討議すること。

(三一) 世界における三権分立の発展について,また,政治的民主主義にとってそれが必要なことについて,研究すること。「三権分立に関してみた新旧憲法の本質的相違」という題で,作文を書くこと。

(三二) 地方裁判所をたずね,裁判の過程について,そこの官吏に話をしてもらうこと。現在の裁判の過程と,江戸時代のそれとを比較し,その知識をもとにして,なぜそういう違いがあるのかということについて,討議すること。

(三三) 日本の家庭生活と,西洋の民主的な国(イギリス,合衆国,または他の国々)の家庭生活とを比較すること。わが国の家庭生活において,改善すベき点を改めるには,どうしたらよいかについて討議すること。

(三四) わが国の家庭生活における女性の地位の改善について,学校で討議すること。

(三五) 自分たちの地方の生活で,非民主的と考えられることがらについて,表をつくること。徒党や世襲的身分などがあるだろうか。もしあるとすればなぜそういうものが存在しているのか,その理由について,またそれが自分たちの地方に,どんなよくない影響を与えているかについて,討議すること。そういうもののあった方が利益になるという人があるだろうか。

(三六) いろいろなところから知識を集めて来たのち,資本主義における重要な困難な問題を見出だすこと。国民の経済生活をもっと民主的にするためにこのような問題を解決するのは,どういう意味で必要だろうか。

(三七) 資本主義と社会主義との相違を,例えば次の諸点に関して,表にすると。

 (1) 価格や市場に対する政策。

 (2) 国有問題。

 (3) 失業政策。

 (4) 税制政策,金融政策など。

(三八) 社会主義は,民主的な方法で実現できるだろうか。もしできるとすれば,それが可能なために,国民はどんな努力をしなくてはならないかについて,討議すること。

(三九) 労働組合の指導者をたずねて,その労働組合の目的と活動について話してもらうこと。他のところからもいろいろ知識を得て,労働組合の一般的な目的について,学級に報告すること。その知識をもとにして,国民の経済生活の民主化と,健全な労働組合運動の発展との間の本質的な関係について討議すること。

(四○) 独裁制から生ずる不利な点の表をつくること。(最近のドイツ人,イタリヤ人,及び日本人の運命について研究し,それらすべてに共通する点を見出だすのがよい)。政治,社会的及び経済的な国民生活に関して,民主主義が独裁制よりも有利な点について討議すること。

(四一) 共産主義は,民主的であろうか,また,民主的になることができるだろうか。新聞記事や雑誌から,各国の共産主義運動の情報を多く集めたのち,上の問題について討議すること。

(四二) 国際問題に関して,新聞の切り抜きをたくさんつくること。それを材料として,民主主義の発展について作文を書くこと。日本は,世界の民主化の促進に対して,どんな任務をもっているか。

(四三) 昭和二十年以来の政治的,社会的,経済的生活の変化によって生じた事件を観察する委員を選ぶこと。われわれの公共の福祉を向上するのに好ましくない傾向が,どのくらいあるだろうか。われわれの状態を改善し,民主的な生活を発展させるためには,どんな手段があるだろうか。またどんな手段が必要だろうか。国民の政治的,社会的,経済的な生活の改善のために,教育はどんなに重要だろうか。


単元六 われわれは世界の他国民との正常な関係を再建し,これを維持するために,どのような努力をしたらよいか。

~学習活動の例~

(一) ギリシア人・古代中国人が一般に他国民に対してどんな態度をとったかを調ベること。それは真の愛国心からであろうか,討議すること。

(二) フランスあるいは英国の成立について研究すること。どのようにして近代ヨーロッパの国家は成立したかについて学級に報告すること。

(三) 国家のためにつくすということと世界の平和,人類文化の向上に寄与するということとの関係について討議し,世界平和に必要な条件について例を挙げて各自作文をつくること。

(四) フランス国民軍をひきいたナポレオンはなぜ強かったか。合衆国はなぜ独立し得たか。フランスの人権宣言,合衆国の独立宣言を調べて報告を書くこと。

(五) 世界における主要生産地域と主要通商路を示す地図をつくること。ある定期間内における日本の外国貿易に関する資料で役に立つものはすべて集めること。大地図,図表,グラフによりこれを図解すること。日本の輸出品の送出国,及び日本の輸出品が積み出された図を示すこと。これらの輸出品を陳列すること。それぞれの国が他の国にどのように依存しているかを各種の図を用いて示すこと。

(六) 過去における日本と(例えば)デンマルク,あるいは南アフリ力及びその他の国との経済的関係を,直接間接をとわず調ベて報告すること。

(七) 戦前の日本及び他の国々の関税を調査研究すること。その貿易に及ぼした影響を論ずること。関税は果たして世界貿易を害したかどうか,という問題を討議すること。手紙を出すなり,個人的に会うなりして,専門家から関税について意見を聞くこと。

(八) 国々の間に製品が交換される状態を示す展覧会を開くこと。学校の他の学級をこの展覧会に招くこと。父兄にも展賢会に立ち合ってもらうこと。

(九) 日本がかつて他国から学んだ政治形態,組織などについて歴史的に調べてみること。それを採用して,わが国にとってどれほど役に立ったか。民主的な政治機構の形式が改良された例と非民主的に利用された例を探し出すこと。

(一○) 国際法とは何か。明治以後日本が他国と結んだおもな条約を研究すること。

(一一) 毒ガス使用禁止というようなある国際法の問題について勉強すること。国民と個人によってなされる行為で国際法によって禁じられているものいっさいを表にすること。

(一二) 第一次世界大戦に合衆国はなぜ参戦したか。ドイツと合衆国との関係について調ベてみること。

(一三) 近代において日本から他国に移住した日本国民の数を示す図表どグラフをつくること。自分のつくった図表を学級に説明すること。その際日本人の移住した国々を示すこと。同じ時期に行われた外国人の日本への渡来についても同様の図表をつくること。

(一四) 日本が他国から学んだ技術と考案とを表にすること。日本と他の国々との文化交流を図解した地図をつくること。

(一五) 日本人の生活上のしきたりと習慣をできるだけたくさん集めること。(家庭・学校・まちでの行動・習慣・種々の慣行),外国から来たものはグラフ図解の方法を用いてその出所を示すこと。現代日本の慣習をそれぞれ他国の慣習と比較してみること。

(一六) 日本へは昔からどんな他国の宗教家が渡来したか。その人たちはどんな影響を日本人に与えたか。歴史の書物によって研究し,学級に報告すること。

(一七) 自分の学校に,洋行したことのある人々を招くこと。外地の生活のいっさいを話してもらうこと。できれば,例えば合衆国といったある一定の国をたずねた数人の人の話を聞き,各人の印象を比較してみること。

(一八) 合衆国その他の国々でつくられた映画を見ること。いつでもそれらの映画が,文字で読んだものと比ベて,いっそうよくその国の生活を表わしているかどうかを明らかにするように努めること。

(一九) 他国の人々の生活のありさまを示した劇を書き,上演すること。

(二○) 他の学級に外国の生活について,実物説明をしてやるために開く会のプログラムを準備すること。

(二一) 他国の作家たちの書いた本を読むこと。それについて学級に報告すること。著者の意見を,いちいち学校で討議すること。

(二二) 他国の劇作家の書いた演劇を選び,学校の他の学級に先んじて上演すること。

(二三) どうして,ラジオと飛行機が文化の国際的交流を加速度的に促進したかを示すこと。すぐれた外国放送を聴取すること。それについて学級で討議すること。

(二四) 他国の音楽のレコードを手に入れること。学校か家庭のラジオでレコードに吹きこまれた交響楽団の演奏を聞くこと。

(二五) 外国の絵画の模写を集めるとと。それらを生活の解釈という点を中心として日本の絵画と比較すること。

(二六) 音楽の先生に他の諸国でつくられた歌を教えてもらうように頼むこと。

(二七) 他の諸国の青年の行う競技(室内及び野外)を知ること。自分の学校にそれを紹介すること。自分の現にやっている競技の起源を明らかにすること。

(二八) 近代即ち明治のはじめからの日本と他国の関係を研究すること。近代史の種々の重大な局面に際してとった日本の外交政策を学級で討議すること。どうして日本の外交政策が他国との紛争に日本を引き入れたかを明らかにすること。

(二九) 委員を選んで一九二二年のワシントン条約,ケロッグ-ブリアン協定,一九三○年のロンドン海軍会議,九箇国条約,その他一九二○年から三七年の間に行われた国際間の会議及び協定につき報告を集めること。個々の事件に対する日本の態度を批判的に調査すること。

(三○) 委員を選び,国際連盟に関する役に立つ知識――即ちその起源,組織及び存続した間になした活動の記録――を得ること。連盟の活動に際し,日本の占めた役割を討議すること。

(三一) 役に立つ事実,情報を集めたのち,日独伊において,軍国主義が平行して成長した事実について討議すること。政府内の軍国主義の成長が,これら三国の外交政策にどんなに影響したかを示すこと。

(三二) ポツダム宣言についてのあらゆる事実を知って,そこに記されている各条項から,現在の日本の地位を明らかにすること。連合国軍占領後,発せられた連合国軍司令部の指令のおもなるものについて研究すること。

(三三) 読書の研究・討議によって戦争の原因を見出だすこと。それをすべて図表にのせること。一段目にそれを書き,二段目にはおのおの原因を説明する例を挙げること。それにもとづいて平和への見通しを研究すること。

(三四) 次のようなことで利益を得ようとした人々が戦争で演じた役割について学級討議すること。

 (1) 軍需品を製造し売却すること。

 (2) 軍隊にあって昇進すること。

 (3) うまい営利事業にありつくこと。

(三五) 大実業家の幾人かが営利のために戦争に協力した,ということについて,証拠をあげることができるか,どうか。

(三六) 日本が第二次世界大戦をひきおこした原因について,表をつくること。

(三七) 学級で戦争の経済的,社会的損失について論ずること。

 (1) 家族や友人を失う悲劇をもたらす人間生活の損失。

 (2) 人間の才能や技能の素質を失うこと。

 (3) 身体強壮な人々を失うこと。

 (4) 課税の増加。教育や公衆の福祉のために費すべき金を戦争に使うこと。

 (5) 生産と全経済生活の破壊。

 (6) 戦後の惨たんたるインフレーション。

 (7) 世界貿易の縮小。

 (8) 民主主義的政治が犠牲にされること。

 (9) 道徳的精神的価値の喪失。

 これらの損失が太平洋戦争の結果としてどのように,またどの程度に起ったかを明らかにすること。

(三八) 昭和十二年(一九三七年)に始まり昭和二十年(一九四五年)に終った戦争で死傷した人の数について情報を集めること。

(三九) 自分が手に入れることのできる歴史の教科書や参考書から人類が平和を求めるために,何世紀にもわたって展開した努力について知ること。学級の生徒が次のような課題を分担するようにきめること。

 (1) ヨーロッパ中世における私闘休止。

 (2) 国際法の父,フーゴー・グロチウス。

 (3) フロ一レンス・ナイチンゲールの伝記。

 (4) 国際赤十字社。

 (5) 一八九九年のへーグ会議。

 (6) 一九○七年のヘーグ会議。

 (7) 国際連盟の活躍。

 (8) 全米連合。

 (9) 一九二一年のワシントン会議。

 (10) 一九二五年のロカルノ会議。

 (11) 一九三○年のロンドン会議。

 (12) 一九三二年のジュネーヴ会議。

 (13) ヘーグの永久仲裁裁判所。

(四○) パリ・モスコー・ニューヨークの四国外相会議,平和会議について,また米・英・中国・ソ連等の平和に対する努力,及び小国家群と平和といこうとについて,勉強し討議すること。

(四一) 国際連合の憲章を遂条的に検討討議すること。憲章に関する新聞記事をできるだけ多く集めること。国際連合の起源・組織・目的を討議すること。国際連合の機構に関する記事を切り抜いて保存すること。それらの記事を見つけしだい,学級で朗読し,それについて学級討議すること。

(四二) 第二次世界大戦後,社会理想はどのような変化をうけたろうか。学級でそれについて調ベ,戦後の理想世界について,一定の結論を出すような討議を行うこと。

(四三) 国際問題に関する新聞の切り抜きでスクラップ・ブックを作ること。

(四四) あへん取り引きを抑制し,労働者の状態を改善しようとする国際的な試みについて報告(文書または口頭)すること。

(四五) 「戦争を防止するために仲裁が,どういうふうに用いられて来たか」という題目で学級に報告を準備し,それを述べること。

(四六) 新憲法の戦争放棄・文化国家の建設の重点について作文をつくり,学級で発表し批判しあうこと。できるならば近隣の高等学校と公開討論会を行うこと。

(四七) 日本が平和の国となるために必要な条件を研究し,それを表に作って,現在の状況と比較すること。

(四八) 日本がいろいろな時代に人口問題の解決に対してとって来たいろいろな政策を歴史的に比ベること。今後の日本は人口問題をどうすればよいか。平和的な解決という点から現在の資料を集めて研究すること。

(四九) 新憲法の規定している社会理想の各条項について,他の民主諸国家のそれと比較研究してみること。

(五○) ニュース記事にもとづき,民主主義諸国が平和達成のためには,いかに喜んで自国の意図のうちのあるものを犠牲にするか,ということを立証すること。

(五一) 国際競技の記録を調ベること。日本がオリンピック競技やデ杯戦やその他国際的なスポーツに加わっていたときの状況を示すこと。

(五二) 人類の福祉に寄与したことによって国際的名声を得た人々の伝記――例えばウッドロー・ウイルソン,トーマス・マン,フランクリン・デラノ・ルーズベルト,キューリー夫人,アインスタイン――を扱った文章を学級全体のために書くこと。

(五三) 極端な国家主義者が自国と他国とに対して与えた不幸の例を挙げて,討議すること。

(五四) 他の国々の人々との協力を討議する学生討論会を組織すること。

(五五) 手紙を書いたり,個人的に面会したりする計画を立てて,日本が一九四一年より前に学生・教授・医者・科学者等を他の国々と交換した方法を調査すること。このことが関係諸国民をどのように利したかを示すこと。

(五六) 国際労働会議の歴史を調ベること。労働者と世界平和という題目で作文を書き討議すること。

(五七) 自分たちが日本人の誇りとして持ち得るもの(伝統・性格・文化的遺産等) について科学的に検討し,他国民のそれと十分比較して学級で一覧表にまとめてみること。

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学習指導要領・社会科編Ⅱ(試案)=昭和22年版 に示された現在の中3・社会科の学習活動例

 今回は,第9学年・・・現在の中学校3年生の単元と学習活動例をご紹介します。

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単元一 われわれは,過去の文化遺産を,どのように,うけついで来ているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 自分の日常使っている学用品について一覧表を作り,両親,祖父母あるいは近所の年とった人にたずねて,それらの人々が少年少女時代に用いた品物と比較すること。いつごろから現在のようなものを使うようになったか。それはどこから伝わったものか,なぜ変化したのだろうか。書物などによって調べること。

(二) 自分の家の古いアルバムを調ベて,両親や祖父母の若かったころの服装,髪の形,着物の模様や身のまわり品について,現在のものと比べてみること。それは,いつごろ,どのようにして変わって行ったであろうか。日本人が洋服を着るようになったのは,いつごろからか。洋服が次第に多く用いられるようになった理由について,学級で討議すること。モンペがなぜ流行するようになったかを,討議すること。

(三) 昔の絵や写真を集めたり,また,博物館を訪問して模型を調ベて,昔風の家と現代風の家,農村風の家と都市風の家とを,構造の点から比較すること。和洋風を兼ねた家が自分の近くにないか。あれば,その長短,便,不便について,討議すること。

(四) 日本人が精白した米をたべるようになったのは,いつごろからであろうか。「日本人もできるだけパンとバターと牛乳の食生活を採用すべきである」という主題について,その賛否を学級で討論すること。

(五) 書物を読んだり,先生に話を聞いたりして,書物の歴史について調ベること。人類が事件や物事を書き残す必要が生じたとき,どんな方法で,何を使って,その必要をみたしたか。それは,どういう不便を持っていたか。その後いかなる点が改善されたか。改善されたについて,直接間接に影響を与えたのは,どういう発明や発見であったか。このようにして現在のような書物になるまでの歴史を絵や写真や文章でまとめて学級に報告すること。

 新聞の歴史についても調べること。同じく手紙の歴史について,調ベること。

(六) ことばや文字は,どのようにして現在の形にまで発展して来たか。日本や中国の材料によるばかりでなく,ヨーロッパの場合についても研究してみること。

(七) 昔の手紙や書物を読んで,文章やことばの表現の仕方の違いについて,調ベること。それは,次第にどのような方向に変わって来たであろうか。候文と口語文との得失を論じてみること。

(八) 書物を読んで貨幣の歴史を調ベ,物々交換時代から,石の貨幣や貝殻を貨幣に代用した時代,硬貨金銀・銅・ニッケル貨など)を用いるようになった時代,紙幣時代,さらに小切手や証券を用いる時代と順序に調ベ,知識の発達との関係について,討議すること。

(九) 薬の歴史について,書物を読んだり,薬剤師や医師に話を聞いて調ベること。毒草や食用植物の区別を,昔の人はどうしてやって来たであろうか。現在のわれわれは,これをどうして調ベているか。人類の経験の重要なことと,試行錯誤について,討議すること。

(一○) わが国の法律制度を歴史の書物によって調ベ,それがどのように発達して来たかを比べて学級に報告すること。

(一一) 「解体新書」や「蘭学事始(ことはじめ)」について,先生から話を聞き,わが国における西洋医学の発達について,研究すること。実験や観察や調査ということが,学問の進歩に,いかに必要であるかについて考えること。東洋においては,一般に自然科学の発達がおくれたのはなぜだろうか,討議すること。

(一二) 家や村(町)の生活を中心として,迷信や禁忌をできるだけ集めて表にし,それが自分たちの生活にどんな影響があるかを話すこと。カレンダー(こよみ)はこの数箇年の間に非常に変化した。現在使っているこよみで,われわれの日常生活を営むのには何か不便があるであろうか。このことを両親や祖父母からも聞いて,比較すること。

(一三) 明治以来現在までの間に,われわれの日常使っている道具や,衣食住の材料や,身のまわり品,生活の様式,ことばなど,さまざまなものについて著しい変化のあったものと,余り変化のないものの例をできるだけ挙げて,表にすること。また,都市と農村とでは,どちらが変化が早いか。明治から大正・昭和にかけて,ある時期に急に服装や生活の様式に変化が著しく進んだ時がなかったか。あったとすれば,その原因は何であっただろうか。以上のことを材料にして,社会の変化と生活の伝統について,話し合うこと。

(一四) 歴史や人類の文化に関する書物を読み,人類が昔から使用して来た用具によって,人類の発達を時代的に区分したやり方を研究すること。石器時代,金石併用時代というように分けて考えてみること。現代を,もしこのような区分によって位置づけようとすれば,どういう時代だといえるであろうか。

(一五) 建築や土木工事に,ガラスやセメントを材料として豊富に用いるようになったのは,いつごろからであろうか。また,生活のあらゆる方面にわたって,機械を使用するようになったのは,いつごろからであろうか。それはわれわれの生活をいかに変化させたか。

(一六) 人間の生活が,ある発明や発見によって著しい変化を起した例が,過去においてどのくらいあっただろうか。発明発見家の名まえと,その発明発見の年代を調ベて年表を作り,教室の壁にはりつけること。同じように,それまで人間の使用して来たものに改良を加えて進歩させた例についても,調ベること。

(一七) ある発明や発見や技術的改良によって,社会生活はどのように変化したか。特に工業的世界といわれる現代の世界についてくわしく調べ,学級に報告すること。

(一八) 西洋史の書物を読んで知識を得て,ある地方の文化(例えばキリシヤ文化・ローマ文化など)が盛んになった原因として,遠い外国文化の影響がいかに働いたかについて調ベること。マルコ・ポーロ,コロンブス,マゼランなどの探険家の旅行したコースを調ベ,それらの探検家のもたらした異境の文化が,ヨーロッパ文化の発展にどのような影響を与えたか考えること。

(一九) 奈良時代の文化(例えば法隆寺や正倉院の御物など)について,写真や解説書を読んで,日本の上代文化に及ぼした大陸の影響についてのベ,学級に報告すること。大陸文化の影響は,その後,日本でどのように変化して行ったであろうか。鎌倉,室町時代の文化についても調べ,日本文化の特質を代表するような芸術・工芸・彫刻・建築・生活様式などが次第にととのった形をとるようになった時代について,研究すること。

(二○) 明治維新後,わが国がとり入れた外国文化によって,どういう方面が最も大きな変化を受けたであろうか,種々のものについて具体的に例をあげて研究すること。西洋文化の輸入によって,わが国の伝統的な文化は,すっかりこわれてしまっただろうか。その影響の著しかった方面と,余り影響を受けなかったと思われる方面とを比較し,各々について理由を考え,学級で討議すること。

(二一) 衣服について,その形式や材料が歴史的にどう変化して来たか。晴れ着・平常着・労働着使用の場合の相違,及び地域的または民族別,気候風上別に衣服の違いを調ベて,学級に報告すること。

(二二) 家屋の構造に関し,農村では一般農家と地主及び昔の名主の家,都会では一般民家と商家(しにせ)との違いを比較し,その相違の意味及び家庭生活に関するその役割について,討議すること。

(二三) 日本の家屋には,昔からどんな種類と形式があったかを調べて,報告すること。

(二四)世界の各民族の家の構造を調べ,それらが,住居としてどの程度要求をみたしているかを比較研究して,討議すること。

(二五) 家の構造や方位などについて,どんなの禁忌があるかと調ベ,それらが,現在の生活にどの程度の影響力を持っているかを調ベて,報告すること。

(二六) 主食として,昔からどんなものが食べられたか,世界の各民族の主食はどうか,なぜ各地で主食が違うかについて調べ,学級に報告すること。

(二七) 食事に関する禁忌を調べ,その可否について討議し,結論をまとめて先生に報告すること。

(二八) 食器の種類及び変遷,どうしてそのように変化したかを調ベること。

(二九) 本家と分家の関係,及び親せきの機能について調ベ,それがわれわれの生活にどの程度の力を持っているか,また,そのよい点と悪い点について討議し,われわれの生活をよりよくするためにはどうしたらよいかについて,結論を出して報告すること。

(三○) 郷土附近には,どんな姓が最も多いか,これを調べて統計表を作ること。

(三一) 家庭では,どんな年中行事が行われているか,それは,今日どの程度保存されているかを調ベて,報告すること。

(三二) 婚姻はどんな方式によって行っているか,また,結婚は村内同志が多いか,村外あるいは,他地方のものが多いか,結婚に関する慣習がその地方の思想にいかに影響しているかについて調べること。

(三三) 村はどのように治められているか,また,昔はどうであったかを老人に聞き,よい点と悪い点とを討議して,報告すること。

(三四) 村内の団体(若者組・娘組など),講(頼母子(たのもし)講など)について,その種類及びそれがどんな働きを持っているかについて,各組を作って調査して,報告すること。

(三五) 村民が共同で行っている行事について,その種類,それが今日の生活に対して,どんな意味を持っているかを調ベて,報告すること。

(三六) 「郷に入っては郷に従え」ということわざについて,そのいろいろな場合について討議し,そのよい場合と悪い場合とについて報告すること。

(三七) 道路やみぞの修理,あるいは共有地の労力は,どのようにして提供されているか,それはだれが指揮し,またいかなる方法で行っているかを,村役場や古老について聞き,よい道路とその輸送能力について調ベること。

(三八) 村の歴史の基本的なものについて調ベること。

(三九) 農耕に関係した儀礼にはどんなものがあるか,それはどんな意味を持っているか,また,それはどんな方法で行われているか,できれば写真にとったり,絵に書いたりして報告すること。

(四○) 農具の種類及びその変遷を,時代別,地方別に調ベ,その特徴や,改良すべき点などについて,討議して報告すること。

(四一) 村民は,商家への支払いにおいて,「かけ売り」あるいはその他の制度によっているか,それは,盆及び正月の二回か,現代の商業の発展と消費者の立場から,それはよいか悪いか,学級で討議すること。

(四二) 問屋の機能を調査し,現在それがどの程度の力を持っているか,それはどう変化しつゝあるか,近代商工業の発展という点からこれを批判討議して,報告すること。

(四三) 行商人,例えば,富山の薬商人などについて,その組織・歴史・機能などを調ベて,報告すること。

(四四) 民間療法としてどんなものがあるか,療法はどうか,薬の種類にはどんなものがあるかを調ベて,報告すること。

(四五) 商家における主人と番頭とでっちとの関係を調べ,それは,現在どう変化しているか,また,そのよい点と悪い点とを指摘して,報告すること。

(四六) 郷土附近の地名は,明らかにある地形にその起源を持つと考えられるものがあるか,これらについて調べ,また,この地名がどこの地点から起ったかをも調査して,報告すること。

(四七) 郷土附近の地名には,その昔の開墾や耕作方法から発生したと考えられるものがあるか,これについて調べて討議すること。

(四八) 郷土附近の地名には,昔の交通に関係して発生したと思われる地名がないか,これについて調べて,報告あるいは討議すること。

(四九) 郷土附近の地名で,それが明らかに昔のあることから発したと思われるものについて調ベ,討議すること。

(五○) 郷士附近の地名には,最近新たにつけられたものがあるか,その種類・地点・意味について調べ,報告すること。

(五一) 自分の近隣に,辰(たつ)市・とり市・二日市・三日市・四日市・五日市・八日市・二十日市・馬市などの地点があれば,それについて,また地形・産業の点から,それがどうして発生して来たものか,またそれが衰えたことによって,日本人の生活にはどんな影響があったかを,討議すること。

(五二) 商業・工業における仲間について,その種類・機能,そのよい点と悪い点とを調ベて,討議すること。

(五三) 親方と徒弟の関係について,昔はどうか,現在はどうか,徒弟の修業年限及び義務などについて,親方と称するものから聞き,近代商工業の発展といら点から,そのよい点と悪い点とについて調べ,討議すること。

(五四) 交通の用具としてどんなものがあるか,また,交通用具の発達について調ベ,報告すること。

(五五) 市(いち)について,その種類・場所・日数・市のたつ回数,神様との関係,また市の開かれる日をなんというか,農業休みその他の休日とどんな関係があるかを調ベて,報告すること。

(五六) 市では,地方によってどんな品物が売買されるかを調ベること。

(五七) 自分の村に,どんな口碑や伝説があるか,また彰徳碑などがあれば,それについて,それが村の発達とどんな関係があったかを,古老や旧家などに行って聞き,学級に報告すること。

(五八) 盆踊りについて,その変遷を古老に聞き,それは農村にとって必要なものかどうか,必要であるとしても改善すベき点はないか,などについて討議し,報告すること。

(五九) 古老から昔の説話についてできるだけ聞き集め,その現在の生活に対する影響について,先生を交えて討議すること。

(六○) 中国の年中行事について調べ,日本のそれとどんな関係があるかを考えること。

(六一) 中国の伝説を集めて報告すること。

(六二) 中国の廟会について,その時日・意義などについて調ベ,報告すること。

(六三) 娘々祭(にゃんにゃんまつり)について調ベ,報告すること。

(六四) インドネシヤ人の農耕儀礼についてそのだいたいを調べ,報告すること。

(六五) 日本の家と,中国の家と,西洋の家の構造を比較し,その得失を討議すること。

(六六) 日本服と,中国服と,洋服とを比較し,その得失を討議すること。

(六七) 日本食と,中国食と,洋食とを比較し,その得失を討議すること。


単元二 (イ) われわれの芸術的な欲求ご満足させるために,社会はどんな機会を与えているか。
~学習活動の例~

(一) 子供たちは,歌をうたったり,絵を書いたりしているであろうか。そういう欲望を,どういう形で表わしているであろうか。自分の弟や妹を観察して,その種類・機会などについて,表を作ってみること。

(二) 原始人たちは,どんな形で芸術的欲望を表現したか。浜田靑陵著「博物館」というような本を説んで,報告文を書くこと。

(三) 未開人の楽しみは,どんな形でなされているか,映画や,書かれた書物などによって,そのありさまを知り,学級に報告すること。それは,われわれの現在の楽しみと似たところがあるであろうか。それで,どんな美的な欲望がみたされているのであろうか。

(四) 未開人の装飾について,それと実用との関係を調ベてみること。家の装飾は,たゞ美化するだけのためのものか,それとも,必要から生まれて来たものか,写真を集めて研究すること。

(五) 日本の古代人は,どんな遺跡を残しているか。歴史の書物を続んだり,陳列してあるものを見学したり,地方の家の所蔵の美術品を見たりして研究すること。それは,現在の生活と,どんな関係を持っているであろうか。

(六) 日本の古代には,芸術文化の上で,大陸からどんな影響を受けたか,歴史の書物によって研究すること。また,正倉院の御物について,先生の講義を聞くこと。石田幹之助著「長安の春」というような本を,先生に読んでもらい,それにもとづき,東西文化の交流について討議すること。今日のわれわれの生活で,こういう文化の表現は,どんな意味を持っているであろうか。

(七) 東洋古代の芸術文化は,現在の日本の文化にどんな影響を及ぼしているか表を作って研究してみること。

(八) 西洋の古代の芸術文化に関する写真を集めること。エジプト・ギリシヤ・ローマなどの芸術文化が,現在のわれわれにとって,どんな関係があるか,調ベてみること。

(九) ギリシヤ神話に取材した文芸作品を集めてみること。

(一○) ギリシヤの彫刻と近代彫刻とを比較して,その特色について調ベてみること。また,現代の生活の中に残るその影響を探してみること。

(一一) 仏教美術・キリスト教美術の写真を集めてみること。キリスト教の教会・仏教の寺院・回教の寺院・神社の写真などを集めることもよい。

(一二) 国語でならう日本の古典を調ベ,「古典と時代精神」という題で作文を書くこと。「日本の美の伝統と特色」という点について,研究すること(能・生花・茶の湯・和歌・俳句・庭園など)。

(一三) 明治以前の日本人の一般の楽しみは,どんなものであったろうか。音楽・舞踊・演劇などについて調ベてみること。それは現在までどんな影響を与えているであろうか。

(一四) 機械の発明が行われてから,芸術文化にどんな変化が起ったであろうか。印刷術を例にとって討議すること。また,美の世界は,どんなに拡大されたであろうか。

(一五) 日本は,明治以来,どんな国々の文化の影響を受けたであろうか。交通・通信の発達が,芸術文化に及ぼす影響という点で,代表的な例を考えてみること。

(一六) 科学はどんな新しい楽しみを人間生活に与えているであろうか,その例を考えてみること。それは,どんな点で過去の芸術に影響を与えているであろうか,それについて討議すること。

(一七) 学級で,趣味の調査をしてみること。その項目は,小説・詩・和歌・俳句・絵画・彫刻・音楽・映画・写真・ラジオなどとすること。

(一八) 自分の郷土には,どんな種類の文化団体があるであろうか。文化団体の名まえ・目的・会員数などを調ベること。

(一九) 自分の郷土からは,どんな芸術家が出ているか,調べてみること,郷土に住んでいる芸術家をたずねて,地方文化の向上という点について話を聞くこと。

(二○) できれば,学校が主催して,地方の絵画展覧会を開くこと。在住の画家などと相談して,その計画を立てること。

(二一) 自分の郷土には,どんな工芸品が生産されているか,その歴史について調ベてみること。学校にそれを報告し,一つ一つの工芸品について,将来性があるかどうか,討議すること。最近それらはどんなに変わって来たか。自分の家庭にはどんな道具,調度,工芸品があるか。それらはどこで出来たか,その製作過程を調べてみること。

(二二) 自分の郷土では,盆踊りはどんな程度に行われているか,どんな歌詞がうたわれているか,どんな歴史を持っているか,などについて調ベてみること。盆踊りは,地方の生活にとってどんな意義を持っているか,その利害について討議すること。できれば,盆踊りの歌詞を作ってみること。

(二三) 日本音楽と西洋音楽との違う点,似ている点について討議すること。ラジオの音楽番組で,日本音楽と西洋音楽の比率を,一週間を通じて調べてみること。それは中央局と地方局とで,どう違っているか。

(二四) 郷土出身,あるいは郷土在住の音楽家を中心に,音楽会を計画すること。

(二五) 世界の大音楽家の伝記を書いて,学級で朗読すること。

(二六) 学級のレコード・コンサートを計画し,すぐれた音楽を,他の学級の者も,聞かせること,その際,学級の数名が選ばれて,解説の役目を引き受けること。

(二七) 世界及び日本の名画の模写を集め,その下におのおのの解説をつけて,学級展覧会を開くこと,学級として,すぐれた絵画展を見学し,図画の先生から説明を聞くこと。

(二八) 学級や学校で,読書傾向を調査し,項目に分けて図表を作ること。それによって,読書指導について,討議すること。

(二九) 自分の好む文学作品について,そのあらすじをまとめ,学級に報告し,それに含まれている思想や理想について説明し,学級討議を行うこと。

(三○) 地方の図書館に行き,人々の読書の趣味や傾向,そのおのおのの人数,書物の種類などを調べること。また,書店に行って,書籍・雑誌などについて,その売れ行きを調ベ,統計をとってみること。

(三一) 地方の図書館は,どういうふうに経営され管理されているか,財政はどうなっているか,調ベてみること。全国にはどれくらい図書館があるか,それぞれ,どういうふうに経営され管理されているか,財政はどうなっているか,調ベてみること。政府や社会は,図書館に対して,どんな関心を示しているか,数字を挙げて学級に報告すること。また,望ましい状態は,どうかという点について,討議すること。

(三二) 自分の地方には,映画館はどのくらいあるであろうか,過去一箇月間にどんな映画が上映されたか,表にあらわしてみること。自分の町の映画館の上映写真について,学級で投票を行い,その人気の高下,及びその理由を明らかにすること(製作会社名も明らかにすること)。

(三三) 「映画と青年」という題で作文を書くこと。映画は,地方文化に対し,どんな利害を与えているか,それは文化生活に対して大きな価値を持っているか。

(三四) 地方の商業劇場では,どんな出し物が行われているか,学級の生徒の家庭では,どのくらいの割合で見に行くか,統計をとってみること。できれば,劇の種類(かぶき・新劇など)と,見に行く人の年齢・職業などを調ベてみること。また,学級の者は,どういうものを要求するか,討議すること。

(三五) 地方のしろうと演劇を調べてみること。どんな人たちが主になってしているか,その利害などについて報告書を書くこと。

(三六) 学級で,脚本朗読をしてみること。できるだけ望ましい脚本を選び,できれば自分たちで簡単な脚本を書いてみること。

(三七) 自分の家庭でラジオ劇を聞き,まず家庭で批評会を行い,それをもとにして,学級で討議してみること。

(三八) 自分たちの地方には,有名な建築物はないであろうか。県の有名な建築物の写真を集めて表を作ること。地方や中央の政府は,それに対して,どういう保護を加えているか,研究すること。自分の町の美しい建物(古くても,新しくても)を調ベ,なぜ美しいかについて,討議すること。

(三九) 産業の発達にともなって,装飾品にどんな変化が起って来たかを調ベてみること。自分たちの周囲を調ベて,どんな新しい材料が使われているかを研究すること。例えば,筆入れなどの材料や形が,どんなに変わって来たか図示すること。自分でも,新しい装飾品の設計図を書いてみること。

(四○) 政府は,国民の文化生活を改善するために,どんな仕事をしているか,あらゆる領域にわたって調べ,それを図表にあらわしてみること。もっと政府に期待すベき点について討議すること。

(四一) 自分の町の当局者に会い,都市の美化についての計画を聞くこと。できれば,学級で,都市の美化という立場で,自分の町の都市計画を考え,鳥かん図を作ってみること。

(四二) 学級あるいは学校で,読書会・音楽会・音楽同好会・美術同好会・短歌会・俳句会・書道会などの同好会を作り,地方の人たちと協力して,どの程度まで成功するか,研究してみること。

(四三) 学校あるいは学級の図書は,どういうふうに利用されているか,それと地方の人たちに公開することの是非について,討議すること。公開するとすれば,学級の生徒は,どんな責任のある仕事をすることができるか。

(四四) 「図書館のよき利用者」,「劇場のよき観衆」,「音楽会のよき聴衆」というような題で,公共の施設を利用する。よき態度について表を作ること。

(四五) 学級で,文学作品を発表し,回覧雑誌を作ること。

(四六) 学級あるいは学校で,自分たちの作品で,美術展覧会を開くこと。

(四七) 教室を美しくするための委員会を作り,交替で,責任をもって,その計画に当たること。

(四八) 学校に花壇を作り,責任者をきめて,その管理を行うこと。

(四九) 衣服のがらや型の流行の美について討議すること。また,生活のいろいろな角度から討議すること。


単元二 (ロ) 宗教は,社会生活に対して,どんな影響を与えて来たか。

~学習活動の例~

(一) 自分の地方の宗教の種類や土俗信仰を調べて報告すること。

(二) 自分の地方で行われている収穫の祭やその他の宗教行事について調ベること。それらは地方の人々の生活にとってどんな価値があるか。よく調べた後で討議すること。

(三) 仏教の成立とその発展について調べて報告すること。仏教はどのようにして日本に伝来し,どんなに日本人の社会生活を変えたか。現在どのような影響を与えているか,学級で討議すること。

(四) 鎌倉時代には,いろいろの仏教の宗派が発生した。これはどういう理由によるのだろうか。またそれらは従来の仏教とどのような点で異なっているか。その点について学級に報告すること。

(五) 歴史の書物などによって,キリスト教はどうして成立したかについて調ベ学級に報告すること。それはいつ日本に伝えられたか。それはわれわれの社会生活にどんな影響を与えているか。

(六) キリスト教と仏教の教義は実際にどう違うか。儀礼などもどう異なっているか。またその教義や信仰で共通な点はどこにあるか。これらについてよく調べた上で討議すること。

(七) 同教の成立とその発展について調ベ,簡単に報告すること。

(八) 神道にはどんなものがあるか。その種類を調ベて報告すること。それらは自分の地方の社会生活にどんな影響を与えているであろうか。

(九) 儒教や道教の影響はどうであろうか。それは家庭や社会的にどんな形で現われているか。それについて研究し討議すること。

(一○) 世界のおもな宗教の時代分けと分布を地図の上で示してみること。

(一一) 自分の近所の神社や教会や寺院が社会生活に対してどんな意味をもっているかについて報告すること。

(一二) 教会や寺院の果たして来た社会的責任の重要なものは何かということについて討議すること。

(一三) 宗教団体による救済機関としてはどんなものがあるか。またそれによってどれぐらいの人々がどのように救済されているかについて調ベて報告すること。

(一四) 自分の近所に宗教団体によって,経営されている幼椎園・学校及びその他の教育施設があれば,方針・内容,及び社会貢献する教育活動について調べて報告すること。

(一五) 日本の宗教の中で,社会事業の点でどの宗教の宗派が活動的であるか。それらはどのような方面に活動しているかについて調ベて報告すること。

(一六) 自分の近隣に宗教団体によって経営されている学校があれば,その教育はどこに重点をおいているかについて報告すること。

(一七) 信仰に一生をさゝげ社会に影響を与えた人々を主題にして,物語を書き学級で朗読すること。

(一八) 信教の自由を求めて戦かった人々のうちからひとりを選んでその人について短い伝記を書き,それを学級で朗読すること。

(一九) なぜ信教の自由は必要なのであろうか。日本では,信教の自由はどんな発展をして来たか。明治憲法にも信教の自由について明記してあるが,新憲法であらためて,これを強調しなくてはならなかった理由について討議すること。


単元三 われわれの政治は,どのように行われているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 家のしきたりを挙げて表にし,そのうちで興味のあるものを選んで,討議すること。家のしきたりはどうしてできたのであろうか,なぜそういうしきたりは必要なのか。

(二) 隣近所の人々が,互に協力して働いたり,手伝い合ったりする時があれば表にすること。例えば,

 (イ) とむらい講(組)

 (ロ) ゆい・てまがえ・もやい

 (ハ) てつだい
 このやうなしきたりは,いまでも盛んに行われているであろうか。どんなふうに行われているだろうか。その組の仲間の人は,これらのことを喜んでいるだろうか。それともきらっているだろうか。これらの協力は,将来どうなると思うか。学級で討議すること。

(三) H・G・ウェルズの「世界文化史大系」や,バンルーンの「人類解放物語」その他のものを読んで,原始社会や未開社会について知識を得ること。社会が成り立つためには,そこで,どんな条件が必要か(生活の規則や義務とかそれらによる統制とか)を明らかにすること。どんな単純な社会でも,秩序があることを明らかにすること。そういう社会と,自分たちの社会とを,個人と証会との関係がどんなふうに発展して来たかという点で比較して明らかにすること。

(四) 自分の学級や学校のいろいろの規則を集めて,調ベること。

 (1) 校則や校訓のできたわけを,調査すること。どういう時にできたか。だれが作ったか。どういう機会にできたか。それらは,いまでも必要であろうか。

 (2) もっとよいものを自分たちで作るには,どうしたらよいか。

 (3) 校長先生と他の先生たちと生徒との関係を,図表に書いてみること。

 (4) 学校の仕事や,日々の行事をなめらかに進めて行くために,自分の学校には,どんな組織や設備があるであろうか。生徒の協力できる範囲を,明らかにすること。

 (5) 学校の生徒が,不都合なことをした場合には,どんな処置がとられるか,悪いことや,困ることや,危険なことが起らないように,学校では,どのような工夫が払われているであろうか。これらを調ベ,改善案を考え,先生といっしょに討議すること。

(五) 自分の学校に適用される国・県・その他の法令を集めて研究すること。それらを討議して,一つ一つの規定が,学校に及ぼす影響を正確に調ベてみること。それらの法令の範囲内で,できる改良について考え,それから明らかに現在の規則を変えた方がよいと思われる例について,考えてみること。

(六) 自分の学校の衛生委員会と設備改善委員会を作ること。この委員会は視察を行って事情の報告をなすこと。問題が見出だされたら,それを学級で討議して,解決をはかること。もし自分たちで取り扱えない問題があれば,学校教育当局や専門家(校医・学務委員・学校父兄会・後援会会長)の注意を促す方法を考えること。

(七) 学校内の生活に例をとって,よい指導者や,よい協力者の特色を挙げて学級で討議すること。在学期間中に,学級のすべての生徒が指導者として活動できる機会を作ること。

(八) 人々が,共通の目的のために,いかに協力して来たかを明らにするために,自分たちの市・区・町・村内にある重要な組織について,研究すること。市・区・町・村民の組合や,協会全部の表を作り,それぞれその指導者に会ってみること。できれば,いつでも個人または委員会の一員として,会合に出席するようにはかること。

 労働組合・婦人の会・青年の会・休養娯楽の会・厚生組織・宗教の会などの現在の仕事について討議すること。一年間のうちに,本を一冊編集して,各組合組織の発生・目的・存在理由・活動・形態・組織・内容などを書きこむこと。もし,ある組織が,価値のある目的のために働いていると思い,自分たちもその力になれると思ったならば,進んでそれに参加すること。

(九) 学校の生徒は,かならず学校の規則を守るだろうか。市・区・町・村の人人が,その市・区・町・村の規則を堅く守ることによってもたらされるいろいろな利益を挙げて,学級で表にすること。もし現在のわれわれを統制しているいろいろの規則が,全部なくなったとしたら,そこに起ると思われる混乱を挙げてみること。規則や法律はなぜ時代の変化とともに,改良され,進歩していかなくてはならないであろうか。

(一○) 自分の家庭,及び自分の地方の他の家庭の生活が,政府のやり方によってどういう影響を受けるか,政府から受ける利益について,表を作ること。

(一一) 市役所・区役所・町・村役場,都道府県庁,及び政府と,自分との関係を示す図表を作ること。

(一二) 委員会を組織して,市・区・町・村長及びその他の地方役場の公務員をすべて訪問し会見してみること。その人たちの職責・資格・給料・任命方法を知ること。自分の知ったことがらを,すべて学級の生徒に報告し,討議すること。新憲法は,地方公共団体公務員の公選を規定しているが,自分自身でも,その公選の計画を立ててみること。それを立てる前に,外国の市・区・町村役場を研究すること。

(一三) 市・区・町村役場の組織を示す大きな図表をかいて,級友に説明すること。

(一四) もしできるならば,自分たちの市・町・村会の会議を傍聴すること。会議の進行状態を注意して観察すること。市・区・町・村会議員の選出法・資格・給料・職責を研究すること。選出法で変えた方がよいと思うことについて,討議すること。自分の生活に影響のある市・区・町・村会の活動を表に作ること。

(一五) 市・区・町・村役場の活動に関係した題材を,新聞から拾い出し,それを切り抜いて整理保存すること。また市・区・町・村役場の公務員を学校に招き,その活動について,説明を受けること。

(一六) 模擬市・区・町・村議会を,自分の学級か学校に組織し,市・区・町・村問題を,討議すること。

(一七) 自分たちの地方の人々には,どんなふうに税が課せられているかを調ベること。税金がどのように費やされるかを調べること。徴税と支出とを示す図表を作ること。地方の人が,それらの支出によって,どんな恩恵を受けているか,個々の場合に当たって調べること。

(一八) 外国の市・区・町・村行政組織に関係する資料をすべて集めて,研究すること。それらを,日本のものと比ベてみること。

(一九) 自分たちの地方にある法廷をたずねること。法廷の手続,進行法などを研究して,(他の国々の裁判手続きを勉強して)他国における手続きと比較すること。裁判官や,他の法廷官吏の選抜法を明らかにすること。法廷勤務の公務員に会って,その職責と,法廷の手続きとを,説明してもらうこと。

(二○) 学校に模疑法法廷作り,正確な法廷手続きを完全に履行すること。自分から進んでその役とやろうとするある生徒を被告にして,犯罪の疑いをかけてみること。

(二一) 警察署をたずね,その仕事を研究すること。警官の探用法を調在し,現在の警察制度で改全したほうがよいと思う点について,級友と討議すること。警察官吏を教室に招き,その職責についてたずねること。

(二二) 逮捕・拘引は,どうして行われるかを調ベること。(憲法三十二・三十四・三十五条参照)。罪の確証を得るために,拷問の方法が現在用いられているか,過去はどうであったかを調べること。被告と証人から証言を得る仕方ば他国で用いられているのと同しであろうか。(憲法三十六・三十八条参照)。

(二三) 自分の地方で,防火の責任に当たる人の任命法・資格・職責について,明らかにすること。消防署に行って,消防士の仕事,そのやり方を調ベること。

(二四) 自分の地方の政治に関するある程度の欠陥を示し,それを改善する方法を取り扱った劇を作り,上演すること。

(二五) 自分の市・区・町・村役場の公務員や,地方事務所や,県の公務員で,だれが公衆の健康について仕事をしているかを明らかにすること。その人たちをたずね,その仕事について話し合うこと。

(二六) 自分たちの地方の食糧配給機構を,調ベること。闇市場のある範囲を明らかにすること。闇市場を,正しい統制のもとにおく方法手段について,討議すること。

(二七) 自分たちの地方で,衛生状態の悪い場所を見つけ出すこと。その問題について討議し,改善策と提議すること。公衆便所は整備されているか,下水は完備しているか,ちりあくたは完全に処理されているか。地方の当局や,私設団体が,公衆衛生のためにどんな活動をしているかを,調ベること。

(二八) 成人教育の団休の会合を傍聴すること,地方の教育とレクリエーションについて論じている新聞記事に,注意すること。地方の学校の改良に関する意見を集めて,討議すること。

(二九) 都道府県庁に関する記事や,書物を,自分の府県の役所を特に参照しながら,読むこと。府県会をたずね,できるならば会議を傍聴すること。地方行政改正案を参照して,この立法機関の構成・職責・成員の資格・組織及び手続きを明らかにし,学級に報告すること。

(三○) 自分の府県の知事及び府県庁の他の公務員を十分研究すること。知事は現在どうして任命されるか,他の公務員はどうか。知事及び府県庁の公務員の職責及び活動について表を作り,学級に報告すること。知事の職は,現在どうなっているか,新憲法のもとではどうなるかという問題を,学級で討議すること。もしできれば,府県民に対する恩恵という点から,この数年になしとげられた仕事の記録を,研究すること。新憲法は,府県の公務員の身分に,どんな変化を与えるか。

(三一) 日本の歴史や,日本の政治の発展について,書物を読んで,政治上の事件について,関係した重要な人物・年代・事件の内容などを,簡単な年表に作ること。

(三二) 日本の政治の組織について,歴史の書物などによって,次のことを明らかにすること。

 (1) 公家政治と天皇との関係(院政を含めて)。

 (2) 武家政治と天皇との関係(特に幕府政治について)。

 (3) 明治政府と天皇との関係。

 (4) 現代の政府と天皇との関係。

(三三) 郷土の古老で,明治維新のことをくわしく知っている人があれば,これを訪問して話を聞くこと。また,明治維新について,日本歴史の書物を読んで,これを学級に報告すること。特に,それが「革新」であったとともに「復古」であったことを具体的な事実について研究し,学級で討議すること。次のような点では,維新前と維新後では,どんなに変わったであろうか。

 (1) 政治の仕方とその組織。

 (2) 階級制度(士・農・工・商の別)。

 (3) 租 税

 (4) 交通・通信・運輸。

 (5) 工業・商業・貿易。

 (6) 武士の生活。

 (7) 町人や農民の生活。

 (8) 教育と文化。

 (9) 宗 教。

(三四) 明治憲法が,外国の影響を受けている点について調ベてみること。(例えば,プロシア・イギリス・合衆国・フランスなど)。

(三五) 明治憲法について,特に,次の点を明らかにし,学級で討議すること。

 (1) 立憲君主制。

 (2) 代議政治組織。

 (3) 天皇権と三権分立。

 (4) 政党政治。

 (5) 国民の権利と義務。

(三六) 明治憲法が発布されてから,最近に至るまでに行われたその精神に反する事実を,歴史的に挙げること。その理由を討議すること。満州事変から太平洋戦争までの間を,特に,注意して調ベること。なぜ日本はこの憲法のもとで,民主的な生活や政治に達することができなかったのか。なぜ日本は,昭和二十一年に新憲法を制定したのであろうか。どうして明治憲法は,不十分だったのであろうか。

(三七) 新聞・週刊及び月刊雑誌,パンフレット・書物,その他の刊行物で,新憲法の問題を取り扱ったものを学級でできるだけ集め,「新憲法発布記念学級文庫」を作ること。特に,新聞に発表された憲法に関する記事の切り抜きを作ること。また,文献目録を作ること。

(三八) 学級内に「新憲法研究委員会」を組織して,定期に会合して憲法の研究とその実践について,相談すること。委員は,学校にその結果を報告し,報告ののち,学級で自由討議をさせること。

(三九) 新憲法の全文を読んで,重要だと思われる条項にしるしをつけ,学級に報告すること。新憲法と明治憲法とを読み合わせてみること。どちらがわかり易くできているかを比較すること。わかり易い憲法の長所を挙げて,グループで討議すること。

(四○) 地方で,憲法にくわしい学者か法律家か代議士を招いて,新憲法の精神について話を聞き,その後で,質疑応答をする計画を立ててみること。

(四一) 委員を選んで,第九十回憲法審議議会の議事録を官報によって調ベること。重要な点や,憲法正文によっては明らかでない箇所を,それによって確めること。その結果を学級に報告して,討議すること。

(四二) 現代の他の国家の憲法の研究をするために,委員を選ぶこと。個々の場合に当たって,日本の新憲法を,他の憲法と比較してみること。

(四三) 学級に憲法前文を研究する委員会を組織し,明治憲法と比較しながらその重要な点を明らかにし,学級に報告して自由討議を行うこと。特に,次の点を中心として,

 (1) 民主主義的

 (2) 戦争からの解放。

 (3) 主権在民。

(四四) 第一章天皇の項を研究する委員会を設け,新憲法の規定のもとにおける天皇と政府,天皇と国民の関係を定義してみること。特に『象徴』としての天皇の地位について,十分研究すること。これを学級に報告して,討議すること。

(四五) 第二章国民の権利及び義務の項を研究する委員会を設け,従来の憲法に比ベて,権利条項の発展したあとをたどること。新憲法の中から,権利条項といわれる箇所を取り出すこと。それが,個人としての自分に保障している特殊な権利を表に作ること。おのおのの権利が,義務と責任とを同時に含んでいる状態を図によって示すこと。自分が十分に責任を果たすことのできる方法について,討議すること。そのような権利は,なぜ自分にとって重要なのか。

(四六) 憲法の各章(特に,一・二・四・五・十など)を参照し,新憲法において規定された日本の政治の姿と,イギリス及び合衆国のそれと比較すること。

(四七) 第三章戦争の放棄の項を朗読して,憲法前文と対照しながら自由討議を行うこと。

(四八) 国の憲法を模範として,試みに校務に関する根本規則を書いてみること。この場合,国の憲法に保障された権利を,侵害しないように,注意しなければならない。

(四九) 政治の数種の型についての報告を準備するいくつかの委員会を設け,その各々が研究したところを,口頭で学級に報告すること。おそらく,合衆国・イギリス・スイス・フラソス・ソ連・ニュージーランド・スェーデンなどのものが参考になるであろう。

(五○) 日本の歴史の書物によって,ある時代の政治の姿を調ベ,これを新憲法施行後の政治の姿と比ベてみること。この歴史についての史料を,報告書や口頭の報告や,学級討議,物語などのいろいろの方法で提出すること。

(五一) 最近の選挙の方法について,研究すること。他の国の選挙法を勉強すること。日本の方法の利害を表にあらわすこと。

(五二) 有効な選挙法を用いて,生徒の役員を選挙すること。

(五三) 議会において,「選挙には教育上の資格がいる。」と決議されたとして,これについて討議すること。

(五四) 現議会の機構を示す図を作ること。自分の地方から出た現議員の経歴を調査すること。法律は,議会でどうして作られるかを調ベること。模擬国会を組織して,公益に関する問題を論ずること。

(五五) 議会に行き,傍聴席から日程の議事を視察すること。それを,くわしく学級で報告すること。

(五六) 現在の有名な議員のことを書いた絵入りの伝記を作ること。近くに住む議員に会見すること。その人たちから,議会の選挙について,できるだけ多くの話を聞くこと。

(五七) 議会の活動及び議員に関し,参考になる最近の新聞記事を切り抜いて,整理保存すること。議会の活動について,しばしば集団討議を行うこと。

(五八) 憲法の内閣に関する部分を,学級で朗読すること。あらゆる方面から,内閣についての情報を手に入れること。グラフを用いて,内閣と議会の関係を図解すること。各大臣の職責を明らかにした表を作ること。

(五九) 閣員と,各省の活動に関する最近の新聞記事の切り抜きを整理,保存すること。その知識にもとづき,適当な時に,内閣の主要閣員の活動について討議すること。

(六○) これまで議会と内閣とを研究するために用いた方法で,司法裁判所を研究すること。

(六一) 政府は,政治を行って行くのに必要な経費を,どのようにしてまかなっているであろうか。歳入・歳出の予算や,決算に関して政府の発表したことがらを集めて,研究すること。なぜ,だれでも政府の経費を分担しなくてはならないのであろうか。

(六二) 租税のいろいろな種類を調ベ,直接国の経費となるものを明らかにすること。自分の地方の人たちは,どんな税を払っているか。税を払った結果として,どんな恩恵を受けているであろうか。

(六三) 一般に,民主的だと思われている行動の仕方を表にしてみること。自分自身で民主的だと考えた事業の表と,それとを比較すること。政府の活動の数々を調べ,自分のきめた民主主義と,それらが合致するかどうかを明らかにすること,政府をもっと民主的にする方法を討議すること。

(六四) 政党の研究をまず地方から始めて,次第に,国の段階まで及ぼして行くこと。個々の場合について,いろいろの政党の綱領の写しを手に入れること。各政党の組織を研究し,それを表にまとめて図示すること。自分の市・区・町・村の人々の地方政治関係を明らかにすること。人々に面会してその人々が,どれかの政党に属している理由を調ベること。政党は,どうして役員を選ぶか,役員選出法を討議し,もっとよい方法があれば,考えてみること。地方で,政党答を支配しようとする人があれば,どんな人か。前の選挙における自分の市・区・町・村及び府県の統計を調ベ,投票状態を明らかにすること。この知識にもとづいて,報告書をかき,何らかの方法で学級に説明すること。

(六五) 各国の政党の歴史や現状を調ベて,「国民のための政党」という題で,作文を書くこと。

(六六) 自分の学級の大部分の生徒が信じている重要な公共問題についての意見に関し,質問票を用いて,学級全体で研究すること。それを政党の政綱といちいち比較してみること。自分の市・町・村の多数の意見を明らかにする研究計画を作ること。ついで,少数の意見についても,同じようにやってみて,それらを既成の政党の政綱と比較すること。

(六七) 自分の町で行われた最近の政戦に関し,できるだけ情報を集めること。この問題の報告を書き,学級に提出すること。投票獲得のため,不正手段を用いなかったか。以前公職にあった者の何割が当選したか。政府の位置になぜ変化が起ったか,その理由について考えること。

(六八) 町の大人たちと,特殊な社会の問題について話し合うこと。その人たちに,直接にかゝわりのある諸問題を明らかにすること。人々が,町の問題にどんな解決法を考えているか,それを非公式でも,比較的完全な世論調査を行って,明らかにすること。全部の人が,その解決に対して,用意を持っているかどうかについて,また,意見の相違について,討議すること。意見の相違の理由を調ベること。

(六九) 地方の問題について,意見は多数あるであろうか。それとも少数であろうか。これについて明らかにすること。意見を発表する人は,非常に少数なのであろうか。人々が公共の問題について意見を発表するように,促すにはどういう方法によればよいか。

(七○) 政党の地方指導者に会い,あるいは新聞雑誌にあらわれたその人たちの声明を抜き書きしておくこと。地方問題に関する政党の態度を調査すること。政党はどんな方法で,また,どの程度まで世論に影響を与えているか。

(七一) 公共の問題についての討論会をやる機構をみつけ,ある問題についていろいろな人たちの政策と見解とを,調べること。

(七二) 自分の地方の人々が,読む新聞のすベてについて,論説や,記事や,雑報を集めて研究し,学級で朗読すること。新聞の論説と,町の人々の意見とに関係があるかどうかを調ベること。

(七三) 自分の地方の人々に,月ぎめで読まれているのは,どの新聞がいちばん多いかを調ベてみること。その人たちは,どんな部分にいちばん興味を持っているか。自分の読んでいる新聞の社説は,何を取りあつかっているか。自分の地方で読まれている新聞を,統制する者はだれか。政党に統制されている新聞があるであろうか。自分の新聞は,事実と意見とをはっきり区別しようとしていると考えられるか。自分の新聞は,どこから記事を取って来るか。政府あるいは公務員と関係はないか。自分の新聞は,どの程度まで,町の世諭を反映しているか。いろいろな意見をのせる新聞があるか。自分の読む新聞の収入のもとについて,知識を得ること。収入の何割までが広告費によるであろうか。広告主は新聞の編集方針に影響を及ぼすであろうか。新聞にあらわれる「投書」を研究すること。新聞の編集者は,政府を批判するであろうか。民主的な国民にとって,政府の活動に対して批判する自由を持つことが,なぜ必要か。地方の役所は新聞に広告をのせるというような方法で,新聞を利用したり,その方針に影響を与えたりしてはいないか。

(七四) 一定のラジオの時間を選んで,その番組を自分で聞いたり,委員に聞かせたりすること。どの程度に自分の地方の人々が,この同じ番組を聞くであろうか。ラジオの討議と世論の変化との間に,関係があるがどうかを明らかにすること。

(七五) 宣伝と宜伝方法について,書物によって研究すること。宣伝方法に理解を持ち,他人の意見に影響を与える方法を理解させてくれる人々に,手紙を書くこと。宣伝を見分ける能力について,自分の学級の水準を高めるように努力すること。宣伝を含んだ文書と書いて,他の生徒が,それを見やぶるかどうかを明らかにすること。

(七六) 戦時中の日本の宣伝について,調べてみること。戦時中に用いられた虚偽の宣伝の実例を選んで,これを分析すること。なぜそれを信じた人があったか,その理由を示すこと。

(七七) 映画(特に,ニュース映画)を見に行った生徒にその印象を学級に話してもらうこと。機会があるかぎり,学級で適当な映画を見ること。映画を見て,考え方にどれほど影響を受けたかを討議すること。

(七八) 公民としての権利と義務とについて,できるだけたくさん挙げて表を作ること。権利と義務との間の関係を,明らかにすること.


単元四 職業の選択に際し,また職業生活の能率をあげるために,どんな努力をしなくてはならないか。

~学習活動の例~

(一) 人間の協力関係

 (1) 自分の持ち物及び自分の家で日常用いられている品物について,どのような径路をたどって自分の手元にまで運ばれて来たかを調ベること。その品物を買ったのはどの店か。その店はどこで仕入れただろうか。また,そのおろし売り店に品物を集めて来たのはどういう人々だろうか。その品物は,どこで,いかなる人々の手によって作られただろうか。その原料は,どこから手に入れ,どんな方法で集められただろうか。以上のことがらについて,いかなる人々が協力したかを図表にかいてみること。

 (2) 学級の生徒の家庭で,日常使用している衣食住に関係のある品物をおのおの五種ずつ選んで,それらの品物が家庭で消費されるまでの間に,生産者や加工者や運搬に従事した人や,配給販費に従った人々の関係を詳細に調ベて図表にかき,学級に報告すること。例えば,
  
  (イ) 米は,農家でどのようにして生産されるか,たねまきから収穫までの間にどんな仕事があり,それらの仕事をするのにどのような労働力が必要だろうか。また,耕作や管理や脱穀調製に至るまでに,肥料や農具や薬剤などどんなものを用いるたろうか。それらを農家で手に入れるためには,どのような人々の協力を必要とするだろうか。供出された後,食糧営団の配給所から一般消費者の手に渡るまでに,いかなる人々の協力が行われるであろうか。以上のことを色分けにして図示すること。

  (ロ) われわれの着ている衣服のうちで,冬オーバのような毛織物,下着のような綿織物やスフについて,それが原料から製品になるまでに,いかなる人々の手にかゝって完成されるかを明らかにすること。毛織物の原料である羊毛は,どこで,どのようにして作られ,また,どんな径路を,どんな方法で,日本に輸入されるか,それがつむがれて織物になるまでの諸工程と,それに協力する人々とを明らかにすること。また,北海道の森林から伐り出された木材が,パルプ工場に送られてスフの原料となり,それがスフ織物となるまでの種々の工程で,いかなる人々がこれに協力するだろうか。それらの品物が一般消費者の手に渡るまで,さらにいかなる人々の協力を必要とするかを明らかにすること。

  (ハ) 一軒の家が建てられる(焼け跡の建築などは特に興味深い)までにどんな人々が力を合わせるだろうか。設計者・大工・左官・屋根ふき・畳・建て具・水道・ガス電燈の配線・配管・室内の調度などの整備されるまでには,多くの人々の協力が必要である。それらを実際に調ベること。
以上の調査や報告にもとづいて,われわれの生活が,いかに多くの人々の協力によって営まれているかについて,学級で討議すること。

 (3) 先生からアダム・スミスの「国富論」のはじめにある分業に関するところを読んでもらい,その説明を聞いてのち,われわれの日常生活の能率が分業によっていかに高められているか。また,分業組織によって,いかにわれわれの生活が便利になっているかについて,学級で討議すること。

 (4) 報徳記や二宮翁夜話や,その他二宮尊徳の伝記(佐々井信太郎著,下程勇吉著など)を読み,尊徳の事業と,その人格の発展の関係を明らかにすること。その他,渋沢栄一,森林太郎(鴎外),豊田佐吉,などの人々の伝記を調べ,それらの人々が,職業生活や事業の経営を通して,いかにその人格を発展させ,また個性を充実させたかについて,討議すること。

 (5) 自分の知っている立志伝中の人物のひとりを選び,その伝記を書いて学級で朗読すること。この際注意すべきことは,信用のできる事実と信頼できない宣伝や誇張とを厳密に区別することである。苦学力行し,正統な学校教育を受けることができなかったにもかゝわらず,その識見や能力が少しも劣らないような人物について,職業が人物を磨きあげるという点を明らかにすること。

 (6) 自分の地方で事業に成功した人物を訪問し,「職業と人格の修業」という点について話を聞いてきて学級に報告すること。実業家・宗教家・官公吏・芸術家・医者・社会事業家等について,学級で分担して訪問するがよい。

 (7) 自分の家に毎日いろいろなものを届けてくれる人々,例えば,新聞配達や郵便配達などが休んだとして,家に起る不便について考えてみよう。また,労働組合のストライキや企業家の事業経営がまずいことによって電気が消え,電車が止まり,石炭が出ず,ラジオが聞こえないような場合に社会の人々の受ける不便を考えてみよう。それらを中心にして,人間の生活が,多数の職業によって,たがいに持ちつ持たれつの関係にあることを明らかにすること。

 (8) 現在,物資の欠乏に悩み,各家庭が自給自足の方法によって,野菜を作ったり,塩を海水から取ったり,みそやなっとうやあめをこしらえたり,パンを焼いたりするようになった。こういうことは,社会の進歩という点からみて,望ましいことであろうか。将来も存続させる必要があるだろうか。学級で討議すること。

 (9) これから日本の社会的,経済的な復興のために,すべての人々が,その職業において,力いっぱいに働くことがたいせつであるが,そのために,多くの職業の中でも特に重要であると思われるものを十種挙げて,その理由を述ベること。また,日本の再建をじゃましたり,またはあまり望ましくない職業を考えられるだけあげて,その理由を述ベること。以上について討議して,その結果を表にまとめること。

 (10) 級友の家庭の職業を調査すること。自分の町(村)の職業を調査すること。職業の種類を男女別,年齢別,教育程度別に分類してみること。この際,内閣統計局の国勢調査報告書の産業・職業に関する調在を参照して,職業の種類を分かつこと。

(二) 昔の職業生活

 (1) 自分の県及び日本全国の人口を職業別に表わした統計によって,扇形グラフをかいてみること。また,この作業を五年ごと(あるいは十年ごと)に過去にさかのって五十年前までやってみて,職業構成の変遷を比較すること。また,特に昭和六年・昭和十二年・昭和十八年・昭和二十年のものについてもやってみること。以上を資料にして,「日本の近年における職業構成の変化とその原因」という作文を書いてみること。

 (2) 「日本の歴史」の教科書の中からいろいろな職業をひろって,時代別に表にしてみること。その時代の代表的な職業はなんであるか,また,時代がくだるにつれてどんな新しい職業が加わったか,また,それらは引き続いて存続発展したかどうかを明らかにして「日本人の職業の変遷」について学級に報告し討議すること。

 (3) 江戸時代のおもな職業には,どんなものがあったか。また,その特色はどういう点にあったか。家業や職分ということは,当時どんな重要な意味を持っていたであろうか。「封建社会における職業」という題で討論すること。このような職業上のしきたりは,明治になってどのように変化したであろうか。新憲法第二十二条に「職業選択の自由」とあるが,これを以上の歴史的な事情にてらしてその意味を明らかにし,学級に報告すること。

 (4) 江戸時代に町人と呼ばれた階級は,どんな職業にたずさわっていたか。町人の地位が低かったのはなぜか。また農民はどうであったか。

 (5) 徒弟奉公や女中奉公について調べて,昔の職業生活にはいる準備の方法について明らかにすること。主人や親方と弟子の関係は,どうであったか。労働時間や労働の条件はどうであったか。奉公の年期があけた場合は,どういうことになったかなどを,明らかにすること。一般に,昔は職業上の技術をおぼえる方法として,どのようなものがあっただろうか。子供の職業指導について,親はどのような努力を払っていたであろうか。先生から,西洋の中世におけるギルト制度の話を聞いて,これをわが国のものと比ベること。

 (6) 昔は一つの技術を徒弟に伝えるのに,奥儀だとか,秘伝だとかいうものがあって,免許を受けなければならなかった。今日でもこのような職業が残っていないか。あるとすれば表にしてみること。現在では,特別の技術を修めた者には免許状を与えて,資格を国家や地方の行政機関が保障している。このような,技術の資格を保証し保護する方法の昔と今との差異を明らかにして,その得失を討議すること。

 (7) わが国では,昔から「農は国の本なり」といって尊重されて来たが,その理由はどういう点にあったのであろうか。江戸時代に農民の重んじられたわけを考え,将来の日本において,農業は国の産業でどういう地位を占めるかを討議すること。

 (8) 明治以後において,自分の県及び国全体について,耕地面積はどのように増大して来たか。田と畑について調ベること。また農家人口の増減を明らかにすること。農産物の収穫高の変遷と,国民全体の人口の増加とを,年次を追って表にし,近年における日本農業の発展について,討議すること。

(三) 職業としての農業

 (1) 委員を選んで,自分の学校に近い種々の農園や代表的農家(地主・自作農・小作農・兼業農家など)を訪問し,その農業経営と農業労働の実際を見学すること。また農繁期に,有志のグループを編成して,勤労奉仕を実施して農業労働の経験をつんでみること。これらの見学記,体験記を,口頭または,文書で学級に報告すること。

 (2) 有畜農業や養鶏,養蚕を加えた農業を行っている農家を見学して,その労働の実際を調ベること。近くに酪農組合や酪農を行っている地方があれば,見学してその実状を学級に報告すること。

 (3) 農家の二,三男は,従来どのような職業を選んだであろうか。耕地の関係と農業経営の機会とについて研究すること。開墾事業の実際を調ベて,その国家的意味を明らかにすること。

 (4) 農業生産物の主要なものを選び,これと工業生産物とその価格を比較すること。なぜ農民が売る生産物の価格は安く,その購入する物品の価格は高いのであろうか。

 (5) 農家がいろいろな副業や兼業として行っているものについて,その種類,またその製品と販売方法や径路を明らかにすること。なぜ農家にとっては,このような農業や副業が必要なのであろうか。

 (6) 農民として必要な性格・身体知識・経験などの性質を挙げること。農村の生活と都市の生活とを比ベて,その利害得失を討議すること。

 (7) 日本の農業において,婦人はどのように働いているか。女手には農業の中でもどんな仕事が適当か。

 (8) 自分の地方にある農学校を訪問して,その教科や実習や課外活動の実際を見学すること。また,入学資格や卒業生に与えられる特典などがあれば調ベること。卒業生の就職状況を聞き,農学校の卒業生の進路について討議すること。日本では,農学校の卒業生が,しばしば「白えり(ホワイトカラー)」の労働者であったといわれるがなぜだろうか。

 日本における農科大学・農林専門学校・高等獣医学校などについても,上と同じような調査をすること。日本における農業関係の専門学校以上のものを,地図をかいてその分布を示すこと。

 自分の学校の先輩や自分の町の知人で,農業関係の専門学校にはいっている人に手紙をかいて,その学生生活についてたずねること。

 (9) 自分の県の農事試験所,あるいは研究所を訪問し,その仕事の実際を見学して来ること。そこで働く人々は,どういう経歴の人々か,どんな仕事をしているかなどを明らかにして,学級に報告すること。

(四) 職業としての林業

 (1) わが国の林業が,国全体の産業のうちで,どういう地位を占めているかを明らかにし,森林とこう水防止について論ずること。林業と農業の関係を明らかにすること。

 (2) 自分の郡・県及び国家の森林を表示したちょうかん図を作り,林産資源の量と林産物の価値などを示すこと。近くに製材所があれば,委員にそこを訪問させて,調査事項を学級に報告させること。営林署やその他山林に関する業務にたずさわっている人々を訪問して,かれらの仕事に関して,できるだけ多くのことを知ること。自分の知り得た事実を,ことごとく学級に報告し討議すること。

 (3) 近くの山岳地方にハイキングする計画を立て,その際,炭焼き小屋を訪問するようにすること。炭焼きをする人々の生活の実際について知識を得ること。

 (4) 製材・製箱・家具・紙などの工場をたずね,各種の木材とその原産地などを調ベること。また,製材所の労働条件を調ベること。

 (5) 山林関係の災害や不慮の事故として,どのようなものがあるか。また,森林の被害にはどんなものがあるか,その防止にはどんな専門的知識が必要であろうか。

 (6) 林業関係の仕事に,従来,中等学校以上の卒業生が従事することの少なかったのはなぜであろうか。

(五) 職業としての漁業

 (1) 日本人の食糧資源としての水産物の価値を論ずること。動物性たんぱく質の補給源として,欧米における肉類の消費高と,日本人の魚類の消費高とを比較して,図示すること。

 (2) 日本の主要な漁業地帯と,有名な漁港とを地図に記入し,漁獲物の種類と,年産額を表示すこと。どういう地域が漁業の中心地となるか。世界の水産業における日本の地位を明らかにすること。

 (3) 遠洋漁業についての知識を得て,学級に報告すること。まぐろ,ぶりなどの漁獲法,捕鯨船の南氷洋進出などについて,研究すること。

 (4) 自分の地方に近い漁港をたずねて近海漁業や沿岸漁業について見学し,また漁師の家をたずねてその仕事の実際を知ること。網元(あるいは船主)と網子(船員)との関係はどうであるか調ベること。その地域の漁業方法について,過去にどのような変動があったか,新しい漁業の技術はどのようにして採り入れたか。漁ろう組織の編成について,伝統的な慣習はないか。漁師の教育程度はどうか。青年は漁ろう技術をどうして学ぶか,漁師はよく金のつかい方が荒いといわれるが,その原因はなんであろうか。

 (5) 水産物加工場を訪問して,仕事の大要を見学すること。製品にはどんなものがあるか。乾燥・冷凍・塩蔵・かんずめ・くん製などについて種々の製品を表にして表わし,その時の相場で,加工したものと加工しないなまのまゝのものとの価格を比較すること。

 それらにはどんな技術が必要であろうか。また,技術者はどんな専門的教育を必要とするかを明らかにすること。以上のことを学級に報告して,水産物加工業の特来性について,論ずること。

 (6) 水産業会を訪問し,事業の大要を聞いて来て,学級に報告すること。

 (7) 水産学校や高等水産学校,水産講習所などを訪問したり,手紙を出したりして,そこで教育される教科や実習の大要,学生生活のようすや,卒業後の資格と卒業生の活動状況について,知識を得ること。また,水産試験所や研究所を訪問して,そこで働く技術者の仕事の大要と,教養や労働状態を調ベること。

(六) 鉱 業

 (1) 自分の郡・県及び国全体の鉱産物に関する地図を作ること。自分の住んでいる地域から出る鉱物の標本を集めること。仕事について調ベるため鉱夫に会うこと。図表やグラフをつかって,鉱業に従事する人々の数を他の工業と比較して示し,また,鉱産物の量によって,鉱業が,日本の産業において占める地位を明らかにすること。日本の隠された鉱産資源について役に立つ情報を集めること。

 (2) 書物を読んだり,映画を見たり,模型や写真を集めたり,またできれば,炭鉱を訪問することによって,石炭採掘事業についての知識を得ること。石炭事業が,日本の復興の最大の基礎産業である理由を明らかにすること。石炭の生産が低下すると,直ちに影響をこうむる事業にどんなものがあるか。それらの能率が下がると,その影響は次にどんな方面に及んでゆくであろうか。以上をもとにして,石炭産出高を低下させている条件を調ベ,その排除によって石炭生産が向上する方法を,討議すること。

 (3) 日本の近年における石炭の年産高をグラフによって示し,炭坑労働者の数の増減,石炭のトン当たり価格,労働者ひとり当たりの産出高を,表示すること。

 (4) 大会社の経営する有名な炭坑と,小資本の手掘り式に近い小経営炭坑業とをその設備・能率・労銀などについて比較すること。また,合衆国・イギリスなどの炭坑の能率と比較すること。

 (5) 炭坑を訪問することが可能ならば,炭坑の労働組織,(先山,後山,支柱夫,運搬夫,選炭夫など),労働時間(拘束時間と実働時間),経験年数と技術及び能率,坑外における生活の実情,余暇の善用法,厚生・福祉・娯楽の施設給与などについて調べ,学級に報告すること。

 (6) 炭坑に起る災害や事故の種類と,その原因・対策などについて研究して,学級に報告すること。炭坑夫が不慮の事故によって死傷した場合に,どんな救出方法が行われているか。

 (7) 炭坑の技師や,その他特別の技術を必要とする人々は,どういう経歴・技能・資格を持っているであろうか。大学の理工学部中,探鉱冶金(やきん)科や,鉱山専門学校について,炭坑技術者として必要などんな教育をしているかを調べること。

 (8) 日本では,従来,炭坑労働者になることをいやがるふうがあった。それはなぜだろうか。炭坑労働者に必要な身体的,精神的,技術的要件を挙げて表にすること。炭坑労働者は,われわれの日常生活にいかなる重要な位置を占めているだろうか。

 (9) 鉱山・油田その他鉱山資源や石材の採掘などに従事している労働者の数・年齢・教育程度・移動状況・賃銀・労働条件などを調ベて,学級に報告すること。

(七) 動力工業

 (1) 動力資源として電気事業の国家的重要性について研究し,討議すること。日本では,水力発電と火力発電とで出力何キロワット位の電力を出し得るか。賠償によって ,この動力資源は,どのくらいに低下しただろうか。日本の各河川における水力発電所の分布図を作ること。まだ開発できる地域が残されているであろうか。水力発電事業の将来性について,討議すること。

 (2) 発電所(水力・火力)を訪問して,技師から装置のあらましを聞くこと。また発電所から各家庭に送電されるまでには,どのような施設や機構を持っているか。それらのおのおのについて,働いている人々の数・資格・技術などについて話を聞き,学級に報告すること。


 (3) 国家の電気技術者や電気工事人に対する免許制度を調ベ,どのような教養や学力を必要とするかを調ベて,学級に報告すること。


 (4) 動力装置や気かんの運転,操作に従事する気かん士などの免許制度と資格試験制度について調査研究をし,学級に報告すること。

(八) 職業としての工業と商業

 (1) 委員を選んで,近くの製鉄所・製鋼所・鉄工所・鋳物工場などを見学すること。原鉱から銑鉄や鋼材や鋳物のできあがる過程を調ベ,そこで働く人々の職種にどんなものがあるかを調査すること。それぞれの職種の仕事の内容,技術や熟練の要,不要,労働条件,貸銀,教育程度などを明らかにすること。それらの工場での熟練工といわれる人々に会見して,その人の技術習得の苦心談を聞くこと。また,このような工場には,身体的に精神的にどのような人が適当であるかを聞くこと。以上を整理して,学級に報告すること。

 (2) 製鉄事業の国家再建における重要性について,多くの材料を集めて討議すること。近年における製鉄事業の変遷について研究し,賠償後の日本の製鉄事業の将来について討議すること。国民ひとり当たりの鉄材,鋼材の年間消費量を過去のそれと比較したり,また,諸外国のそれとを比べてみること。

 (3) 委員を選び,自分の地方のある種の工場や事業場を訪問すること。各委員は,種々の工場における各種の労働について,その労働条件のちがい,労働者の資格・教育程度・賃銀,その他,職業に必要と思われる条件をあげて,討議すること。

 (4) 都市を中心とする電気・ガス・水道・下水道・清そうなどの事業を調査して,その職種と特殊技能を明らかにすること。

 (5) 戦災都市や,鉄道・港湾・工場などの復旧工事や土木事業,進駐軍設営,また,開墾地造成干拓事業などに関する技術者・労働者には,どのような技術・能力・適性が必要であろうか。また,その労働条件,将来の見こみなどについても明らかにすること。

 (6) 物品販売業の種々の規模について,その経営,事業の概略を明らかにすること。例えば,百貨店・問屋・卸売店・小売店・露店・行商などについて,種々の販売品目を中心にして調査すること。経営主と従業員につき,労働条件・特殊技能・将来性などについて研究した上,討議すること。

 (7) 商業道徳と信用という問題につき,種々の販売業者の例について,学級討議を行うこと,老舗(しにせ)と呼ばれ,のれんの古いのを誇りとする商売人の気質について論じ,また,大商店に伝わる家訓,家憲を研究して,これらの特に今日における価値を評価してみること。

 (8) 銀行・信託業・倉庫業・証券業・質屋などの営業内容を明らかにし,その従業者に必要な性格・学力・資格や勤労条件などを調査して,学級に報告すること。

(九) 通信,運輪,交通業

 (1) 日本の交通関係事業について,その概要を調べて表示すること。官営と私営の関係,鉄道・電車・自動車・船舶によるさまざまの交通事業を,地域的に分けて調査すること。その従業員には,いかなる職種があるか。労働条件はどうか。技能や資格や養成法はどうしているかを明らかにして,報告すること。運搬・輸送事業についても,同様に調査すること。

 (2) 自分の町の鉄道の駅をたずねて,事業の種類や職種の分化を調ベ,その活動の実際を見学すること。駅員の資格・教養・養成方法や労働条件について明らかにすること。また,乗合自動車会杜についても同様の調査を行い学級に報告すること。

 (3) 自分の町の郵便局を訪問し,事業内容と従業員の職種などについて調ベること。従業員の技能・資格・労働条件など,鉄道の例にならって研究すること。

 (4) わが国の逓信事業の現状を,読書や逓信官吏との会見や見学などによって明らかにし,将来の発展の具体的方面について,明らかにすること。

 (5) わが国の放送事業の概略を明らかにするために,中央または地方の放送局を参観し,その実際を見学すること。放送局の従業員には,どういう職種があるか。その技能・資格及び労働条件と適性などを明らかにすること。

(一○) 公務自由業。

 (1) 職業としての教育事業を明らかにする目的で,教師・保母・教育行政官その他の教育官吏の職務の内容を明らかにすること。その資格・免許状制度・学力教養・性格及び勤務条件などについて,調査すること。

 (2) 宗教家・社会事業家の仕事の内容を調べ,その資格・能力・教養・学力・性格,及び勤務条件などを明らかにすること。

 (3) 医者や看護婦・保健婦の仕事の内容その他を,上にならって調査すること。また,法曹(弁護士・代書人・弁理士・公証人)芸術家・技師や科学研究員などについても,同様に調査すること。

 (4) 家政婦・給仕・美容師・女中その他家庭やホテルやその他の場所で他人の補助やその仕事を助けたりする人間関係の仕事についても,上に準じて調査すること。

 (5) 会社の計算係・タイピスト・書記・秘書・速記者などについて,調ベること。

 (6) 一般官公吏について,事務的な職務にあたるもの,技術的な職務にあたるものなどについて調査すること。特に官吏の資格試験・任用制度・給与公務員法などについて研究すること。

 (7) もしできるならば,上にあげた種々の職業のどれか一つを選び,夏休み中に実務の体験をするために雇われてみること。そこで,雇い主や,労働者,従業員と話し合って,仕事に関するいろいろな知識を得たり,また,熟練した労働者の仕事ぶりを観察したりして,自分の知り得たことを体験記として作り,学級に報告すること。

 (8) 「職業に貴賎はない」ということばを,どう思うか。今日,実際世間の職業について,このことば通りに職業に対する人々の考え方ができているかどうか,評論すること。醜業と普通いわれるものが,今日もあるかどうか。

 (9) 将来の職業を選択するに当たって考慮しなければならない条件として,どのようなものがあるであろうか。個人的な条件,家庭や社会から制約される条件,職業(仕事)の特殊性などを考えた上で表を作り,自分で自分の立場を正しく評価検討しつゝ,記入してみること。グループで,おたがいに級友のものを一人一人批評しながら,その個人に最も適当な職業選択の条件を,めいめいに決定すること。この表にもとづいて,これまでに研究してきた事実と比較しつゝ,自分に適した職業をかりに決定してみること。「私の選んだ職業」という題で,話をすること。

(10) 従来,ある種の職業,例えば紡績工・美容術師・看護人・速記者などは婦人だけに適した職業であるとし,他の大部分の職業は男子にのみ適するものだという観念が一般に行われてきた。イギリス・合衆国を含めた他の多くの国では婦人が行政官・技師・医師・法律家などにも十分訓練を受け経験のつんだ男子と同様に成功することが可能であることが,立証された。わが国の婦人の場合にも,このことは同様であると考えられるような理由があるかどうか。

(一一) 学校教育と職業との関係

 (1) 自分の学校の卒業生を,ある年代にわたって調査すること。どんな職業についているか,どんな上級学校にはいったかを調ベること。それに附随して,自分の町の職業調査を行うこと。現在の組織による学校は,自分が町の生活にはいっていくために必要な訓練をしてくれているかどうかを,明らかにすること。現在教わっている教科の中で,将来の職業生活に役立つと思うものを挙げてみること。(直接役に立つと思われるもの,間接に役だつと思うもの)。

 (2) 自分の在学している学校で,職業の選択に特に役だてる目的で備えている設備や便宜を挙げて,表にしてみること。他の学校のものと比較して改善すベき点があれば,学校に提案すること。

 (3) 諸種の専門学校や実業学校を挙げて,そこで卒業生に与える卒業後の特典・資格・免許状などを調ベて,表にしてみること。この表と(一○)の(9)の表とを対照して,働きながら学ぶことができる上級学校がありはしないか調ベてみること。

(一二) 職業の選択と就職

 (1) 学校に設備があればそれを利用し,なければ職業補導所,職業安定所,大学などの心理学研究室などを利用して,自己の適性を,科学的に調査してもらうこと。

 (2) 自分の希望する職業の経営者,雇い主などに面会しかれらの教育に対する態度,及びかれらが実業に就こうとする青年に必要だと考えている教育の種類を,明らかにすること。

 (3) 自分の希望する職業についての求人広告が,新聞やポスターなどによって募集されていないかどうか注意すること。自分が今後これ以上続けて学校で教育をうける見こみのない場合,職業安定所や職業補導所,職業紹介所などを訪問して,自分に適した職業のあっせんを依頼すること。

 (4) 理想的な職業人として備えなければならない条件を挙げて,学級で討議すること。また,成功の秘けつといわれるようなものも考えてみること。そのために,日本のみならず外国の著名な実業家・芸術家・学者その他の伝記を読んだり,その言行録を集めたりして,研究してみること。

 (5) それぞれの職業について,ながい仕事の経験をもっている人々に会見して,その人が,実際に仕事を通して作りあげてきた職業についての信条をたずねること。それらのものを持ち寄って,種々の職業について,特別に必要だと思われる職業の心がけを決定すること。

 (6) 次の諸問題について,学級で討議すること。

  (イ) 何か一つの技術を身につけるよりも,広い教養や学問を身につけることがたいせつだ

  (ロ) 女子はだれでも家庭的な仕事に熟達している必要がある

  (ハ) 親は,子供の職業の選択を統制すべきでない

  (ニ) 金持は働く必要はない

  (ホ) 「正直は最上の商略なり」

 (7) 職人かたぎとはどういうことか。自分の知っている大工・左官・指物師・表具師・宮大工などのような伝統的な職業にたずさわっている人から,技術・修業の経験談を聞くとともに,職人特有の気質について,話を聞くこと。このような気質は,両親や年長の労働者によって現在の若い職人に伝わり,または理解されているであろうか。そして,将来はどうなっていくであろうか。学級で討議すること。
 
 (8) 日本の商品が,外国において,しばしば悪評を受けた理由を明らかにすること。国家はそのためにどのような手段をとっているであろうか。外国貿易と国民に対する外国人の評価について,討議すること。

 正しい事業の発展は,どういう方法によって遂行されるべきであろうか。フエアー・プレーや,スポーツマン・シップと職業の道徳とを比較して,研究すること。

 (9) 事業における成功の手段として,営業方法や労働組織の合理化という点について,研究すること。生産力を増大し,能率を増進することと事業の合理化との関係について,討議すること。

 (10) ある職場に就職を希望するとして,就職試験に応ずるための準備を行うこと。履歴書の作成,身体検査表の作成,卒業証書,資格検査証,写真,学校当局の推薦状,知人のあっせん依頼状などを整えてみること。

 (11) 先輩の社会人を訪問して,ある職場に採用になった場合に心得ておくベきことがらを聞いて来て,学級に報告すること。公務員法(旧官吏服務規律)や,会社の従業員規則や,心得などを集めて研究すること。

 (12) この単元の活動の例として挙げられたものの学習によって,職業に関するたくさんの情報や,多くの職業の利害得失を知り,職業生活において成功するのに必要な性質についても学んだ。学校教育において受けた職業についての経験は,職業についてのいっそう実際的な知識と才能を与えた。ある一つの仕事に就くとして一時的な職業を定めてみるか,現在自分がやってみたいと思う職業を選んでみること。これについて,自分の両親や先生とともに相談すること。さらに上級学校にはいって学業を続けることができる場合は,その志望する学校についての計画を立ててみること。

 (13) 職業生活とレクリエーションの必要とを討議すること。余暇の善用をいかなる方法で行うか,具体的に計画を立てること。自分がこれまでにやって来たレクリエーションを,就職後も続けるか。何か新しいものを始めるか。

 (14) 労働者に多い病気の種類を調ベること。ことに,青年のかかりやすい病気は何か。また,未熟練者や初心者が受けやすい災害や事故を調べること。官庁や会社や工場などで実施している安全教育と健康維持,及び病気予防の施設,方法などを調ベて,その改善法を討議すること。

 (15) 職場における健康保険制度,共済制度の実際を調べて,学級に報告すること。

 (16) 職場の清潔保持ということについて,実際的な計画を立ててみること。種々の職場を見学して,清潔という点から改善案を研究してみること。

 (17) 青少年労働及び婦人労働を保護する立場から,政府はいかなる手段を講じているか,どんな法規を施行しているか,調ベること。労働基準法を調べて,労働保護について研究し学級で討議すること。

 (18) 労働運動及び労働組合について研究し,労働者の地位の向上のために,それがいかなる意味をもっているかを明らかにすること。労働闘争やストライキについての諸問題に対し,具体的解決策を考えて,討議すること。必要なことは日常に個人と国民全体の福祉増進に寄与し,生産力を増進するという立場において,問題の処理にあたることである。

 (19) 現在の失業問題の特別な性質を明らかにすること。国家の再建と失業対策とを,いかにすればうまく適合させながら解決する方法があるであろうか。資本主義経済組織と失業問題,完全雇ようの問題などについて知識を得て,わが国の現在と将来の失業問題を,評論すること。

 (20) かりに自分が失業したとして,その解決に次のいずれの方法を選ぷか。

  (イ) 他の地方に,今まで従事したと同じ職場を求めるために移転する

  (ロ) 別の職業に就くために,職業安定所に相談に行き,新しい職業についての技術的訓練をうける

  (ハ) なんでもかまわないから食える職業を求めて,その日暮らしをする

  (ニ) じっとして民生委員からの救済をまつ

 (21) 「日本の再建に対して,自分はこういう仕事をして貢献しよう」という主題で,作文を書くこと。


単元五 消費者の物資の選択に際して社会のカはどういう影響を与えているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 物の価値と,われわれの欲望との間には,どんな関係があるであろうか。電球と水とを取って,研究してみること。経済学で,「効用」というのは,どういうことであろうか。自由財と経済財とを区別して列挙してみること。

(二) 万年筆その他のものを調ベて,その値段の中には,どんな原価が含まれているか,だいたいの計算をし,図に表わしてみること。

(三) 自分の家庭で,普通に用いられている品物を選び出してみること。その値段を,いろいろな店で比ベてみること。その結果を学級に報告すること。

(四) やお屋(青物市場)で買っている品物の表を,グループで作ってみること。その際,品質の標準をはっきりさせておくこと。その中の一種を選んで,同じ日にいろいろな店でその値段を調べ,その報告を集めて討議すること。

(五) いろいろな店に,違った時に行って店主に会い,日用品のうち重要なもの五種を選んで,その値段が上っているか,下がっているかを聞いて,学級に報告し,図表を作ること。

(六) 自分の家庭にあるいろいろの品物について表を作り,それらが,どこで作られたかを示すこと。自分の県で作られたのはどれだけか。自分の郡・県及び国全体の地図を作り,自分の町で用いている品物の作られた場所を示すこと。

 普通,外国から輸入される品物について,どういう方法でもよいから図を作ること。近くの工場をたずね,何を作っているか,その製造の正確な過程,製造量,必要ないろいろの仕事,生産品の配分などについて明らかにし,それを学級に報告すること。

(七) 自分の家庭で,普通に用いられている品物について,それが,どんな径路を経て自分の手もとまで運ばれて来たかを,調べてみること。即ち,製造・卸売・小売の径路など。

 自分の近所の小売店について,できるだけ調査するか,一定の範囲を限って調査を行うこと。そこで買られている商品の出所を明らかにすること。生産品の原料の値段を調べること。その生産に必要な産業における現在の労銀,及び生産に必要な労働時間をもとにして,できるだけ正確に労賃を計算してみること。さらに,生産価格と消費者の手に渡る時の販売価格の間の開きを,明らかにすること。自分の地域の卸売商について,研究してみること。

(八) 自分の家庭で日常用いている品物で,大正時代までは無かったものを十種挙げてみること。

(九) おもな生活物資の値段を,ある期間にわたって調査し,その変動を表にすること,さらに他の地方における値段を調ベて,相違のあるときは,その理由を考えてみること。

(一○) 衣・食に関する商品の一つを取り,各自が,その生産関係について図解し,できるだけ実際に近く,原料価格・労賃・運賃などを計算してみること。その際,商品の生産価格・販売価格などを,生産者に直接聞いてみること。

(一一) 運賃が,家庭で購入する商品の値段に及ぼす影響を明らかにすること。現在の商品の値段を,戦前のある時期の値段,及びその時期の運賃と比較すること。輸送のしくみを改善することができるか,討議すること。

(一二) 町の人たちが小売市場で購買する品目を,できるだけ多く思いだして,表に作ること,表を作った時のそれらの値段を,さらに表にすること。人に会って聞いたり,新聞その他の刊行物の古いものを読んだり,そのほかあらゆる方面から,手をつくして,同じ品物の一箇月前,六箇月前,一年 前,五年前の正確な値段を知ること。品目ごとに値段の変化を説明し,それを供給の変動と関係させてみること。物価指数とは,何であろうか。

(一三) 自分の町の営利機構を調ベること。農夫が,生産価格以上の値段で,自分の生産品を売ろうとする状況,くつ屋が同じく高く売ろうとする状況など。正確な数字が得られる場合には,いろいろな日用品について,利益の歩合を算定してみること。

(一四) 自由価格は,何を標準にしてきめられるか。需要と供給の関係から,調査・討議すること。米の自由価格の変遷を調べ,その理由を考えること。附近の市場について,その種類・組織・機能を明らかにするための委員を作ること,そのくわしい報告にもとづいて,市場の価値及び改良案を討議 すること。

(一五) 自分の市町村の小売販売で,商品の掛け売りされている程度を明らかにすること。適当な品物の値段について,現金販売と掛け売りの場合との相違を調ベること。

(一六) 物価変動の表,主要物資生産高の変化の表,及び通貨発行高・銀行預金高・貸出高の表を作り,その相互関係を調べること。

(一七) 専売について調べ,いろいろの知識をもとにして,学級討議を行うこと。その歴史を調ベ,また他国のそれと比較すること。

(一八) 価格統制について,政府の施策を調べること。食料品の取り扱いについて,法律あるいは規定があるかどうか,あれば,それらの性質を調べること。

(一九) 食糧問題,その他日本の生活水準に関するいろいろの問題につき,新聞の記事を集め,つゞりこみを作ること。それらの問題について,学級討議を行うこと。

(二○) 日本の歴史上のある時代の人々の生活水準と,自分たちの生活水準とを比較すること。

(二一) 諸外国の生活水準について統計や説明などから得た知識をもとにして,それと,日本の生活水準とを比較してみること。

(二二) 農村・小都会・大都会などの生活水準の平均について,算定することができるであろうか。食糧・衣服・住居・生活の科学化,便利というような点を中心にして調べてみること。

(二三) 自分の町の人たちの収入が,どのように消費されるかを明らかにするために,調査すること。わが国の家庭の平均所得を比較すること。この所得にもとづいて,支出を科学的にする方法について,学級討議を行うこと。

(二四) 一家庭の生活にとって,どれくらいの水準が満足すべきものであるかについて,討議すること。満足すべき最低生活水準に必要な一定品目と,その量を示すこと。その品目の価格を定め,平均所得を基礎として,それらの品物がどれくらい手に入れられるかを明らかにすること。

(二五) 満足すべき最低水準の生活必需品の表を作り,その生産に用いられるわが国の天然資源について,いろいろの書物から知識を得ること。どの程度まで必需品が実際に得られるか,その大略を明らかにすること。日本は,表中のどの項目について,全人口に対して,十分に供給し得られると考えるか。国家は,輸入品に対して,どんな余剰物資で支払うことができるか。

(二六) 日本における,国民所得についての情報を,どんな所からでもよいから集めること。例えば,所得源,家庭の平均所得など。それらに関して,自分の町を,国のその他の部分と比較すること。また国民総所得及びひとり平均額・所得高別・人口比などを,政府機関その他に問い合わせて,表を作ること。

(二七) 「日本における所得の分配」という問題について,役に立つ情報を集めた後,学級討議を行うこと。所得の公正な分配ということが,現在行われているかどうか,明らかにすること。

(二八) 地方一般の家庭の収入源を調ベること。それは,賃銀や給与によるものか,営業による利益によるものか,所有物の売却によるものか,それとも配当によるものか。その結果を組み合わせ,整理して,いちばん数の多い収入源を明らかにすること。これらの収入源は,社会全体として,代表的なものであるかどうか,明らかにすること。

(二九) 自分が,もの心ついてから町に生じた衣服の変遷について,論ずること。調査と討議によって,この変化の説明
につとめること。

(三○) 学級で流行している持ち物について表を作ること。学校ではやりだした理由について,説明を考えてみること。

(三一) 新聞その他の刊行物で,広告の見本を見つけること。誇張された広告の見本を選び出してみること。なぜ誇張と認めたか,その理由を説明すること。広告は,正確な内容を伝えるであろうか。

(三二) 新聞を数種集めて,広告記事が,全体の紙面の何割を占めるか,研究すること,広告記事二,三種について,その広告料を研究してみること。広告料は,だれが支払うのであろうか。

(三三) 自分が前に買った品物を学級に持って来て,これはよい買物であったか悪い買物であったか,その理由を説明すること。

(三四) 広告の中に用いられている標語を,数人で集めてみること。それから,商品の名まえをいわないで,それを学級の者に読んで聞かせ,その商品の名まえを当てさせてみること。広告の中に用いられる標語がどんな効果を持つかを研究するためである。

(三五) 季節と商品との間に,どんな関係があるであろうか。炭・野菜・魚類などについて,表を作ってみること。

(三六) 政府の物価政策について研究すること。経済安定本部・物価庁などに関する新聞記事を研究して報告し,討議すること。

(三七) 税には,どんな種類があるであろうか。新聞記事などを研究して,調ベてみること。税と家庭,及び個人の消費生活との関係をできるたけ明らかにしてみること。大衆課税とはどんなものか。

(三八) 次の項目について,表を作ってみること。

 (1) 標準家庭の員数。

 (2) 家庭一箇月の総収入。

 (3) 食料の費用の割合(総支出に対して)。

 (4) 住居の費用の割合(燃料・燈火を含む)。

 (5) 衣料の費用の割合(せんたく代を含む)。

 (6) 保健・娯楽・教養などの費用の割合。

 (7) 預金・保険の費用の割合。

 これを,現在の自分の家の一箇月の家計簿と比ベてみること。どんな点に改良の余地があるであろうか。自分の家の家計に均衡のとれていないところがあれば,その理由及び対策を考え,両親と話し合うこと。衣食住の支出額と収入との割合を,おもな諸外国のそれと比較し,その差がひどければ,原因を研究してみること。

(三九) 自分の町や地方に消費組合・購買組合があれば.その役員をたずねて,その目的・運営方法について話を聞くこと。一般市場の価格と,どれだけの差があるであろうか。差があれば,その理由について討議すること。よき組合の活動ということについて,研究すること。

(四○) 労働組合は,組合員の消費生活に対して,どんなことをしているか,組合の役員をたずねて話を聞くこと。

(四一) 自分の小づかいは一箇月間に,どんな割合で使われているか,学用品・教養・娯楽など,できるだけくわしく表に作ってみること。むだな買物はなかったか,浪費はなかったかを,研究してみること。

(四二) 消費者の心がけが,生産者にどんな影響を与えることができるであろうか。いろいろな場合を研究して,表に作ってみること。

(四三) 消費者の立場からいって,罷業はどういう影響を与えるであろうか,新聞の論説や,記事を集め,十分研究した後,「消費者と罷業」という問題で,討論会を行うこと。

(四四) 消費者と生産者は,どういう点で利害が相反するであろうか。商品経済という点から研究して討議すること。

(四五) 経済生活の変遷を,生産方法(衣・食・住の獲得方法)と,消費生活の発展について,調査研究してみること。

(四六) 繊維製品の生産額は,戦前と現在とでは,どう違っているか,比ベてみること。新聞・雑誌などを注意し,あるいは,しかるべき当局に問い合わせること。繊維製品の節約という点で,母や姉と話し合い,自分の家の一年間の衣生活の計画を立てること。それを学級に報告し,討議すること。

(四七) 家庭で,燃料は一年間にどのくらい消費されるか,電熱器を使うことなども含めて,自分の家の総額を計算してみること。その金額は,一年間の支出の何割になるか,燃料の節約という点で,工夫してみること。燃料の節約が,日木の経済の再建と,どう関係があるかについて,よく調ベた後,学級討議を行うこと。

(四八) 貯蓄の意義について作文を書くこと。本年度になってから,貯蓄は,毎月ふえているか,へっているか,それと,物価との関係を調ベること。貯蓄と消費生活という点について,研究すること。

(四九) インフレーションと消費生活という問題を,できるだけよく調ベて討議すること。インフレーションを防止するためには,消費者としては,どういう心がけが必要か。


単元六 個人は,共同生活にうまく適合して行くにはどうしたらよいであろうか。

~学習活動の例~

 (教師に対する注意)

(一) 自分自身,並びに自分の問題について理解するためには,生徒は,自分の成長について,二三の初歩的な原則を理解する必要がある。この年齢の水準では,心理学の形式的な研究を企ててはいけない。この問題については,この単元にそう教科書以外には適当な資料がないが,そうかといって,教師は成人のための教科書で心理学の資料を読むように指示したり,すゝめたりすることは避けなくてはならない。そのような教科書の内容を,おそらく生徒は誤解するであろう。青少年期における個人の成長に関する資料は,教師用の「教育心理」という新教科書の中に見出たされるであろう。この学習を進めて行く間に,適当な時に,教師は次に揚げてあることがらについて,簡単な説明を与え,理解と望ましい態度ができるように,それに続いて学級討議をするのがよい。生物学や心理学を含んでいる説明は,理解できる程度に簡単にすベきである。

 (1) 教師は,必要な時には,性格が両親から子孫に伝えられる生物学的課程であることについて,簡単な説明を行うべきである。生徒は,この過程の説明については生物学の新教科書で学ぶことができようし,教師は「教育心理」から資料を得られるであろう。生徒は,自分の生活に対する遺伝の影響を十分に理解できるように,このことがらについて学習しなくてはならない。

 (2) 自分についての問題を理解するために,生徒は,自分の身体的・精神的な発展について,幾分は知っておく必要がある。このことがらについては,信頼できる資料が不足しているので,この場合には,教師は青少年期の成長について,簡単な説明を与えてやる必要がある。「教育心理」の教科書は,このことがらについて多くの資料をのせており,その中には,個人の誕生から,成熟までの発達段階のおもな特色を示して,要約した形で掲げた表もある。各年齢水準について,次の四つの標題をもとに資料がまとめられている。即ち,身体発育,社会性の発達,情緒の発達,知的発達がそれである。この資料を与えたなら,続いて学級討議をすべきである。

 (3) 生徒は自分たちに,ある仕方の行動をとらせる衝動について,ある程度の知識をもっている方がのぞましい。教師は,個人の基本的な要求,――即ち,愛情を求める心,集団生活に加わろうとする要求,独立しようとする要求,自敬の念を維持しようとする要求,みんなに認められようとする要求――について,簡単な説明を与えるのもよい。個人の要求が明瞭にされれば,要求や目標が環境によって,しばしば妨げられるものであることについて,また,個人が妨げられた場合に,それに適合しょうとする方法について,さらにまた適合するのに失敗すると,行為や人格の発展にとって,どんな問題がおこるかというにとについて,説明が必要になる。

 このような説明は,決して形式的・組織的になされてはならない。学級生徒たち自身の問題や,自分自身の行動について,理解しようとする,生徒たちの意識的な要求がある場合には,教師は,できるだけ助力してやらなくてはならない。この年齢の生徒は,その家庭,学校生活,社会生活に対する適合の問題で,しばしば苦しむものであるから,教師が助力を与ええなくてはならない機会が多い。教師は,教育心理学や,社会学や,生物学について,知識と理解とを持たなくては,必要な助力を与えてやることができないであろう。

(二) 先行する諸学年のいくつかの単元大要には,個人に対する自然環境の影響について理解させる学習活動に対して,参考になるものが含まれている。ここでは,たゞ,二三の学習活動を附け加えて挙げてあるにすぎない。特に,第七学年の単元一及び第八学年の単元一が参考になる。そこに掲げてある学習活動の例は,第九学年にも用いられるであろう。教師と生徒は,気候,地形,天然資源,土じょう,動植物というような自然環境の要素が,各個人に与える影響に重点をおいて,学習活動を計画し,これを実行すべきである。

 (生徒に対して)

(一) 自分の経験や読書をもとにして,人間の身体を健康に保つためには,どういう条件が必要であるかを表にしてみること(例えば,きれいな空気,適度の睡眠等)。その反対に,健康を害するいろいろの原因を同じく表に作ってみること。それについて学級で討議し,自分の身体を健康に保つために必要な規則や習慣をきめること。不健康が,集団生活に十分に参加するのにどんなに障害になるかという点を,明らかにすること。

(二) 附近の医師を学校に招き,人間の身体の発達について,話をしてもらうこと。必要と思われる知識を得るために,質問すること。身体の発達のありさまを記録し,表にすること。(身長・体重の増加,死亡率について)

(三) よくない家庭の状況と少年犯罪の関係について,情報を得ること。家庭で得た教育が学校における自分の行動に,どんな効果を与えているかを,学校で討議すること。

(四) 「民主的な生活を学ぶ最適の場所は家庭である」という主題で,討議すること。家族集団の各成員が,家庭の仕事や,厚生の活動に対して力になれる方法を討議すること。

(五) よい家庭生活の特質について,次の観点から討議すること。

 (1) よい家庭は,和やかで,慈愛と思いやりにみちている。

 (2) よい家庭では最後の決定権は両親にあるけれども,家族がみんな加わっていろいろなことをきめる。

 (3) よい家庭は,家族の安全をはかる。

 (4) よい家庭では,各人が互に尊敬し合う。

 (5) よい家庭の家族は,自分たちの幸福ばかりでなく,社会やさらに大きい集団の福祉を思いやる。

(六) 生徒として学校における集団生活で果たし得る次のような責任について,討議すること。

 (1) 生徒の団体に招待する計画の番組を示す。
 
 (2) 安全対策に助力する。

 (3) 遺失物係をやる。

 (4) 学校衛生に助力する。

 (5) 書籍交換会をやる。

 (6) 学校新聞を発行する。

 (7) 学校図書の管理に助力する。

 (8) 運動場の監督の助力をする。

 (9) 体育の計画に助力する。――技の日割をきめる。応援団を組織する。観衆の席を整理する。

 (10) 生徒の厚生計画を推進する。

 (11) 生徒の同好会を推進する。

(七) 討議によって,学校や,家庭や,公共の集会で守るべき規則を書いた本を,学級で作ること。この規則表と対照して,生徒各自が,自分の行動を判定するように奨励すること。

(八) 河合栄次郎著「学生生活」を読み,わからぬ点は先生や先輩にたずねて,青年期と自覚ということについて,話し合うこと。

(九) 本を読んたり討議したりした後,好ましい人格の資質(集団とともに楽にたのしく生活できる資質)を,十あげてみること。このような人格の資質を得る方法について,討議すること。

(一○) 討議によって,「善」あるいは「悪」と考えられる行動数種を,表にすること。なぜそれらは「善」または「悪」と考えられるのであろうか。「悪」と考えられたものの中集団の利益と権利を害するようなものは,どのくらいあるだろうか。

(一一) 社会の福祉に反するという理由で,悪と考えられるような種類の行動をとりあげること。反社会的な行動の原因を明らかにしてみること。一例をあげると,空腹あるいは貧しさから盗みをした少年,その遊び仲間から仲間はずれにされたので,けんかをした少年などである。(学校のだれかを個人的に刺激しないような,場合を選ぶこと)。

(一二) 一日,すべての生徒が,他の生徒の権利を全然顧みないようなことが起ったなら,自分たちの学校でどんなことが起るか,想像してみること。

(一三) 学校の集団生活にうまく適合していると考えられる人について,記述してみること。

(一四) 農民と,漁師と,都会の工場勤労者の特質について調ベ,職業生活や,自然及び社会環境が,人々の性格にどのような違った影響を及ぼすかについて,討議すること。

(一五) 東北人,関西人(特に京都,大阪),土佐人(高知県人),三州人(鹿児島,宮崎県人)等の特質について比較し,その特色を表にしてみること。自分の地方の人々の特性について書いた書物を読み,その長所・短所を批判的に討議すること。

(一六) ことばについての研究を行うこと。ます自分たちの地方の方言と,なまりについて調査し,それをいわゆる標準語や標準音と対照し,その相違を表にすること。悪い方言やなまりをどうしてなくすことができるか,実際できるような方法について討議し,一応の結論を出してみること。

(一七) 勤労者や事業家に,職業人気質について話をきいて,職場が,そこに働く人々にどんな身体的・精神的な影響を与えるかを,討議すること。自分の性質や環境と照し合わせて,将来どういう仕事をしたいかということについて,作文を書いてみること。

(一八) 個性や人格の発展に,他のいかなる集団の影響よりも,家庭の影響が最も大きいといわれる。自分の行動の中のどんな点に家庭の影響のあとを見出だすことができるだろうか。「三つ子の魂百まで」ということわざを評論すること。このことわざに科学的な根拠があるかどうかを明らかにすること。

(一九) 個人にとって,その生涯の仕事を準備し,よりよい公民に育て,趣味や教養の豊かな人間を作り,理解力を増して,成功の機会に恵まれるようにするために,教育はどんな影響をもっているかを研究して,文書にして学級で朗読すること。

(二○) 統治者・詩人・政治家・技術者・教育者・医師・俳優等は,どんな才能と能力を必要とするだろうか。これらの人々の仕事は,他人の福祉にどのように貢献するだろうか。自分の仕事で得た経験や,自分の地方の人々の経歴についての観察,自分の教有及び自分の意志などにおいて経験したことの結果として,どんな種類の仕事や経歴に興味をもっただろうか。それに必要な資格をもつために,受けなくてはならない教育や,経験を明らかにすること。

(二一) 自分の郷土で,最も重要な職業をいくつか表にしてみること。これらの職業にたずさわる人々が,共同生活に貢献するありさまについて,討議すること。

(二二) 数人のものが集まって,ある仕事をしようとする場合に,各々が自分の意見を主張して他の意見を受けいれない時には,仕事を始める前に,ぜひしなくてはならないことはどういうことであろうか。次に計画がきまったとして,その仕事に成功するために,少なくとも行わなくてはならないことは何であろうか。

(二三) 町や村の治安を維持し,火災を予防し,子弟を教育し,飲料水を整えることについて,適当な計画もなく,またその実施について責任をもって世話しようとする人がいない場合には,町や村の生活はどうなって行くか,ということについて討議すること。町や村の人々の福祉を増進するために,人々が相協力することが絶対に必要であることを,明らかにすること。

(二四) 丹那トンネル・清水トンネル・また関門海底トンネルなどの工事に成功するのに,人々はどのように団結してその完成に努力したかを調ベて,学級に報告すること。また,「一枚の新聞が刷り上るまで」という題で,実際に新聞の編集,印刷の順序を調ベて,その仕事のために,どんなに多くの人々が協力しているかを明らかにして,学級に報告すること。

(二五) 「縁の下の力もち」ということはどういうことか。批判的に討議すること。共同の福祉増進のために,黙々と働いている人たち,その日常生活は目につかないが,意外に大きな影響を与える人たち,そういう人たちについて,討議すること。このような人たちに,社会はどういう待遇を与えるベきであろうか。

(二六) 古代社会に関する歴史を読んで,奴れい制度について調ベ,学級で討議すること。

 (1) 奴れいは,どういう場合に起ったか。

 (2) その生活は,どんな工合だっだか。

 (3) なぜ奴れい制度はなくなったか。

 (4) 個人の自由は,達成されたろうか。

(二七) 「人間の生命はなぜ尊いか」という題で,討議すること。

(二八) 自由と放縦との相違について,討議すること。真の自由は,どういうものであろうか。戦後の社会において,明らかに自由をはき違えていると思われる人々の行動について,具体的に例を挙げて討議すること。

(二九) 自分たちの生活でしたいと思うことと,しなくてはならないこととが,衝突する場合について,考えてみること。その場合には,どうすればよいかについて,考えてみること。

(三○) 福沢諭吉・新島襄・新戸部稲造・内村鑑三等の伝記や,著述を読んで,これらの人々のすぐれている点を明らかにすること。また,たがいに異なっている点を研究すること。

(三一) 平和に栄える社会生活にとって,欠くことのできないものと思われる個人的性質をできるだけ挙げてみること。即ち,寛容・親切・思慮・無私・威厳・信頼,明朗・独創性・勇敢・忍耐・いんぎん・協力的というようなものである。それらのうちから,特にたいせつだと思われるもの五つを取り出して,自分の知っている人物について,具体的な例をあげ,そのおのおのについて説明してみること。自己の性格を反省して,五つあげたものの中で,自分の持っていると思われるものに印をつけること。また,自分が将来努力して養う必要のあるものを取り出して,座右の銘として紙に大きく書き,それを適当な場所に張り出すこと。なぜこのような性質は「よい」性質と考えられるのであろうか。集団の福祉を増進するからであろうか。

(三二) 自分の尊敬する偉人の肖像を手に入れて,それにその国籍,年代を書き入れ,その下に賞詞を書いて自分の部屋に飾ること。時々,級友が交替で,自分の手に入れた肖像を学級に持って来て教室に掲げること。その伝記から,その人たちの性格的特色を研究すること。

(三三) 数種の慣習を研究し,それを自分の学級に報告すること。悪い習慣のきょう正について討議すること。慣習の起源について調ベること。生活における慣習の役割について知識を得て古い慣習が,すべて,今でも集団生活に役に立つかどうかについて級友と討議すること。

(三四) 自分の市・町・村の生活の仕方を,自分のよく知っている他の市・町・村と比較してみること。

 (1) 生活の仕方。

 (2) 厚生の方法。

 (3) 社会活動。

  行動に相違が見られたらそれについて考えて見ること。

(三五) 実際に観察した慣習を,書きとめておくこと。即ち,挨拶の仕方,食事の仕方,建築の方法,仕事の仕方など。このような慣習は,自分の行動にどんな影響を与えているかを示すこと。

(三六) 二三の団体(運動クラブ・美術団体・音楽団休)に入っている級友に,そのクラブの活動についてたずねること。クラブの他の成員といっしょに活動に加わることの利益や時間が束縛されることについて,また,級友自身の感想について話をしてもらうこと。クラブが性格の発達に及ぼす影響を具体的に明らかにすること。

(三七) 自分が属している集団で,意見の一致していない問題を,研究や討議をして選び出すこと。そういう問題の一つに,少年少女が学校で共同していっしょに勉強した方がよいかどらかということがあると,仮定してみること。この問題について,自分の地方のしきたりや慣習はどうだろうか。この問題について,新聞の論説を集めること。地方のいろいろな人々の意見を求めること。他の学校で,少年少女が自由にいっしょに勉強している例を探してみること,その意見を聞くこと。最後に,この問題について,学級でその際集めた事実をすべて用いて討議すること。男女共学の利害を表にすること。

(三八) 討議に入る前に,できるだけ多くの情報を集めて自分の学校の共同生活についてが重要な問題の研究を始めること。その問題の一つは,学校に生徒自治委員会のあることの可否の問題だと仮定してみること。他の学校の生徒自治委員会の例をさがして,これらが,どの程度に成功しているかをたしかめること。もし失敗していたとすれば,その原因を明らかにすること。生徒自治委員会に関して得られる情報をすべて,見出だした後,学級で,これについて討議すること。自分の学級または学校に,学級自治委員会を求める気持があるかどうか,また,学級または学校の組織が,実際にできるか,どうか,をきめること。

(三九) 学校当局との間の話し合いによって,もし生徒自治委員会が必要だときまったらそれを組織するように実際に着手すること。まず,どういう要求を生徒自治委員会は満足さすべきかを,はっきりさせること。それが実行すべき機能の表をつくること。学級すべてがいっしょになって生徒指導者選挙の方法,自治委員会の形式を確立すること。討議を十分して後,自治委員会の形式の輪かくや,指導者の資格をきめ,選挙の方法を規定する「根本規約」を起草するグループを選挙によって選出すること。この「根本規約」を,生徒団体の投票にかけること。もしそれが通過しなかったら,生徒の多数の意見に合致するように「根本規約」を書きなおすこと。それが承認されるようだったら,「根本規約」に従って選挙をやり,生徒自治委員会の設立を進めること。

(四○) 社会の統制ということについて,書物を読んだり議論を聞いたりして,その意味と必要とを明らかにすること。社会の統制に服するために必要な個人の正しい態度として,どういうことがあげられるか,研究すること。統制が意義あるものとなる前に,それは,集団全体によって課されなくてはならないということを示すこと。時々行動の規則が変化する必要があるのは,なぜだろうか。

(四一) 自分の属しているすべての集団生活を表にしてみること。それらのうちで,自分が進んで参加したものと自分が改めて参加するまでもなく,はじめからその一員となっているものとを,区別すること。この二つの集団に対して,自分はどちらにより多くの親しみを感じ心がひかれているか,自分に最も密接な関係があると思われるものを,順に番号で示してみること。級友のものと比較して,学級全体で表示してみること。

(四二) 自分の現在属している集団との関係は,いつどういう順序で結ばれて来たかを明らかにすること。学級の全員について,調査して,一つの表にまとめ,年齢といろいろの集団における成員の地位との関係を,図示してみること。

(四三) 社会のよき成員(団員)として必要な条件をあげてみること。それらの条件のうちで特に努力して練習をつむ必要のあるものをあげること。また準備を必要とするものをあげること。自分の将来入って行くと予想される社会において,必要とされる性質や,条件や,技術能力などについて調ベ,それを身につけるための実際の計画を立てること。

(四四) ことばを,上品,明せき(意志をはっきり伝えること,表現を明瞭にすること)という点から研究し,悪いと思うことばの表とつくること。自分たちのことばの修練を行う機会方法について,考えてみること。朗読会,討論会などを計画したり,あるいは,よいことばを学ぶという点から,脚本を書いたり,実演したり,新聞を発行したり,校内放送を実施したりするのもよい。

(四五) 美術,音楽,文学,運動,旅行などにおける自分たちの趣味を調ベること。趣味の洗練ということについて,研究すること。

(四六) 自分たちの生活を,いっそう満足なものにするための実際の計画を立てること。日常の起居,動作,容儀,服装,ことばづかい,表情などについて詳細に反省して,改善すべき点がないかどうかを調ベ,改善への具体的な計画を立てること。

(四七) 自分の家庭,近隣,町の生活を改善するための具体的,実際的な計画を立てること。この際,例えば,町の美観をそこなっているものを除く場合でも,自分ひとりの力だけでは困難であるから,他の人々と協力して,集団の力によって改善を進める工夫をなすことが必要である。街路を清潔にして,衛生的に改善するために案を考えて,これを近くの学校や,町の役場や,警察や,その他の公共機関とも連絡をとって,ポスターや標語などを工夫して,自分の学級が進めることのできた改善について,強力に運動を展開する方法を考えること。

(四八) 地方の共同生活の改善に力になろうとする有志によって,公民クラブをつくり,社会の改革に進んで奉仕する具体的な計画を立てること。


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事実は変わらないが,意味は変わる

 日清戦争は,1894年7月から1895年3月にかけて行われた戦争です。

 中学校の歴史の教科書でも,その背景と原因,戦争の経過,結果や影響は,おおむね分かります。

 高校の教科書で学べば,朝鮮で起こった壬午事変や甲申事変,天津条約締結後にしばらく「平和」な状況が続いたこと,賠償金をもとに金本位制が採用できたことなども知ることができます。

 そこで改めて,

 「日清戦争とはどのような戦争だったのか」

 という問いに対して,いくつくらいの答えが用意できるでしょうか。

 当時の人々の言葉からも,この戦争には「意味」が与えられていたことが分かります。

 福沢諭吉は,「文野(文明と野蛮)の戦争」と読んでいます。

 内村鑑三は,『Justification of the Corean War』というタイトルで論文を発表し,

 「日本は東洋に於ける進歩主義の戦士なり」と表現しています。

 田中正造は,戦争中,「文明の名誉は全世界に揚(あが)れり」と年賀状に書いています。

 日露戦争では反戦,非戦の立場になった人たちでも,

 肯定の側にまわっていたのが,日清戦争だったのです。

 これらは,当時の人々にとっての,そのとき感じていた「意味」です。

 歴史学習は,その「意味」を改めて考えることによって,

 「失敗の本質」にせまることができる,

 「失敗の本質」にせまろうとする態度を育成することができる,

 そういう学習です。

 さらに,その「意味」・・・「解釈」と言ってもいいかもしれませんが・・・は,

 変化します。

 中学校時代に考えることができた「意味」,

 高校時代になって考えることができた「意味」,
 
 そして,大人になって,日清戦争をふり返って考えることができる「意味」には,

 それぞれ大きなレベルの違いがあるでしょう。

 そこに自らの成長を感じたり,あるいは自分自身の未熟だった点を自覚したり,失敗したことの原因に気づいたりするチャンスがあるのです。

 
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学習指導要領・社会科編Ⅱ(試案)=昭和22年版 に示された現在の中2・社会科の学習活動例

 第8学年・・・つまり現在の中学校2年生の各単元と学習活動例です。

 単元五だけに関しては,単元の要旨と目標も掲載しておきます。その理由は,お読みいただければ分かっていただけると思います。

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単元一 世界の農牧生産はどのように行われているか。

~学習活動の例~

(一) 縮尺の大きい地図,縮尺の小さい地図とは,どういう意味か。なぜ地図には大小いろいろな縮尺のものが作られるか。内務省発行の地図には,どんな縮尺のものがあるか。今までに見た地図の中で,いちばん縮尺の大きかったものは何分の一で,それは,どんな目的で作られたものかを調べて,報告すること。

(二) 学校あるいは自分の家の附近の概略の地図を,いろいろな縮尺で描いてみること。

(三) 地球儀の上に,適当な大きさの円を幾つか描き,これらの形や面積が,地図の描き方によって,どのように変わって表わされるかを調べて,報告すること。

(四) 世界で,米を主食としている住民は,どのように分布しているか。また,日本の米と外国の米とは,その品質がどう異なるかを調べて,報告すること。

(五) 西洋人が,穀物というときには,主としてどんなものを指しているか。また,西洋人が消費する穀物を多く産する地方は,世界に,どのように分布しているかを調べて,報告すること。

(六) 熱帯の原住民は,いつもどんな服装をして,どんな家に住み,食物として,どんなものをたべているか。また,どんな農業を営んでいるかを調べて,報告すること。

(七) 熱帯の生活の有利な点,不利な点を調べて,討議すること。

(八) 極地方の住民の服装・家・食物について調べて,報告すること。また,極地方の生活には,どんな不利な点や有利な点があるかを調べて,討議すること。

(九) 世界の有名な高山の図表を,大陸別に作ること。

(一○) 各大陸の高さの表を,わかりやすいような図表になおすこと。

(一一) 世界の平野は,どこも多数の人口を養っているか。そうでないものがあれば,それはどこどこの平野か。また,その理由について調べて,討議すること。

(一二) 県の人口分布図を描いて,自然や産業との関係を調べて,報告すること。

(一三) 世界の山地の中で,特にけわしいものは,どのような排列を示しているか。また,火山はどのように分布しているか。世界から見て,わが国の地勢には,どんな特色があって,それが,われわれの生活に,どんな影響を与えているかを調べて討議すること。

(一四) わが国の雨量は,世界の文明諸国に比べて,多い方か,少ない方か。また雨の降り方(月別の雨量)には,世界諸地域で,それぞれどんな特色があるかを,雨量表から調査して,討議すること。また,わが国の雨の降り方は,われわれの生活に,どんな利益・不利益を与えているかを調べて,討議すること。

(一五) アジア州の大山脈・大高原を図示して,それぞれの名前を書き入れること。

(一六) アジア川のおもな河川,及びおもな平野を図示して,それぞれの名まえを書き入れること。また,同し図に,内陸流域の範囲を書くこと。

(一七) アジア川で,最も気温の年変化が大きい地方はどの辺か。その反対に,最も小さい地方はどの辺か。わが国の気温の年変化は,世界の同じくらいの緯度の他の海岸地方に比べて,大きい方か,小さい方か。郷土の気温年変化はどんな状態かを,気温表によって調ベ,報告すること。そして,各地域の生活には,これによって,どんな有利な点,不利な点があるかを考えて,討議すること。

(一八) 世界の米・茶・小麦・綿花の生産は,それぞれどのような気候と深い関係を持つかを調べて,討議すること。また,郷土の特産物についても,郷土の気候と関係があるかどうかを調べて,討議すること。

(一九) 外国を旅行したり,外国に住んだことのある人を学校へ招いて,諸外国の産業,住民の生活状態や風習などについて,話してもらい,また,いろいろな質問をして,各国の特色を理解すること。

(二○) 東部アジアのおもな平野は,どのように分布しているか。また,各平野には,どんな都市が発達しているかを図示すること。

(二一) 東部アジアの諸平野には,どんな作物が栽培されているか,平野によって,作物にどんな相違があるかを調べて,図示すること。

(二二) 華北・満州(中国東北地方)の農民は,日常どんなものを常食としているか,また,華北の食糧問題対策として,歴史的にどんな施設がなされたかを調べて,報告すること。

(二三) 新開や雑誌から,華北の社会状態や,人々の生活状態を書いた記事を集めること。そして,万里長城が作られた当時と今日とでは,社会状態や生活状態が,どんなに異なっているかを調べて,討議すること。

(二四) 中国本部のほぼ中央部を,東西に走る秦嶺(じんれい)を境として,その北と南とでは,気候・産業・人々のことばや気質などに,どんな相違があるかを調べて,報告すること。

(二五) 華北の黄土地帯に営まれている穴居について調べて,報告すること。そして,郷土附近の斜面に穴を掘って,何かに利用している例があるかどうかを調べること。

(二六) アジア季節風帯の農業のやり方について,次の諸点を調べて,討議すること。また,郷土についても,同じようなことを調べて,今後の農業をどのように改善したらよいかを討議すること。

 (イ) 全体として,どんな作物の栽培に主力が注がれているか。

 (ロ) 食糧を他国へ輸出することを目がけているか。輸出する余裕は大きいか,小さいか。

 (ハ) 輸出する農産物として,どんなものがあるか。

 (ニ) 土地の利用度及び農家一戸当たりの耕地面積は,他の大陸に比べて,大きいか,小さいか。

 (ホ) 機械力の利用が,一般に行われているか。

 (ヘ) 労力は,おもに何にたよっているか。

(二七) 世界の遊牧民の生活状態について調べて,報告すること。

(二八) 内部アジアの牧畜は,新大陸やオーストラリアの牧畜に比べて,どのように違っているか。今後どのように改善・発達させたらよいかを調べて,討議すること。

(二九) 雑誌や本から,世界の泉地の自然状態や,住民の日常生活の有様を調べて,報告すること。

(三○) チベットのような高い高原の上で,人々はどんな生活を営んでいるか。また,世界でこれにおとらず高い所に人が住んでいるのはどの辺か。そこでは,どんな生活が営まれているかを調べること。また,郷土でいちばん高い村について,その名まえ・場所・地形・高さ・人口・戸数・特色のある産業や日常生活などについて調べて報告すること。

(三一) シベリアの諸都市の気温と雨量の年変化の状態を図示し,四季の特色について調べること。そして,わが国とどんなに異なるかを報告すること。

(三二) シベリアの開拓の歴史と現在の農業状態を調べて,報告すること。

(三三) シベリアの都市分布図を描き,重要な都市は,どういう地帯に最も多く発達しているかを調べて,討議すること。

(三四) 東インド諸島の気温の特色を,気温・雨量表によって調べ,住民の生活に対する利益・不利益について,討議すること。

(三五) 南部アジアのゴム栽培の歴史,現在のゴム園経営の特色,及びその生産の持つ意味について調べて,報告すること。

(三六) インド及び南部アジアのおもな港の分布図を描き,また各港の重要なわけを,簡単に書いた表を作ること。

(三七) インドのおもな農産物に関して,

 (1) その栽培が盛んに行われている地方と,農地の特色。
 
 (2) その集散地。

 (3) その生産のもつ世界的意味。

 について調べて報告すること。

(三八) 自然から見て,ヨーロッパが,人類の活動舞台として有利な点,不利な点を列挙して,討議すること。

(三九) デンマルクの農牧の特色を調べ,わが国の農牧業で,見習うべき点があるかどうかについて,討議すること。

(四○) 北部・東部・中部・南部ヨーロッパの気候の特色を明らかに示す図表を,気温・雨量表から作ること。

(四一) われわれの日常生活に,ヨーロッパ人の生活様式が,どのように取り入れられているかを調べて,討議すること。

(四二) エジプト・メソポタミア・インド・中国の黄河流域の文化は,世界の四大古文明といわれているが,これらの地方に,はやく文化の発達を促した有利な自然条件について調べて,討議すること。

(四三) アフリカの開拓がおくれた理由を調べ,アフリカの生産地としての将来性について,討議すること。

(四四) コンゴ川とアマゾン川流域の自然及び住民の生活状態を比べて,報告すること。

(四五) 北アメリカの開拓の歴史を調べて,報告すること。

(四六) 新大陸発見後,旧世界各国から,新大陸への移住の歴史を調べて,報告すること。

(四七) 新大陸はどんな動機によって発見されたか。また,コロンブスの新大陸に到着するまでの航路を,図に描くこと。

(四八) アメリカ・インデイアンの分布及び生活状態を調べて,報告すること。

(四九) アメリカから,旧世界へ移された,おもな農産物を調べ,また,これが現在のわれわれの生活にどんな利益を与えているかについて,討議すること。

(五○) 北アメリカの農放業のやり方の特色を調べ,これと同じ方法を,アジアで有利に行うことができるかどうかについて,討議すること。

(五一) 新聞や雑誌の記事や,北アメリカの事情をよく知っている人の話から,北アメリカのいなかの生活状態を調べること。そして,わが国のいなかの生活を改善するには,どんな点を見習ったらよいかについて,討議すること。

(五二) われわれの日常生活に,アメリカの生活様式が,どのように取り入れられているかを調べて,討議すること。

(五三) アマゾン川の自然の流域の産業・住民の生活状態に関する資料を集め,アマゾン川こさかのぼる話にまとめて,学級で話すこと。

(五四) 南アメリカに発達した古代文化について調べて,報告すること。

(五五) 南アメリカの地図を描き,各国名・その首府,及びおもな港を書入れること。

(五六) 南アメリカの農業及び畜産の分布図を描くこと。

(五七) マジェランの航海の図を描き,この航海が,どんな重要な結果をもたらしたかを調べて,報告すること。

(五八) オーストラリアの牧畜業が,今日のように盛んになって来た歴史を調べて,報告すること。

(五九) オーストラリアの開拓の歴史,都市の発達について調べて,報告すること。

(六○) ハワイ諸島の気候,農業の特色について調べて,報告すること。

(六一) これまでに行われた北極及び南極地方の有名な探検に関し,

 (イ) 探検家の名まえ及び探検の年代

 (ロ) 探検の目的・方法・経過

 (ハ) 探検の結果,明らかにされたこと

 について調べ,報告すること。

(六二) 郷土附近では,農産や畜産の改善や収穫の増大に,どのような努力が払われて来たかを調べ,また,今後,どのような方面に努力すべきかについて,討議すること。

(六三) 郷土附近では,水田の階段耕作は,どの辺に最もよく発達しているか。そこの土地は何度くらいの傾斜で,平地から何メートルくらいの高さまで発達しているかを調べて,報告すること。

(六四) 郷上附近には,まだ耕せる土地が残っているか。それはどのような所か。そこを開懇すれば,どれだけの生産を増すことができるかを調べて,討議すること。


単元二 天然資源を最も有効に利用するには,どうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 郷土には,どんな天然資源があるか。この表を作り,また,その分布図を描くこと。

(二) 郷土の日常生活は,どのように天然資源の利用と結びついて営まれているかを調べて,報告すること。

(三) 郷土の天然資源のうち,特色のあるものは何か。これは郷土の繁栄とどんな関係を持っているか。また,今後,郷土をいっそう栄えさせるためには,その天然資源を,どのように活用したらよいかについて考えて,討議すること。

(四) 郷土には,どんな先史人類の遺跡があるか。当時住んでいた人々は,郷土の天然資源を,どのように利用したかを調べて,討議すること。

(五) 郷土の鉱産資源に関する資料を,できるだけ集めること。そして,鉱産資源が現在どのように利用されているか。きた,いつごろから,それぞれの鉱業が開始されたかを調べること。

(六) 郷土に近い鉱山へ行って,鉱床のあり方や,探鉱・製錬の状況を見学すること。

(七) 郷土の県・地方,さらに日本全体の各種の鉱産資源分布図を描くこと。

(八) 郷土の土地は,どんな岩石から成っているか。地質図を現地と対照して,地質図の描き方の大要を理解すること。そして,自分である適当な範囲の土地の地質を調べて,地質図を描いてみること。

(九) 郷土の鉱産資源は,どんな地形や地質と関係を持っているかを調べること。

(一○) 地質学の専門家を学校へ招いて,世界や,日本の地史の話を聞き,また,いろいろな鉱床は,どのようにしてできたかを説明してもらうこと。

(一一) わが国のおもな炭田分布図を描き,地質図と対照して,どんな時代にできた地層と深い関係があるかを調べること。また,世界のおもな炭田も,わが国と同様な地層の部分に多く発達しているかどうかを調べ,もしそうでなかったら,その原因を地質学の専門家に問い合わせるなり,書物で調べるなりして,報告すること。

(一二) 世界のおもな炭田のうち,まだ余り盛んな採炭が行われていないものの例,及び埋蔵量はわすかでありながら,盛んに開発されているものの例を挙げること。そして,埋蔵量と開発の程度とが比例しない原因を考えて,討議すること。

(一三) わが国の油田分布図を描くこと。そして,地形図及び地質図と対照して,わが国の油田は,どの時代の地層,及びどんな地形と深い関係を持つかを調べること。

(一四) アメリカの油田は,どんな地層と関係を持ち,わが国の油田の場合と,どのように違うかを調査して,報告すること。

(一五) 石炭や石油は,どんな状態で地層中に含まれているかを調べて,いろいろな場合を図に描くこと。

(一六) 郷土では,石材として,おもにどんなものが,どのように利用されているか。また,その石材は,どこで産出するかを調べること。

(一七) 日本の鉱業や,鉱産資源に関する記事が新聞に出るごとに切り抜いて,問題別に整理しておくこと。そして,これが相当な分量になってから,それをもととして,適当な問題について討議すること。

(一八) いろいろな鉱産の産額増減の図表を作ること。そして,産出の多かった期間や,少なかった期間について,その原因を調査すること。

(一九) 郷土,あるいは日本の鉱産資源で,枯渇の危険に陥っているものがあるかどうかを調べること。また,いろいろな鉱産資源について,その埋蔵量と年産出額とから,その資源の寿命を推定してみること。そして,この推定が適中するためには,どんな仮定条件が必要かを考えること。

(二○) 戦前の統計によって,いろいろな鉱産の日本への輸入状況を調べること。そして,その種類・量・買い入れ先を示す地図を作ること。

(二一) 県の係りの人,あるいは専門家を学校へ招いて,日本及び県の鉱産資源開発の現状,及び将来の計画について,説明してもらうこと。

(二二) 郷土では,水力をどのように利用しているかを調べて,表に書くこと。また,さらに有効な利用法について討議すること。

(二三) 郷土へは,電力が,どこから,どのような方法で,供給されているか。そのありさまを地図に描くこと。また,近くに発電所があれば,これを見学して,いろいろな説明を聞くこと。

(二四) 日本のおもな発電所の分布図を描くこと。そして,その分布が,日本の自然とどんな関係を持っているかを調べること。

(二五) 郷土の月電力消費量を調べ,これから,人口及び戸数割を計算すること。そして,その量が,日本の平均に比べて多いか少ないか。もし多ければ,何か特殊な事情のためか,あるいは,消費節約をしないためか調べること。

(二六) 発電に関する専門家を学校へ招いて,日本あるいは郷土の県にはどれだけの利用し得る水力資源があり,この極限に現在はどの程度まで近づいているか。また,日本では,地方によってこれにはどんな差があるかを説明してもらうこと。

(二七〉郷土の老人から,郷土にまだ電気が通じなかった以前には,どんなありさまであったか。いつから電気が来るようになったか。その時はどんな気持がしたかなどの話を聞くこと。そして,以前の生活状態と現在のそれと比較して,著しい変化が認められる点についての表を作ること。

(二八) 世界で電燈がよく普及している地域を調べて,その分布図を描くこと。

(二九) 外国の水力利用状況を調べて,日本と比較すること。

(三○) 郷土で,電力をさらに有効に使用するにはどうしたらよいかを考えて,討議すること。

(三一) 郷土では・電力の供給を増加させるために,どんな計画が立てられているかを調査して,報告すること。

(三二) 渇水期の電力不足を補うために,わか国ではどんな対策がとられて来たか。また,将来どんな計画があるかを調べて,報告すること。

(三三) 日本の電力の中,水力発電によるものと,火力発電によるものとの割合を図示すること。そして,なぜ現在でも火力発電が必要であるかを調べて,報告すること。

(三四) 新聞やラジオで,日本の電力に関して報道されることを記録しておき,これをもととして,日本の電力の現在及び将来について討議すること。

(三五) 熱帯地方の林産資源は,なぜ開発がおくれているかを調べて,討議すること。

(三六) 世界で,木材家屋が多い地方はどこか。また,家屋の材料には,世界の地域によって,どんな相違があるかを調べて,報告すること。

(三七) 樹木の切り株について年輪を調べ,樹木の種類や,地形などの相違によって,その成長量がどのように違うか。また,郷土では有用材は,その苗木を植えてから,木材として役に立つようになるまでには,何年ぐらいかかるかを調査して,報告すること。

(三八) 郷土には,どんな果樹が多く植えられているか。そして,これは郷土の経済とどんな関係を持っているかを調べること,また,その果樹の日本国内の分布図を書くこと。

(三九) 郷土の特色ある林産資源,あるいは林産に関係のある独特の資源としては,どんなものがあるか。これは,現在,郷土の経済とどんな関係を持っているか,その特来性はどうかについて,討議すること。

(四○) 郷土には,森林を伐り過ぎたために,何か悪い結果を招いている例があるかどうかを調べること。そして,もしあれば,どんな結果か起っているか,これを防ぐにはどうしたらよいがを考えて,討議すること。

(四一) 郷土では,日常生活に必要な燃料を,どこから,どのようにして得ているか。あるいは,配給になる前には,どこから,どんな燃料が多く入って来たかを調べること。

(四二) 世界で,木林を多く供給する地域の分布図を描くこと。そして,その木材のおもな輸出先も書き入れること。

(四三) わが国の木材消費量の,時代に上る変化を示す図表を作ること。そして,その変化の原因について調査すること。

(四四) わが国の主要な森林地の分布図を描いて,国有林を区別し,また,重要な製材業地を書き入れること。

(四五) 北海道の林産資源の重要性について,短い作文を書くこと。その他,わが国のおもな森林地について,その重要性,及びそこの木材が,どのようにして,どこの製材所へ送られるかを調べて,報告すること。

(四六) 郷土で,植林事業に従事している人があれば,その人から,植林がどんな利益をわれわれに与えるかの説明を聞くこと。

(四七) 外国の植林事業について調査し,その成績を,わが国,あるいは郷土と比較して,報告すること。

(四八) 植林について,深い知識を持っている人を学校へ招いて,その人を中心として,日本及び郷土の植林問題について,討議すること。

(四九) がけや切り割りへ行って,土じょうの断面を観察し,土じょうの成熱状態の変化を写生すること。

(五○) 郷土のいろいろな土じょうの標本を集めること。

(五一) 郷土の土じょうの肥よく度は,地形や地質によって,どんな違いがあるかを調べること。

(五二) 郷土の土じょうを,農事試験所へ持って行って,その肥よく度を測定してもらい,また,現在よりも肥よく度を高めるには,どうしたらよいかを教えてもらうこと。

(五三) 郷土では,土じょうの肥よく度を維持し高めるために,どんな方法がとられているかを調べること。

(五四) 世界で有名な肥えた土じょう地帯の分布図を描くこと。そして,それぞれの地帯では,現在どんな農業が営まれているかを調べること。

(五五) 中国の黄土の肥よく度について調べること。また,これは,中国の文化の発達とどんな関係を持って来たか。黄土地帯には,どんなものが多く作られているか。黄土地帯の自然には,どんな長所や短所があるかを調べて,報告すること。

(五六) 北アメリカの肥えた土じょう地帯の開拓の歴史について調べて,報告すること。

(五七) 外国は,土じょうの肥よく度を維持し高めるために,どんな方法がとられているかを調べ,これをわが国の場合と比較すること。

(五八) 世界では,開墾したために,かえって悪い結果になった例として,どんな場合があるかを調べること。そして,わが国,あるいは郷土でも,同様な例があるかどうかを調べること。

(五九) わが国の肥料製造に関する資料を集めること。そして,郷土で用いている化学肥料は,どこで製造されるか,値段はどれくらいかを調べること。

(六○) 農林関係の専門家を学校に招いて,わが国の土じょう問題や,化学肥料の問題についての説明を聞くこと。

(六一) 近くの農事試験所をたずねて,郷土の食糧増産について,どんな研究がなされているかを調べること。

(六二) 「世界各地域の住民の幸福は,土じょうの肥よくと,どんな関係があるか」という題で,作文を書くこと。

(六三) 郷土へは,水産物が,どこから,どのようにして入って来るかを調べること。そして,現在の消費高で人の健康が保特されるか。もしそうでなかったら,その対策として,郷土ではどんな手段をとったらよいかを考えて,討議すること。

(六四) 郷土附近の貝塚の分布を調べ,先住民の生活状態について話し合うこと。

(六五) 戦前の統計によって,日本人の生活が,どんなに水産資源に依存して来たかを示す図表を作ること。そして,水産関係の人の話や,新聞の記事などから,現在わが国では,水産物の増産に,どんな計画が立てられているかを調べて,報告すること。

(六六) わが国近海では,どこで,どんな漁業が営まれているか。これに対して,郷土の漁業にはどんな特色があるか,その将来性はどうかを調べること。

(六七) わが国の海岸で行われている漁業で,その漁獲高が以前に比べて減少したり,以前のように容易に魚がとれなくなったりした例を調べること。そして,それは,どんな原因からか,また,それによって,その海岸の人々の生活はどんな影響を受けているかも調べて,報告すること。

(六八) わが国で行われている製塩法と,朝鮮や中国の海岸で行われている製塩法とでは,どんな違いがあるかを調べること。

(六九) 世界で行われているいろいろな製塩法について調べて,報告すること。

(七○) アジアの熱帯の海で魚を濫獲すれば,その影響がわれわれにどのように及んで来るかを調査して,報告すること。

(七一) 世界で行われている捕鯨について調べ,また,わが国の捕鯨事業の重要性について,討議すること。

(七二) わが国では,どこで,どんな養殖事業が行われているかを調べ,養殖事業の重要性について討議すること。

(七三) 日本の水産業に関する新聞や雑誌の記事を集めておいて,これをもととして,わが国の水産業の将来について,討議すること。

(七四) 郷土附近で,風景美で名高い所の分布図を描き,その風景の特色や,交通状態・施設及びこれまでそれらの風景美がどのように利用されて来たかを調べること。

(七五) 郷土の風景美を,地形・地質・植物・気候・人工的造営物などの方面から分析して,その特色を調査し,討議すること。

(七六) 世界の熱帯・寒帯・乾燥地帯などの写真から,それぞれの地方の風景の特色を調べ,これを日本の風景と比較すること。

(七七) 郷土の風景によって,人々はどんな精神的・肉体的の利益を得て来たかについて討議すること。

(七八) 郷土の風景の長所・短所について,討議すること。

(七九) 従来,日本三景と呼ばれで来たところの風景の特色を調べること。その他,国立公園以外で,風景美で名高い所,及びその風景の特色を調べること。

(八○) 日本の風景美は,これまでどのように利用されて来たかを調べ,外国の場合と比較すること。

(八一) 郷土では,人工,あるいは自然の災害などによって,風景美が破壊された例があるかどうかを調べること。また,それによって,どんな不利な結果が起っているか,これを回復するためには,どうしたらよいかを考えること。

(八二) 郷土には,すぐれた風景美を持ちながら,あまり人に知られていない例があるか。もしあれば,この風景を最も有効に利用するには,どうしたらよいかを考えて,討議すること。

(八三) 郷土の名高い風景美を犠牲にして,こゝを何かに利用する場合(例えば,生産地に化したり,発電所を設けたりすること)と,風景美をそのまゝ保存しておく場合とでは,どちらが郷土の人々に有益か,具体的な例を中心として討議すること。

(八四) わが国の過去の観光事業について調べること。

(八五) わが国の観光事業に関する新聞記事を集めること。そして,日本を世界的観光地にするにはどうすればよいかについて,討議すること。また,それによって,どんな利益があるかについても,討議すること。

(八六) 日本交通公社その他から資料を得て,わが国の観光事業発展として,どんな計画がなされているかを調べること。

(八七) 外国では,観光事業にどんな力を注いでいるかを調べて,報告すること。

(八八) わが国の国立公園や,その他,美しい風景の地方について,いろいろな情報や資料を集めること。

(八九) 郷土の天然資源保存に対して,自分らはどのような方法で協力できるかを討議すること。

(九○) 郷土の物産展覧会の計画を,他の組の人や,町の人,及び他の学校の人々と相談して立て,みんなで協力して開催すること。

(九一) 郷土の天然資源保存の必要性について調査し討議すること。

(九二) 外国で採用されている天然資源保存法に関する資料を集めて,報告すること。そして,それらの方法が日本にも適用できるかどうかを,討議すること。

(九三) 新聞や雑誌から,日本の天然資源の利用に関する記事を集めて,組で読むこと。そして,これを後日のために保存すること。

(九四) 次の問題について,短い作文を書くか,または報告すること。

 「われわれは,郷土の資源から,どのような利益を受けているか」

 「アメリカの天然資源保存法」

 「郷土の天然資源保存法」

(九五) 次のことばについての正否を,討議すること。 「科学の進歩によって,新しい天然資源の利用法が,次から次へと発見されているから,現在の天然資源をたいせつに保存する必要はあまりない」


単元三 近代工業は,どのように発展し,社会の状態や活動に,どんな影響を与えて来たか。

~学習活動の例~

(一) 工業の発達によって,われわれは日常生活において,どんな利益を受けているか。自分たちの衣・食・住の点について,歴史的資料によって,産業革命以前の状態を調べ,これを現在と比較すること。

(二) 工業の種類や様式については,わが国では,どのような分類が行われているか。その分類表を作ること。また,わが国で行われている,おもな工業の表を作ること。

(三) わが国のいろいろな工業について,それらが,明治以前には,どんな状態であったか。そして,それらが,どのようにして,現在の状態に発展したかを調べて,報告すること。

(四) 郷土で行われている工業の中で,家内工業・工場工業(手工業・機械工業・または中小工業・大工業)の代表的なものを,それぞれ挙げること。

(五) 郷土では,どんな様式の工業が,最も多く発達しているか。また,どんな種類の工業(綿・絹・製紙・製材・金属・機械・造船など)が最も多いか。そしてそれは,いつごろから発達し始めたかを調べること。また,その発達によって,郷土はどんな利益・不利益を受けて来たかを調べて,討議すること。

(六) いろいろな工業の種類の中で,原料が近くで得られることを,その発達の重要な条件としているものとしては,どんな例があるか,その代表的なものを,数種挙げること。また郷土の工業の中で,近くで得られる原料を用いて行われているものとしては,どんな例があるかを調べること。

(七) 近くに,燃料用動力資源を持っていることを必要とする工業の種類としては,どんなものがあるか。また,郷土の工業の中で,近くから燃料の供給を受けて,有利に営まれているものの例としては,どんなものがあるかを調べること。

(八) 製品をその近くの土地で,需要・消費してくれることを必要とする工業の種類にはどんなものがあるか。また,郷土の工業の用で,製品が直ちに郷土で需要・消費されるものの例を挙げること。

(九) 近代工業の発達には,ほとんど例外なしに,交通・輸送の便のあることを必要条件としている。わが国及び世界の大工業地帯につき,それぞれが,交通・輸送の便と,どんな関係を持っているかを調べること。

(一○) 多量の水や,良質の水の供給を必要とする工業としては,どんな例があるか。わが国の例について調べること。また,もし郷土にも,この種の工業が行われていれば,その工場はどんな位置を占めているかを調べること。

(一一) 特殊な気候条件を必要とする工業としては,どんな例があるか。わが国,あるいは郷土の工業の中で,この種のものがあれば,その例を挙げ,気候条件との関係を調べること。

(一二) 郷土で行われている諸工業について,

 (1) 工業の様式別の分布図を作ること。

 (2) 工業の種類別の分布図を作ること。

(一三) 郷土で行われている諸工業について。

 (1) 各様式及び各種の工業の発達が,地形や交通機関と,どんな関係を持っているかを調べること。

 (2) 原料や動力資源を,どのようにして得ているかを調べること。

 (3) 製品は,どこへ,どのようにして売り出されているかを調べること。

 (4) できれば,各工業の発達の歴史を調べること。

(一四) 世界の人口分布図と,大工業地帯図とを比べて,人工と大工業地帯の位置との間には,一般にどんな関係が認められるかを調べること。また,その一般関係があてはまらない例としては,世界にはどんな地方があるかを調べること。

(一五) 世界の諸工業地域に比べて,わが国の地理的位置は,工業的発展の上から,どんな有利な点,不利な点があるかについて,討議すること。

(一六) わが国の工業は,世界の諸工業地域に比べて,原料・動力・資源・労力・市場などの上で,どんな特色を持って来たか。そして今後の工業の進み方をどのように改めるべきかについて,いろいろな資料(新聞・雑誌・ラジオなど)によって調べて討議すること。

(一七) わが国の都市は,近代工業が輸入されてから,どのような発展・膨脹を示して来たか,代表的都市について調べること。また,郷土の都市についても,同じような調査を行うこと。

(一八) 満州(中国東北地方)の鉱産資源,及び主要工業都市の分布状態を調べること。

(一九)
 (1) 中国の都市は,現在でも一般に,周囲に堅固な城壁をめぐらしていることを特色とする。この城壁の規模や平面形について,華北と華中・華南とでは,どんな違いがあるかを調べること。

 (2) 中国の都市で,歴史的に重要な意味を持っているものの名まえと位置を,地図によって調べること。

 (3) 中国の都市で,歴史的には重要な意味を持っていても,現在は政治・文化・産業の中心としての意義を失ったものにあっては,城内に空地や畑地も存在して,昔の繁栄は見るかげもない。これに反して,近代文化の中心となった都市では,人家は城外へあふれ出て,繁華な商店街もでき,城壁は,全く人家によってとり囲まれている。中国の都市の地図を調べてこの二つの種類の代表的な例を,それぞれできるだけ多く挙げること。そして,住民の生活が,この二種の都市ではどのように違うか,また,その違いは,工業の発展と,どんな関係があるかを調べること。

(二○) 中国の都市の中で,近代工業が起って来たものの名まえ及び位置を,地図によって調べること。また,そこに近代工業が行われるようになったおもな原因について調べること。さらに機会があれば,中国の近代的都市と,古い都市の住民の生活状態を描写した物語を読むこと。

(二一) 揚子江の水運が,沿岸の工業の発達と,どんな関係を持っているかを調べること。また,沿岸の主要都市の分布図をかき,近代工業が行われているものについては,その工業の種類も書き入れること。

(二二) 満州(中国東北地方)及び中国本部と,蒙古地方との境近くに発達している都市の名まえと,位置とを調べること。また,それらが現在持っている意義と,それぞれの都市の工業的発展の見こみについても調べること。

(二三) 中国本部の炭田の分布状態を調べること。その豊富な炭田が,なぜ工業動力資源として,余り開発されなかったか。これまでに開発が進められて来た炭田は,どの辺のものか。それはなぜか。また,最近の中国本部では,どこに,どのような近代工業が起って来たかについて調べて,報告すること。

(二四) 南部アジアに行われている工業の中,世界的重要性を持つものとしては,どんなものがあるか。この工業の現状及び将来性について調べて,報告すること。

(二五) 南部アジアの主要都市の分布を調ベること。また,こゝに行われている近代工業について調べ,主要工業の種類,及び分布をあらわす図を作ること。

(二六) シベリアの工業的発展について調べること。また,重要鉱産資源,近代工業地帯の分布状態や,最近の工業的発展によって,こゝの住民の生活が,どのように変わったかについても調べること。

(二七) 中部及び西部ヨーロッパを流れる河川が,工業の発達に,どんな便利を与えているかについて調べること。

(二八) 中部及び西部ヨーロッパのおもな炭田・鉄鉱産地,おもな工業都市及び貿易港の分布状態を,地図によって調べること。

(二九) イギリスの地図を描き,主要工業都市を記入すること。

(三○) イギリスのマンチェスターを中心とする綿工業地域の発達の歴史を調べ,綿工業の発達に有利であった自然及び社会的条件の表を作ること。そしてこれを,わが国の綿工業の発達に関係を持つ諸条件と比べること。

(三一) 産業革命によって,イギリスを中心として,ヨーロッパには機械工業が急速に発達したが,その背後には,自然及び社会的に,どんな有利な条件がそなわっていたか。これを,

 (1) 動力資源。

 (2) 交通条件。

 (3) 当時の人々の生活程度。

 (4) 工業技術。

 などの点から,考察すること。

(三二) 産業革命によって,世界にはどんな変化が起ったかを,少し調べることにしよう。生徒各自は,産業革命に関連する次の事がらについて調べ,その結果を,組で報告すること。
 家内工業組織,十七世紀における科学の進歩,産業革命のおこり,紡績業における発明,蒸気機関の工業への応用,鉄・石炭の利用の進歩,石油の利用,動力としての電力の利用,ゴムの利用,汽船・蒸気機関車と鉄道・電車・自動車・航盗機・電信・電話・海底電線・ラジオとテレヴィジョン・映画。

(三三) ヨーロッパの近代的大都市も,中世には,人口もどんなにわずかで,市民の生活もいかに不便であったかを,代表的な都市(例えばロンドン)について調べること。そして近代工業の発達以前と以後とでは,市民の生活程度が,どのように違ったかを比べてみること。

(三四) ヨーロッパの中世の都市は,一般に,周囲に城壁をめぐらしていたが,現在では多くとり除かれている。しかし,現在の都市の名に,ボロー(イギリス)ブール(フランス)ブルグ(ドイツ)などの語尾を残しているものが少なくない。この種のものの実例をできるだけ多く挙げ,また,その位置を,地図で調べること。

(三五) ヨーロッパの代表的都市の人口に関する資料を集めて,産業革命以後どんな急速な人口増加が起って来たかを示す図表を作ること。

(三六) フランスの衣服製造業が,世界の流行にどんな影響を与えて来たか。また,近年この影響には,どんな変化が起って来たかを調べること。

(三七) 中部及び南部ヨーロッパで行われている手工業の中で,世界的に有名なものを列挙し,また,その生産地を地図によって調べること。

(三八) 南部ヨーロッパのおもな都市の分布状態を,地図で調べること。そして,特に有名なものにつき,その持つ意義(歴史的及び現在)を書いた表を作ること。

(三九) ヨーロッパの山地の水力資源につき,これが豊富に存在する地方はどこか。それはなぜか。そこの水力は現在どのように利用されているか。また,これによって,どんな工業及び工業都市が発達しているかを調べること。

(四○) 資料を集めて,スイスの工業の発達条件,及び現在行われている工業について調べ,これをわが国の工業と比べること。そして,こゝの工業には,わが国の今後の工業的発展に,参考とすべき点があるかどうかについて,討議すること。

(四一) ソビエト連邦の鉱産資源分布状態,及びおもな工業都市の名まえと位置とを調べること。

(四二) ソビエト連邦の工業的発展について,

 (1) どんな工業政策が採られて来たか。

 (2) どんな工業地区が発達したか。

 (3) 重要な工業としては,どんな種類のものが行われているか。

 (4) 今後,どのような計画が立てられているか。

 (5) 一九一七年と現在とでは,住民の生活程度に,どんな違いが見られるかを調べること。

(四三) 北アメリカの工業の発達史について書いてある本を読むこと。また,現在北アメリカでは,地域によって,工業地の分布状態にどんな違いがあるかを調べること。

(四四) 北アメリカの都市のうち,人口五十万以上のものを調べ,その分布図を描くこと。そしてその分布には,地域によってどんな違いがあるか。それらの都市の発展に対して工業がどんな役割を演じて来たかを調べること。

(四五) 合衆国のカルフォルニア州南部が,映画製作に対して持っている,すぐれた自然条件を調べて,討議すること。

(四六) 合衆国の映画には,どんな著しい特色があるか。また,わが国の映画界で,どんな勢力を持っているかを調べて,討議すること。

(四七) 合衆国東部山ろく地帯の,ばく布線都市として重要なものを挙げ,その分布図を描くこと。そしてこれらが,合衆国の工業発達史の上に,どんな意味を持って来たか。また,現在この地帯は,工業上どんな地位を占めているかを調べること。

(四八) アメリカの五大湖の水運が,どんなに附近の都市の工業的発展に対して,大きな利益を与えているかを調べること。また主要都市の工業の特色を挙げること。

(四九) 合衆国の製鉱業地域について,おもな製鉄業都市・鉄鉱埋蔵地・炭田の分布を調べること。そして,これらが,たがいにどんな関係を持っているかを示す図を描くこと。

(五○) 合衆国の自動車工業の特色及びこの自動車工業が,国際貿易上どんな位置を占めているかを調べること。また,自動車の普及が,われわれの生活様式に,どんな影響を与えて来たかについて,討議すること。

(五一) 合衆国の農具製作工業の発達状態を調べること。また,広大な土地を持っている国では少数の人手ですむ機械力利用が,どんなに農産物の大量生産に役だっているかを調べること。そしてわが国の農業に,合衆国と同じ方法がそのまゝ採用することができるかどうかについて,討議すること。

(五二) 合衆国の大西洋岸の重要な都市を列挙し,それらの地理的位置には,交通・貿易・工業の発達の上に,どんな有利な点があるかを調べること。

(五三) ニューヨーク港との発展の歴史を調べること。また,現在この都市が持っている交通・商業・工業・貿易上の意義を示す表を作ること。

(五四) 合衆国の都市の摩天閣について調ベること。そして,その長所・短所及びわが国の都市では,なぜこのような高層建築が作られないかについて,討議すること。

(五五) ニューヨーク及びシカゴの人口に関する資料を集め,今までにどのような人口増加を示して来たかを調ベること。

(五六) カナダの主要工業都市につき,それぞれの工業的特色を示す分布図を描くこと。また,これらの市民の生活状態と,工業がまだ余り起っていない町のそれとを比ベること。

(五七) 南アメリカのおもな都市につき,近代工業の発達程度,及び現在どのような工業化の方向に進みつゝあるかについて調ベること。

(五八) 南アメリカの各国の首府が,海運とどのような連絡を持っているかを調べること。

(五九) オーストラリアの都市分布と,自然及び産業との関係を調ベること。

(六○) 世界の文明国の首府の中で,工業が余り行われていないものがあるか。もしあれば,その発達の歴史及び,現在その都市の持つ特色について調ベること。

(六一) 中世の工業の特色は,家内工業で,その職人組織はギルドであった。このギルド組織は,近代工業組織とどう違うかを調ベること。また,郷土の工業の中にはまだギルド的遺制があるかどうかを調ベること。

(六二) 産業革命は,いつごろ,わが国へ波及し,日本の産業や国民の生活様式に,どのような変化を与えたかについて調べること。

(六三) 郷土に残されている昔の織物機械や,紡績機械を写生すること。できれば,それらを集めて学校に陳列すること。

(六四) わが国の昔の工業に関する図や絵を,なるべく多く集めて陳列し,各時代の工業について,その特色を明らかにすること。

(六五) 郷土で「老舗」や「親方」と呼ばれている家をたずねて,昔の親方と徒弟との関係についての話を聞くこと。特に,年期・義務などについて説明を聞き,それが,現在どのように変化しているかを調べること。

(六六) 手工業が行われている家庭や仕事場をたずねて,その方法,製品の質や量,価格,労働者の収入,労働条件などについての説明を聞くこと。また,手工業は,だんだんすたれてきているか。または盛んになりつゝあるかをも調ベ,その盛衰の原因について討議すること。

(六七) 大工場へ行って,近代的機械の活動状況や,工場内の仕事がどのように分業的に行われているかを見学すること。そして,同じ製作を手工業でやれば,時間と費用にどれだけの違いがあるかを調べること。

(六八) わが国の農村も,次第に近代化されては来たが,農業方法や組織に,昔の遺物として,どんなものが残されているか。郷土の村について調ベること,そして,これらに関連して,今後,わが国の農村生活を,どのように改善すベきかについて,それぞれの専門家の意見を聞き,また,組で討議すること。

(六九) 産業革命以前には,世界には未開地がどのように分布していたかを,地図に描くこと。そして,産業革命以後,これらの土地が,どのように開拓されて来たかについて調べて,討議すること。

(七○) 資本主義の意義を専門家に聞き,また,資本主義の発達について,特にわが国の場合を例にとって説明してもらうこと。そして資本主義の長所,短所について討議すること。また,資本主義は,現在どのように修正されつゝあるかについて調べること。

(七一) 郷土の農業人口と工業人口,及びその比はどれくらいか,この人口や比は,今までにどのように変化して来たかを調ベること。そして,その変化の状態が,果たして郷土の生産生活にとって,有利と考えられるかどうかについて,討議すること。

(七二) 農業者と工業者とでは,その日常生活にどんな違いが見られるか。毎日の仕事,生活程度・教育・レクレーションなどの方面について比ベること。

(七三) 都市の発展に伴なって,郷土の都市の生産及び生活に関して,現在,どんなことが問題となっているか。そして,これをどのように解決したらよいか,これについて,都市問題に関する専門家を学校へ招いて,わが国の都市に関するいろいろな問題や,その解決策についての説明を聞くこと。

(七四) 郷土の戦災都市について,そこの工業施設が,どのような戦災を受けたか。また,その復興は,どんな方針で進められているかを調ベること。

(七五) 終戦に伴なって,わが国の工業方面では,どんな社会問題が起って来ているか。これに関する新聞や雑誌の記事を集め,これをもととして,いろいろな問題について討議し,また,将来の参考として保存しておくこと。

(七六) 工業の発展に伴なって,郷土の日常生活の上に,どんな悪影響がもたらされて来たかについて調ベること。そして,これを除くためには,生徒各自として,現在,どんな努力ができるかについて,討議すること。


単元四 交通機関の発達は,われわれをどのように結びつけて来たか。

~学習活動の例~

(一) 郷土の道路分布図を描き・道路の幅や道のよしあしを区別すること。

(二) 郷土のおもな道路について,それらが,どんな地形を,どのように利用して通っているかを調ベて,報告すること。

(三) 生徒が幾組かに分かれて,郷土の各道路の適当な地点に待期し,一定時間にわたって交通調査を行うこと。そして,その結果をみんなで協力してまとめ,各道路の交通上の特色を明らかにし,また交通量の相違を示す図を描くこと。

(四) 華北の都市や,アフリカのカイロの市街では,らくだの隊商が通ったり,古い形式の交通,運搬機関が存在する一方,自動車,その他の近代的交通機関も利用されていて,新旧の著しい対照を示している。郷土の道路にも,これと似た光景が見られるか。どこの道路で,どのような新旧交通機関の対照が最も著しいかを,交通調査によって明らかにすること。

(五) 郷土の鉄道分布図を作り,各停車場を中心として,いろいろな半径の円を描き,鉄道利用の便,不便な地方を区別すること。

(六) 郷土の鉄道は,どんな地形を,どのように利用して敷設されているかを調査し,また,これを図に描き表わすこと。

(七)  郷土の鉄道敷設に際して,難工事であった場所,その理由,どのようにしてこれを克服したかを調ベて,報告すること。

(八) 郷土の乗合自動車の発達状態を示す図を描くこと。そして,各線がどんな目的をもって開かれたかを調ベて報告すること。また,郷土やわが国における乗合自動車交通の重要性,及び乗合自動車交通をいっそう発達させるためには,どんな問題を解決しなければならないかについて,討議すること。さらに,合衆国で行われている乗合自動車通学組織について調ベ,わが国で,同様なことを実施するには,どんな困難があるかについて,討議すること。

(九) 郷土の水運は,どのように利用されているかを調べ,これを図に書き表わすこと。

(一○) 郷土では,物を運搬するに際して,どんな形式がとられているか。その表を作ること。また特色のある交通,運搬具があれば,その構造・用途の郷土で用いられている理由,将来の存続性について調べて,報告すること。

(一一) 郷土あるいは郷土附近で,いろいろな交通連絡機関の便のある二地点を選びこの間を往復するに際して,鉄道・自輔車・自動車・水運などを利用した場合では,それぞれどんな得失があるか。また,貨物輸送に際しては各種の陸運や水運は,それぞれどんな長所・短所を持つかを調べて,報告すること。また郷土・わが国・世界という立場から,それぞれながめる時,どんな種類の交通機関が最も役に立っているかについて,討議すること。

(一二) 郷土では,鉄道の開通以前と以後とでは,交通状態にどんな変化が起って来たかについて,両親や老人に聞いて報告すること。また鉄道の開通が,郷土の生活に,どんな影響を与えて来たかについて,討議すること。

(一三) 両親や老人から,郷土の昔の交通状態はどんなであったか,遠距離の用足しや通学には,どんな労苦があったか,などの話を聞くこと。

(一四) 郷土の停車場について資料を集め,停車場がいつ開かれたか。客数は日にどれくらいで,これが,今日までに,どんな変化をして来たか。季節によって,どんな変化が見られるか。それはなぜか。どんな貨物がおもに輸送されているかなどについて調査し,これをもとにして,組で討議すること。

(一五) 郷土を通るおもな街道について,それがどんな歴史をもっているか。昔の道すじと違う個所があるか。それはどういう所で,いつごろ,なぜ改められたか。道路の改修は,どのように行われてきたか。今日は,交通上,どんな意味をもち,昔とは違ったところがあるか,などについて調ベ,これらをもととして,組で討議すること。

(一六) 郷土では,昔の道路のすべてが,今日でも交通上重要な意味をもっているか。もしそうでないものがあれば,その意味を失った理由について調ベて,討議すること。

(一七) 郷土で最近開かれた道路の分布図を描き,どんな目的をもって,いつごろ作られたか。それによって,交通が,以前に比ベてどんなに便利になったかを調べて,報告すること。

(一八) スエズ運河の開通に関する歴史を調ベ,またこの開通によって,アジアとヨーロッパの距離がどんなに短縮されたか。この影響をうけて,どこで,どんな新しい産業が起ったか。どんな新しい物資の輸送が開けたかについて調ベて,報告すること。

(一九) パナマ運河についても,同様なことを調ベて,報告すること。

(二○) スエズ運河とパナマ運河の工事や設備を比較すること。

(二一) 中国の大運河について,

 (1) いつごろ,どんな目的で,どのようにして作られたか。

 (2) どんなに役だったか。

 (3) 現在はどんな状態で,どのように利用されているか。

 (4) なぜ昔のような重要性が失われたかについて調べて,討議すること。

(二二) 中国から,陸路でインドに渡った高僧の伝記を読んでその話を組ですること。

(二三) いろいろな旅行記を読んで,それについて話を組ですること。

(二四) 昔,わが国の関所では,通行人に対してどんな取り調べが行われたかを調査して,報告すること。

(二五) 関東地方のまわりにある峠の分布図を描き,それのもつ交通上の意味(過去及び現在)について調ベて報告を書き,これを組で読むこと。

(二六) 奥羽地方の地勢と,主要交通路の道すじとの関係を調ベて,報告すること。

(二七) 北海道の道路の発達と,開拓との関係について調べて報告すること。

(二八) 中央日本の街道で,昔の難所といわれていたところについて,その原因を調べて報告すること。

(二九) 瀬戸丙海の交通について,その歴史的意味,現在の重要性,潮流の特色について調べて,報告すること。

(三○) 東海道の昔の旅の状態について調査して,報告すること。

(三一) わが国の鉄道分布図を描き,各線の旅客列車の運転回数を調べて,これを表わす図になおすこと。

(三二) 関東地方の鉄道分布図を描き,東京を中心とした交通所要時間分布図を作ること。

(三三) 近畿地方,九州地方についても,代表的都市を中心として,同じような図を作ること。

(三四) 郷土の都市を用心とした鉄道図を描き,交通所要時間及び運賃分布図を作ること。

(三五) 九州に開かれた古い港(歴史的港)の分布図を作ること。そして,

 (1) 今日でも,どれも貿易港として重要な意味をもっているか。

 (2) そうでないものは,なぜ衰えたかを調べて討議すること。

(三六) 資料を集めて,わが国のおもなトンネル,及び鉄橋の表を作り,その線路名・場所・長さを附記すること。

(三七) わが国の鉄道線路の中で,地形によって,特殊な敷設のしかたにされているものについて調べて,報告すること。

(三八) わが国の機関車・客車・貨車の変遷を調べ,この図や図表を作って,展覧すること。

(三九) わが国の船舶は,時代によってどのように発達して来たかを調べ,これを示す図や図表を作って,展覧すること。

(四○) 外国の汽車や,船舶の変遷及び現在の状態を調べて,これを,わが国の場合と比較すること。

(四一) 世界の古代から現代に至る,各種の代表的交通機関の変遷を示す絵を描き,また,模型を作ること。

(四二) わが国の航空路の現状について調ベて,報告すること。そして,航空路の発達が,われわれの経済及び社会生活に,どんな影響を与えるかについて,討議すること。

(四三) 資料を集めて,世界のおもな国について,自動車の普及状態を調ベ,わが国の現状と比較すること。

(四四) アメリカ合衆国の自動車利用状況が,わが国と,どのように違うかを調ベて,報告すること。また自動車が輸入されてから,わが国民の生活の上に,どんな変化が起って来たかについて,討議すること。

(四五) わが国の河川は,水運上,どんな意味を持っているか。外国の有名な河川に比べて,水運の上に,どんな違いがあるかを調べて,報告すること。

(四六) 世界のおもな河川を,水運の便が多いものと,少ないものとに分類した表を作ること。

(四七) シベリアの河川と土地開拓との関係を調ベ,また各河川の水運上の長所,短所について,討議すること。

(四八) 北極海の航路の現状について調ベ,また,こゝが年中航行できるようになれば,どんな利益がもたらされるかについて,討議すること。

(四九) 黄河の水運について調べて,報告すること。またこの河川が,中国人の生活にどんな有利,または不利な影響を与えて来たかについて,討議すること。

(五○) アマゾン川とコンゴ川を,その自然及び水運の上から比較すること。

(五一) ヨーロッパの河川の利用状態は,地域によって,どのように違うかを調べて,報告すること。

(五二) アメリカ合衆国の内陸水運の発達史,その現状及び商工業の発達との関係について調べて,報告すること。また,わが国の内陸水運状態と比較すること。

(五三) 無線電信,無線電話の発明の歴史を調ベること,そして,これが,わが国へ,どのようにして輸入されたか。これによって,われわれの生活は,どんな便利をうけているかについて,調ベること,また,わが国の現在の発達程度を諸外国の場合と比較すること。

(五四) 日本各地から発せられた郵便物が,郷土へとゞく日数を調ベて,これを地図に表わすこと,また,郷土の日常生活が,郵便制度の発達によってうけている恩恵について,討議すること。

(五五) 郷土では,ラジオの普及状態はどんなか,人口に対する聴取者の割合を調べて,これを他地方や,日本全国の場合と比較すること。そして,ラジオが国民の日常生活に,どんな重要性をもっているか。学校では,どんな有効な利用法があるか。郷土のラジオの普及,改善をはかるには,どうしたらよいかについて討議すること。

(五六) わが国の運送局の分布図を書くこと。そしてわが国の放送事業は,どんな組織のもとに行われているかを調べ,現在の組織が,果たして報道の自由及び迅速という点から,不便がないかどうかについて討議すること。

(五七) 郷土には,まだ交通不便な地方が,どのように残されているか。そこでは,どんな交通状態かを調べて,報告すること。そして,交通不便なことが,住民の経済生活の発達を,どんなに妨げるかについて,討議すること。

(五八) 郷土の交通機関の事故及び災害としては,どんな種類のものがあるか。その中で,どれが最も多いかを調ベ,これを防ぐにはどうしたらよいかを考えて,討議すること。

(五九) 大洋を横切る最短航路が,地図の投影法によって,どのように違って表わされるか。いろいろな実例を図に描くこと。

(六○) 各自で,世界一週旅行を計画し,その道筋を地図に書き入れること。そして,その道すじに当たる世界各地では,どんな交通機関が利用できるかを調ベ,これをもととして,その旅行の物語を書いて,組で読むこと。

(六一) わが国のおもな港の分布図を描き,それぞれどんな意味をもっているかを書いた表を作ること。

(六二) わが国では,陸運と水運とで,運賃にどれくらいの違いがあるか。輸送時間には,どんな差があるかを,具体的な例をとって比較すること。また貨物の種類によって,それぞれどんな輸送機関を利用した場合が,最も有利となるかを,いろいろな例から調ベること。

(六三) 世界のおもな港の分布図を,大陸別に描くこと。できれば,後背地の範囲も書き入れること。

(六四) アジアのおもな仲継貿易の分布図を描き,それぞれのもつ貿易上の意味を調べ,これを地図に表わすこと。

(六五) 郷土の港の自然及び人文条件について調べ,その長所,短所を討議すること。

(六六) わが国のおもな貿易港について,その発達を促した有利な条件を調ベて,討議すること。

(六七) わが国の日本海沿岸は,港の発達上,どんな有利及び不利な条件があるかを調べて,討議すること。

(六八) ロンドン・ニューヨーク・横浜・神戸は,世界貿易の上から,それぞれどんな重要な意味をもっているかを調ベて,報告すること。

(六九) 戦前の資料によって,わが国のおもな輸出品,輸入品につき,その種類・量・相手国・輸送路を調べ,これを世界地図に描き表わすこと。

(七○) わが国の有望な輸出物資及びその増産法について調ベて,討議すること。

(七一) 郷土の物産の中で,輸出品として重要あるいは有望なものを挙げ,これを,今後さらに発展させるには,どうすれはよいかを考えて,討議すること。

(七二) わが国の欠乏物資としては,どんなものがあるか。今後,どこからの輸入に頼らねばならないかを調べて,討議すること。

(七三) 国際貿易の発展が,いかに世界人類の幸福を増進する上に重要であるかについて,討議すること。

(七四) 郷土では,交通機関の発達によって,土地の開拓や人口の移動に,何か変化の起った例があるかどうかを調ベること。

(七五) 郷土では,交通・通信機関の発達によって,何か特殊な産業が起った例はないか,もしあれば,その種類・現状・発達し始めた年,交通機関との関係,及びその産業の特来性を調ベて,報告すること。

(七六) 郷土の商工業には,交通・通信機関が発達していなかった昔と現在とでは,どのような相違が見られるか。昔の状態を両親や老人に聞き,また,古い統計を調ベて現在と比較すること。

(七七) 郷土の都市の燃料は,どこから,どのようにして輸送されるか。またこれが交通機関の発達によって,どんな変化をしてきたかを調べて,報告すること。

(七八) 郷土から送り出される物資や,外から入って来る物資が,交通機関の発達するにしたがって,どのように変化して来たかを調べて,報告すること。

(七九) 郷土の衣・食・住の様式や,文化の程度は,交通及び通信機関の発達によって,どのように変わって来たかを調ベて,報告すること。

(八○) 郷土の村や町の発展は交通機関の発達と,どんな関係をもってきたかを調ベること。そして,今後,さらに郷土を発展させるには,どんな交通機関を,どのように発達させたらよいかを考えて,討議すること。

(八一) 郷土には,交通機関の発達によって,かえって衰えた町や産業の例があるかどうかを調べること。

(八二) 郷土の交通事業に関係している人をたずねて,現在,郷土では,交通上のおもな問題として,どんなことがあるかの話を聞くこと,そして,それらの問題を,どう解決したらよいかについて,組で討議すること。

(八三) 交通に関する専門の人を学校へ招いて,わが国の鉄道や水運,あるいは航室輸送について,将来どんな計画が立てられているかについての説明を聞くこと。

(八四) 交通・通信機関が,公共機関として,どんなにたいせつであるか。これを愛護するのにどうすすばよいかについて,討議すること。

(八五) 郷土の交通上の混雑を整理,改善するには,どうすればよいかについて討議し,その結果の中で,自分たちの助力できることを実行すること。

(八六) 日本の交通・通信に関する新聞や雑誌の記事を集めておいて,これをもととして,適当な問題について討議すること。


単元五 自然の災害を,できるだけ軽減するには,どうすればよいか。

要 旨

 アジアの諸地域は,古来,多くの天災に悩まされ,これによって,今日までに,どれだけの人命を失ったか,はかり知れないくらいである。例えば,中華民国では,ひでりや大水による凶作が最も多く,その度ごとに,これによる犠牲者は実におびただしい数にのぼってきた。近くは一九二○-二一年に襲来した大干ばつに際して,餓死者五○万人を出し,窮乏に陥ったものに至っては,数えきれないほどであった。また,気候不順の結果,時々起るインドのききんも世界に有名である。

 ひるがえって,わが国の歴史を調ベると,わが国でも,昔から天災に原因する悲劇が,しばしばくり返されている。地震・山崩れ・火山噴火・台風・津浪・大雨・ひでり・その他による災害の記録が多数見出だされるのみならず,今日でも,いつこれらの天災が,われわれを襲ってくるかも知れないことは,常に覚悟していなければならないのである。

 科学が大いに進歩した現在でも,人類に大災害をもたらすこれらの自然的異変を,自由に制御し得るまでには至らない。しかしながらわれわれの努力しだいでは,これらの災害の程度を,大いに軽減できる揚合が,少なくない。例えば,地震現象それ自身は防止することができないとしても,耐震的な家屋を建てたり,地震に際しての心得をよく研究して,あらかじめこれに準備しておくことによって,災害を軽くすることができる。また,山地の植林や河川改修工事,貯水池の建設などによって,耕地や住居地が水害に脅されることから,かなり免れることができるし,ひでりの害についても,かんがい(灌漑)事業の発達や作物の改良,産業施設の改善などが,凶作の危険やその他の不利を,どんなに防いでくれるかわからない。さらに,交通機関の発達は,被害地へ食糧その他の物資の輸送を迅速に行わせるから,ますますその犠牲を軽度に止めることができる。

 人類は,たゞ自然の威力に屈していてはならない。自然力の利用法を発見するごとに,文化は進歩してきた。われわれは,科学の力を十分に利用し,これを促進させることによって,自然の災害をかなり軽減し得るのである。人類に災害を与える自然現象の研究が進めば,ついにはかえってその自然力を利用することができるようになるであろうし,少なくともこのような自然的異変が襲来する前に,適当な災害予防手段を講ずることが可能となる。例えばわが国の地震学者は,わが国土が一九四六年の春ごろから,地震活動期に入ったことを知った結果,たとえその発生の正確な時期や場所は,明らかに示し得なかったとしても,近い将来に大地震襲来の危険性のあることをだいたい予想し得た。また,長期天気予報がさらに発達し,気象異変が予告されるようになれば,これによって来たるべき気象的災害に対して,万全の策を講ずることができるわけである。これに関連して,従来のわが国では,天災をできるだけ軽減する手段についての科学的知識,即ち防災科学の普及が十分でなかったことは,まことに遺憾といわなければならない。そこで,生徒に,われわれの生活を脅す危険性のある,これらの自然現象並にその作用に関する理解を与え,また災害時に際しての,いろいろな心得についての知識や経験を得させておくことが,学校教育に課せられた一つのたいせつな使命となる。さらに,われわれの過去をふりかえると,天災に対する宿命的な考え,特に人力ではどうともできないものであるから,たゞおとなしくこれに服従するほかはないというような思想が,どんなに防災科学の発達,普及を妨げてきたか知れない。したがって,学校教育においては,各現象に対して科学的態度をもって臨む心がまえを育成する必要がある。

 次に注意すべきは,天災による被害の範囲や程度は,単に自然的異変の規模だけによって定まるものではないことである。例えばある震度の地震がどの程度の災害を与えるかについては,社会状態もかなり深い関係をもってくる。社会が安定し,進歩的であり,かつ全国民が相互に助け合いながら平和な生活を営んでいる状態のもとでは,万一,大きな天災が襲来しても,その被害から速かに回複し得る結果,犠牲の程度も少なくてすむ。これに反して,社会が乱れ,人心が退えい的であり,各自が自分の安全だけを考えているような社会では,軽度の天災でも,驚くべき程の猛威をたくましくしてきたことは,歴史のよく教えるところである。のみならず,近くは一九四五年の大風水害及び一九四六年末に西日本を襲った大地震の結果を見ても明らかである。これらの自然的異変は,その規模も大きかったことは事実であるが,一方では,長年の戦争の結果,国民は疲弊し,社会は乱れ,ために困窮者や被災者を,十分に救助することができなかったのである。それ故に,天災による被害を,できるだけ軽減するためには,防災科学の発達・普及を計らなければならないとともに,不幸にして災害によって犠牲が出た場合でも,これを最小限度にくい止めるような進歩的,平和的社会の建設に向かって努力しなければならない。

 この学習を通じて,教師も生徒も,理科教科内容と密接な連関を保ちながら,必要に応じて,地震,火山活動,気象異変その他の自然現象自身についての理解も得るように努力することが望ましい。その場合,この単元の目的に関係が少ない方面は,できるだけ簡略にすべきであるが,目ざす理解に達するためには,いろいろな材料を自由に使って,学習を進めることが必要である。

目 標

(一) わが国は,いろいろな天災に襲われる危険性が多いことを理解させ,また,天災は,いつわれわれを襲って来るかも知れないことの注意を喚起すること。

(二) わが国を襲いやすい,各種の天災に関する科学的知識と理解を深め,科学的根拠のない迷信や俗説を打破すること。

(三) 人類は,不利な自然環境のなすがましに甘んじているものではなく,努力しだいによっては,かなりの程度まで,自然の威力から免れ得ることを理解させること。

(四) 各種の天災に対して,容易に実行し得る科学的対策を理解させること。

(五) 災害時に際して,各自の強い責任感と,被害者を助けようとする深い愛情心が,どんなにたいせつであるかを認識させて,平常からこの気持を養わせること。

(六) 防災科学の進歩・普及が,いかに各種の天災の軽減に重要であるかを認識させること。

(七) 平常の心がけや,訓練が,どんなに災害時に役だつかを認識させること。

(八) 社会状態いかんが,被害の程度や復興の速度に,どんなに深い関係を持っているかを理解させること。

(九) 天災によって,どんな打撃を受けても,再起の精神が重要なことを認識させること。

~学習活動の例~

(一) 一 般。

 (1) 郷土では,過去数十年にどんな天災に襲われたか。両親や老人に聞いたり,郷土史を調ベたりして,その年月や種類の表を作ること。

 (2) 郷土では,どんな種類の天災をうけやすいか。これについて,これまでどんな対策が講ぜられてきたかを調ベること。

(二) 地震関係。

 (1) 郷土では,これまでに地震によって,いつ,どんな被害をうけたか。これについて,できるだけ古い時代から調査して,その表を作ること。

 (2) 郷土では,地震による被害状況には,土地によって,どんな違いがあったか。そして,それはなぜか。これについて調べて討議すること。

 (3) 郷土では,地盤が強いといわれている地帯はどんな所か。また反対に地盤が弱いといわれている地帯はどんな所か。両者の間には地形や地質の上から,どんな違いがあるかを調ベること。

 (4) 郷土では,これまでの大地震に際して,人々はどこへ,どのようにして避難したか。そして,その結果はよかったか,悪かったか。それはなぜであったかを調べて報告すること。

 (5) 郷土では,地震の前徴として,どんなことが言い伝えられているか。そして,それには,何か科学的根拠があるか。また,どれくらいの確実性が認められるかを調ベて,報告すること。

 (6) 郷土では,大地震に際して,どのような所へ,避難するのが一番よいといわれているか。そして,それはどんな科学的根拠を持っているかを調ベ,これについて討議すること。

 (7) これまでに郷土を襲った,おもな地震の震源を調ベて,その分布図を書くこと。

 (8) 郷土で,これまでの大地震によっても被害の少なかった家について,その構造を調ベること。そして,一般の家と何か違った点を発見したら,これについて報告し,また,なぜその構造が有効であるかについて,討議すること。

 (9) 郷土附近には,最近に山崩れが起った個所がないか。もしあれば,それはどのような地形及び地質の所か。いつ,どんな場合に崩れて,それによってどんな被害があったか。現在その個所はどのようになっているかについて調べて,報告すること。

 (10) 郷土附近には,山崩れや地すベりが起りやすいといわれている個所はないか。それはどんな地形,地質の所か。そこでは,被害防止について,どんな対策が講ぜられているかを調べて報告すること。

 (11) 山崩れや地すべりの結果による特殊な地形に「ボケ」,「ヌケ」などと言う名前がつけられている地方がある。郷土の附近では,このような特別な呼び方が,地名としてつけられていないか。これについて調ベること。

 (12) 時計を用いないで,たゞ数を数えることによって,秒数をあてる練習をすること。そして,他日,地震が起った場合,直ちに初期微動継続時間を推定し,その秒数を8倍することによって,震源の大体の距離(キロ数)を判定すること。時計なしで秒数をあてることは,他にもいろいろな場合に役に立つから,よく練習すること。

 (13) 過去の大地震によって,郷土がうけた被害の程度をいろいろ調ベ,その結果から,その地震がどれくらいの震度であったかを判定すること。

 (14) 郷土附近には,過去の大地震にともなって,何か変わった現象が起った個所や場合(例えば,地割れ・土地の昇降・山崩れ・井戸水の変化・地鳴り,など)がなかったか。これについて,調ベて報告すること。

 (15) 郷土附近には,地震を伴なわずに,土地が徐々に動いている所がないか。あるいはわが国のどこかについて,そのような例を聞いたことはないか。それについて調べて,報告すること。

 (16) 外国の大地震や,その被害状況について調ベて,報告すること。

 (17) 地震に関する,科学書を読んで,地震の原因についての説明や,その書物の内容の概要を,学級で話すこと。

 (18) 機会があれば,地震学の専門家を学校へ招いて,地震についていろいろな科学的説明を聞くこと。

(三) 火山関係。

 (1) 郷土附近の火山の名称,位置,形,大きさについて調ベ,これを地図に書くと。また,活火山ならば現在どんな活動をしているか。そうでないものは,これまでに活動した記録があるかどうかを調ベること。

 (2) 郷土附近の火山は,これまでに,いつ,どんな大活動をして,それによって,どんな被害があったかを調べること。

 (3) 郷土附近の活火山について,その大活動の前徴としては,どんなことがいわれてきたかについて調ベること。そしてこれには,果たして科学的意味があるかどうかを討議すること。

 (4) 最近の火山大活動に際して,郷土の人々は,どこへ,どのようにして,避難したか。その結果は,どんな点でよかったか,あるいは,わるかったかについて,調査すること。

 (5) わが国のおもな火山について,活火山・休火山・死火山の分類表を作ること。

 (6) わが国のおもな活火山について,現在の活動状態を調ベること。また,最近の大活動は,どんな形式で行われ,それによって,どんな被害があったかを調べること。

 (7) わが国のおもな活火山の中で,これまでに大活動をした記録が多数残されているものについて,その活動の年代表を作ること。

 (8) 外国の活火山の中,有名なものについて,その名称・位置・大きさ・形・過去の大活動のときの有様などについて調べて,報告すること。

 (9) よう岩台地の例としては,わが国にどんなものがあるか。また,世界には有名なものとして,どんな例があるか。広いよう岩台地を作るような火山活動は,普通の噴火の場合と,どのように違うかを調ベること。

 (10) わが国で火山観測所は,どこに設けられているか。また,そこでは,どんな観測が行われでいるかを調べて報告すること。

 (11) わが国の火山の大活動に際して,その活動状況や,いろいろな学者の現地調査の結果が,新聞で報道されるごとに,これについて,学級で話し合い,また,その切り抜きを保存しておくこと。

 (12) 火山に関する科学書を読んで,特に興味深かった部分について,みんなに話すこと。

(四) 風害関係。

 (1) 「二百十日」とはどういう意味か。この日は台風が襲ってくる危険性が特に多いと郷土の人は考えているか。それには郷土では何か科学的根拠があるかどうかを調ベること。また,二百十日が無事に過ぎると,祝いをする習慣があるかどうかも調ベること。

 (2) 世間では「八十八夜」とよんでいる日もあるが,これはどういう日か。また,どんな災害の危険性を注意したものか。それにはどんな科学的根拠があるかを調ベて,報告すること。

 (3) 郷土で,最近最もはげしかった台風はいつのものか,その年月日・風速・径路・被害状況について,調査すること。

 (4) 両親や老人から,これまでに郷土を襲った台風の中で,最も被害の大きかったものについて,その時の状況の話を聞くこと。

 (5) 新聞などで,平均風速何メートルと報道されることが多いが,これはどういう意味かを調ベること。また,建築場や,工作物に耐風設備をする場合,記録に残されている,大きな平均風速を調べて,これに対して,耐えられるように設計すればよいか。これについて各自で研究して,討議すること。

 (6) 風力表を持って戸外へ出て,その時の風速が判定できるように練習すること。

 (7) 風速何メートルぐらいから,陸上では,被害か起り始めるか。また,海上では何メートルぐらいからかを調べること。

 (8) 郷土では,風害に対して,何か特別な設備をしている家の例があるか(例えば防風林や石がきのごときもの)これについて調べること。

 (9) 土用波は,海水浴に際して,どのように恐れられているか。また,これによって,郷土の附近で何か災害をうけた例があるかを調ベて報告すること。

 (10) 「風の息」とは何か,大きな建物・搭・進行中の列車などが,風で倒されるような現象に対して,この風の息がどのように関係するかを調べて,討議すること。

 (11) 「あらしの前の静けさ」とよく言われるが,これは本当に起ることがある現象かどうかを調ベること。

 (12) 外国での台風の被害について調べて報告すること。

 (13) わが国では,台風による高潮のために,これまでに,どこで,どんなひどい被害があったかを調べて,報告すること。

 (14) ラジオで暴風警報が発せられることによって,人々はどんな利益をうけてきたかと調ベること。

 (15) 航行中の船舶は暴風警報に接して,どんな準備をするかを調べること。また,台風によって遭難した船の遭難記を読み,その話を学級ですること。

 (16) わが国の冬の季節風が,どんな風害をもたらしやすいかを調ベること。

 (17) 風に関する科学書を読んで,その中で特におもしろかった部分の話を,学級ですること。

(五) 津浪関係。

 (1) 郷土の海岸では,これまでに津浪に襲われたことがあるか。もしあれば,その年月日,津浪発生の原因,被害状況について,調べること。また,その後どんな対策がなされるようになったかも調ベること。
 
 (2) わが国の海岸で,最近ひどい津浪の害をうけた所はどこか。その被害状況はどんなであったか。そこは,以前にも津浪の害を受けたことがあったか。もしあれば,その後どんな対策がなされてきたか。それにもかゝわらず,また,大きな災害を受けたのはなぜかなどについて,調べること。

 (3) わが国の海岸で,どんな地形の所が,津浪によってひどい害を受けやすいといわれているか。そして,それはなぜか。これについて,機会があれば専門の学者に説明してもらうこと。

 (4) 津浪が襲来したとき,郷土では,どこへ避難すれば最も安全かについて学級で討議すること。

 (5) 郷土の海岸では,これまでに津浪にともなって,どんな異常現象が起ったといわれているか。また,そのうち津浪の前徴と考実られてきたものには,どんな現象があるか。これらには,果たして,科学的根拠が認められるかどうかを調ベること。

 (6) 近くの海岸で,津浪に対して,特に厳重な施設がなされている所があれば,そこを見学して,その施設の特色を調ベること。

 (7) わが国の砂浜に多く見られる松林は,津浪に対して,どんな効果があるかを調ベること。

(六) 水害関係。

 (1) 郷土の最近の水害につき,その年月日,原因,はん濫した河川,水害を受けた範囲,被害程度を調べること。

 (2) 郷土では,過去数十年間に,最もひどい水害をうけたのはいつか。そのときのありさまはどんなであったかを,両親や老人に聞いたり,記録を調ベたりして,報告すること。

 (3) 郷土の河川の中,どれが最もはん濫しやすいか。それはなぜか。その場合どの辺が最も被害をうけやすいか。それはなぜかを調べること。

 (4) 郷土で水害の多い時期はいつごろか。なぜその時期に水害が起りやすいかを調べること。

 (5) 郷土の水害に関する資料を,できるだけ古い時代のものから集めて整理し,水害表を作ること。

 (6) 郷土で水害に見舞われやすい土地では,村の位置に何か特色が見られるか。また,村として特別な設備がしてあるか。各家についてはどうかを調ベること。

 (7) 郷土の山地の砂防及び植林事業は,なんの目的で,どのように行われてきたか。その結果,どんな効果があったかを調ベること。

 (8) 郷土の水系図を作り,堤防を書き入れること。そして,

  (イ) 堤防の分布状態には,地方によってどんな特色があるか。

  (ロ) どの辺が一番破壊されやすいか。それはなぜか。

  (ハ) 堤防保護について,どんな努力が払われてきたかについて調ベること。

 (9) 郷土の河川については,これまでにどんな改修工事が行われたか。それによってどんな利益をうけたかを調べること。

 (10) わが国の河で,放水路(分水路)工事が行われたものの代表的な例を挙げ,その図を描くこと。そして,この工事によって,附近の土地がどんな利益をうけているかを調査して,表に書くこと。

 (11) 河川に関する専門家を学校へ招いて,県・郷土の河川の特色,将来の事業計画についての話を聞くこと。

 (12) 資料を集めて,郷土及びわが国全体が,水害によって,年々どれくらいの損失(金額)を受けてきたかを調べること。

 (13) 郷土のある河川について,上流から下流までの縦断面を描き,河床の傾斜の変化状態を明らかにすること。また,大雨が降った場合,その水害状況は上流部と下流部とで,どのように違うかを考えて,討議すること。

 (14) 平地を曲流している河川としては,わが国にはどんな例があるか。この種の河川が,はん濫しやすいのはなぜか,この欠点を除くには,どうすればよいかについて討議すること。

 (15) 郷土には,著しい天井川の例があるか。もしあれば,その地方が天井川を作りやすい原因,及び,それによってこれまでに,どんな不利をうけたことがあるかを調べること。

 (16) 中国の黄河について,歴史的及び現在に関する,いろいろな資料を集めて整理すること。また,揚子江と黄河とを,はん濫の危険性の上から比較すること。

 (17) 郷土の治水工事の先覚者について,その残した仕事,及びそれによって人々がどんな利益を得てきたかを調べること。

(七) 雪害関係。

 (1) 深雪地では,屋根の雪おろしにどんな方法が用いられているか,その方法は,昔に比べてどのような進歩が認められるかを調ベること。

 (2) わが国の深雪地の都市・村・家で,特別な防雪の設備のしてある例をできるだけ多く調ベ,これを比較して,それぞれの得失を討議すること。

 (3) 深雪地では,冬の期間は,農家の人々は家ではどんな仕事に従事するか。また,出かせぎに行く例としては,どんなものがあるかについて調べること。

 (4) 郷土の人々の記憶に残っている中で,雪が最も多かった年はいつで,いちばん深いときはどれくらい積ったか。そして,どんな雪害を受けたかを調ベること。

 (5) 深雪地では,交通機関はどんな雪害をうけるか。これに対して,どんな防雪工事や対策が講ぜられているかを調ベること。

 (6) 最近わが国の交通機関が,最もひどい雪害を受けた年月・地方・そのときの交通支障状態を調ベて報告すること。

 (7) 郷土では,凍上現象が見られるか。これによってどんな危険が起りやすいか。これについてどんな対策が考えられているかを調査すること。

 (8) 郷土では,吹雪によって,これまでにどんな事故が起ったか。過去数年間の事故の表を作ること。

 (9) 郷土で,なだれは,いつごろどんな所に起りやすいか。それはなぜか。なだれによって,どんな災害を受けた例があるか,その危険防止に対して,どんな調査や設備がなされているかを調べること。

(八) ひでり関係。

 (1) 郷土ではひでりの害をうけ易い季節はいつか,過去の記録を調ベたり,老人に聞いたりして,何月ごろが最もその危険性が多いかを判定すること。そして,郷土がこれまでに襲われたひでりの年・季節・被害状況の表を作ること。

 (2) 郷土では,長近ひでりの最もひどかった年はいつか。その時は雨の降らない日がどれくらい続いたか,それによって,作物はどの程度の害を受けたかを調べること。

 (3) 郷土では,ひでりの対策として,どんな手段がとられてきたか,それはこれまでどの程度の役に立ったかを調べること。そして,将来,さらに改良,発達させるべき点がないかについて,討議すること。

 (4) わが国よりも,華北や満州のような大陸方面が,ひでりの害をうけやすいのはなぜか。これについて,気候及び作物の方面から調べること。

 (5) 郷土の稲作の豊凶には,稲作期間の気温と雨量とでは,どちらが深く関係してきたか。農業の専門家に問い合せたり,あるいは農事試験場へ行って,これまでの結果を調べて,報告すること。

(九) 冷害・虫害関係。

 (1) 郷土の稲作が,これまでに冷害を受けたことがあるか。その年・季節・被害の程度を調ベること。

 (2) わが国の冷害は,西南日本には少なくて,東北日本に多いことには,どんな自然及び社会条件が関係しているかを調べること。

 (3) 資料を集めて,東北日本が,今日までに冷害を受けた年代・被害の程度の表を作ること。

 (4) わが国では,冷害に対して,いつごろから本格的な科学的研究が始められたか。そして,今日では,その研究の結果,どのような利益をうけているかについて調ベること。

 (5) 郷土では,作物の霜害については,いつごろ最も警戒を要するか。これについて,どんな対策が考えられているか。最近最もひどい稲害をうけたのはいつで,その時の被害状況はどんなであったかと調ベること。

 (6) 郷土の作物は,これまでにどんな病害や虫害をうけたことがあるか。その年,季節,被害状況を調ベ,さらにその災害の種類には,他の地方と異なった特色があるかどうかを調ベること。

 (7) 郷土では,作物の病害や虫害について,どんな対策が一般に行われているかを調べること。

 (8) 農事試験場へ行って,郷土の作物の病害や虫害の防除法について,どのような研究が進められているかの説明を聞き,これを郷土の人々に話すこと。

(一○) 火災関係。

 (1) 郷土には,これまでどんな大火事が起ったことがあるか。これについて,できるだけ古いものから調ベて,その年月日.焼失戸数の表を作ること。

 (2) 資料を集めて,過去数十年間の出火数を調ベ,この月別変化表を作って,気象要素との関係を調査すること。

 (3) 郷土の大火災について,それが早く消しとめられなかった原因を調ベること。また,火事に際して,その延焼がどんなに速やかに行われるかについての実見談を聞くこと。

 (4) 郷土の大火に際して,人々は,どこへ,どのようにして避難したか。そして,その結果はどうであったか。安全であった例,結果の悪かった例を調べ,その原因について討議すること。

 (5) 火事に際し,避難者が荷物をたくさん持っていたために,かえって悪い結果を招いた例をいろいろ集めて,報告すること。

 (6) 学校や各自の家が火事になった場合,どのような品物を持って,どこへ避難するのが最もよいかについて調べ,万一の場合のために準備しておくこと。

 (7) 郷土の家では,どんな防火設備がしてあるか。古くから伝わっている特殊な防火建物はどんな構造になっているか。それは過去の火事に際して,事実どんな効果があったかを調べること。

 (8) 大地震直後の火事が,特に延焼しやすいのはなぜか。自然的にはどんな原因があるか。また,社会的原因としてはどんなことが挙げられるか。これについて討議すること。

 (9) 万一,何か大きな天災が襲って来た場合,その被害をできるだけ少なくするために郷土では平常どんな心がけや準備をしておくことがたいせつか。これについて討議すること。

 (10) 「文化が進むにしたがって,いろいろな防災施設もだんだん進歩するから,損害は次第に減ってくる。だから,われわれの努力によって,ついには天災の被害から免れる日がくるであろう」。「文化が進むにしたがって,人口も多くなり,建物の数や種類も増加し,耕地も広くなるから,損害を受ける範囲もたんだん大きくなってくる,それ故に将来は,天災による被害がますます大きくなるであろう。この二つのことばは,郷土の将来にとっては,どちらがよくあてはまるように考えられるか,これについて討議すること。


単元六 社会や政府は生命財産の保護についてどういうことをしているだろうか。

~学習活動の例~

(一) 自分の経験や読書をもとにして,人間の身体を健康に保つためにはどういう条件が必要であるかを表につくること。(例えば新鮮な空気,適当な睡眠)その反対に健康を害するいろいろな原因を同じく表につくること。それについて学級で討議し,身体を健康に保つための条件を一覧表に書いて学級の壁にはりつけること。

(二) 附近の医師を招き身体の発達のありさまや,健康な時と病気の時との相違がどのように現われるか話を聞いて記録すること。

(三) 自分の幼児から現在までの健康状態及び病無の年譜を父母や兄姉の助けを得て作り上げること。それを持ちよって,学級全体の統計を作ってどの年齢に比較的病気が多いか,何月が最も病気が多いかなどについて一覧表を作ってみること。自分の健康日誌をつけること。

(四) 緒方富雄著「からだを護るもの」を読んでわれわれのからだが病気を防ぐためにどのような仕組みを持ち,またどのように働いているかを明らかにすること。以上のことを自分が病気やけがをした時の経験にてらしてグループで話し合ってみること。伝染病の予防のためにどのような予防注射をしているか級友について調べてみること。

(五) 自分の家の月々の支出のうちで医療薬品購入のためにどのくらいの金を払うか。それを他の支出と比較して扇形グラフにかいてみること。最近一年間で最も保健のために多く支出のあった月はいつか。なぜ支出が多かったか。また最も少なかった場合についても調ベてみよ。

(六) 家で家族の者が病気にかゝらないようにするためにどんなことを平素実行しているか。またそれを実行するためにどのくらいの費用がいるかを調べて表にすること。これを上の(五)の表と照し合わせて予防費と病気の治療費とではどちらが負担が大きいかを比べて学級に報告すること。

(七) 家に普段から備えつけてある薬品(腹の薬・傷の薬・消毒剤など)や医療品(氷のう・氷枕・体温計・吸入器など)を全部調べて表にしてみること。家の者が最もよく利用するものはなにか。それらがどんなに病気の場合に役だつかを調べてみること。

(八) 自分の町にある病院を調べてその取り扱っている業務の内容(例えば,内科外科小児科のような)を全部挙げて表にすること。また町の略図をかいて病院の位置を記入してみること。

 日本全体について医者のない町や村がどれくらいあるか調べてみること。無医村では急病のある場合にどんなに人々が困っているかを明らかにして中央や地方の責任ある機関がそれにどんな態度をとっているか調ベて学級で討議してみること。

(九) 自分の地方でまじないや神や仏の信仰によって病気をなおす習慣や迷信があるだろうか。あれば調ベて表にすること。それについてこのような民間療法は将来どうなってゆくだろうか,またどうしなければならないかを討議すること。また,そういうものがなぜいつまでも引き続いて行われるのであろうか研究してみること。

(一○) 適度の休養ということが健康のためになぜたいせつかということについて学級で討議すること。休養の種類や方法について調べて学級でよいものを決定すること。この場合各個人の興味や性質や体質・年齢などを十分考慮することは必要なことである。また戸内での静かな休養のみでなく戸外で清い空気や日光の下で行われる軽いゲームやスポーツなどもできるだけ取り入れてみること。さらにこのようなレクリエーションを通して他の人々と協力するということも考えることがたいせつであろう。青年期の心身の発達が著しく進むころには体の使い方や物の考え方にもいろいろ複雑な関係ができて来る。青年の心理について書いた書物を読んで知識を得て「青年とスポーツ」という題で作文を書いて学級に発表すること。

(一一) 自分の地方にある有名な製薬会社を訪問してそこで生産されるいろいろな薬品の工程を視察すること。またもし附属の研究所があればそこの研究員に最近の新しい薬剤についての話を聞いて来て学級に報告すること。政府は品質のよい薬品を作らせるためにどのような手段を講じているであろうか。また有害な薬剤の製造・販売に対してどのような方法をとっているか。

(一二) 市・町・村の代表的な病院を訪問して病院の組織や運営の状態を調ベてくること。これをいなかの私立の小さな病院のそれと比べてみること。「医療組織や医療制度は政府の責任においてすべて運営すべきである」という題について学級で討議すること。

(一三) 世界各国の死亡率の変遷を調べて現代において死亡率の減少して来た背後にそれぞれの国がどのような努力をなしてきたかを調べてみること。新しい医学上の発見や新しいすぐれた薬品の発明などの歴史を調ベて上の表に当てはめてそれと死亡率の低減との関係を研究してみること。

(一四) わが国において西洋医学が輸入されてから公衆衛生の問題がどのように政府や責任ある人々によって取り扱われて来たであろうか。日本歴史の書物や日本医学の発達などを取り扱っている書物を読んで調ベてみること。

(一五) わが国における死亡率の変遷と医学の発達との関係を調べて学級に報告すること。死亡率の低下した時期はいつごろからか。またその変化の原因になったのはどのような理由にもとづくだろうか調ベてみること。

(一六) わが国において悪質の伝染病が流行した時(例えば大正八年ごろの流行性感冒など。またペスト・コレラ・腸チブス等)にどのような方法でこれを防いだかを明らかにすること。

(一七) エドワード・ジエンナー,ルウヰ・パストウール,ロバート・コッホ,マリー・キューリー,北里柴三郎,野口英世の伝記をよんでその人の一生を知り,その研究の業績によって,今日われわれがどれくらいに恩恵を受けているかを明らかにすること。そのだれかひとりを選んでその伝記の一部を学級で朗読すること。

(一八) 世界で伝染病の起りやすい地帯はどの地方であろうか。コレラやペスト,天然痘のような悪質の伝染病はどのような径路でわが国に入って来るであろうか。海外から入る可能性のある伝染病に対して政府はどのような手段を講じているであろうか。以上のことを調べて学級に報告すること。

(一九) 政府は伝染病の予防のためにどのような処置をとっているであろうか。自分の町の防疫の責任にあたる役所(市・区・町・村役場や警察署)を訪問して,その細かい点について話を聞いて学級に報告すること。

(二○) 悪性の伝染病をあげて,その病気の性質・兆候・伝染径路・危険率等を記入して学級に報告すること。特に子供のかゝりやすいものに注意すること。

(二一) 交通の発達と疫病の伝染との関係について調ベて,病気を防ぐ社会施設がそれに伴なっていないと人間に不幸をもたらすこともあるという考えについて討議すること。

(二二) グループの各個人が分担して町の医師を訪問して,去年一箇年に町の人がどのような病気で病院にかよったかを明らかにすること。これを学級の出席記録によって調査した級友の病気にかゝった割合と比ベてみること。去年はどんな病気が最も多かっただろうか,特に青少年に多いものはなかったであろうか。また自分たちの町の流行病を数年にわたって,統計的に研究すること。町の官憲や私設団体が公衆衛生のためどんな活動をしているかを調査すること。

(二三) 全校生徒の身体検査の結果を整理記録して生徒一般に通じてみられる身体的欠陥を明らかにしそれをなくする方法を討議すること。身体検査の結果をできるだけ平素の生活の改善に役だてる方法を研究して学級について,その実際的な方法を立てて実行すること。

 身体検査ということが公衆衛生の改善に有効であるとして,これを一般社会にも広く行うためにはどうすればよいか討議すること。

(二四) 政府は公衆の衛生状態を改善するためにどのような施設を経営しているであろうか。それらをあげて所在地,事業の概要を明らかにすること。

(二五) 近くの衛生試験所,伝染病研究所などを訪い,ワクチンの製造工程について見学し,また係の人から説明を聞いて,学級に報告すること。

(二六) 自分の地方である地域または職域を単位にした国民健康保険組合が存在しているかどうかを調ベること。もしあるならば委員を選んでこれを訪問させること。組合の役員からその目的,組織,事業運営の大要を聞いてきて学級に報告させること。

 町の病院で健康保険医として組合に関係ある医者があれば訪問して医者の立場から組合についての情報を得てくること。

(二七) 自分の町の保健婦さんを訪問して保健婦の仕事について話をきいて来て学級に報告し,その効果について討論すること。また派出看護婦についても調ベてみること。

(二八) 自分の町にある生命保険会社(またはその代理店)を訪問し,生命保険についての知識を得てきて学級に報告すること。級友の家族のだれかで生命保険に入っている人があれば,その保険証書を見せてもらうこと。

(二九) 国民の保健衛生について取り扱う官庁である厚生省について書物を読んだり,年長者から話をきいてその仕事についての知識を得ること。厚生省の沿革を調ベてこの省ができる前とできた後とにおいて国民はその健康な生活を営むためにどれだけの恩恵を受けるようになったかを比ベてみること。

(三○) 統計を調ベてわが国の年々の死亡数とその死亡原因を明らかにし,死亡者数の多い病気を順にあげてみること。またそれにかゝることによって,多数の国民がその活動を阻害せられるような病気を順にあげてみること。以上の表にもとづいてわが国で国民病とでもいえるようなものがあればそれにしるしをつけること。国民病について,病気の種類,どの地方または地区に多いか,患者数と死亡率などを表にまとめてみること。これらの病気を外国のそれと比較すること。なぜこのような病気が日本には多いのだろうか。

(三一) 学級内に委員を設け,わが国最大の国民病としての結核についての調査研究をすること。結核問題を取り扱った多くの書物や統計表,グラフ,掛け図,ポスター等を集めること。またラジオ放送でこれに関係のあるものを聞くこと。

 この委員会では特に次のことを明らかにするとともに必要な実行計画を立てること。

 (1) 結核患者の数,他の病気との比較,外国の結核患者数との比較,その数は過去においてどのように変化し現在どのような状態にあるであろうか。わが国で結核が拡まった原因を考えてみること。

 (2) 国民病としての結核の重要視される理由。

 (3) その病状,死亡率,回復率,療法。

 (4) 原因と予防法(特にツベルクリン反応検査,X線診断,BCG注射,血沈,たんの検査等)。

 (5) 青年と結核の問題,自分の学校における実状とその具体的な対策。

 (6) 政府や社会の結核に対してとっている対策。

(三二) 学校生徒の全体について近視眼のものを調ベてその比率を出し,グラフに書いてみること。また生まれながらに近眼の素質を持っていたかどうかを明らかにすること。日本人に近眼の多いといわれる原因はどこにあるだろうか,将来われわれの努力によって治すことができるであろうかを眼科医等に聞いてきて学級に報告し,学級で近眼のふえないような具体的な注意事項を考えて実行すること。

(三三) 貧民街を訪問して健康上悪いと思われる点を見つけ出すこと。特に彩光,通風の点からしていかに改善すべきであろうかを討議すること。

(三四) り災者や引揚者の住宅を調査してみること。その人たちの生活は住居の点についてどのように現在苦しんでいるであろうか。直接それらの人々に会見して,もしその人が感情を害しないならばその困難や,苦痛や希望を聞いて特に保健衛生という点からみてその改善案を討議すること。次の点を考慮すること。

 (1) バラックや仮住宅は採光,通風,湿気,雨もり,保温等の点からみてどうであろうか。

 (2) 多数の家族が狭い家に同居している場合,畳一枚当たり幾人住むのが最大限度であろうか。

 (3) 上の問題を解決するには,根本的にどういうことになるのが望ましいか。

 (4) 政府はこの問題にどのような態度をとっているであろうか。

(三五) 健康な住宅の充たさるべき条件を挙げて表にすること。
 住宅に関して自分の町の現況(人数,世帯数と戸数)間数調査を実施すること。自分の考えている将来の理想住宅(アパートを含む)を考案設計してみること。他の国々の都市計画において実行して来たこと研究すること。

(三六) 自分の町の水の供給状態を調査し,町の人々が最もよく使う水の見本を衛生試験所に送って水質試験をすること。試験所の報告について適当な役人と討議すること。

(三七) 自分の町に上水道の施設があれば見学すること。水源はどこにもとめているか。水の浄化にはどのような方法が用いられているか。配水,給水の施設や方法は適当であるかどうかを調べて係の人と討議すること。

(三八) いなかの村の井戸を調ベて,その位置,井戸わくの作り方,流し場の構造等について改善すべき点がありはしないかを討議すること。飲料に供する水として備えるべき施設の条件を研究すること。

(三九) 異なった年齢,環境(風土を含む)労働量とそれに必要な「カロリー」につきグラフを作ること。自分の現在とっている熱量はいくらか,科学的見地から主食,副食を検討し,数種の段階をつけて献立表を作成してみること。わが国における主食の絶対不足量とたんぱく質補給の方法について対策を考えてみること。

(四○) 食物を清潔にする基準について討議し,それを表示すること。自分たちの市場の食品を視察し,清潔の度合とその不足について討議すること。自分たちの町の食物を清浄に保つ方法を発達させるように努めること。

(四一) 自分たちの町で衛生状態の悪い場所を見つけ出すこと。その問題について討議し,改善案を提議すること。公衆便所は整備されているだろうか。下水は完備されているか,汚物の処理はどうか。道路にたんつばが,はき散らされていないだろうか。

(四二) フランクリン自伝を読んでかれが都市の清掃のためにとった一市民としての態度について学級で話し合うこと。町の道路の溝掃や下水をさらえることについて人々はどのように協力しているであろうか。

(四三) 身体の清潔をはかる方法として入浴と洗たくについて話し合うこと。町の公共浴場の位置を略図の中に書きこんでみること。浴場における望ましい態度について討議すること。

(四四) 自分たちの町に起る保健上の障害について研究すること。その障害の完全な表を作ること。保健問題について報告をかき,その解決案を提議すること。

(四五) 自分の市・区・町・村役揚の役人,府・県の役人がどんなに公衆衛生に尽力しているか調ベること。その人たちを訪問し,現にとられ,または企図されている実際の処置について討議すること。公衆衛生に助力するため自分の学級で計画表を作ること。

(四六) 学校に医師を招き綿密な健康調査を実施しまた各人の環境,境遇を周密に調ベて両者の関連性について論ずること。時々このような企てを実行し,グラフを作って比較検討すること。

(四七) 健康生活のための注意すべき点を十箇条学級できめて,これを教室に掲げること。

(四八) 自分の家や道路や,乗物や,人の集まる場所などで起る不慮の災害について表をつくつてみること。場所に応じて起り得る事故の性質を研究しそれらを排除するための実際の計画をたてること。

(四九) 自分の市・区・町・村は昨年一箇年に火災が何件ぐらい起ったか。それはどのような原因によって起ったか,また損害はどれくらいであったかを調べて表にすること。また自分の住む県や国全体についても同じような調査をして討議してみること。

(五○) 昔から火の用心のためにどのような方法がとられて来たであろうか。柳田国男著「火の昔」を読んで自分の地方で今でも残っている火に関したことば,迷信,習俗,防火の道具などを調ベてみること。

(五一) 火災を予防するために,自分の地方ではどのような手段が講じられているか。家の中で火の取り締りの責任をおっている人はだれであろうか。家家における火の用心のために何か特別の設備や,準備や,訓練がされているであろうか。同じことを自分の学校や,町についても調ベて学級に報告すること。

(五二) 自分の家を中心にして火災が起った時に,近所や警察に報知する方法と危険が迫った場合に逃げるためや,援助に来る人や消防隊の入って来る道を予め調査して図示すること。最寄りの交番や消防署に通報するのにどのくらいの時間を要するであろうかをも予め調べておくこと。

(五三) 防火に役だてる目的から日本の建築を調査すること。これを洋式の建築に比較して改善すべき点をまとめてみること。戦災都市においては焼け残った地帯や,建物(例えば土蔵造りなど)を調査して,その延焼をまぬがれた理由を明らかにすること。

(五四) 自分の町の消防組織を調べること。民間の自主的な消防組織があるかどうか,あるとすればいつころからどのようにしてできあがり発展してきたかを明らかにすること。町の官(公)設の消防署を訪問して,その組織,編成・器具・設備・消防手の職責と教育・訓練,その採用方法と給料,実際の活動状態などについて話を聞き学級に報告すること。学校の最寄りの消防署長を招いて火災予防と消防の仕事についての話を開くこと。

(五五) 学校の中に教師,生徒の全体で編成する消防組織を設けること。時々町の消防署と連絡して学校の一部に火災が起った想定のもとに消防訓練を実施してみること。避難方法・通報組織・消火活動の分担を平素から訓練すること。

(五六) わが国では年々山火事でどのくらい損害があるだろうか。山火事の原因は何であろうか。その対策はどういう方法がとられているか。以上のことを書物や,統計によって調ベたり,また自分の地方の営林署の役人に手紙を出して聞いてみること。ハイキングや,登山や,キャンピングに出かけた場合に山火事を防ぐための協力方法を学級で討議すること。

(五七) 町の火災保険会社(またはその代理店)を訪問してその事業のあらましについて聞いて来て学級に報告すること。火災保険はどんなに社会に役だっているか。またその種類や,組織や,機能はどんなものであろうか。

(五八) わが国全体を通じて年々交通事故のために死傷した人々の数を調ベ,これを病気やその他の原因で死傷した人の数と比ベて,グラフを書いてみること。近年交通事故による死傷者の増大はいかなる原因によるのであろうか。死傷者の年齢や,男女の別を調べてこれらを材料にして学級で交通安全についての討議を行うこと。

(五九) 交通の実状について,情報を手に入れて具体的な緩和策を討議すること。自分の学校の近くで交通事故を防止する計画を立て実行すること。

(六○) 町の保険会社を訪問して,傷害保険に関する知識を得て学級に報告すること。

(六一) 工場や作業場等において起る不慮の事故によって労働者が死傷をうける数は年々どのくらいに上るであろうか。事故の性質,その原因や,損害を調ベて,その予防方法について討議すること。このような問題は工業が発達するにつれて次第に増す傾向があるが,会社や,雇よう主,または団体等でその災害を防止し,損害を補償するためにどのような処置がとられているであろうか。

(六二) 鉱山・炭坑・トンネル工事場等で起る災害や,事故についても上と同様の方法で研究してみること。工場・鉱山における安全教育に関する情報を集めて学級で討議するとと。

(六三) 自分の地方において起る特殊な災害(天然の災害以外の)例えば鉱毒による作物の被害,海上における難船等について,調ベて,これらの損害を予防するのに政府や社会はどのような方法を講じているかを明らかにすること。

(六四) 毎日の新聞で犯罪を取り扱った記事を読むこと。それを学級に報告し学級討議をすること。

(六五) 最近一年間における犯罪数をその種類及び原因について犯罪者の年齢,職業,階級等の境遇に関する統計によって示し,一定の結論を導くため討議すること,その対策を自分たちとして,また政府の努力に協力する立場から考えてみること。

(六六) 犯罪が戦前,及び戦争中にくらべて増加しているかどらか,ふえているならばその程度を明らかにすること。その際増加した犯罪の類型を調ベ,そのおのおのにつき犯行の理由に説明を与えること。少年の犯罪は増しているか。ふえているとすればその理由は何だろうか。

(六七) 犯罪の統計を都会と農村とについて比較してみること。その異なる理由を説明すること。都会において犯罪の行われやすい時はいつごろか,またどんな場所で行われやすいかを調ベてみること。

(六八) 犯罪を減少させるために提議された方法について円卓を囲んで論じあうこと。役に立ついっさいの情報を集めた後「犯罪の原因としての貧困」という題で学級討議すること。

(六九) 「学校はいかにして犯罪の防止を援助できるか」「家々はいかにして犯罪の防止を援助できるか」という問題を学級討議すること。

(七○) 犯罪とその防止を扱った和洋の書物をできるだけ手に入れて読むこと。その結果を学級に口頭で報告すること。刑務所の改良者として名声のあった人の残した仕事について報告を用意すること。

(七一) 次の項目を手引きにして罪を犯したある人に関し事実を調査研究してみること。

 (1) 環境にもとづく犯罪者の性格。

 (2) 犯行の際の年齢。

 (3) 健康状態。

 (4) 教 育。

 (5) 家庭生活と宗教的訓練。

 (6) 経済状態。

 (7) 本人の習慣。

 (8) 職 業。

 (9) 犯罪の原因は除去され得るものであったかどうか。

 (10) 二度とその行為をくり返さぬという保証。

(七二) 青少年の犯罪につきその原因と対策とを論じ,その処置についても討議してみること。できれば少年審判所を見学すること。刑を終えた人々にはどのような態度で接すベきかということについて論ずること。適切な犯罪事例について研究討論すること。

(七三) 地方警察の職務についてできるだけ調べること。どのようにして警官は任命されるか。かれらの持つ権能はどんなものか。犯人を拘引逮捕する方法についてかれらと話し合ってみること。

(七四) 逮捕拘引はどうして行われるかを調ベること。警察官吏を訪い,そのやり方を研究すること。警察官吏を教室に招きその職責について話し合うこと。

(七五) 罪の確証を得るために拷問の方法が現在用いられているか,過去には用いられていたかを調査すること。なぜこうした取り扱いが人道に反しているのか。被告と証人とから確証を得る仕方は他国で用いられているのと同じであるか。

(七六) 職後に日本の警察制度について戦前と変わった点はないであろうか,新聞などに報じられる警察に関係ある問題の切り抜きを作り整理すること。

(七七) 市・町・村単位,県単位,国家単位の各政府機関の中で犯罪防止や犯人逮捕に関係あるものを研究すること。

(七八) 自分たちの地方にある法廷を訪うこと。法廷の手続き,進行法等を研究し(他国の裁判手続きを勉強して)他国における手続きに比較すること。裁判官や他の法廷官吏の選抜法を明らかにすること。司法制度についていかなる変化がなされたかを明らかにし学級で討議すること。法廷官吏に会見し,かれらの職責と法廷の手続きとを説明してもらうこと。

(七九) 地方の法曹を教室に招いて法律と法廷とを論ずること。

(八○) 新憲法の規定のもとにおいて司法官の地位はどのように変化するであろうか。その任免について重要な点を明らかにすること。

(八一) 人がある犯罪のために起訴された時から獄に下るまでに起ることがらの概略を述べること。できれば刑事裁判を傍聴すること。日本の法廷の手続きと他の国のそれとを比較すること。

(八二) 地方の刑事問題を取り扱う弁護士を教室に招待して犯罪の問題を論ずること。地方の裁判官を招待してその人が法廷で取り扱った犯罪の問題について論ずること。

(八三) 最寄りの刑務所を訪い囚人に対する保護の状況を観察すること。外国の囚人取り扱い法についてできるだけ勉強し,日本の方法と比較すること。刑務所官吏の任命法とその職責を調べること。

(八四) 歴史の参考書から日本で古来犯罪者を処罰してきた方法に関する資料を集めること。いろいろな時代において取り扱ってきた方法を犯罪者の近代的な取り扱いかたに比較してみること。

(八五) 犯罪者の処罰に関する国家の法律や,府県の規定について勉強すること。現行法はいかなる場合にも適当であるかどうか明らかにすること。

(八六) 罪を犯して投獄された人々の学歴について資料を手に入れること。犯罪と教育の不足との間に関係があるかどうか調ベること。自分が囚人のために必要だと思う教育の種類と量について概略を述べること。

(八七) わが国でかって犯罪と考えられていたが今では,もはや犯罪ではなくなった行為について表をつくること。

(八八) 犯罪の物語,犯罪映画,犯人の物語を内容とするラジオ番組等が若い人たちに与えた影響について研究すること。

(八九) 人命,財産を保護するために政府はいかなる機関をもって活動しているであろうか。内務省・司法省の組織・権限・機能について研究すること。

(九○) よき公民たるに必要な行動の表をつくり,他の生徒のつくった表と比較すること。学級討議により,それらを集成した表を作成すること。公民クラブを学級や学校内に組織し趣意書といったかたちでいくつかの条項を選定すること。町の公民館を中心として大人も子供も含めた公民のつどいを作る計画を立ててみること。

(九一) 国・府県・市・町・村・単位の人口調査の資料を集め,出産数と死亡数(年齢と死因)人口増減数をグラフに作り,自分の地方,町の人口密度を他と比較すること。諸種の資料の検討により,十年後,二十年後の人口を予想してみること。これらのグラフによって,外国の人口のそれとを比較すること。わが国の人口状態によく似た国があるだろうか。また我が国に比ベてはるかに人口問題についての悩みの少ない国はどこであろうか。それらの原因や,理由について学級で討議すること。

(九二) 日本の人口問題を取り扱った書籍,雑誌あるいはラジオ放送などを聞き,わが国の人口が明治以後に急に増大した理由を明らかにし,日本人口の将来について討議すること。

(九三) わが国の人口問題について日本人の素質,体力,能力などについて調ベ,これにもとづいて「日本人の素質をよりすぐれたものにするにはどうすればよいか」という題を中心にして公開討議をなすこと。人口問題の研究家を招いて「日本人口の将来」について話を聞くこと。

(九四) わが国における人口の国内,または国外への移動について地理や,歴史の書物を読んで研究すること。海外移民とその現状,国内における耕地の開発と人口移動,人口の都市集中等について,できるだけ情報を集めて討議すること。

(九五) 耕地あたりの人口の割合を計算して,これを外国のものと比較すること。日本の将来の人口と食糧との関係はどうすべきであろうか計画を立てて学級で討議すること。

(九六) 中央並びに地方の責任ある機関において,人口の過剰によって引き起されるいろいろな困難な問題に対してどのような対策を講じているか,特に厚生省の仕事について知識をうること。

(九七) 人命,財産が十分に保護せられ,国民が楽しく日々の暮しを立て,犯罪者も少ないような理想的な国家についての作文を書いて学級に発表すること。スエーデン・デンマーク・合衆国などにおいて行われている進歩した状態について明らかにすること。


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学習指導要領・社会科編Ⅱ(試案)=昭和22年版 に示された現在の中1・社会科の学習活動例

 当時の社会科のカリキュラムは,第10学年,つまり現在の高校1年までを見通した総合的な教科として設計されていました。

 これまで小学校6年生までの学習活動例を紹介してきましたが,もちろん,すべての学習を義務付けているわけではなく,多くの例から好きなものを選んで,また,そこから発想を広げて紹介されてないものも地域や子どもの実態を考えながら,教師は教えることができました。

 今から考えると,教師の力をあまりにも過信しすぎた結果,こういう教育課程が空中分解し,現在のような姿になってしまったわけです。

 今回からご紹介する中学校以上の社会科については,こんな言葉で戦前の教育を反省しています。

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 社会科の総合的な学習は小学校からずっと行われて来たが,中学校の全学年及び高等学校の一学年でも,なお継続してこの総合的な学習がなされるようになっている。これまでは,社会科の内容となっている歴史・地理・公民などは,いずれも別々の教科として扱われて来たのであるが,一般社会科としては,本書に示してあるように中学校あるいは高等学校の生徒の経験を中心として,これらの学習内容を数箇の大きい問題に総合してあるのであって,教科そのものの内容によって系統だてるようなことはやめることとした。

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 そして,「総合」の原則として,次の2点をあげ,さらに,その理由を述べています。

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 (一) 学校内外の生徒の日常生活はつねに問題を解決して行く活動にほかならない。

 (二) 学校は生徒にとって重要な問題を解決するために必要な経験を与えて,生徒の発達を助けてやらなくてはならない。

 生徒がある一つの社会的な問題を解決するには,従来の各教科における学習内容が何よりも必要である。そして,その解決のための最善の方法は,生徒が持っている知識や経験を,その教科的区画にとらわれないで,いずれ教科で取り扱われたことがらにせよ,社会生活に関するものであれば,すべてこれをとり集めて,必要に応じて使うということである。一般社会科の単元構成方法のねらいは,このような考え方にもとづき,生徒が意義のある経験を重ねることによって,自分の生活の価値をはっきりとつかみ,これを次第に高めて行くことができるように,教科課程を組み立てようとするところにある。

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 いわゆる「ゆとり教育」で登場した「総合的な学習の時間」のような漠然としたものではなく,ねらいが非常に明確な「中心的な教科」が「社会科」だったわけです。

 私がここで「学習活動例」を中心にご紹介しているのは,現在,言語活動の充実が求められ,より幅の広い学習活動が求められていることも理由のひとつです。

 しかし,小学校の例も含めて,こういう学習活動が成立する前提となる学力自体に課題がある,という批判に応えることができないために,昭和22年のころの理念も,平成10年の理念も,泡と消えることになりました。

 教師の役割を,あたらめて考えさせられる材料であり,これは何も社会科の教員に限った話ではありません。

 今,各中学校で,総合的な学習の時間の計画の中心にいる人はどなたですか?

 では,第7学年=中学校第1学年の学習活動例から,ご紹介します。

 なお,単元の要旨や目標等は省いてあります。詳しく知りたい方は,

 国立教育政策研究所の学習指導要領データベースからご覧ください。

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単元一 日本列島は,われわれに,どんな生活の舞台を与えているか

~学習活動の例~

(一) 郷土の県は,同本列島のどの辺に位するか。どんな郡に分れ,大都市としては,どんなものが発達しているか。また,県は,どのくらいの面積で,どのくらいの人口を養い,人口密度はどのくらいになるか,これを,日本の他府県と比較すること。

(二) 郷上の県の地理的位置には,どんな有利な点や不利な点があるかを考えて討議すること。

(三) 郷土の県の山地・丘陵地・平野の分布図を描き,それらがそれぞれ,大体どのくらいの面積の割合を占めているかを推定して,報告すること。

(四) 郷土の県の平野には,どんな川が,どのように流れているか。また,どんな産業が行われ,都市や交通機関が,どのように発達しているかを図に描くこと。

(五) 郷土の県で,有名な山地としては,どこにどんなものがあるか,それらは,どのような山で,高さはどのくらいか。また,なぜ有名かを調べて,報告すること。

(六) 郷土の県の山地・丘陵地は,どのように利用され,また,そこでは,どんな生活が営まれているかを調べて,報告すること。

(七) 郷土の県の気候は,地方の位置や地勢によって,どんなに違っているか。そして,これによって,人の日常生活に何か違いが見られるかを調べて,報告すること。

(八) 日本列島の地理的位置の長所・短所を列挙して,討議すること。

(九) 古代に,大陸の文化が,どのようにしてわが国へ伝わったか。どんな文化が入って来たか。それがわが国ではどんなふうに保存されて来たかを調べて報告すること。

(一○) 日本の地勢図から,海抜百メートル以下,百メートル以上,千メートル以上,千五百メートル以上の土地の分布状態を調べ,われわれの活動に対し,地勢上有利な地方,不利な地方を概観すること。

(一一) 日本のおもな山脈を図示して,それぞれの名まえを記入すること。

(一二) 日本の有名な高山も高さの順に並べた図表を作り,それぞれの名まえ・高さ,その属する山脈名を書き入れること。

(一三) 日本の火山分布図によってが日本の火山が,どんな排列を示しているかを調べて,討議すること。また,郷土の附近に火山があれば

 (1) その位置・名まえ・高さ。

 (2) 現在活動しているか,あるいは活動記録があるか。

 (3) どんな形をしているか。

 (4) 表面はどのように利用されているかを調べて,報告すること。

(一四) 郷土の小さな谷をさかのぼり,上流へ進むにつれて,だんだん平地が狭くなって行くありさまを観察すること。そして,

 (1) 谷底の平地は,どのように利用されているか。

 (2) 斜面は,どのように利用されているか。

 (3) 人家は,どのような位置を占めているか。

 (4) いちばん上流の部落の高さ・名まえ・戸数。

 (5) 耕地がなくなる高さを調べて,討議すること。

(一五) 日本の平野では,たくさんの人口を支えているが,世界のどこの平野でも同様か。もしそうでないものがあれば,

 (1) その位置・名まえ。

 (2) 人が多く住まない理由を調べて,討議すること。

(一六) 日本のおもな平野について,

 (1) その位置・名まえ。

 (2) そこを流れている川の名まえ。

 (3) 低地と台地の面積の,だいたいの割合。

 (4) 平野に発達しているおもな都市の名まえ,を書いた表を作ること。

(一七) 日本のおもな盆地と,その中心都市の名まえを,河川別にして列挙すること。

(一八) 日本の海岸線の中で,出入の多い岩浜及び単調な砂浜が,それぞれ長距離にわたって発達している部分を,図示すること。

(一九) 自然条件だけからいえば,どんな地形の海岸に港が発達しやすいか。また,どんな地形の海岸に発達しにくいかを考えて,討議すること。

(二○) 郷土の海岸へ行って,海岸の地形,波の作用,潮せき(汐)や潮流のありさまを観察すること

(二一) 東京・北平(ペーピン)・ロンドン・ワシシトシ・ヴェルホヤンスク.パタヴィアの月別気温,雨量表を図表になおし,東京の四季及び降雨の状態には,各地と比べて,どんな特色があるかを調べて,討議すること。

(二二) 札幌(さっぽろ)・鹿児島(かごしま)・松本・潮岬(しおのみさき)の月別気温表から,日本の四季の変化が,土地の位置や地勢によって,どのように違うかを調べて,報告すること。

(二三) 郷土の気象観測所を見学して,気象観測の方法や,郷土の気象について,いろいろ説明を聞くこと。また,気象資料を写させてもらい,これを用いて,郷土の気候の特色を明らかにして,報告すること。

(二四) 夏の高温・多湿に対して,郷土の生活(衣・食・住)ではどんな適応が営まれているかを調べて,討議すること。

(二五) 冬の寒さに対して,郷土の生活では,どんな適応が営まれているかを調べて,討議するとと。

(二六) その他,郷土の生活様式の中で,気候に深い関係を持っていると思われる点を列挙して,討議すること。

(二七) 郷土の生活の中で,新しい様式と古い様式とが,たがいに調和せずに存在している例を挙げて,討議すること。

(二八) 府県別面積・人口表から,わが国の府県別人ロ密度図を作ること。

(二九) 役場や県庁へ行って資料を集め,郷土の人口分布図や,人口密度図を作ること。

(三○) 北海道の平野分布図を描いて,おもな都市を記入すること。

(三一) 北海道の一月と七月の気温図から,位置や地勢が,気温の年変化に,どのように影響するかを,調べること。

(三二) 北海道の開拓の歴史を調べ,また,北海道の農業生活が,他の諸地方と違っている点を調査して,報告すること。

(三三) 北海道の自然と深い関係を持つと考えられる産業を調べ,その将来について討議すること。

(三四) 北海道の都市が,他の地方の都市と違っている点を調べること。また,おもな都市について,その持つ意味(産業・交通など)を,簡単に書いた表を作ること。

(三五) リアス式海岸の成因について考えること。また,三陸の海岸に大きな港が発達しにくい理由を考えて,討議すること。

(三六) 奥羽地方の平野分布図を描き,平野の名まえとその中心都市とを記入すること。

(三七) 男鹿(おが)半島の成因について考えること。また,自分の知っている半島の中で,これと同じような成因を持つものの名・所在地を挙げ,さらに,その成因を説明する略図を描くこと。

(三八) 奥羽地方の鉱産資源について,短い論文を書くこと。

(三九) 大和(やまと)の朝廷は,奥羽地方をどのようにして開いたかについて調査し,報告すること。

(四○) 関東平野の生活が,利根(とね)川から受けている恩恵について,短い作文を書くこと。

(四一) 関東平野の都市人口分布図を作り,また,商工業の発達状態の地域的相違を調べて,報告すること。

(四二) 京浜(けいひん)工業地帯に,深い関係を持って行われている,関東地方の農業や漁業について調べて報告すること。

(四三) 関東地方の行遊地・休養地について調べて,短い作文を書くこと。

(四四) 江戸時代に,諸地方で新しく土地を開き,産業を盛んにすることにつとめたが,その当時の経済的事情について調べて討議すること。

(四五) 富士山の断面図を作り,表面の傾斜の変化状態を調べること。(垂直と水平の割合を,いろいろに変えて試みること)。また,組で協力して富士山の模型を作ること。

(四六) 郷土の代表的な山について,地図からその断面図をいろいろに作ってみること。

(四七) 中央日本の水系図を描き,地形図と対照しながら,

 (1) 太平洋斜面と日本海斜面との分水界を,できるだけ正確に記入すること。

 (2) 各河川の流域面積図を作ること。

(四八) 郷土の県の流域面積図を作り,かんがい(灌漑)面積とどんな関係があるかを調べること。

(四九) 中部地方の平野分布図を描き,おもな都市を記入すること。

(五○) 日本海沿岸の積雪の状態,及び積雪期間の生活について調べて報告すること。

(五一) 養蚕を行っている農家へいって,養蚕についてのいろいろな説朋を聞き,また,実際の状況を見学すること。

(五二) 世界の養蚕業の状態を調べ,わが国の養蚕業の重要性,及び郷土の養蚕業の現在と将来とについて,討議すること。

(五三) 世界の茶の生産について調べ,また,わが国の茶畑の分布,茶の生産及びその重要性について調べて報告すること。

(五四) 郷土では,茶がどのように生産されるか,あるいは,どこの茶が多く供給されているかを調査して,報告すること。

(五五) 北陸地方と東海地方との自然,及び商工業の発達状態を比較して報告すること。

(五六) スキーが,わが国へ輸入された歴史を調べること。日本のおもなスキー場の分布図を作ること。雪の質が,地方によってどのように違うかを調べて,報告すること。

(五七) 名古屋附近の特色のある農業について調査し,また,郷土の農業の特色について,討議すること。

(五八) 近畿地方の都市人口分布図を描き,商工業の発達状態の地域的相違について,短い説明をつけること。

(五九) 近幾地方の行遊地・休養地の分布,及びそれぞれの特色を調べて,報告すること。

(六○) 琵琶湖は,われわれにどのような利益を与えているかを調査して,報告すること。

(六一) 気温・雨量表から,山陰・瀬戸内海沿岸・南四国の気候の相違を示す図表を作り,また各地域の気候に深い関係を持つ産業について,調査すること。

(六二) 中国地方の水田分布状態には,どんな特色があるか,そのわけを調べて,報告すること。

(六三) 瀬戸内海の風景・潮流・交通について調べて報告すること。

(六四) 中国・四国地方の都市人口分布図を描き,産業の発達状態の地域的相違について,短い説明をつけること。

(六五) 桜島の噴火について調査して,報告すること。

(六六) 北九州が,わが国で最も早く開けた事情について調べ,討議すること。

(六七) 長崎港の歴史,及びわが国の文化の発展に及ぼした影響について調査して,報告すること。

(六八) 九州地方の都市人口分布図を描き,産業の発展状態の地域的相違について,短い説明をつけること。

(六九) 九州地方の行遊地・休養地の分布,及びそれぞれの特色を調べて,報告すること。

(七○) 九州地方に開かれた歴史的な港は,みな,現在でも重要な意味を持っているか。もしそうでないものがあれば,なぜ衰えたかを調べて,討議すること。


単元二 われわれの家庭生活はどのように営まれているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 昔から続いて来た古い家についての記録・情報・写真等を集めていろいろの知識を得てそれにもとづいて現在の自分たちの家庭生活と比較して,次のような点に関して,変わらないところ,変わったところについて討議すること。農家と都市の家との比較をするのもよい。

 (1) 家族にみられる世代の数,家族の員数。

 (2) 家屋の構造。

 (3) 家族の関係。

 (4) 家庭の家族員に対する力。

 (5) 個人の独立。

(二) 大陸特に中国から精神的・物質的にどのような影響が日本の家庭生活に対してあったろうか,それについて調べてみること。儒教と口本の家族制度との関係について調べ,作文を書いて学級に報告すること。

(三) 中国や朝鮮の家庭生活について,向こうに居住した人々をたずねて話しを聞くこと。われわれの家の生活と似ているところ,違っているところについて報告を書き,そのあるものを学級で朗読し,討議すること。

(四) 西洋の思想や習慣がわが国の家庭生活にどういう影響を与えたかについて研究し,討議すること。親子の関係,夫婦の関係などに変わったところがみられないだろうか。

(五) 未開社会の家の生活について先生の講義や書物からいろいろの知識を得て,それとわれわれの家の生活との異同について調べてみること。それについて討議し,われわれの家の生活がどのように発展して来たかについて結論を出してみること。

(六) 日本の家庭の生活と英・米・仏・露等の家庭の生活とを比較し,気のついたことについて説明すること。向こうに滞在した人々から話を聞いたり,雑誌や新聞の切り抜きを作ったりしてみるのもよい。

(七) クーランジェ著「古代都市」というような書物によって,ギリシャやローマの古い家族の生活と現代の日本の家族の生活と似ている点について研究してみること。

(八) 「日本の生活様式にとって洋式家屋に比較してみた日本家屋の優劣」について学級に簡単に話をすること。

(九) わが國の各時代の家屋を研究すること。現代に至るまでの家屋の発展のあとをたどること。種々の時代の家屋の絵をかき,設計図・棋型をつくること。

(一○) 日本の家族制度の変化と他の社会生活の変化――機械の使用など――と比較してみること。一番早く変化する生活様式はなんであろうか。

(一一) 自分の家の系図を作り,それに記されている人について研究すること。本家・分家等の同族社会に関する問題につき,できるだけ資料を集めて研究し,学級で討議すること。

(一二) 戸籍謄本(抄本)をみて記入方法や事項を調べ,その意味を研究してみること。履歴書の書き方を練習すること。

(一三) 地理の書物,あるいは他の資料から他の国の国民の家庭生活について知ること。学級の生徒にその報告を読んできかせること。自分で選んだ国々の家庭について説明できるような画をかくこと。諸国の家庭生活をもとにして戯曲や物語を書くこと。物語を読むか,話して聞かせるか,または劇にする。できるだけいろいろの点で日本の家庭生活と他の国々の家庭生活とを比較すること。またその違いの背後にある思想について研究すること。

(一四) 「近代的な産業が日本の家族に与えた影響」という題でできるだけくわしい研究を行うこと。

(一五) 現在自分の家で働いている者と祖父の時代の家族と比較してみること。仕事の性質,仕事の場所,及び状況・報酬などについて。

(一六) 新憲法の中で家の生活に関係している条項をとり出して,現在の家庭生活と比較して研究してみること。なぜそのような条項が重要であるかについて討議すること。

(一七) 民生委員をたずねて,失業や病気や貧困や主人の死亡が家庭生活にどんな影響を与えているかを聞き,学級に報告すること。そういう家族は増えているか。どういう原因によるか。

(一八) 「婦人の職業と家庭生活」という題で作文を書いてみること。婦人の職業で古くからあるものはどういうものか。新しいものはどういうものか。特に母が職業を持っている場合,子供にどういう影饗を与えるかということについて討議すること。

(一九) 配給制度について父母あるいは兄姉からいろいろのことと聞き,食糧の不足が家庭生活にどういう影響を与えたかについて調べてみること。

(二○) 疎開や戦災などによって家庭生活がどういう影饗をうけているか。新聞などの記録を集めて,学級に報告し,それにもとづいて学級討議を行うこと。

(二一) 近所の住宅調査をやること。ます適当な住宅とはどういうものかを明らかにした後,適当な住宅が不足しているかどうかを明らかにすること。新聞やその他の資料を調べて,市・町・村・都道府県でまた国家で住宅改善のためにやっていることを明らかにすること。近所の家をいっそう役に立つように改善し,その美しさを増すための計画をつくること。

(二二) できれば,学校地区の住宅戸数・畳数・人口総数を調べ,一戸当たりの平均人数,ひとり当たりの畳数などについて図表を作ってみること。住宅問題の重要さについて研究し,討議してみること。

(二三) 自分の家庭生活のすべての方面で,家庭をいっそう明かるく,面白く,美しく,住みよい所とするために実際にできる計画を立てること。この計画を実際にあてはめてゆくこと。

(二四) 自分の家庭で用いる実際の予算を立てること。自分のつかう小づかいを家庭の経費全体から再検討してみることも必要である。小づかいをもつのはどうして子どもにとってよいことかという点について討議すること。

(二五) 自分たちの家で年中行事はどんなことをしているだろうか。それぞれ学級で報告すること。将来の家の生活にとって有意義と思われるものはどんなものだろうか,討議してみること。

(二六) 家庭で家族全体のために設けられでいることがらについて詳細な表を作ること。家族のためになるような活動を各自がどんなふうに分胆できるであろうか。

(二七) 家庭で一月の間にやるような計画について研究すること。計画の完全な表をつくること。それぞれの場合,それはどういうふうにしてきめられるか。家庭の全員が相談して計画に責任をもつことができるようにつとめること。

(二八) 一週間の家庭における各自の分担する仕事の表,及び休養や娯楽の計画表を作ること。

(二九) 母の手助けをする十通りの方法を表に作ること。同様の表を父・姉・妹・兄・弟について作ること。

(三○) 合衆国やイギリスその他の国々の家庭では仕事をどういうふうに分担しているかということについて,自分の学級に短い報告をすること。

(三一) 家の中で起りがちな不慮の災害について表をつくってみること。それらを除くための実際の計画を立てること。

(三二) 家庭の和楽のために,遊びや休養を考えてみること。それを自分の家庭にとり入れること。

(三三) 近所の家庭や親類を招いて「夕べのつどい」をする計画を立てること。みんながいろいろのことに参加できるように計画することを忘れてはならない。

(三四) どこかへ家族といっしょに行楽する計画を立てること。その際みんな興味をもてるような仕事を含めておくのがよい。

(三五) 「○○へのわが家の行楽」という題で作文と書くこと。(実際の行楽の記述)。

(三六) 現在の家の家族間の関係を示す略図を書き,その改善について参考意見を述べること。

(三七) 自分と両親との関係は今まで通りの日本の親子の関孫と一致するだろうか。それに答えられるように,家庭の歴史的な発達を研究すること。

(三八) 自分の日常の習慣を研究すること。一家はどんなに多くの習慣を作って来たか。そのすべてはよいものだろうか。迷信にもとづいているものはないだろうか。家の習慣と迷信とについて表を作ってみること。

(三九) 数人のものと組をつくって家庭の中で一般に起りがちな行為を戯曲につくって演じて,ある考えを現わしてみること。

(四○) 家庭における男性と女性及び男児と女児との関係という主題について学級の前で小人数のグループがテーブルを囲んで討議すること。

(四一) 家庭問題についてのラジオ放送を聞き,それを学級に報告すること。続いて学級討議をやること。

(四二) 家庭の問題について話をするために学級討議に両親を招待すること。

(四三) 自分の町や村は家庭を持つ場所としてどんな利害を持っているか。その害になる点を除くにはどんなことができるだろうか。

(四四) 家庭生活改善のために自分の町や村に何か機関が設けられているかどうか明らかにすること。その機関は現在どんな仕事をしているか。家庭生活の改善のために学校はどんな援助をすることができるだろうか。それらについて討議すること。

(四五) 隣保の人たちがいっそう住みよい場所をつくり出してゆくために,自分の家族はどういう助力をすることができるか,考えてみること。

(四六) 隣保の家庭の改良という使命を持った家庭クラブを組織すること。

(四七) 隣保の家庭の統計調査をすること――各家庭の家族数・年齢・教育の高さ・雇よう関係等――それらを図表で説明すること。それは市町村でやる調査票の書き込みの練習にもなる。

(四八) 家を建てるための資材とそれを手に入れる方法を研究すること。用いられている資材の標本を集めること。どうしてそれは手に入るか。自分の地区の家屋と他の地区の家屋とを比較すること。

(四九) 日本の家屋の特色を調べ,特色をはっきり形に現わしている模型をつくること。日本の家屋のいろいろな点で保存すべきものと,近代生活にとってもっとよいものにするために,ないほうがよいと考えられる点とを明らかにすること。和洋の家屋の設計図や絵や写真を集めること。

(五○) 日本の家庭生活に必要な家具について表をつくること。どんなものがあるか。どんな部屋におかれるか。使用法はどうか。自分の家の由緒のある家具について,その歴史を調べてみること。同じ種類の家具の変遷を調べること。生活様式その他料理法というような家庭生活の変化と比較研究してみること。

(五一) 自分の知っている家庭でうまくいっていると思われるものについて,研究文を書くこと。その家庭をうまくいかせている原因と思われることがらに力を入れるがよい。

(五二) 日本あるいは他国の模範的な家庭生活の物語を探し,それを学級に読んできかせること。

(五三) すぐれた人々の伝記を調べ家庭生活において幼時どんな影響を受けたかという点について作文を書いてみること。

(五四) 学級で兄弟姉妹の数を調べ,平均人数を出してみること。このまゝで行けば,五十年後にはどのくらい日木の入口が増えるかを計算してみること。

(五五) 理想的な家庭に対する自分の考えを書いてみること。これを学級で朗読し批評を聞くこと。

(五六) 家族生活あるいは家庭というものを特に取り上げた詩を集めること。

(五七) 自分が理想的と考える家庭や家族のことを歌う詩をつくること。


単元三 学校は社会生活に対してどんな意味をもっているだろうか。

~学習活動の例~

(一) 明治維新以後の学校制度に関するおもな法令を集めて,わが国の学校制度上どういう変化があったかを調べてみること。徳川時代の教育機関について簡単な知識を得て,それと明治以後の教育機関と比較してみること。教育の普及ということについて,明治以後のわが国の政府は,どんな努力をはらって来たかについて討議すること。

(二) 自分の学校の歴史を研究すること。学校はいつ創立されたかを調べ,それから現在までの歴史をたどってみること。教科課程で生じた変化について説明すること。学校の歴史を明らかにした小冊子をつくること。

(三) 自分の地方の村・町・市・都道府県の小学校の数,生徒数な調べること。過去十年間の統計があれば,それにもとづいて,グラフをつくること。同様のことを中学校についても行うこと。

(四) 日本の学校にはどんな種類があるか,これを調べて,その分布図をつくること。

(五) 旧制度の中等学校及び上級学校の入学について研究してみること。小学校卒業生の何割が中等学校へ行くか。その何割が志望を達せられるか。自分の地方。(府・県等)について調べてみること。入学難という問題で討議してみること。なぜ入学難は除かれなくてはならなかったか。

(六) 日本の教育の進歩に貢献した人々の表をつくること。おのおのその名の下にどういう功績によるかを書きこむこと。その人々について,自分の知っていることを学校に報告し自分の報告と同級生の報告と比較すること。

(七) 歴史の本を読んで,日本の歴史のある時代に少年少女たちが受けていた教育上の便宜と自分たちの現在受けている便宜とを比較してみること。

(八) 自分の学校や近隣の学校を研究して,次の諸点を明らかにすること。

 (1) 学校の建物の建設に当たって責任の地位にあったものはだれか。

 (2) 先生を選ぶのに責任の地位にあったものはだれか。先生に必要な資格はどういうものか。校長先生や先生の職責はどんなものか。

 (3) 学級や学校の生徒数はどうか。先生の数はどうか。

 (4) 自分の学校をまかなう費用はどこから出るか。学校の経理についてできるだけ報告を集めること。

 (5) 自分の学校で用いられている教科書の表をつくること。どの学年ではどういう教科書が用いられているかを明らかにすること。教科書がどういう目的に役だつと考えて用いられているか,その目的を研究すること。

 (6) 先生や教科書を選ぶ現在の方法,また学校財政の現在における方法上の利害について表をつくったり討議したりすること。現在の欠点について,次の二つの表をつくること。

   (イ) 生徒と先生とが協力して改めることのできる事項の表。

   (ロ) 上部の機構の助けを必要とする事項の表。

 (7) 学級や学校の問題について討議のできるように学級の組織をつくること。

(九) 自分たちの郷土の社会の人たちで,学校に関係があると思われる人たちをたずね会見すること(市町村長,市町村の議員とか学校委員等)。その人たちの仕事が教育とどんな関係があるかについてはっきり知ること。学校の現在の経営組織を改良する方法について討議すること。

(一○) 自分の学校に適用される国家・都道府県・その他の法令を集めて研究すること。それらについて討議して,おのおのの規定が学校に及ぼす影響について考えてみること。

(一一) 委員会をつくり,委員を選んで,都道府県庁の教育課長その他の学校関係の役人をたずねて会見すること。この人たちはどうしてその役に選ばれたか。その人たちの職務はどういうふうに遂行されているか。その人たちの資格,給与等について正確な知識を得ること。選挙された県民によってつくられる一般人の委員会が県の学校を管理し,適当な教育者を用いて学校の実際の仕事にたずさわらせるような組織と,現在の組織とを比較研究してみること。

(一二) グラフをつかって自分の町が保健・防火・政治・その他の項目に関して支出する費用を学校のためにつかう費用と比較すること。別のグラフを用いて昭和十年以来の軍事戦費と教育費とを比較すること。

(一三) 登校日に普通やっていることがらをすべて挙げてみること。登校の準備,登校,学校にいる間,こういうことがらはいったいいつどこで教えられたのだろらか。学校生活に対して,自分の家庭ではどんな準備をしてくれたろうか。

(一四) 同級生間の関係,生徒と先生との関係という題で作文を書くこと。理想的な友情,理想的な師弟について討議すること。

(一五) 仕事,遊戯,学習活動に際して各個人は時間をどういうふうに使っているか。一週間に費される時間の表。時間をもっと有効に用いるように組みこむことのできる方法について討議すること。

(一六) 趣味や教養を高めるために,最もよいと思われる書物を読むこと。教室でそれらの書物について討議すること。自分がそれらの書物に特別な興味を感じた理由を話すこと。良い書物を自分たちの学級(学校)の文庫に加えるにはどうしたらよいかを考えること。生徒のひとりを図書係に任命すること。学級や学校の図書の数を増し,質をよくするための実際の計画を立て,その計画を効果あるように遂行すること。

(一七) 自分の学校や学級の生徒の間で人気のある休養や娯楽や趣味などはどんなものか,投票できめること。

(一八) 自分の学校の出席記録を研究すること。グラフをつかって,欠席の何割が病気によるものか,明らかに示すこと。自分たちの土地の学校の生徒がかゝる病気を,病気にかゝる割合の順で表にしてみること。

(一九) 伝染性の病気でない病気欠席の生徒を見まうこと。長い病気だったら学級で見舞状を書くこと。病人の看護法を学ぶこと。

(二○) 生徒全部に対する身体検査の結果を記録して,それにもとづいて身体的欠陥をなくす方法を討議すること。(個々の生徒の欠陥ではなく,身体検査の結果わかった一般的な欠陥を討議しなくてはならない)。

(二一) 学級や学校における身体の清潔と健康法の基準を定めて,生徒がみなこれを守るようにすゝめる運動をすること。

(二二) 学校衛生の基準について,県や国家の衛生当局でなくてはわからないことがらに関して,当局に手紙を書いて知らせてもらうこと。

(二三) 自分の学校に衛生委員会をつくって,校長先生や他の先生と協力して学校衛生の視察を行うこと。視察の結果を校長先生や他の先生とともに研究し,学校の衛生改善のために忠告してくれる委員会の勧告に進んで従うこと。自分たちで扱えない問題については学校や行政当局と話し合いをすること。

(二四) 学校の理想的な採光,暖房,換気,衛生条件について研究すること。できるだけ理想に近づけるという見地から自分の学校を研究することが必要である。

(二五) 個人または公衆の健康について物語や劇を書くこと。

(二六) 校内の清掃に関して現在の組織方法を検討し,その改良案について学級で討議すること。衛生上の見地を特に重んじなくてはならない。注意事項を徹底させるための方策を考えること。

(二七) いろいろな会の運営について議会的な方法を研究してみること。学級会や委員会で議会的な運営をやってみること。

(二八) 学級の生徒各自がはっきりした貴任と義務とを持つことができるように自分の学級を組織すること。級長,学級委員,協働者(一般学級員)及び先生,学校当局者との関係を建設的な態度で研究すること。

(二九) 学級自治会などによって学校における「公民権」について若干の規則をつくること。意見の一致をみてできあがった規則はパンフレットにして一般に知らせること。

(三○) 学校及び学校によい伝統をつくるように努力すること。そのためにいろいろな記録をつくっておくこと。学校や学級の歌をつくること。愛校心について学級で討議をすること。「愛校心と愛国心」「愛校心と人類愛」という題で作文を書くこと。

(三一) 学校内で行われていると思われる慣習・伝統・信条・行動の習慣や形式(おたがいのあいさつの仕方,先生との間がら等)について表をつくること。それからそれらの慣習の現在の意味を討議して,今もなお有用であるかどうかをきめること。もう役に立たない慣習や習慣については,どうしたらよいかを明らかにしてみること。これからよい慣習を作るにはどうしたらよいかを研究ずること。

(三二) 学級で学校の建物や運動場や学校園を建設し改良し美化する計画を立て,その計画を効果あるように遂行すること。

(三三) 観察・研究及びみんなの討議によって,学校の中で評判のよい人の性質や特徴を明らかにすること。みんなの要求にあうような特徴の表をつくってみること。生徒各自はこの表に照らして自分自身を評価してみるがよい。

(三四) 動作や身なりなどをよくしてゆくには,各人はどらしたらよいかを公開討議の形式で決めること。

(三五) 教室における学習の態度について建設的な討論を行うこと。最上の能率をあげることのできるように教室を改善すること。机の配置や席順はどうするのがよいだろうか。

(三六) 全学期を通して学校内の招待会(父兄招待会・敬老会・バザー等)を計画すること。その責任はまわり持ちにして,各自が少なくとも一年に一回主人役になる機会があるようにすること。

(三七) その地方居住の芸術家・小説家:音楽家・劇作家などを学校に招待して,父兄や他の学級に見せる会のプログラムをつくるのに援助してもらうこと。

(三八) 友人に手紙を書き,学校生活で自分が特別に好きなことがらについて知らせること。

(三九) 同じ種類の活動に興味を持つ生徒たちのグループで校内に同好会を組織すること。(スポーツ団体,写真会,遠足会,自然同好会等)。

(四○) 新しい運動競技を計画し,これを校内に紹介するために委員会を組織すること。

(四一) 運動競技をした後,その経験にしたがって,チーム・ワークの重要さについて討議すること。チーム・ワークということを社会生活や自分たちの生活のいろいろな方面について考えてみること。団結の力をはっきり現わした物語を探し,学級で朗読すること。

(四二) スポーツマンシップ(運動家精神)について,またそれと勝敗との関係について話し合うこと。運動家精神の発揮された実例や物語を集め,学級で朗読すること。学校における運動競技のあり方について討論すること。競技における応援団及び観客のとるべき態度について各自表をつくり,比較すること。それにもとづいて模範的な応援を行うこと。

(四三) 運動競技の価値を論ずること。競技における運動家の心構えについて表をつくること。運動競技によって学校どうし,生徒どうしの交歓をはかること。

(四四) 近所にある自分の学校と違った種類の学校をたずねること。それらの学校の生徒たちに自分の学校に来てもらい,その活動について話をしてくれるように頼むこと。

(四五) 食糧増産運動に参加できるように学校に組織をつくること。学校農園をつくること。自分の学級や学校の生徒の栄養の必要量を研究してみること。どの程度まで栄養の必要量がみたされているか。

(四六) 学校新聞をつくり,各学年並びに校内の同好会各部(運動競技・演劇,趣味等)から通信員を出すこと。紙の問題は考える必要はない。学校新聞は,たとえ部数が少なくて,各教室の公報板に一枚ずつ貼る壁新聞の程度でも価値がある。

(四七) 一年の課程の間に学校について集められた報告をのせた書物(年鑑)をつくること。建物の設計図,建物や生徒や先生の写真,学校に関する説明つきの統計的な資料,社会活動の記録・運動競技の記録・学校問題の討議についての作文などを含む。(必ずしも印刷する必要はないが,生徒たちに役だつように写しをつくること。)

(四八) 新たに入学しようとする生徒に役だつと思われる学校に関する知識をのせた小冊子をつくること。次の年に新しい生徒が用いる部数だけ準備すること。

(四九) 自分の学校の職員の人たちに会い,かれらの在学した学校,持っている学位や免許状及びそれらの内容について話を聞くこと。

(五○) すぐれた先生なら持っていなくてはならないと思われる資質の表を作り,それを他の生徒のつくった表と比較すること。みんなに満足のゆく標準がきまるまで,すぐれた先生としての資質について級友と話し合いをすること。

(五一) 自分の学校の卒業生をある年代にわたって,調査すること。どんな職業についているか。どんな上級学校に入ったかを調べること。それとともに自分の町の職業調査を行うこと。現在の組織による学校は自分が社会の生活に入って行くために訓練を与えてくれるかどうかを明らかにすること。

(五二) よい指導者やよい協働者の特色をあげ,討議すること。在学期間中に学級の全員が指導者として,活動できる機会をつくること。

(五三) 「日本の学校はもっと職業に必要な課程を採り入れるべきである」と決議されたとして,その問題について討議すること。

(五四) 事業の雇よう主に面会し,その人たちの教育に対する態度及び,その人たちが実業に就こうとする青年に必要だと考えている教育の種類を明らかにすること。

(五五) 学校は地方生活のためにどういうことをすることができるか,という点について,討議し,実行のできるものは計画して実行すること。(例えば運動競技の普及,勤労奉仕,演劇の公開,図書の公開等。)

(五六) 自分の両親が学校で行われる仕事のうちで一番たいせつと考えていることについて,両親と話し合うこと。両親はどういうやり方で学校教育を変えたいと考えているか。

(五七) 先生たちから六・三・三制度の意味を聞くこと。自分の学校はこの制度の中でどんな位置を占めるか。中学校の性質について先生たちと討議すること。この制度は教育上のどんな目的に役だつだろうか。

(五八) なぜ女子も男子に役だつ教育と同じ教育を受けることがたいせつなのだろうか。自分たちの年齢の男子と女子がいっしょに学校生活の経験を持つのはなぜよいことなのだろうか。

(五九) 自分の学校の昭和二十二年度教科課程の刷り物を手に入れること。それをいちいち昭和二十一年度及びそれ以前の教科課程と比較してみること。以前には重要視されたものが,なぜ新しい教科課程では重要視されていないのだろうか。


単元四 わが国のいなかの生産生活は,どのように営まれているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 郷土の村は,いくつの大字からなるか。大字は,いくつの小字からなるか。小字は,いくつの組からなるか。その組をなんと呼ぶか,それぞれの名前と,戸数とを調べて表を作り,さらにその分布図を書くこと。

(二) 郷上の面積・人口・戸数に関する資料を集めて,耕地面積・農業人工・農業戸数の割合を計算すること。そしてこれを日本各地と比べること。

(三) 郷土では,農業者ひとり当たり,どのくらいの面積の土地を耕していることになるか。耕地一平方キロメートル当たり,どのくらいの人口や農業者を養っていることになるかを調査し,これを日本各地の場合と比べること。

(四) 郷土の水田と畑の割合を調べ,また水田と畑の分布状態を示す地図を作ること。

(五) 郷土の米の反当収量は平均どのくらいか。土地によってどう違うか。また,郷土の人口を養うには,どのくらいの過不足があるかを調査して報告すること。また,郷土の米の増産法や消費節約法について調べて討議すること。

(六) 日本の米の産額や,消費に関する記事を,新聞や雑誌から集めて,日本の食糧問題について討議すること。

(七) アメリカ合衆国の農業の特色を調べて,わが国の農業の特色と比べること。

(八) 郷土では,毎年いつごろ田植が始まり,また,いつごろ取り入れが始まるか。日本のいろいろな地方と比べて,どのくらいの違いになるか。近くの農村で,郷土の場合とかなり違うところがあるか。もしあれば,それはなぜかを調べて報告すること。

(九) 郷土では,水田の裏作には,一般に何が作られるか。近くの農村でも,同じものを植えるか。また違ったものを一般に作るところがあるか。もしあれば,それはなぜか,を調査して報告すること。

(一○) 資料を集めて,わが国のおもな畑作物及び家畜の分布図を描き,地域による特色を明らかにすること。

(一一) 郷士では,畑にどんな作物が多く植えられているか。季節によって,作物の種類がどのように違うかを表にすること。また今後,どんな作物の栽培に,力を注ぐのがよいかについて討議すること。

(一二) 畑作物の中で,郷土附近の特産物となっているものは何か。この畑は全耕地の何パーセントを占め,どのくらいの収穫があるか。この作物の分布図を描くこと。そしてこれはどのように加工されて,どこにおもに売り出されるか。県,あるいは日本全体から見て,どんな重要性を持つかを調査して討議すること。

(一三) 郷土の全戸数中,養蚕を行うものはどのくらいあるか。まゆはどこの製糸工場へ送られるか。桑畑は畑の何パーセントぐらいに当たり,また,どんな分布を示しているかを調べて報告すること。

(一四) 郷土附近の製糸工場や,その他,農産加工物製造工場を見学して,いろいろな設明を聞くこと。また,郷土の経済生活に対する,それらの工場の重要性について討議すること。

(一五) 日本の養蚕や,製糸に関する記事が新聞にでるごとに,切り抜いておいて,相当な量になってから,それをもととして日本の養蚕業や製糸業の重要性及び将来について討議すること。

(一六) 郷土では,どんな牧畜が行われているか。おもに何を飼い,牧場としては,どんなところが利用されているか。農家では,農耕にどんな家畜を使用するか。農家一戸当たり平均何頭ぐらいになるか。家畜をどのように愛護するかを調べて報告すること。また郷土の牧畜業発展の必要性について討議すること。

(一七) 新聞から日本の牧畜に関する記事を集め,これをもととして,日本の牧畜の将来進むべき方向について討議すること。

(一八) 郷土の地形はどんな状態か。低地・扇状地・台地・丘陵地・山地などにわけた地図を作ること。

(一九) 郷土の低地は,どのように利用されているか。まだ利用されていない部分があるか。それはどういうところかを調べ,これを有用地化するには,どうしたらよいかについて討議すること。

(二○) 低地の村は,どのような位置を占めているか。家の屋敷は,盛り土がしてあるか。それはなんのためか。さらに改善すべき点がないかを調べて報告すること。

(二一) 川にそう堤防の内側と外側とでは,どちらが土地が高いか。堤防の内側と外側とで,土の状態がどう違うか。それはなぜか。天井川の例があれば,なぜそうなったか,それによって,どんな利益,不利益をうけているかを調べて報告すること。

(二二) 郷土の低地の井戸は,深さがどれくらいか。水面までは,どれくらいの深さか。水面までの深さは,場所によってどう違うか。また,天気や季節によって,どう違うか。水がかれる時はないか。扇状地や台地についても,同様なことを調査して報告すること。また,衛生上から見た,郷土の井戸の構造や,水質について調べて討議すること。

(二三) かんがいや排水は,どのように行われているか。かんがい用水路はどのように発達しているか。ため池その他,貯水池の設備があるか。それらはどんな地形のところを利用し,また,いつごろ作られたかを調査し,できれば地図に描いて報告すること。そしてこれらを,今後どのように改善,発達きせたらよいかについて討議すること。

(二四) 扇状地の開墾に際しては,どのような労苦が払われて来たかについて調査すること。

(二五) 扇状地には,まだ原野の部分があるか。開墾されたところは,どのように利用されているかを調査し,地図に書いて報告すること。また,今後の開墾地の最も有利な利用法について討議すること。

(二六) 扇状地には,村や町がどのように発達しているか。水はどうして得ているか。井戸は各戸ごとにあるか。それとも一つを何戸ぐらいで共同に使っているか。その場合は,どんな不便や利益があるかを調査して報告すること。

(二七) 郷土の台地は,どんな土からできているか。表面は,どのように利用されているか。村や町が発達しているか。水はどうして得ているかを調べて報告すること。

(二八) 平野の生活の有利な点,不利な点を列挙して討議すること。

(二九) 郷士の谷底の広さは,川によってどう違うか。傾斜はどうか。谷底や斜面は,どのように利用されているか。村はどんな位置を占めているかを調べて報告すること。また,谷底の村の生活の有利な点,不利な点について討議すること。

(三○) 郷土に山村があるか。そこの生活は,平野の村とどんな点が違っているかを調査して報告すること。

(三一) 郷土の山地,丘陵地の斜面は,どのように利用されているか。階段状の水田は,高いところでは,平地から何メートルぐらいまで発達しているか。畑も階段になっているか。斜面の耕地は,今後もっと広げられる可能性があるかを調査して報告すること。

(三二) 郷土から他地方へ,ある季節だけ出がせぎにでかける人があるか。もしあれば,それはどうして必要なのか。その季節,人数,出かけるおもな地方,従事するおもな職業を調査して報告すること。

(三三) 郷土の山地には,どんな樹木が多いか。林業としては,どのようなことが行われているか。林業に従事している人は,何人ぐらいか。副業か専業かを調査して報告すること。

(三四) 郷土では,どんな樹木が最も有用か。木材はどのように運びおろされ,どこの製材場へ送られるかを調査して報告すること。

(三五) 郷土には,林業先覚者としてどんな人があったか。そしてどんな仕事を残したかを調べて報告すること。また,郷土の林業をさらに発展させるためには,どのような努力をしたらよいかについて討議すること。

(三六) 新聞から,日本の林業に関する記事を集め,これをもととして,日本や郷土の林業の,現在と将来について討議すること。

(三七) 山地の生活の有利な点,不利な点を列挙して討議すること。

(三八) 郷士の家々では,副業としてどんなことを行っているか。これは季節によって,どのように違うか。副業による年収入はどれくらいかを調べること。また,副業のやり方を,今後どのように改善したらよいかについて討議すること。

(三九) 郷士で行われている副業の種類や,やり方は,今日までに,どのような変化をして来たか。最近新しく行われるようになったものとしては,どんな種類があるか。それはどういう動機から始められるようになったかを調べること。また,今後どのような副業に力を注ぐことが,最も有望かを考えて討議すること。

(四○) 郷土の海岸は,どんな地形か。海岸の村の人々は,何で生計を立てているか。漁業を専業とする村があるか。郷土では,漁業人口と農業人口との割合はどんなであるかを調べて報告すること。

(四一) 郷士の漁付はどのようなところに位置しているか。漁村では,男女の仕事がどのように違うかを調べて報告すること。

(四二) 郷土の海岸では,どんな魚類,貝類,海草類が多くとれるか。それらはいつごろ多くとれるか。そしてそれらの水産物は,どのように取り引き,または処分されるか。その方法は今日までに,どのように変わって来たかを調べて報告すること。

(四三) 郷土の海岸では,どんなやり方で漁業が行われているか,沿岸の漁業では,船はどのくらいの沖まで出かけるかを調査して報告すること。

(四四) 郷土の漁業のやり方は,昔に比べれば,どのような変化をして来たかを調査すること。そしてさらに今後どのように改良したらよいかについて討議すること。

(四五) 郷土の海岸では,漁獲高や,とれるものの種類は,昔に比べてどのように変化して来たか。それはなぜであるかを調べて報告すること。

(四六) 郷土の沖を流れる海流の方向や速さは,季節によって,どう変わるか。これが漁業にどんな関係をもっているか。両親や村の人に聞いて報告すること。

(四七) 潮境とは,どんなところか。潮境附近に魚が集まるのはなぜか。わが国近海や郷土の海岸で,おもな潮境はどの辺か。そこではどんな漁業が行われているかを調べて報告すること。

(四八) 郷土の漁港は,どんな地形を利用しているか。また港の設備としては,どんなことがなされているか。それはなんのためか。出入する船には,どんな種類があるかを調べて報告すること。

(四九) 郷土ではどんな水産物加工が,行われているか。その工場を見学して,係りの人からいろいろな説明を聞くこと。また,郷土の生活に対するその工業の重要性について討議すること。

(五○) 新聞や雑誌から,わが国の水産業に関する記事を集め,これらをもととして,わが国や郷土の水産業の重要性や,将来について討議すること。

(五一) 海岸の生活の有利な点や,不利な点を列挙して討議すること。

(五二) 郷士の農家の周囲には,樹木が植えられているか。どんな種類の樹木か。それは何のためかを調査して報告すること。

(五三) 屋敷内には,一般に家屋がどのように配置されているか。これにはところによってどんな違いがあるか。郷土の代表的な農家について,見取り図を書くこと。

(五四) 屋敷の周囲,または屋敷内に畑があるか。それはなんとよばれて,主として,どんなものが栽培されているか。屋敷内の広場では,どのような仕事がなされるか,を調べて報告すること。

(五五) 郷土の家屋はひらやが多いか,二階建てが多いか。家の造り方には,どんな様式があるか。古くからある家と,新しく建てられた家とでは,その造り方にどんな違いが見られるか。代表的なものを,いくつか写生すること。

(五六) 郷土の代表的農家の間取り図を描き,将来はどのような点を改善すべきかについて討議すること。

(五七) 農家と漁家とでは,家の様式にどんな違いがあるか。両方の代表的なものを写生して比べること。そして,どうしてそのように違うかについて調べること。

(五八) 衛生上や居住の便利の上から見た,わが国の家屋に関する記事を,新聞や雑誌から集め,これをもととして,郷土の家屋の長所,短所について討議すること。

(五九) 郷土では,家々がどんな集まり方をしているか。その見取り図を描くこと。郷土附近で,散村・集村,路村,街村の代表的なものは,どこで見られるかを調べて報告すること。そしてそれらの形式は,各家の生活や村の共同生活の上から,それぞれどんな長所,短所があるかについて討議すること。

(六○) 郷土の村や町は,その昔どんな意味から発生したと考えられるか。また,現在の意味は,どのような点で昔と違っているかについて調べて討議すること。

(六一) 郷土では,人々は平常どんな着物を着ているか。季節によって,ふだん着はどんなに変わるか。また,仕事の種類によって,仕事着がそれぞれ変わるか。あるいは季節によってどのように変わるかを調べ,これを他の地方と比べて,郷土の服装の特色を明らかにすること。

(六二) 郷土の村では,日用品を売る店はどのように分布しているか。また店の多く並んでいる通りは,どの辺に,どのように発達しているか。その通りの見取り図を描いて,商店の種類の分布を明らかにすること。

(六三) 郷土の農村では,男は一般に,朝は何時ごろから,夕方は何時ごろまで働くか。これは季節によって,どのように違うか。労働時間の月別変化表を作ること。

(六四) 郷土の農忖では,女は家庭の仕事以外には,どんな仕事に従事するか。農業に従事する時間は,一般にどれくらいか。この月別変化表を作ること。

(六五) 郷土では,生徒は自分の家や社会の,どんな仕事の手伝いに従事するか,自分たちの助力できる仕事で,郷土の社会にとって,最も有意義なものとしては,どんな種類や方法があるかについて討議すること,そしてその結果を実行すること。

(六六) 郷土の自然の風景は季節によってどのように変わるか。各季節の風景の特色,その移り変わりの時期,季節によって人々の仕事の忙しさにどのような変化が見られるか,などについて調べること。

(六七) 郷土の年中行事としては,どんなものがあるか。月別にした表を作ること。そしてこれらが,季節による仕事の種類や忙しさと,どのような関係があるかを調べること。

(六八) 郷土では,農産物や水産物の収穫量や種類を増加させるために,これまでに,どんな努力が払われて来たか。また,これについては,今後どのような方面に力を注ぐべきかについて討議すること。

(六九) 郷土附近には,まだ耕せる土地が残されているか。もしあれば,それはどういうところか。こゝを耕せば,どのくらいの生産をあげることができるかについて討議すること。

(七○) 郷土では,昔と今とでは,村や町の発展状態に,どんな変化が見られるか。昔のありさまや,だんだん変わってきた状態を,両親や老人に聞き,また戸数や人口の変化を示す資料を集めること。そしてその変化が,特に目立つようになったのはいつごろからか。また,どのような変化が起って来たかを調べて報告すること。

(七一) 郷土では,生産の種類,生産方法や施設,労力の配分などに,今後改善を必要とする点がないか。これについて調べて討議すること。

(七二) 郷土では衣服・食物・家屋・衛生状態その他に,今後改善を必要とする点がないか。これについて調べて討議すること。

(七三) 郷土では,今後どのような工業を起すことに,力を注いだらよいか。これについてよく調べて討議すること。

(七四) 郷土をもっと発展させるには,どうしたらよいか。各自でよく研究して討議すること。

(七五) 役場の人に学校へ来てもらって,郷土の現状や将来どんな計画が立てられているかについての話をしてもらうこと。

(七六) 資料を集めて,わが国の農業と漁業の発達の歴史を,できるたけ古い時代から調べ,いろいろな時代の農業と漁業生活の特色を明らかにすること,そして各時代の生活状態を,郷土の現在のそれと比べること。

(七七) わが国の歴史を通じて,農業者や漁業者は,社会的にどんな貢献をして来たか。現在の農漁業者の経済的,社会的地位は,江戸時代に比べてどんな相違があるか。農漁業者は,社会的にどんな待遇をうけて来たかについて調べること。

(七八) 農漁業者の生活改善について,農林省ではどんな仕事をしているか。県や町村では,これについて,どんなことをしているか。また政府では,生産増大について,これまでにどんな仕事をして来たかについて調べること。

(七九) 郷土の農業会や水産業会は,どんな仕事をしているか。この組合に加入することによって,人はどんな利益をうけているかについて調べること。また,組合の人に面会して,当面の問題としてはどんなことがあり,これに対して,どんな解決策が考えられているかについての説明を聞くこと。

(八○) 郷土では,農地制度改革について,最近どんなことがなされているか。政府から公にされた農地改革に関する法令の印刷物を手に入れて,これに,ついて研究すること。そしてこの改革法の実施によって,郷土の農業者の生活は,どのような影響を受けるかについて調査すること。

(八一) 郷土では,農業講習としてどのような事業がなされて来たか。また,それが,どんな成績をあげてきたかについで調査すること。

(八二) 郷土の農漁村には,著しい社会階級として,どんな種類のものがあるか。そしてそれらの階級の存続は,民主主義社会と相容れるかどらかについて討議すること。

(八三) 郷土の人々は,どんなレクリエーションを楽しんでいるか。郷土で行われているレクリエーションの種類の表を作ること。そして今後,郷土のレクリエーションの機関を,どのように改善すべきかについて討議すること。


単元五 わが国の都市は,どのようにして発達して来たか。また,現在の都市生活には,どんな問題があるか。

~学習活動の例~

(一) 郷土の代表的な都市について,できるだけ古い時代の町の姿や,当時の人々の生活状態を調べて,論文を書くこと。

(二) 郷土の都市の以前のありさまや,人々の生活状態を,両親や町の老人に聞いて,報告すること。

(三) 郷土の都市では,いつごろから昔の姿が失われ始め,どのようにして近代都市に変化したかを,町の多くの老人に聞いて,その結果をまとめて報告すること。

(四) 郷土の都市で,中世あるいは近世の城下町から発達したものを挙げ,また,今日はそれぞれどんな発展状態を示しているかを調べて,報告すること。

(五) 郷土の都市で,近世の城下町から発したものについて,昔の町のおもかげ(町名,建物の特色,遺跡など)が,どこに,どのように残っているかを調べて,報告すること。

(六) 日本の都市で,近世の城下町以外から出発したものの例をできるたけたくさん挙げ,その発展を促した原因を,それぞれ調査して,報告すること。

(七) 郷土の都市で,昔は重要な城下町であったが,今日はあまり発展していないものの例を拳げ,その原因について調査して,報告すること。

(八) 郷土の都市で,城下町以外から発したものの例を学げ,それらが,昔はそれぞれどんな状態であったかを調べて,報告すること。

(九) 日本の都市で,市場町・宿場町・門前町などから発したものを,できるだけ多く挙げて,その表を作ること。

(一○) 日本の都市で,その発生にいろいろな意味を合わせ持っているものの例を,できるだけ多く挙げ,その表を作ること。

(一一) 郷土の都市で,市場町から発したものについて,昔は,どこで,どのように市が開かれたかを調べて報告すること。

(一二) 日本の都市で,その発生した昔の意味を,現在でも持ち続けているものの例を調べて報告すること。

(一三) 日本の都市には,単一機能を持つもの(例えば,政治的都市・学術的都市)があるか。また,外国には,どんな例があるかを調べて,報告すること。

(一四) 日本の近代都市の代表的なものについて,それが明治以後,今日のような著しい発展をもたらした有利な地理的及び歴史的嫌件を調べて,討議すること。

(一五) 郷土の代表的都市について,今日のような発展を促した有利な条件を調べて,討議すること。

(一六) 日本の天然資源に関する新聞や雑誌の記事を集めておき,それをもととして,日本の平和的産業の発展に際して,どんな天然資源を,どのように開発したらよいか。また,どんな不足資源を輸入しなければならないかを調べて,討議すること。

(一七) 日本のおもな炭田につき,それぞれが日本の工業の発展に,どんな重要な関係を持っているかを調べて報告すること。

(一八) 郷土の炭田へ行って,石炭がどのように埋蔵され,また,どのように採掘されているか,どんな炭質かを見学すること。

(一九) 日本の大工業地へは,それぞれおもにどこの炭田から,石炭が供給されるかを調べて,報告すること。

(二○) 郷上で使う石炭は,おもにどこから,どのようにして送られるか。どんな炭質がを調べて,報告すること。

(二一) 日本の石炭の産出に関する新聞や雑誌の記事を集めておき,これによって,日本の石炭資源の将来について,討議すること。

(二二) 日本の石油資源について,調査すること。

(二三) 郷土の県の天然資源の分布図を作り,県の工業的発展に対する各資源の持つ現在の意味,及び将来の重要性について,討議すること。

(二四) 郷土の鉱山へ行って,鉱産資源が,どのように採掘されているかを見学し,いろいろな説明を聞くこと。

(二五) 日本の水力発電所の分布図を描き,その分布が,どんな自然的条件と最も深い関係があるかを調べて,討議すること。

(二六) 日本の大工業地帯へは,電力が,それぞれどこから供給されるかを調べて,報告すること。また,郷土の電力についても,同じような調査を行うこと。

(二七) 郷土の水力発電所へ行って,それが,どんな地形を利用して作られているかを調べ,また発電所を見学して,発電の設備や,こゝから,どのくらいの電力が,どの範囲に供給され,郷土の産業の発展に,どんな意味を持っているかなどについて,よく説明してもらうこと。

(二八) 郷土の火力発電所を見学して,その設備,電力供給の範囲,産業に対する重要性などについて,説明を聞くこと。

(二九) 日本の水力資源に関する新聞や雑誌の記事を集めておき,これをもととして,日本の水力資源の現在の利用程度,及び将来性について,討議すること。

(三○) 郷土の都市の電力消費に関する資料を集め,その季節による変化や,一戸あるいは人口ひとり当たりの平均消費量を計算すること,そして,これをもととして,電力節約について,討議すること。

(三一) われわれの生活を,今よりもさらに楽しく,便利にするためには,どんな電力の利用法があるかを考えて,その表を作ること。

(三二) 日本の鉱山町の例を,できるだけたくさん挙げ,その所在地,鉱工業の種類を書いた表を作ること。また,鉱山町の生活様式が,一般の都市とどのように違うかについて,討議すること。

(三三) 郷土の鉱山町へ行って,その町の発達状態や,人々の生活が,普通の町の場合と,どのような点で違っているかを調べて,報告すること。

(三四) 鉱山町の盛衰について調べて,討議すること。

(三五) 生徒を幾組かに分け,各組の生徒同志で相談の結果,最もよいと思われる方法で,人口三万以上の日本の都市分布図,及び都市人口分布図を,協力して描き,その結果を比較して,討議すること。

(三六) 郷土の諸都市では,どんな大工業・及び中・小工業が営れているかを調査して,その分布図を描くこと。また,それらの工業が,どのようにして発達して来たか,将来性ばどうかについて調べて,討議すること。

(三七) 郷土の都市の中・小工業について,その種類,工場の数,及びその分布,各工場の従業員の数を調べて,報告すること。

(三八) 郷土のいなかで行われている中・小工業の種類,工場の数,及び各工場の従業員数を調べ,また,それらの中・小工業が,いつごろ起ったか。それによって,村(または町)の発展が,どんな影響を受けたかを調べて,報告すること。

(三九) 工業に関する専門家を学校へ招いて,知りたいと思っている工業上のいろいろな問題や,日本の工業,及び工業地帯の長所・短所の説明をしてもらうこと。

(四○) 日本の四大工業地帯葉,その発達に,それぞれどんなすぐれた地理的条件を持っていたかを調べて,討議すること。

(四一) 日本の工場が,大都市に集中するようになったのは,なぜかを調べること。また,その結果の長所・短所について,討議すること。

(四二) 郷土の都市,あるいはいなかに,今後どんな工業を盛んにさせたらよいかを考えて,討議すること。

(四三) 郷土の都市を,今後いっそう発展させるためには,どうしたらよいかを考えて,討議すること。

(四四) 郷土の都市やいなかは,どこの商圈に属するかを調べ,また,郷土産の商品の中で,最も勢力のあるものを調べて,報告すること。

(四五) 郷土の都市では,大売出しの時,どのくらいの範囲の附近のいなかから,人々が集まって来るかを調べて,報告すること。また,その都市の商業の中心地としての有利な点,不利な点について,討議すること。

(四六) 日本の大都市へは,食糧が,それぞれどこから,どのようにして輸送・供給されるかを調べて,報告すること。また郷土の都市についても,同じようなことを調べること。 

(四七) 郷土の都市の職業別人口統計を図表にすること,また,性別及び年齢別人口統計の図表を作ること。そして,他の都市に比べて,どんな特色が見られるか,また,それはなぜかを調べて,報告すること。

(四八) 郷土の都市は,以前に比べて,すっと大きくなっているかどうか,いつごろから目立って発展し始めたか,どの方面に,新しく建物が建てられて来たかを,両親や老人に聞いて,報告すること。

(四九) 郷土の都市の人口・戸数などに関する資料を,できるだけ古い時代のものから集め,その変化の状態を示す図表を作ること。できればその変化の状態を地図に描くこと。

(五○) 郷土の都市の家屋を調べ,どこに近代的建物が多いか,どこに古い形式の家屋が多く残っているかを調べて,その分布を地図に描くこと。また,両者の建築様式は,それぞれどんな長所や短所を持っているかについて,討議すること。

(五一) 郷土の都市の家屋の様式には,他の地方のものと違った特色があるかどうかを調べ,もしあれば,それが郷土の自然と何か関係を持っているかどうかを調べて,報告すること。

(五二) 郷土の都市の家屋の様式には,職業によって,何が著しい違いが見られるかどうかを調べ,もしあれば,それぞれの代表的なものの写生をすること。

(五三) 日本の都市で,道路が整然としているものの例を拳げ,その原因について調べて報告すること。

(五四) 郷土の都市の道路分布図を描き,道路が整然としている部分や,複雑な部分を区別し,その理由を考えること。また,将来,どのように道路を改善すべきかについて,討議すること。

(五五) 郷土の都市の交通のラッシュ・アワーの開始と,その終了時刻とを調べて報告すること。

(五六) 郷土の都市の交通のラッシュ・アワーに見られる混雑を軽減させるには,どうしたらよいかをいろいろ考えて,討議すること。

(五七) 郷土の都市の戦災復興の現状,及び特来の復興について,どんな計画が立てられているかを調べて,報告すること。

(五八) 郷土の都市の地図を描き,役所・学校,その他,公共の建物・銀行・会社などが,どのように分布しているかを書き入れること。そして,現在の分布状態が,市民の日常生活にとって,不便な点がないかどうかについて,討議すること。

(五九) 郷土の都市の地図を描き,おもな商店街・工場地区・住宅区を区別すること。

(六○) 郷土の都市の生活様式や建物,あるいは街頭で見られる風景で,新しい形式と古い形式のものが,互に調和しないで存在している例を挙げて,討議すること。

(六一) 郷土の都市の郊外住宅地の分布図を描き,また,これらが,いつごろから,どのようにして発達したかを調べて,報告すること。

(六二) 郷土の都市に散在している井戸について,地下水面の深さの分布・水質などを調べ,地形や地質に,どんな関係があるかを研究すること。

(六三) 郷土の都市の水道は,どこから,どのようにして引かれているかを,地図に描くこと。そして,水道は,いつごろ設けられたか,その以前には,人々は,どのようにして水を得ていたかを調べて,報告すること。

(六四) 郷土の都市の水道施設には,改善を要すべき点がないかどうかについて討議すること。

(六五) 郷土の水道の水源地へ行って,浄水の状態を見学すること。

(六六) 郷土の都市の水の消費量に関する資料を集め,一戸あるいは人口ひとり当たり,月平均どのくらいを消費していることになるか,また,この量は,他の都市に比べて,多いか少ないかを調べて,報告すること。

(六七) 郷土の都市の水の消費量は,季節によって,どんな変化を示すかを図示し,その理由について考えて,討議すること。

(六八) 水の消費に関する新聞や雑誌の記事を集めておき,これをもととして,郷土の都市の消費節約について,討議すること。

(六九) 郷土の都市のガス会社へ行き,ガス供給能力の現状,及び将来についての説明を聞くこと。また,現在のガス供給量,使用している戸数を調べ,これから,一戸当たりの使用量を計算し,これを,他の都市や全国の平均と比べること。そして,日本及び郷土のガス消費節約の必要性,及びその具体的方法について,討議すること。

(七○) 新聞や雑誌から,わが国の都市生活に関する記事を集めておき,これをもととして,郷土の都市生活の改善について,討議すること。

(七一) 郷土の都市の衛生状態を,今後,どのように改善したらよいか,また,生徒は,これに対して,どのように協力したらよいかを考えて,討議すること。

(七二) 郷土の都市の美化に対して,生徒として,どのような点で協力できるかを調べ,討議すること。

(七三) 外国へ旅行したり,あるいは外国に住んだことのある人々を学校へ招いて,外国の都市生活に比べて,日本の都市生活には,どんな長所や短所があるかを話してもらうこと。そして,郷土の都市生活の短所を,できるだけ早く改善するには,どうしたらよいかを考え,討議すること。

(七四) 都市計画に関係している人を学校へ招いて,郷土の都市について,将来どのような計画が立てられているかを,説明してもらうこと。


単元六 われわれは余暇とうまく利用するには,どうしたらよいだろうか。

~学習活動の例~

(一) 「よく遊びよく学べ」――この簡単な言葉について,どら思うか自分の考えたことを,書いてみよう。

(二) 自分と自分の家族の一人々々について,毎日の時間をどのように使っているか,家で討議すること。表にして,時間の経過につれて,して来たことを書いてみること。また,扇形グラフにしてあらわしてみること。特に,母の場合について,くわしく調べること。母親には・余暇がどれくらいあるだろうか。それを級友の調べたものと比較すること。これらの資料をもとにして,余暇がどのくらいあり,それらが一日の時間の何パーセントを占めるかを調べ,級友のものと比べること。学級の中で,時間のたくみな配り方をしている者を選び出すこと。

(三) 前の週末を,どのように使ったかを,級友について調べること。また,前の夏休み,冬休みの場合についても調べること。その実際を調べて,どのように使ったか,その使い方と,時間の長さと,そのために利用した施役によって,分類してみること。その資料をもとにして,次のことがらに対し,口頭で報告すること。

 (1) 余暇を利用したいろいろな型を,多い順に挙げてみる。

 (2) また,時間の長さを,多い順に挙げてみよう。

 (3) 上のものによって,自分たちの年ごろで,男子と女子に,それぞれもっとも適当だと思われるものを,決定すること。また,両方に適するものを,挙げてみること。

(四) 書物を読んだり,人に聞いたりして知識を得,次のことについて討議すること。

 (1) 余暇の活用ということは,どういうことか。レクリェーションとは,どんなことか。

 (2) 慰みや,道楽や,芸事というのは,どういうことか。道楽や,慰みをもつことは,望ましいことだろうか。そして,なぜか。

 (3) われわれの肉体生活や精神生活において,緊張と,ち緩との関係は,どうすべきであろうか。

(五) 祖父母や,父母たちが若かったころに,慰みや暇つぶしにやったことなどに,どんなものがあったかを話してもらうこと。これを現在のものと比べてみること。レクリェーションと暇つぶしとの関係を考えること。

(六) 産業革命や生産の発達,都市の発展などについて書いた読み物を調べて,次のことを討議すること。

 (1) 機械生産のもとにおける労働と余暇の関係について。

 (2) 分業組織の発達とレクリェーションの関係について。

(七) 大都会と農村の生活を比べて,自分の経験したことや,人から聞いた知識にもとづいて,次の課題をグループで討議すること。

 (1) 都市と農村とでは,どちらがレクリェーションのための設備が,より必要であろうか。

 (2) 「農村では,レクリェーションの設備などは必要でない」という意見があるとして,この意見をどう思うか。

 (3) 学級で,都会の労働者へと,農村のお百姓きんへとの手紙を書き,労働している時の苦痛についてたすねること。その返事を中心にして,討議すること。

(八) 父母から,家庭内における仕事と,そのレクリェーションというにとについて,できるだけ多くのことを聞いて,グルーブで話し合うこと。

(九) 余暇の活用ということが,自分の生活をもっと豊かなものにするために,どんな意味を持っているかを考えて,次のことがらについて,討議し研究すること。

 (1) どんなレクリェーションがすきか,また,そのすきになったわけと,やり始めた時期と,現在も続けているかどうか。

 (2) 自分の今実行しているレクリェーションの種類を表にして,その中から,自分がおとなになっても,実行できるものを選ぶこと。

 (3) いま自分のやっているレクリェーションや,他の人とともにやっているレクリェーションだけで十分だと思うか。そのあるものは,自分に不適当であったり,不十分であると考えた場合,どうすればいっそう適当なものにすることができるであろうか。何か新しいレクリェーションを,自分の表に加えることができるか。

 (4) 友だちといっしょに余暇を楽しむことについて,さらに工夫することはないだろうか。

 (5) 次の条件を考えた上で,自分に最も適する余暇の利用法の計画を立てること。

  (イ) 性 格

  (ロ) 身体と年齢

  (ハ) 戸外活動と戸内活動の別

  (ニ) ものをこしらえるという欲求を満たすこと

  (ホ) 気分の転換と刺激を求める

  (6) 上のような計画を実行するについて,家庭や学校や自分の町の中で,十分行うことのできるだけの設備があるか。

(一○) 自分の地方の略図をかいて,その上に,市・区・町・村か,府・県か,または国で行っているレクリェーションの設備を,色分けにして示すこと。

(一一) 自分の家庭における余暇の活用を,改善する案を立てること。特に,次のことがらに関して考えてみること。

 (1) もっと余暇を作り出すために,工夫すべき点。

 (2) 家庭内で備えつけられるいろいろな遊び道具や,レクリェーションの設備について。

 (3) 余暇を活用する方法について工夫すべき点。

(一二) 上のことに関係して,自分の家庭にある遊び道具や,暇つぶしにやっている慰みの道具や,レクリェーションの設備を,いっさい調べて表にすること。それに,家庭内のだれが,どの道具を利用するかを書き入れること。このような調査を,級友のものと比べて,自分の家庭で,将来備えたいと思うものを書き出すこと。

(一三) 日本の家庭において,婦人を中心として行われるレクリェーションの中には,たしなみとして,昔から重んじられたものがある。自分の地方で婦人がしているたしなみとしでのレクリェーションを,挙げてみること。

(一四) 家庭の生活を,いっそう楽しいものにするために,一家そろって実行できるレクリェーションを考えて,その実行計画を立ててみること。特に,戸外の活動を中心とするものについて,十分考えること。例えば,家庭楽園や,ピクニック・ハイキング・小旅行などについて考えること。○○への―家そろってのピクニックの計画(時間・経費など)を立ててみること。

(一五) 家庭で,夕食後の時間を,一家そろって楽しいものにするための計画を立ててみること。例えば,

 (1) 新聞の記事を中心にして,家中の者が語り合うこと。

 (2) ラジオの番組の中で,一家そろって聞いて楽しむことのできるものを,選んでみること。

 (3) きょう,外に出て見てきたこと,聞いてきたこと,経験したことを,話し合ってみること。

 (4) トランプやしょうぎなどをすること。

 (5) 土曜日の晩には,特に「家庭演芸会」などを計画してみること。

(一六) 家庭の記念日を設けて,一家そろって楽しむ計画を立ててみること。例えば,誕生日など。

(一七) 何かのコレクションをやっている級友がある時は,学級で,時々展費会を開き,説明を聞くこと。

(一八) 家で,楽器をならしたり,ラジオをかける場合,隣近所のじゃまにならないように注意するには,どうすればよいか。

(一九) 自分の町で,個人的なレクリェーションのために役だっている余暇の利用法を,挙げてみること。例えば,

 (1) 戸内レクリェーションのために

 (2) 戸外活動のために

 (3) 他の人々とともに楽しむために

(二○) またレクリェーションのための公共の組織を挙げて,表にしてみること。例えば,

 (1) 運動競技の同好会とその活動について。

 (2) 青少年のレクリェーション組織(青年団・若者組など)。

 (3) 文学・美術などの文化的クラブ。

 (4) つり・狩猟などのクラブ。

(二一) 自分の地方で,慰安と娯楽のために役だっているいろいろな機会や年中行事を表にして,話し合うこと。例えば,

 (1) お正月。

 (2) 節 分。

 (3) ひな祭。

 (4) 端午の節句。

 (5) たなばた。

 (6) お盆と盆踊り。

 (7) お月見。

 (8) クリスマス。

(二二) 書物を読んで,日本の各地における珍らしい遊び,レクリェーションの形を調べて,表にすること。

(二三) 自分の地方で,レクリェーションのために便宜を与えでくれるいろいろな施設や場所を挙げて,表にすること。また略図をかいて,その位置を示すこと。そこをたずねた結果を,口頭や文書で,学級に報告すること。次のような種類に分けて,施設の一覧表を作ってみること。

 (1) 公共の施設

  (イ) 運動施設(スタジアム・水泳プール・体育館・スキーゲレンデ・海水浴場・ゴルフリンクス・スケートリンク・ハイキングコースなど)。

  (ロ) 教養施設(図書館・博物館・美術館・公会堂・温室など)。

  (ハ) 遊楽施設(遊戯場・動物園・植物園・水族館など)。

  (ニ) 公園(都市の公園・国立公園・緑地地帯など)。

  (ホ) 休養施設(温泉・保養地など)。
 
 (2) 私設の設備(商業的なレクリェーションの施設)。

  (イ) 運動施設(室内スケート場・すもう場・けん闘場・競馬場・つりぼりなど)。

  (ロ) 遊楽施設(映画館・劇場・寄席・ダンスホールなど)。

(二四) 委員を幾組か・作り,分担して,自分の町のレクリェーションの施設をたずねて,その責任者と会見すること。その種類,規模,ある場所(その位置の適否)利用の程度,使用や管理の規則,経費などについて,調べた結果を,学級に報告すること。そして,改善案を考え,利用をいっそう能率的にする方法について討議すること。

(二五) 公共のレクリェーションのための施設を,いっそう楽しく利用できるようにするために,利用者としての心がけを,いろいろな施設ごとに討議して,実行の計画を立てること。自分の学級のみならず,学校全体の生徒が,この実行運動に参加するように,学校新聞や,ボスターなどを用いて,広告宣伝すること。

(二六) 学級における読書の傾向を向上させるために,良書すいせん会を設けること。定期的に集まって読書会を開き,最近自分の読んだものでよいと思ったものを,発表すること。

(二七) 学級文庫を設ける計画を立てること。読書によって,たゞ暇をつぶすというだけでなく,これを通して,趣味や教養を高めるように工夫すること。上級生や先生を招待して,指導してもらうのもよい。図書係は,交替で行うこと。図書の管理,貸し出しの手続きなどを,正しく能率的に行う目的で,町の図書館員と会見し,その方法を学んで学級に報告し・学級文庫の規則を作ること。また文庫の本の数をふやす実際的な計画を立てること。

(二八) 定期的に学級の読書傾向を調査して,学校に報告すること。

(二九) 自分の学級や学校の生徒の間で,人気のあるレクリェーションをきめるために,投票を行うこと。また,人気の悪い遊びをきめるために,おたがいにやめたほうがよいと思う遊びを調べて,報告すること。

(三○) 全学期を通じて,学校における招待会(父兄招待会,敬老会,戦災者・引揚者慰安会,バザー,音楽会など)を計画すること。その責任はまわり持ちにして,各自が,少なくとも,年に一回以上主人役となる機会があるようにすること。

(三一) 自分の地方に在住する芸術家・小説家・音楽家・劇作家などを,学校に招待して,父兄や他の学校に見せるプログラムを作る援助をしてもらい,また実際の指導を受けること。

(三二) 学級内に,同じ種類の活動に興味を特つ友人のグループで,同好会(クラブ)を組織すること。その実際の活動のスケジュールを立て,他の学級にも呼びかけること。

(三三) この学年の終りまでに,自分が入って活動すべきクラブを選ぶ目的で,いろいろなクラブの活動に,つとめて参加してみること。自分の個性にかなう趣味を一つ持つことは,最も必要なことであり,その趣味を通して,学校生活を充実させ,またそれを通して,対外的に活動することは,名誉あることである。

(三四) 身体の許すかぎり,戸外スポーツのクラブに参加すること。そこで,チームワークとはどんなことか,スポーツマシシップとはどんなことか,実際のスポーツを通して体験すること。また,この問題について,討議すること。

(三五) 応援団に参加して対校試合の応援に行くこと。愛校心とはなんであるかを,知ることにつとめること。また,観客としての正しい態度について,各自表を作り,それによって,模範的な応援を行うこと。対校試合の価値を論じ合うこと,また,選手制度と選手の心構えについて,討議すること。試合を通して,他校の生徒との交歓をはかること。

(三六) 自分たちで,演劇クラブを作り,脚本を書き上演すること。

(三七) 近くの国立公園に旅行する計画を立てること。次のような委員によって,こまかく案を立てること。

 (1) 日程係(旅行日程・コースの選定など)。

 (2) 会計係(旅費・宿泊費・携行品・食料品などの計画)。

 (3) 記録係(旅行中の記録をとる,旅行記の整理,プリントなど)。

 (4) 研究係(旅行を科学的なものにするためのいっさいの準備)。案ができれば,打ち合わせ会を開き,各委員から,計画を発表し,効果のあがる旅行をすること。特に,研究係は,地理・歴史・社会などに関係するいろいろな方面からする研究プランを立てること。

(三八) 自分が,将来たずねてみたいと思う名所旧跡や,海岸・山岳・高原・湖・温泉・国立公園などを,日本地図を書いて記入してみること。旅行の際に,地形や物産や人情風俗を,観察する準備を整えること。

(三九) 夏休みに日本アルプスに登るつもりで,登山計画を立ててみること。地図を用いてコースを定め,日程を立て,経費を計算してみること。また,登山のために,必要な用具なども準備する計画を立てること。

(四○) 冬休みにスキーに行く計画を立てること。特に,雪の質に応ずる用具や,スキーの予備知識を学ぶこと。

(四一) レクリェーションと社会的な厚生とは,どのような関係があるか,読書や専門家の話によって理解したところを,学級に報告して,討議すること。

(四二) 「健全なる精神は,健全なる身体に宿る」という言葉について,レクリェーションの立場から,作文を書いてみること。

(四三) 外国,特に,合衆国・イギリス・ソ連などにおけるレクリェーションの実情について,書物その他から知識を得て,日本のそれと比ベてみること。


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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その9 PROMOTE~

 学校現場というのは,とかく目先の問題への対応に追われ,長期的な視点が持ちにくいところですが,どんなに忙しい毎日を送りながらも,

 1日1日をよりよく過ごす方法を考えながら,前向きに仕事をしたいものです。

 現在の学年の子どもたちに対して精一杯向き合う一方で,

 次の(担当する)子どもたちに対してどんな教育を行うべきかを考える。

 日々の努力が,たとえその1年で実を結ばなくても,

 次の3年間では必ず達成させる,というような意欲は失いたくありません。

 英語には,

 promote という言葉がありますが,これは,前向きな推進力を表現する際に使われる表現だそうです。

 このような言葉は,私たち教師にとってもそうですが,

 限られた日数しかない子どもたちに使ってもらえる教育をしたいですね。

 教師にとっては,

 promote understanding  を日々実践していくべきですし,

 何よりも子どもたちの成長を

 promote している,という自覚をもちたいものです。

 To promote something is to help something to happen or develop.

 こういうニュアンスを知ることで,

 Promoter と呼ばれる存在であることを目指したいものです。

 もちろん,ヘンな運動の「扇動者」では困ります。

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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小6・社会科の学習活動例

 さて,いよいよ小学校6年生の学習活動例になります。

 総合的な学習の時間は,こういう活動を模範?として実施すればよかったのかもしれませんね。

*********************

問題一 仕事を通じて人々はどんなふうに協力するか。

~学習活動の例~

(一) 分業の方法といろいろな職業を知ること。

 1.家庭での手伝いの表を作る。

 2.家の人たちの仕事の表を作り,その分担,時間,方法について改良案を作る。

 3.学校その他の掃除を最も効果的に行う分業的方法を実行する。

 4.一週間のうちでいろいろな職業の人から受けた世話について表を作る。

 5.自分の一族や祖先や知人の職業を調べる。

 6.土地の人々の職業調査を行い,分類して統計を作る。

 7.自分たちの日々の生活に必要な職業を調べる。

 8.土地の人々の職業を土地の特産品と対照検討する。

 9.老人に聞いたり,本を読んだりして,昔と今の職業の変化を知る。

 10.食料品,日用品の幾つかについてその生産から入手までの過程及びそれにだすさわる人々を表にし,実際に調べた結果を作文に書く。

 11.新聞社や印刷所に行き,そこに働いている人たちの仕事を観察する。

 12.学級で新聞を作るためいろいろな業務を分担しあう。

 13.特に交通上の利便を与えられる職業を表にする。(たとえば医者,産婆,警察官)

 14.自分の家の家業はどんな人たちのおかげを受け,またどんな人たちに利益を与えているか報告する。

 15.家業の手伝いをする。


(二) あらゆる仕事の価値を理解する。

 1.人間は,一人では生きていられないということを示した物語を読んだり,映画を見たりする。
 
 2.なぜ労働と労働する人とを尊敬しなければならないか話しあう。

 3.仕事によって貴せんの差別をしていた昔のことを話しあう。

 4.なるべくありふれた職業をとりあげ,それがなかった場合生ずる不便さを表に作る。

 5.学級の行事その他の活動で,自分の分担した仕事を遂行した体験を作文にし,それをもとにして共同の方法や仕事の価値について話しあう。

 6.母の一日の仕事を全部書きあげてみる。

 7.子供たちが相談して,母の代りに一日の仕事を全部してみる。 


問題二 社会を発展させるものは何か。

~学習活動の例~

(一) 家庭及び学級の変化を発見する。

 1.各自の家における最近の変化について話しあう。(たとえば職業,成員,楽しみの変化と,その理由など。)

 2.自分の学級のよくなって来た点とその理由とについて話しあう。

 3.学級自治会の記録を調べ,今後の計画を立てる。(六年の学級として,また卒業後の連絡等のために。)

 4.各自の家の記録(今までの歴史と今後の出来事が記入できるもの)を作る。

 5.友だち,家,学校,町(村)をよくするために努力した自分の記録を作る。


(二) 郷土(児童の住んでいる土地)の社会の変化を知る。

 1.郷土の人口の変動を示すグラフを作り,その理由(たとえば新しくその土地に移って来た人たちの数や職業などと関連した)を話しあう。

 2.郷土の生産物を示す標本を集め,その産額の変動を示すグラフを作る。

 3.郷土の基本財産の増減とその使途について役場の人から話を聞く。

 4.郷土の社会にどんな楽しみがあるか調べる。

 5.郷土の音楽・美術・文学について話しあう。

 6.榔土の生活を向上させるために作られた諸団体の幹部を招き,その事業について聞く。

 7.郷土の発展に尽くした先覚者や指導者の業績について話を聞く。

 8.郷土の振興方策を示す図表を作る。

 9.榔土の振興した姿を絵に書いて示す。

 10.学級の友だちが生活したことのあるよその社会の状況を思い出して文に書いてもらい,なぜそこで生活したか,その生活は気に入ったかどうかについて聞き,話しあう。

 11.新しく土地に来た人を招いて,他の土地でのおもしろい経験について話してもらう。

 12.最近急速に発達した付近の町や市を地図で調べ,その理由を話しあう。

 13.土地の振興に役立つ事業を選んで,自分の得た金を寄付し,その効果について聞く。


(三) わが国の将来の発展を考え,それに対する適応を工夫する。

 1.敗戦後の国民生活のいろいろな負担とその理由とを話しあい,その解決策について調べる。

 2.戦災者,引揚者,失業者の数を調べ,その人々の生活建設への努力と社会の人々の援護の仕方について話しあう。

 3.わが国の再建計画と国土計画について読み,それを表にする。

 4.いろいろな社会事業団体や組合などの仕事を調べる。

 5.わが国の見返り物資の展覧会を計画する。

 6.わが国の観光施設を示す地図を作り,写真や絵を集める。

 7.わが国の音楽,美術,工芸,文学について調べる。


問題三 どうすれば私たちは安全な生活ができるか。

~学習活動の例~

(一) 事故や病気を来たす原因を知る。

 1.各種の工場を見学して,採光,換気,清潔,騒音等の状況を知り,それと健康との関係を話しあう。

 2.都会と郊外,山野,海辺の相異を見つける。

 3.各種の工場の工員や職人を呼んで,それぞれの健康保持法の話を聞く。

 4.できるだけたびたび郊外,山野,海辺に出かける。

 5.各種の工場を見学し,事故が起るおそれのある機械に注意し,事故を防ぐ工夫を話しあう。

 6.工場特有の病気について話を聞き,それを防ぐ方法を話しあう。

 7.家,学校,地域の社会について,火の危険,不適当にはられている針金その他の危険物,危険な化学薬品,あぶない曲がり角や交さ点などの所在に注意する。

 8.家や学校の毒薬物に張り紙をする。

 9.水泳場として安全な場所の境界を示す標識を設備する。

 10.近眼の大人を招いて,なぜ近眼になったか,どんなに不自由かを聞く。

 11.交通事故や機械事故の統計をとる。


(二) 事故を防ぐ方法を発見する。

 1.郷土を安全にする計画を立て,みんなで実行する。

 2.高架線,地下道,ガード,道路標識などのように,事故防止のための,進歩した方法を見,報告をする。

 3.航路標識,救命具,うき,救命艇,ブレーキ,ヘッドライトなど旅行を安全にする設備を読んだり,報告をする。  

 4.燈台と燈台守の話を聞いたり,読んだりする。

 5.踏切番を招いて話を聞く。

 6.電気会社の人を招いて,家で電機器具を使う際の注意を聞く。

 7.禁煙の場所についてその理由を話しあう。

 8.色盲の人の従事できない仕事を発見し,その理由を話しあう。

 9.望楼勤務の消防署員や夜警の人などを招いて,その人たちの仕事について聞く。

 10.映画館,劇場,百貨店,公会堂その他について非常口,防火用具,火災報知機等を見て,火事の際の行動について話しあう。

 11.防火訓練をする。

 12.鉱山その他でなされている危険予防の施設を絵図に作る。

 13.交通訓練のポスターを書く。

 14.半鐘,サイレン,ベル,信号等の意味を話しあい,それに対してどうするかという自分たちのきまりを作る。

 15.毒きのこを見分ける。

 16.いろいろな応急手当の実習をする。

 17.登校下校にあたって下級生の指導をする。

 18.働きに出ている家族の人たちの健康状態についてたずねる。


問題四 私たちと私たちの子孫のために,天然資源を保存するには,私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 天然資源の種類に関する知識を集める。

 1.郷土のいろいろな土壌を集め陳列する。

 2.土地によって土壌のちがうことを観察させる。

 3.郷土の森林地帯の今昔を比較する地図を作る。

 4.原始林を見るため,遠足したり旅行したりする。

 5.はげ山を見,はげ山になったわけ及びそれによって人々の生活上困ることについて話しあう。

 6.水力の重要な源となるもの(湖,川,沼)を示す絵図を作る。

 7.わが国の河川の分布図を書き,それに水力発電所を記入する。

 8.わが国の鉱山及び油田の所在地を示す地図を作る。

 9.わが国の必要とする外国の自然資源を知るため読書する。

 10.わが国のおもな漁場を示す地図を見て,魚類の分布状態を判断する。

 11.かつお漁場が季節によって移動する状況を地図で見る。

 12.わが国における植物の北限または南限を示す地図を作る。

 13.わが国の動物の分布を示す地図を作る。

 14.毛皮獣の種類とその住んでいる地方に関して読む。

 15.郷土における天然資源の展覧会を計画し,その材料を集める。

 16.天気図を書いたり読んだりする。

 17.その土地の雨量,気温,風向き等の月別グラフを作る。

 18.日本及び世界各地の気候図を読む。


(二) 天然資源の保護の重要さとその方法に関する知識を得る。

 1.わが国の森林管理にあたっている人々の話を読む。(営林署の人々など)

 2.山火事の原因と被害及びその防止法について話しあう。

 3.山火事によって消失した地域を地図に示す。

 4.森林の濫伐と土地の侵蝕との関係について読み且つ話しあう。

 5.土地の崩壊(がけ崩れ,山崩れ)の防止について話しあう。

 6.校庭の侵蝕された土地,崩れた土地に,草木を植えたり,コンクリートや石のかきを築いたりする。

 7.その地方における治水及び防火の事業とその効果について読んだり話しあったりする。

 8.苗木を作っているところを見学し,植林の種類やその栽培法,接ぎ木の仕方などを見る。

 9.植木屋に行って盆栽の作り方,世話の仕方などを見る。

 10.その土地の木の葉を使い,模様を作る。

 11.乾燥した土地に木を生えさせるためのかんがいの方法を調べる。

 12.植林(造林)計画に関する新聞,雑誌の記事を集める。

 13.野外遠足をして樹木を調べる。

 14.森林保護の映画を見る。

 15.天然資源の代用品の使用の増加したことについて,読んだり話しあったりする。(例えば,木材や鉄の代りに,セメントや陶器などを使う。)

 16.工業試験場や農事試験場に行って,資源の保存と利用に関する研究を見たり,話を聞いたりする。

 17.その地方における各種の土地の使用種別を示すグラフを作る。

 18.川や湖水などが発電に使用されている状況を調べる。

 19.電気の起源とその利用について,読んだり,報告したり,話しあったりする。

 20.電気の安全な使用及びその価値の理解のため,磁右,静電気,電流の実験をする。

 21.電気器具や電気装置の修理の仕方を調べる。

 22.電気のショートを防ぐために,線を絶縁しなければならないことを話しあう。

 23.大きなダムの所在地を地図によって調べ,その社会上,産業上の利便について話しあう。

 24.地方(関東地方,中部地方等)の発電所の所在地と送電路を示す地図を作る。

 25.発電所に行って,発電の状況を見たり,発電力について聞く。

 26.乾電池を調べ,化学薬品が力を起すのに使われることを学ぶ。

 27.電気の安全装置の修理について話しあう。(ヒューズを取りかえる前に,ヒューズの切れた原因を調べる)。

 28.魚類の価値と利用について研究する。

 29.魚のふ育所を見たり,その映画を見たりする。

 30.さけ,ます,たらその他の魚類の一生について学び,その商品としての価値を話しあう。

 31.真珠の養殖の話を聞いたり,絵を見たりして,その産業上の価値を話しあう。

 32.野生の動物,魚,鳥類の保護に関する話を関係者から聞くために,計画したり,これを実行したりする。

 33.毛皮獣の保護の方法について,物語を読んだり,聞いたりする。

 34.鉱山を見学し,濫掘について話を聞く。

 35.わが国の鉄の産額,使用量の変化を示す図表を作る。

 36.貧鉱処理についての物語を読む。

 37.能率の高い石油採取法を示す絵図を作る。

 38.石油のむだのない使用方法を発見する。

 39.石油や天然ガス採取に関する映画を見る。

 40.石油の精製法及び副産物について読む。


問題五 上手な物の買い方には私たちはどんな知識を必要とするか。

~学習活動の例~

(一) 商業について調べる。

 1.今の日本では,なぜ統制経済(配給制)が必要か話しあう。

 2.商品の値段にはどんな要素が含まれているかを発見する(原料費,製作費,労賃,運搬費,広告費,利益等)。

 3.なぜ今日の人々は自給自足をしないで,交易による生活をしているかを発見して話しあう。

 4.商業の発達についての話を聞く。

 5.手製のものよりも,機械で大量に生産されるものの方が安いわけをしらべ報告する。

 6.雑誌,新聞,ポスターその他から広告を集めてどれがより宣伝的かを話しあう。

 7.学芸会その他の催し物及び家の家業のため広告ポスターを書く。

 8.店の主人や支配人をよんで広告の効果を聞く。


(二) 衣服や食品について調べる。

 1.かん詰・箱入りの食料品・薬の外装・張り紙を調べて,その内容物と量とを知り,内容が正確かどうかを調べる。
 
 2.土地の産物と遠方の土地の産物との値段を比べて話しあう。

 3.季節による果物,野菜,魚の値段を調べて話しあう。

 4.高価で入手しにくい食料品の代用品を見つけて話しあう。

 5.家で作った野菜の費用と売っているものとの値段を比べる。

 6.料理を家で作る費用と,できたのを買うのとその値段を比べる。

 7.少しずつ買うのと,一度にたくさん買うのと,どっちが経済的かを話しあう。

 8.毛織物・綿製品・くつ・くつした等を買う時に注意すべきことをお母さんから聞いて話しあう。

 9.正しい洗たく法,乾燥法,アイロンかけを実行する。

 10.のりをつける効用を話しあい,のりの種類を挙げる。

 11.着物類を長持ちさせるための日々の注意について話しあう。


(三) 経済的に家のかざりつけをする。

 1.家や学校の室のかざりつけを計画する。

 2.百貨店,家具部,家具商に行って,いろいろな家具とその値段を調べ,便利で安いものを発見する。

 3.障子やふすまのこわれた箇所を美術的につくろう。

 4.べニヤ板と普通の木の家具とを区別して,おのおのの効用を話しあう。

 5.家具製作工場を見学する。

 6.椅子のこわれたクッションを直す。

 7.簡単なテーブルかけや花びん敷きを作る。

 8.カーテンを作って模様を工夫する。

 9.額ぶち,ブックエンド,紙くずかご,たな,本箱等を作って,家や学校に備えつける。

 10.かざりつけ用の彩色画をかく。

 11.昔の絵と今の絵(その写真)を並べて鑑賞する。

 12.複製の絵画を選んで飾りつける。

 13.絵をどんな所にどんなふうにかけたらよいかを話しあい,実施する。

 14.畳の歴史を聞き,その手入れ法を話しあう。

 15.床の間など木造の所をふいたり,つやを出したりする。

 16.本を読む時,遊ぶ時,ねる時の適当な場所と照明とを話しあう。

 17.ラムプシェードを作る。

 18.いろいろな品物について方々を歩いて,どこが安くてよいか調べる。

 19.家の人たちが,ほめている店について,しらべて報告する。


(四) 小遣い銭の使い方を発見する。

 1.小遺い銭の出納簿を作って記入を続ける。
 
 2.お正月,お祭,遠足等の時の小遣い銭の使い方について話しあう。

 3.学年や学期のはじめに入用な金額を調べて予算表を作る。

 4.学級の催し物に必要な品物を調べ,それを買う金の出し方,その使い方を話しあったり,実施したりする。


問題六 工場生産は,どこにどのように,発達するか。

~学習活動の例~

(一) 工業製品の種類を発見する。

 1.われわれの身のまわりにある工業製品を挙げて表を作る。

   ○学習に使われているもの(書籍,ノート,紙,鉛筆,万年筆など)

  ○衣服類として使われているもの(綿織物,毛織物,絹織物,手ぬぐい,ハンケチ,洋服,帽子など)

  ○住居に使われているもの(木材,家具,ト夕ン,かわら,電気器具,時計,ラジオ,ミシン,食卓,机など)

  ○食事関係に使われているもの(陶磁器,漆器,ガラス,製粉機,電気コンロ,七輪,なべ,かまなど)

  ○交通に使われているもの(船舶,荷車,汽車,電車,自転車,自動車など)

 2.生活上必要な繊維製品にはどんなものがあるかを調べて表を作る。(生糸,絹織物,綿糸,綿織物,毛糸,毛織物,麻糸,麻織物,人絹織物,スフ,各種交ぜ織物,メリヤスなど)

 3.生活上必要な金属製品を挙げて表を作る。(鉄,鋼製品,アルミニューム,アルマイト製品,銅製品,鋳物、くぎ類,ブリキ,しんちゅう等)

 4.日常生活に必要な機械,器具を挙げて表を作る。(電球,ラジオ,時計,ポンプ,汽車,電車,自転車,自動車など)

 5.日常生活に必要な化学製品を挙げて表を作る。(医薬,石けん,紙類,セルロイド,人絹,ゴム製品など。)

 6.食料工場で作られている工業製品を挙げて表を作る。(しょう油,みそ,酒,ビール,たばこ,粉類,でん粉,砂糖,かん詰,乳製品,氷,菓子など)

 7.わが国で自給できる工業製品を調べて表を作る。

 8.工業原料のうち,外国から輸入しなければならないものを調べて表を作る。

 9.わが国の工業製品のうち輸出品として重要なもの二三を挙げて,これまでの累年輸出量をグラフに示す。(生糸,絹織物,綿糸,綿織物,鉄製品など)

 10.工場を見学して,その工場に使われている工業資材や機械類について,説明を聞き,表を作る。

 11.工業製品の展覧会を開く。


(二) 工場の立地条件を発見する。

 1.郷土の工場を見学し,そこに工場のできたわけについて話を聞く。

 2.港からはなれた土地にある製粉工場の位置が原料を集めるのに便利なのかどうかを検計する。

 3.海港にできている製粉工場は,原料や製品の輸送上便利なことを発見する。

 4.でん粉工場やアルコール工場と原料との関係をしらべる。

 5.陶磁器生産地を調べ,原料や燃料の関係を考察する。

 6.人絹工場の建てられている場所を地図に書き入れ,特に水との関係について話しあう。

 7.和紙,洋紙,パルプの工場が原料や水との関係の深いことを発見する。

 8.漆器生産地を地図に書き入れ,塗料,材料,工員,気候との関係などについて調べる。

 9.富山地方の製薬業の発達について話を聞き,売りさばきの方法についても話しあう。

 10.造船所を見学し,木造船と鉄船との場合で立地条件のちがうことを発見する。

 11.北陸地方の絹織物工業地と気候・労力などとの関係について読んだり,聞いたりする。

 12.製糸業地を地図に書き入れ,原料の産地や交通との関係を考察する。

 13.機械工業の発達しているところを調べ,立地条件を読み且つ研究する。

 14.製鉄所の所在地を地図に書き入れ,原料,燃料,交通関係を検討する。

 15.肥料工業の所在地を調べ,原料,動力,交通などとの関係を発見する。

 16.紡績業地について,わが国及び外国の場合を比較する。

 17.わが国の四大工業地帯について読み,発達の原因について共通点や相異点を表にする。


(三) わが国の工業の将来について考察する。

 1.わが国の食糧自給がどの程度可能であるかを,読んだり,聞いたり,話しあったりする。

 2.食糧の不足分を海外から仰ぐことについて,資料を集めて話しあう。(理由,食糧の生産地,見返り物資等)

 3.わが国へ食量を運ぶことのできる諸外国について調べ,地図に示す。

 4.見返り物資となることのできる工業製品の表を作る。

 5.賠償から残される工業の種類や工場を地図や図表に示す。

 6.今後発電力をどのくらい増すことができるかについて,話を聞いたり,読んだりする。

 7.石炭の産額増減を表にあらわす。

 8.工業の動力として使われているもの及び将来のわが国の工業上最も必要な動力について話しあう。

 9.わが国の工業の将来について,新聞記事や雑誌の記事を読みこれを切抜帳にはる。

 10.男子の多く働く工業と女子の多く働く工業とを比較し話しあう。

 11.わが国の人口問題について資料を集め,図表に示して話しあう。

 12.手先の器用なわが国の人たちに適する工業製品を表にあらわす。

 13.スイスその他外国の工業発達の状況を読み,あるいは話を聞き,わが国の参考となる事がらについて話しあう。

 14.農村の工業化について読み且つ話を聞いて研究する。

 15.専門家を招いて,わが国の工業の将来についての話を聞き記録する。

 16.工場を中心として発達した大都市を見学し,その都市の特徴や問題について話を聞く。

 17.その地方の適当な工場へ行って,話を聞いたり,手伝ったりする。 


問題七 時間の余裕を作るにはどのように文明の施設を使えばよいか,またその時間を有効に使うには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 時間と労力を節約する機械や設備を発見する。

 1.世の中のいろいろな機械を見たり,話を読んだり,絵を集めたりして,どれほど労力を省いているか見つける。
 
 2.近代的な農耕法,農産物の生産方法を見て,いかに労力と時間が節約されているかを知る。

 3.ガスエンヂンと蒸気機関とをしらべて,その活動や機能を見つける。

 4.てこの実験をし,てこの原理を利用している機械用具を見つける。(くぎぬき,はさみ,かなてこ,シーソー)

 5.傾斜面の利用が,いかに労力を省くかを観察し,これを利用した設備を見つける。

 6.くさびの原理を知る実験をし,くさびがどんな場合に使われているかを話しあう。

 7.簡単なスクリューを作って見る。

 8.ドアのとって,かぎ,車りょう等について車や軸がどんなに役立っているかを見つける。

 9.滑車を使った道具を見,小滑車を作って実験してみる。

 10.電気器具の手入れについて話しあう。

 11.やぶれたコードをつくろう。

 12.ミシンを使って簡単なものを作る。

 13.いろいろな通信連絡の方法を調べてどれが最も確実か,どれが最も早いか見出だす。

 14.電信電話,ラジオの発明を中心にその前後の通信連絡の方法を比べる。

 15.世の中で使われている音や光の用途について読んだり,実験してみる。

 16.海底電線の話を読む。

 17.電送写真の話を聞き,これと普通の写真とを比べる。

 18.自転車について,なぜ早く走れるかを見つける。


(二) 時間を上手に使う方法を知る。

 1.毎日どんなふうに時間を使っているかを示す図表を作る。
 
 2.自分で自由に使える時間が毎日どのくらいあるかを調べ,どんなふうにそれを使っているかを記録する。

 3.ひまな時をみんなといっしよにどんなことに使っているかを示す絵や図を書き,よりよい利用法がないか話しあう。

 4.生活の時間割を作って実行し,これをみんなに見せて,もっとよい時間割にするよう相談する。

 5.ある仕事を仕上げるについて,その進行計画をたてて実施する。

 6.時間と労力とを少なくするお使いの計画をたてる。

 7.着物を着たり,身なりをとゝのえたりするのに,手早くりっぱにする方法を考えて実行する。

 8.言いつけをすぐ実行する。

 9.仕事の前に道具をすっかり用意をし,仕事の後では,道具の後始末をきちんとして,次の仕事にすぐかゝれるようにしておく。

 10.家から学校まで何分かゝるか調べて,起床や朝の手伝い,勉強などの時間の計画をたてる。

 11.いろいろな厚生慰安の活動を挙げ,それぞれに参加する人員を示す絵図を作る。

 12.工場の厚生慰安の施設を読み,それについて話しあう。

 13.学校が土地の厚生慰安の中心として使われるわけを話しあう。

 14.ラジオ出演を計画し実行する。

 15.趣味をよりよいものにする工夫について話しあう。

 16.自分の趣味についてどこがよいかを話しあう。

 17.演芸会芸能会を開く。

 18.自然の中にある厚生慰安の要素について話しあう。

 19.和歌や俳句や詩や物語の抜すいや作品を集めて本を作る。

 20.劇に使う衣しょうやかつらを工夫して作る。

 21.両親が,毎日どんな仕事をして一日を過ごすか調べて報告をする。

 22.家中そろって楽しい時間を過ごす計画をたてる。

 23.会合の際時間不励行のために生じたいろいろなことの経験を話しあう。

 24.友だちや下級生を誘って通学する時むだな時間のないように工夫し実行する。


(三) 時刻を知る方法の発達を学ぶ。

 1.古代人の太陽,月,星に対するいろいろな信仰について話しあう。
 
 2.地球,太陽,月その他の惑星について読み且つ話しあう。

 3.大きな板の上に天体の模型を作る。

 4.明るくなる時間,暗くなる時間を記録する。

 5.陽光がどんなに仕事の役に立っているかを話しあう。

 6.くもりガラスやビン穴めがねを作って太陽を観察する。

 7.日時計その他の原始的な時計を作る。

 8.日本で使われて来たいろいろな暦を調べたり話しあったりする(太陰暦太陽暦その他及びうるう年)

 9.各種の紀年法や月や日の呼び方について読んだり,聞いたり,報告したりする(世紀,時代,回教紀元,キリスト紀元)

 10.年表用紙を作って,習ったこと調べたことを書き入れる。

 11.カレンダーを作って教室や家にかざりつける。

 12.世界各地の時間を示す地図を作る。


問題八 世界中の人々が仲よくするには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 友だちとの交際の仕方を知る。

 1.一週間の間の快かったこと不快だったことの表を作り,その理由を書く。
 
 2.人に不快を与えない方法や態度について話しあう。

 3.最近身ぢかで起った争いごとについてこれを説明する作文を書く。

 4.病気の友だちの所へ見舞に行く。

 5.誕生会を計画し実施する。

 6.新入の友だち(引揚者,戦災者等)を学校や図書館に案内する。

 7.年賀状を交換する。

 8.学友やなかまで共有物を作り,その使用法を話しあう(運動具,学用品等)


(二) 家,学級,学校間の交際の仕方を知る。

 1.部落同志,学級同志,学校同志の親善の方法を工夫し実行する。

 2.他校と合同の討論会を開く。

 3.対抗競技会を催すこと。

 4.競技の応援者や観客として守るべき事項を話しあう。

 5.スポーツマンシップや競技における正々堂々たる態度について報告する。

 6.自分の家と親しい家の名を挙げ,どうして仲よくなったかを話しあう。

 7.仲のよい学級や学校を挙げて,どうして仲よくなったか話しあう。


(三) 国と国との交際の仕方を知る。

 1.わが国と交際のあった国々及びその国とどんな交際をしたかを示す物語を読み,年代表を作ってその事がらを記入する。

 2.わが国と交際のあった国々との交通を示す地図を作り,交通に用いられた乗り物の絵を記入する。

 3.発明発見が文化の交流を促進している状況について話を読む。

 4.ラジオや新聞・雑誌等の分配される広さを調べる。

 5.国際的平和事業についてのパンフレットを集める。

 6.水難救済会の仕事について読んだり聞いたりする。

 7.外国人あるいは外国へ行ったことのある人を招き,その国々の優れた所や興味のあることについて,またその国の人々の日本人観について聞く。

 8.各国の国旗とその国の大きな行事や記念日を示す図表を作る。

 9.世界一周の物語を読んだり,それに関する劇を作ったりする。

 10.世界のおもな宗教を挙げ,信教の自由について説明してもらう。

 11.世界の人々が協力した事業や研究の物語を読むこと。

 12.国際競技(オリンピック大会・デヴィスカップ戦等)の話を聞いたり読んだりする。

 13.ノーベル賞の話を読む。

 14.世界文化に寄与した日本人の物語を読む。

 15.外国で勉強して名を成した人の話を読む(たとえば野口英世・空海等)。

 16.日本に名を知られた有名な外国人の表を作る。

 17.日本に来朝した有名な外国人の話を聞く(たとえば,グラント将軍・アインシュタイン博士・小泉八雲等)

 18.外客招致に用いるポスターや小冊子や写真を交通公社からもらって来る。

 19.観光客招致のポスターを作る。

 20.世界の観光国の話を読む。

 21.世界地図におもな都市や航路・航空路を記入する。


(四) 戦争の原因とその災害について知る。

 1.なぜ戦争が生まれるか,どうしたらなくせるか話しあう。
 
 2.国際連盟と国際連合について読んだり聞いたりする。

 3.第一次世界大戦の話を読んだり聞いたりする。

 4.第二次世界大戦の話を聞く。

 5.第二次世界大戦の災害をわが国及び他の国々について調べる。 


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だれも反対しない10年経験者研修の廃止

 免許更新講習とのバッティングがあって不満が大きかった10年経験者研修が廃止になるようである。

 こういう改革への「スピード感」によって,現場からの「好感」を得ることをねらっているのではないかと思われる。

 悉皆研修が廃止になって,反対する教員は一人もいないだろう。

 「やらなくてすむ研修」が増えて,みんなが喜んでいるというのが現状ではないか。

 ただ,こういうのは,廃止する前に,一度きちんとその効果の検証をしてほしい。

 ちなみに,免許更新講習と,10年経験者研修というのは,ねらいや内容がかなり異なっている。

 「代わりがあるからやめる」という筋合いのものではない。
 
 役所というのは,

 役所の言いなりになる人間だけを集めて提言をさせ,

 それに従って方針を決めました,なんていう無責任なことをやり続ける場所である。

 今回は,「教員免許更新制度の改善に係る検討会議」に責任を負わせているようである。

 ・・・が,全く筋が違うのは,教育行政の素人でもわかることだろう。

 私も二重の意味での「当事者」であったからあまり詳しいことが書かないでおくが,

 これで「最後のチャンス」を逃してしまう教員が増え続けることになる。

 「最後のチャンス」を逃せば,あとは・・・・。

 どちらかと言えば,廃止にすべきなのは免許更新講習の方である。

 大学が実施してしまっているところでは,「品質管理」が全くできていない。

 ちなみにおまけを言えば,

 「教職実践演習」の「品質管理」もお粗末なものである。

 私の学校にやってきた学生は,その「意味」「目的」を知らなかった。

 教育力のない大学に,こんな単位をとらせる仕組みがあること自体が,

 教育現場の人材不足に拍車をかけていく。

 教員免許をもっていない大学の教員たちに,まず教員免許に似たような資格を持たせるための試験をすべきである・・・・ただ,それを作る人間が大学の教員しかいないから,結果は目に見えているのだが・・・。


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教員による選挙妨害

 妨害されたのは,

 国政選挙や地方選挙のことではない。

 生徒会役員選挙のことである。

 多くの中学校において,

 「生徒会」という組織は,みせかけの「自治」=「自治ごっこ」をさせられる場にすぎない。

 担当の教員の言いなりになり,学校の思うように動かされていく。

 教員専制が学校という場である。

 そんな学校の中での「生徒会」が,「民主主義の国のものか!」と非難されることもあろうが,

 たいていは,「大人の都合」「しょせんは子ども会」として見過ごされるものである。

 報道されていたのは,

 「~に投票されると都合が悪い」ことを直接的に告げていた教員たちの「不始末」である。

 こういうのを「化けの皮がはがれた」という。
 
 自治活動の本旨に背くことを,教員がしてしまう。

 同じようなことが,他の学校で起こる可能性はゼロか?

 問題が起こった学校は,特別なところなのか?

 私は,わずかな期待を抱いている。

 そこまでして当選させなかった背景に,

 「自治が実現する可能性があった」かもしれないからである。

 政治や自治について語る際に,いつでも思い出す「座右の書」がある。

 中江兆民の『三酔人経綸問答』である。

 最後の場面で登場人物の「南海先生」が語る言葉の重みを,生徒会役員選挙に立候補する中学生にはぜひ感じてもらいたい。

 
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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小5・社会科の学習活動例

問題一 私たちはどのように勉強すればよいか。

~学習活動の例~

(一) 科学的実証的に知識を獲得する方法を発見する。

 1.毎日どんなものを何時間勉強するかを示す表を作る。

 2.能率をあげる勉強の方法や時刻について読んだり話しあったりする。

 3.勉強する時の姿勢について,話しあい,最善の方法を実施する,(すわる場合,腰掛ける場合,書く場合,読む場合,話を聞く場合など)

 4.ラジオをかけながら勉強する際,能率があがらないことについて話しあう。

 5.勉強するにはどんな場所がよいか,おたがいの意見をまとめる。

 6.どんな疑問でも,すぐ書きつけることのできる小さなノートを作る。そこに書きつけた疑問は整理して,必ずその解決が書き入れられるようにする。

 7.いろいろな事がらについてのよい参考書の表を作って本のあり場所を示す。

 8.図書館の利用の仕方を研究する。

 9.学級文庫の規定を話しあい,決定する。

 10.学芸会における研究発表を計画し,実行する。

 11.共同学習を実施し,その成果を報告する。

 12.学者や先生からその勉強法を聞く。

 13.学級の人たちの学習態度を観察し,自分のと比較してみる。

 14.おたがいのノートを見て参考にしあう。

 15.しんぼう強く努力して問題を解決した経験や解決のよろこびについて話す。

 16.各人の毎週の学習予定表を作製し,その実行について記入する。

 17.まちがいをくり返さないためにカードを作ったり,帳面に記入したりして工夫する。

 18.グループを作って本を読み,報告しあう。

 19.読書ノートを作る。

 20.同じ本を読んだもの同志が集まって,その本について話しあう。

 21.学級文庫の予算や自分の小づかいで,本を購入する計画を立てる。

 22.読書の際に眼を保護するための注意を表にする。

 23.本をたいせつに読むための注意を表にする。

 24.本や文章の大要について報告を作る。

 25.学級文庫の図書の索引や目録を作る。

 26.読んで得た知識を実際に試してみる。

 27.学級の児童の読物の種類や量を示す統計を作る。

 28.先生や父兄に良書を選んでもらい,共同で続む。

 29.ラジオや新聞雑誌を勉強に利用する方法について話しあう。


(二) 正しい考え方を養う。

 1.問題を選び,それについてできるだけの資料を集め,それを取捨選択し,整理する。

 2.資料を集めるため,人に会ったり,手紙を書いたりする。

 3.資料の出所を確かにし,すぐわかるように準備をしておく。

 4.選ばれた問題について,いろいろな人の意見を集めてみる。

 5.一人が作った作文をみんなで検討し,どれだけ作者の気持をあらわしているか,また,作者の意見が正しいかどうかを話しあう。

 6.同じ資料をもとにして意見をつくり,ほかの人たちのものと比べる。

 7.真理及び正義を愛するということについて適当な物語を読む。

 8.学者の伝記を読んだり話を聞いたりする。

 9.自然科学の発達の歴史を聞く。

 10.自分の一番興味を持っている学問の歴史について研究し,その進歩を示す年表を作る。

 11.自分の日常生活から迷信と考えられるものを表にしてみる,更にそれらの由来について老人に話してもらう。

 12.迷信が昔の人の生活にいろいろの影響を与えた話を読み,今日排除すべきものと再検討すべきものとに分類する。


問題二 どうすれば,私たちは自分を安全に且つ健康にすることができるか。

~学習活動の例~

(一) 病気の予防法を発見する。

 1.一般的な病気(かぜ,下痢等)をあげ,その原因を調べる。

 2.伝染病予防の接種法,ワクチン法の経験を話しあい,その種類をあげる。

 3.ワクチン法・接種法・消毒法・殺菌法等・病気の抑制や予防の方法の発見についての話を読み,話しあい,報告を書く。

 4.ジェンナー・キューリー・パスツール・ゴーガス・コッホ・野口英世・北里柴三郎等医学的発見に尽くした人々の話を読み,話しあい,感想文を書く。

 5.はい,蚊その他病気を媒介する虫類の話を聞いたり,読んだり,話しあう。

 6.はい,蚊等の繁殖場所とその絶滅法を話しあい,実行する。

 7.はい,蚊等を滅ぼす動物類(くも・とんぼ・つばめなど)について話しあう。

 8.寄生虫による病気の話を聞きその予防法を実施する。

 9.飲料水をたいせつにしなければならない理由を考え,その方法を話しあう。

 10.医学未発達時代の迷信の話を聞く,(病気の原因・療法・死亡率等)

 11.西洋医術伝来の話を聞き,当時の先覚者の話を劇化する。

 12.漢方医術と西洋医術の相異を調べ,話しあう。

 13.大掃除の必要について体験を話しあう。

 14.たんつぼを備えつけなければならないわけを話しあう。

 15.内科・眼科・歯科等の医師を招いて,医学各科の発達と保健上の注意を聞く。

 16.内科・眼科・歯科等の医師を訪ねて,機械設備や,薬品,用具を見せてもらい,昔のものと比べる。

 17.金銭のかゝらぬ病気予防法を話しあい,実行する。

 18.容姿と健康及び清潔との関係を話しあう。

 19.寝具を陽に干すことの効用について話しあい,実行する。

 20.視力を測定する。

 21.視力を守る方法を話しあう。


(二) 事故予防法を発見する。

 1.事故予防のポスターを作る。
 
 2.電車,自動車の運転手を招いて,事故の原因と自分たちに対する希望を聞く。

 3.電気機具使用の際の事故を話しあい,予防法を考え実行する。

 4.水泳をする時の事故予防法を話しあい,実行する。

 5.火を使う際の注意を話しあい,実行する。

 6.防火訓練をする。

 7.うるし・とげ・毒を持つ虫・へび・ガラスかけ・くぎ等事故のもとになる動植物その他のことを話しあう。

 8.7.による事故や陽やけ,切り傷,鼻血,まめ等の応急手当法を学び,実行する。

 9.応急手当法のポスターを作る。

 10.血液型を調べ,記憶しておく。

 11.輸血法について話を聞く。

 12.外科医を訪ね,その機械,機具,薬品を見せてもらい,昔のものと比べる。

 13.義手や義足を見学し,その発達を調べる。


問題三 自分・家・学校・町村・国の財産にはどんなものがあり,どのように保護保全されているか。

~学習活動の例~

(一) 自分・家・学校・町村・国の財産にはどんなものがあるかを発見する。

 1.自分の所持品を調べて表を作る。
 
 2.所持品には,一々自分で名まえをきれいにつける。

 3.わが家の家具の種類をあげ,そのおもなものが,いつごろから備えつけられたかを,父母や祖父母から聞いて記録する。

 4.家で耕作している反別や生産額,管理している山林・原野の面積を記録する。

 5.宅地の利用の状況が季節で違うことを地図にあらわす。

 6.わが家の果樹の種類と本数,また植えられた年代やそのいわれを聞いて記録する。

 7.わが家の美術品や,こっとう品がどうして手に入ったかを聞いて記録する。

 8.わが家の時計・ラジオ・蓄音機などを買い入れた年代や,そのいわれを聞いて記録する。

 9.教室の備品表を作り,責任者を自分たちで定め保管に当たる。

 10.学校の敷地や建坪を調べ,正確な地図を作る。

 11.学校林や学校園などの広さや沿革を調べ,表を作る。

 12.町村の財産にはどんなものがあるかを,町村役場へ行って聞き,報告をする。

 13.自町村以外のところに,その町村民所有の田地や山林があるかどうか,またその反対の場合があるかどうかを調べる。

 14.国家の財産にはどんなものがあるかを読み,また聞いて表を作る。

 15.賠償として外国へ渡す工場やその製品を調べて表を作る。


(二) 自分・家・学校の財産を保護保全する。

 1.学用品のていねいな使い方を話しあい,実行する。帽子・くつ・かばん等の使用期間を記録し,報告する。
 
 2.くつの手入れ法を発見し,それを続ける。

 3.書籍や衣類の虫ぼしを計画し,実施する。

 4.万年筆について読み,使用法を研究する。

 5.インキや墨汁を作る。

 6.しょうのうや防虫剤の作り方について読む。

 7.衣服の保護及び手入れ法をみつけ,実施する。(洗たく・ブラシかけ・うわおおい・つくろい等)

 8.衣類の更生をする。

 9.家具の取扱方及び壁や家具についたしみを取る方法について話しあう。

 10.古くなった家具を更生させる。

 11.障子やふすまの切りばりをする。

 12.道具類を手入れし整理する。

 13.時計・ラジオ等の故障のみつけ方を研究し,簡単なものはなおす。

 14.電気を経済的に使用する。

 15.家庭及び学校の薪炭を節約する。

 16.自転車のタイヤに空気を入れる。自転車の手入れ及び修繕をする。

 17.空気の圧力の利用について調べたり,これを活用したりする。(ポンプ・サイフォンなど)

 18.摩擦を増減する方法について学んだり説明したりする。(油をさす,さびをとる,車の利用,すべり止めなど)

 19.水,石けん,鉛筆,紙,絵の具その他をむだなく使う。

 20.石けんの切れはしを溶かして,学校で使う石けん液を作る。

 21.茶わんや皿を気をつけて使う。

 22.公園や道路の草木や菜園の野菜を保護する工夫を話しあい,実行する。

 23.ボール・バット・ネットなどのような運動具のしまっておき方,手入れの仕方を話しあい,実行する。


(三) 学校園や菜園の手入れをする。

 1.当番を定め,あるいは各分団で,学校園や教室の植物の手入れをする。(日光・水・土の選択・肥料の植物成育に及ぼす効果を実験する)

 2.豆を吸い取り紙でふやかし切り開いて,養分貯蔵とはい芽の成長の状況を見る。(育つ植物に貯えられた養分の効用を話しあう)

 3.学校園や家庭の土を調べ,植物の成育にいろいろな肥料が必要なことを発見する。

 4.花や果物その他の作物の成長ぶりを比較して,肥料がどんなにそれらの作物に作用しているかを発見する。

 5.その地方の野花がどんなに美しいものであるかを発見するため,実地踏査をする。

 6.法律で保護されている高山植物や天然記念物についての知識を得るため,専門家にたずねる。

 7.沼のひしや水れんのような特別のところに生えている植物を見るため遠足をする。

 8.種,ほう,切り枝,球根,地下茎から生える値物を示す図表を作る。

 9.コクゾウ虫のような虫害を防ぐには,発見発明が必要であることを読み,話しあう。

 10.接ぎ木のできる木とその価値を読み,話しあう。

 11.適当に枝を切ったり,薬をふりかけたりして,木を保護することについて,話を聞く。

 12.学校林を理想的に育てるための方法を研究し,実行する。

 13.その土地の土や季節に適した種を植えるように,家の庭に花だんや植え込みをつくることを計画する。

 14.その土地の菜園にはどんな害虫,害鳥がいるか,またどうすればそれを絶滅できるかを研究する。

 15.菜園にはどんな益虫,益鳥がいるかを調べる。

 16.植物につくアブラ虫を薬で殺し,薬をふりかけないものと比べる。

 17.花や野菜の標識を作る。

 18.植物性食料を分類するため読書する。


(四) 風景を保護し改善する。

 1.美しい景色の絵を見て話しあう。

 2.わが国の国立公園の分布図を書き,各地の特色を調べて報告しあう。

 3.わが国の景色のよいところの絵葉書や写真を都府,県別に集めて,切り抜き帖にはる。

 4.わが国の三公園,三景,三急流の絵や写真を見たり,話を聞く。

 5.各地の県立公園や国立公園の絵や写真を集めて展覧会を開く。

 6.京都や奈良の話を聞いたり,読んだりする。

 7.外国の国立公園に関する資料を集め,読書したり,話しあったりする。

 8.公園や風致区の清掃を継続的に行うため計画し,それを実行する。

 9.遠足や旅行に行った場所をよごさないようにする。(紙くずなどは拾って帰る)

 10.郷土の見にくい場所を美化する工夫を話しあい,できるものは実行する。

 11.土地のかん木を選んで移植する。

 12.校庭改良の長期計画を作り,実行する。

 13.国宝や重要美術品について,説明を聞いたり,読んだりする。

 14.国宝や重要美術品について鑑賞する。

 15.博物館や美術展覧会を見学する。

 16.保護林や禁漁区のあるわけを専門家から聞く。

 17.その土地の保護林や禁猟区,禁漁区を地図で見,保護されている植物や動物及びその期間を書き入れる。

 18.箱庭を計画し,各自または共同で作って見せあう。


問題四 現代の産業はいかにして発達して来たか。

~学習活動の例~

(一) 現代の農業(養蚕,畜産,副業を含む)はいかにして発達して来たか。

 1.農機具にはどんなものがあるか。古いものがあれば,それと比較し,能率のちがいを知る。古い農具は写真にして見せあう。

 2.わが家の農機具がいつごろ買い入れられたかを聞いて報告する。

 3.石器時代の農具や農業について読む。

 4.焼畑農業のことを調べて発表する。

 5.脱穀機発達の物語を読む。

 6.動力利用の農機具を見学する。(水車,風車利用のもの,ガソリン利用のもの)

 7.畜力利用の農機具を見学する。

 8.その地方で栽培している米,麦,芋類の品種を調べて表にする。

 9.農事試験場を見学し,品種の改良や薬剤使用の知識を得る。

 10.東北地方や北海道の米の品種改良や栽培上の苦心談を読む。

 11.米の原産地のこと,栽培地域の拡大したことなどについて読む。

 12.わが国及び世界における米の生産地を示す地図を作る。

 13.小麦,大麦,えん麦等のわが国及び世界における分布図を作る。

 14.わが国におけるさつま芋とじゃが芋の都道府県別産額分布図を作る。

 15.わが国におけるみかんとりんごの都道府県別産額分布図を作る。

 16.芋類の貯蔵の方法を発見する。

 17.果樹類の長期貯蔵法を発見する。

 18.蚕業試験場を見学し,獲蚕業の進歩の状況について学ぶ。

 19.蚕種改良の苦心談を読む。

 20.わが国の生糸の都道府県別産額分布図を作る。

 21.世界における生糸産地を調べて,地図やグラフにあらわす。

 22.畜産試験場を見学し,家畜改良,飼料等について学ぶ。

 23.牛,馬,豚,うさぎ,鶏等の品種改良の物語を読む。

 24.わが国の牛,乳牛,馬,豚,鶏等の都道府県別分布図を作る。

 25.郷土における農家の副業を調べて報告する。

 26.多角形農業の話を聞いたり,本を読んだりする。

 27.機械によるわら加工品の製造をし,機械を使わない場合と比較する。

 28.季節的な出かせぎについて話を聞き地図を見る。

 29.大農式の農機具(トラクターなど)を見学する。

 30.見返り物資としての農畜産物を調べて表を作る。


(二) 現代の水産業はいかにして発達して来たか。

 1.郷土にある漁業用の舟の種類を調べて写生をする。

 2.手こぎの舟と機械般のちがいについて,見たり,話しあったりする。

 3.つり具や網具を展覧する。

 4.水産試験場や水産講習所を訪い,近代水産業の発達ぶりを聞く。

 5.漁業会を訪い,その地方の水産業の変遷を聞く。

 6.網具(さし網,まき網,地びき網,きんちゃく,あくり網,大謀網等)について話を聞いたり読んだりする。

 7.漁獲物の種類について調べたり,見聞したりする。

 8.網具や舟を保護する方法を発見する。

 9.漁港の諸施設を見学する,冷凍装置について見聞する。

 10.わが国におけるいわしの都道府県別産額分布図を作る。

 11.地びき網を手伝う。

 12.漁獲物の加工状況を見学する。

 13.かつおぶしの製造場や貯蔵場を見学する。

 14.わが国のかつおぶしの都道府県別産額分布図を作る。

 15.遠洋漁船(トロール船,かに工船,かつおまぐろ漁船等)や捕鯨船の物語を読む。

 16.漁群発見の科学的探索法を読む。
 
 17.潮干狩りやのり取りに行く。

 18.貝類や海草類の養殖状況を見学する。
 
 19.あゆの放流について聞く。

 20.さけ,ます,こい,金魚等の養殖場を見学する。

 21.いろいろな製塩法を調べ,絵や写真を見る。

 22.魚貝類を加工した食料品の一覧表を作る。


(三) 現代の鉱業,林業はいかに発達して来たか。

 1.手掘りと機械掘りのちがいについて聞いたり見たりする。
 
 2.砂金採取の絵や写真を見る。

 3.貴重な鉱物資源を求めて,人々が新しい土地を探検開拓した物語を読む。(新大陸の発見,西洋人の日本への渡来,オーストラリアやアメリカ西部の開拓など)

 4.わが国の鉱業発達の物語を読み,年表で示す。

 5.炭鉱の諸施設を見学する。

 6.製油場を見学する。

 7.わが国の石油,石炭の都道府県別産額分布図を作る。

 8.世界各国の石油,石炭の産額分布図を作る。

 9.鉱山関係の役所を見学し,進歩した鉱山業の状況を説明してもらい,資料を見る。

 10.こびきと動力利用の製材との能率(生産量,労力等)を調べる。

 11.動力を使用する製材所を見学し,そこに製材所の置かれたわけを考察する。

 12.林業試験場を見学し,特に優良林育成の状況について話を聞き,資料を見る。

 13.世界の森林地帯の分布図を見て,パルプや製紙業の発達する国を判断する。


(四) 現代の工業はいかにして発達して来たか。

 1.郷土の家内工場を見学し,いつからその工場がはじめられたかを聞く。

 2.古い時代の家内工業の話を読んだり聞いたりする。

 3.西陣織や友禅染の標本を見,発達の話を聞く。

 4.手工業と機械工業,軽工業と重工業の区別を読んだり聞いたりする。

 5.現在の工場で使われている動力の種類を発見するため,読んだり,見学したりする。

 6.郷土の工業製品の見本を集めて展覧する。

 7.工業試験場を訪い,工業発達に関する資料を見聞する。

 8.労働者の数の多少を示した工場の分布図を作る。

 9.わが国の大工業地帯を地図に示し,それらの工業地帯と海陸交通図とを重ねあわせる。

 10.世界の大工業地帯を地図にあらわす。

 11.イギリスの紡績発達の物語を読む。(産業革命について学ぶ)。

 12.わが国の紡績工業の盛んな地域を地図に示す。

 13.わが国の綿糸の累年産額比較を棒グラフに示す。

 14.わが国の紡績業の発達についての物語を読む。

 15.岡谷が盛んな製糸業地になったことにつき話を聞き,地図で研究する。

 16.郷土の工場を建設した人々の話を読んだり聞いたりする。


(五) 物の生産に関係して交通はいかに発達して来たか。

 1.鉄道による貨物輸送の状況について話を聞き資料を集める。(鉄道局,各地管理部,各駅等について知る)。
 
 2.鉄道による輸送量の過去と現在とを比較し,図表に示す。

 3.帆船時代と蒸気船時代との海運を比較した物語を読む。

 4.鉄道開通以前の河海の交通について,老人の話を聞き,記録して報告する。

 5.自動車による運搬の状況を馬車や牛車の場合と比較して話しあう。

 6.自動車の発達に伴い道路が改良されて来たことについて調べて話しあう。

 7.鉄道や汽船の貨物運賃について資料を集め表を作る。


(六) 生活必需品の分配がどんなに便利になったかを発見する。

 1.野菜や魚の定期に開かれる市を数回にわたって見学し,その数や状況を記録する。

 2.郷土に見られる行商について調べて報告する。

 3.わが国の古い時代の貨幣を展覧し,説明を聞く。

 4.郷土の商店街や商業中心地を観察し,写生をする。

 5.古くからの商店と新式の商店とを比較して話しあう。

 6.村の雑貨店や都市のデパートを地図に書き入れ,どんな場所にできているかを話しあう。校内に売り場を設け,学用品その他を生徒の手で売り,商業の実際を体験する。

 7.新聞を生徒の手で配達することを計画し実施する。

 8.貿易品が時代でちがうことにつき話を聞き,表に比較してあらわす。

 9.終戦後アメリカから放出せられた物資の種類と数量の表を作る。

 10.農家が各季節に必要とする肥料を調べ,それを購入入手する場所を示して,一覧表を作る。

 11.肥料が生産地から農家まで運ばれる経路について調べて報告する。

 12.農家に必要ないろいろな物資(農機具,作業衣,地下たび等)が,どこからどんな経路ではいって来るかを調べて報告する。

 13.その土地の産物が,どんなふうにどこへ送られて行くかを調べて報告する。

 14.都会の家々で必要な農産物や水産物が,どんな経路で送られて来るかを調べて報告する。


問題五 発見発明はどのくらい私たちの生活を豊かにしたか。


○家具と装飾──芸術的要素,値段,実用性,個性と趣味らの歴史及び使用法。

~学習活動の例~

(一) 食物の種類の多いことを発見する。

 1.南方諸地方の稲の作り方を聞いたり,読んだりして,わが国のそれとを比較して話しあう。

 2.精米所,水車小屋,米つきうすなどを見て,精米脱穀法の変化を発見する。

 3.精白米,三分つき,七分つき,玄米等のたき方,味などを話しあう。

 4.米の食べ方についての歴史を聞く(ほしいい,かゆ,こわめしその他)。

 5.麦やそばがいつごろから日本で作られたか,どんなふうに使われたかを聞いたり読んだりする。

 6.米,麦,豆等からどんな食料品が作られるかを話しあい,絵図を作る。

 7.大陸,南洋,欧米諸国から伝わって来た食用植物を調べ,絵巻物を作る。

 8.外国から伝えられた,食物調理法を調べて発表しあう(とうふ,カステラ,天ぷらその他)。

 9.わが国で牛肉,豚肉が食べられ,牛乳が飲まれるようになったのはいつごろからかを調べ,そのはじめのころの有様を聞いたり読んだりする。

 10.食用油脂の原料を挙げ,表に作る。

 11.食用油脂の製作過程を見学し,古い方法と比較する。

 12.砂糖の歴史(日本と世界)を聞き,砂糖の効用を話しあう。

 13.いろいろな甘味料を比較して,その効果を話しあう。

 14.こうぼを作り,あめや,廿酒を作る。

 15.かき・いちじく・りんご・くわの実などでヂャムを作る。

 16.日本,東洋,西洋の菓子類を調べて,絵図に書く。

 17.香料の話と,香料についての歴史を調べる。

 18.ありあわせの材料で,簡単な菓子を作る。

 19.たばこ,茶,コーヒー等の生産地を示す地図を書く。

 20.てん菜と甘しょの産地を比較し,分布図を作る。

 21.いろいろな肥料の話を聞き,その用法を調べる。

 22.かんがいと耕作道具の発産によって,耕地がどんなに変ったかを読んだり,聞いたりする。


(二) 食料製作具と貯蔵法の発達を知る。

 1.交通運輸,冷蔵,乾燥,かん詰,くん製等の発明で,季節はずれや遠い地方の食物を手に入れることができるようになったことを見たり,聞いたり,話しあったりする。

 2.くさった食物の見分け方を話しあい,発見する。

 3.冷凍法の今昔について聞いたり読んだりする。

 4.製氷工場,かん詰工場その他の食料品工場を見学する。

 5.有用バクテリヤと有害バクテリヤの食料に及ぼす影響を,読んだり,聞いたり,話しあったりする。

 6.台所の位置や広さについて,絵を見ながら話しあう。

 7.わが国で昔から使われている台所用具と,欧米から来たものとを区別する。

 8.いろいろな種類や型の七輪を使って,どんな型のが一番早くて経済であるかを調べる。

 9.いろいろな質や型のなべやかまを使って,湯をわかすにはどちらが早いか調べる。

 10.ほうちょうその他調理用具の種類と変遷を調べる。


(三) 食物と身体との関係を見出だす。

 1.身体を健康に保つにはどれくらいのカロリー,栄養が必要かを調べる。

 2.殼類・野菜・果物・魚肉・茶等カロリー,栄養素を調べて表を作る。

 3.簡単に手に入る食料で合理的と思われる食事の献立表を作る。

 4.医者や歯科医を招いて,食物と身体との関係を聞く。

 5.米の精白度やいろいろの配給主食物の栄養価とその長短を話しあう。

 6.原始人と近代人との調理法を比較する。

 7.肝油やビタミンの効用を聞く。

 8.病気の時にはどんな食物をとるか話しあう。

 9.一年生から今までの身重体重を調べて表に作る。

 10.明治以降の学童の平均体重を調べて表を作る。

 11.生野菜の食べ方を調べて,なるべく多く食べる。

 12.魚粉や海草粉を作って食べる。


(四) 装身材料の種類を調べる。

 1.わが国における頭髪手入れの歴史を聞き,その変化の原因を見つけ,絵巻物を作る。

 2.わが国における衣服材料の変化について,聞いたり,読んだり,調べたりして年表を作る。

 3.紡績機・織機等衣料生産を増加させた発明の話を読んだり,聞いたりする。

 4.紡績工場・織物工場を見学する。

 5.人造繊維の発達についての話を聞き,その製作過程を見学する。

 6.染料工場の人を招いて,染料の話を聞き,天然染料と人工染料とを比較する。

 7.動植物繊維品及び合成繊維品を染色し,おのおのの効果を見る。

 8.合成繊維と天然繊維の強度,洗たくに堪える度合い,手入れ法を実験的に比べる。

 9.手工業的繊維品と機械工業製品のそれとの丈夫さを調べて話しあう。

 10.着物の色やがらの見本を集め,あるいは模写して,どれが好きか,どれが似合うか話しあう。

 11.わが国の衣服の歴史を聞いたり,読んだりして,外国のものとの関係を知る。

 12.わが国の主要織物生産地を調べ,地図に書きこむ(久留米がすり,西陣織等)。

 13.いろいろな雨具や防寒具を集めて,陳列する。

 14.いろいろな形のかぶり物(かさ,帽子,ずきん等)やその絵を集める。

 15.各種のはき物を集めて古い順に並べる。

 16.はき物の歴史を聞いたり,絵を見たりして絵巻物を作る。


(五) 家の材料の発達していることを研究する。

 1.雨戸,障子,ふすまとガラス窓,ガラス戸の効用を話しあう。

 2.ガラス製品を挙げて,その絵図を作る。

 3.わが国の昔のガラスについて読んだり,聞いたり,調べたり,見学したりする(正倉院,御物,ギャーマン,ビードロ等)。

 4.壁の原料について話しあい,壁の修繕をする。

 5.簡易住宅の材料や建設費を調べる。

 6.鉄,銅,鋼,コンクリート,鉛,すゞ,トタン,材木等から,建築用材が作られるまでの話を絵図であらわす。

 7.大建築にコンクリートが利用される理由を話しあう。

 8.防火,耐震の建物を見て,その特徴を話しあう。

 9.暖房装置,採光装置,通風装置等の発見発明が家屋の設計,構造を変えた有様を見たり話しあったりする。

 10.近代建築機械の話を聞いたり,それを見た経験を話しあったりする。

 11.電気が業務上,生活上どんなに役立っているかを話しあい,絵図で示す。


(六) 家や身のまわりを気持よくする。

 1.家を気持よくするための各人の責任について話しあう。

 2.家事上の手伝いや仕事をする時間表を作る。

 3.自分の家を便利で都合よく改良する方法を計画する。

 4.家や学校で散らばっている道具類を整理する。

 5.所持品の中で,ほんとうに必要なものとそれほど必要でないものとを分けて見る。

 6.まだ使える品物の修繕と更生をはかる。

 7.家や学校で必要な小道具を作り飾りつける。

 8.家で事故(けが,やけど等)をなくすよい方法を,見ならったり考えたりして,実行する。

 9.家や学校の通風をよくするようにいろいろな工夫をする。

 10.気持のよい明かるさを保つため,光の調節を工夫する。

 11.部屋の壁やふすまの模様や色合いを工夫して整える。

 12.携帯用裁縫道具入れを作って使う。

 13.着物のつくろいをする。

 14.えりまきその他の簡単な編み物をする。

 15.顔,歯,髪,手足の正しい手入れを話しあい,実行する。

 16.簡単なエプロンや前掛を作って使う。

 17.着物類のしみをうまく消す方法を話しあい,実行する。

 18.木綿,絹,羊毛,人造繊維品の正しい手入れ法を話しあい,実行する。

 19.いろいろな布地を種々の洗たく液で試し,よくおちて,しかもあまり伸び縮みしない方法を発見する。

 20.くつ(特にぬれたくつ)の適当な手入れ法を話しあい実行する。

 21.手ぶくろ,帽子,ソックス等の適当な手入れ法を話しあう。


問題六 どのようにして私たちは通信したり,意見を交換したり,遊行したりできるか。

~学習活動の例~

(一) 社会生活において通信を交換する有様を発見する。

 1.通信をするため,現在行われている方法を話しあう。

 2.いなかをまわる便利屋や行商人,またいなかから都会へ通う便利屋や行商人の価値を話しあう。

 3.情報を正確に速く伝達するにはどの通信の手段がよいかを話しあう。

 4.モールス・ベル・マルコニー・グーテンべルグ・エジソンなどが通信に貢献したことを読んだり,調べたり,報告書を書く。

 5.電話交換局・電話局・放送局を訪ね,通信がどんなふうに送受されているか見る。

 6.電話のかけ方を研究し,練習し,実施する。(当番をきめて学校の電話を受けつぐ)。

 7.電文の書き方を研究し練習する。

 8.模擬郵便局を作り,通信事務の練習をする。

 9.郵便局のいそがしい時を見はからい,局長と相談して,配達その他の事務を手伝う。

 10.専門家を招いて,通信事務について話を聞き,通信上注意すべき事がらにつき話しあう。

 11.ラジオと映画の発達について読み,話を聞く。

 12.放送局の分布図を作り,各放送圏を知る。

 13.ラジオの出演を計画し実施する。

 14.通信に関する参考用の絵図を集めつづり込む。

 15.交通上使われている信号(船・ブイ・鉄道・道路)の意味と用途を話しあう。

 16.天気予報の表示に使われている信号(旗,その他)の読み方を研究する。

 17.ボーイ(ガール)スカウトで使われている信号を研究し,練習する。

 18.教室にとり入れられている視覚に訴える教具(幻灯・映画・掛け図・紙芝居等)の発明や利用の物語を読み,それについて話しあう。

 19.適当なるラジオプログラムを調べて聞く。

 20.電信機を作る。

 21.モールス信号の練習をする。

 22.雑誌をおたがいに交換して読むため,組織を作り,実行する。

 23.駅逓・駅馬・飛脚の物語を読んだり聞いたりする。

 24.自分たちのニュースを知らせるための工夫をする(掲示板・壁新聞・学級新聞等)。


(二) 記録保存法の改良について研究する。

 1.記録製作や保存に貫献した発明について話しあう。(紙・墨・ペン等)

 2.近年の国家領域と地名や国名の変化に注意しながら,記録保存手段としての地図を見たり話しあったりする。

 3.古い時代から現代に至るまでの筆記具の展覧をする。

 4.昔の本を見て新しい本と比べ,紙・インキ・さし絵等のちがいとその理由を発見する。

 5.木版画を集めて見せあう。

 6.木版を作り印刷する。

 7.図書館に行き,利用の状況を見,利用者の職業別・年齢等の表を作る。

 8.粘土・パピルス・石・皮・木・樹皮・骨等を使って,古代文明の記録がどのようにして保存されて来たかを話しあう。

 9.印刷術発明の物語を読む。

 10.現代の印刷術を見るため,新聞社や印刷所を見学する。

 11.印刷技術の発達がどんなに新聞雑誌を安く公衆に提供したかについて読む。

 12.美しいさし絵の印刷の仕方を調べる。

 13.学級新聞や雑誌を作り,さし絵を書く。

 14.本を作る過程を示す映画を見る。

 15.印刷の発明が,どんなに宗教などを広めるのに役立っているかということを調べて報告する。

 16.わが国の印刷のはじまりについての記緑を見たり,写真を集める。

 17.同じ事がらについて,どんないいあらわし方があるかをいろいろ考え,いってみる。

 18.作文を書いてみんなに見てもらい,自分の考えがどのくらいよく人にわかったかを調べる。

 19.方言の便利な点と,不便な点とについて話しあう。

 20.ことばの違いが人と人との交捗をどんなに困難にするかについて話しあう。

 21.盲人教育の改良された方法を示すため,点字で書いた本を展覧する。

 22.紙を作る過程を見るため,紙工場を見学する。

 23.わが国の書道の発達について読んだり見たりする。

 24.ペン字の展覧会を開く。


(三) 旅行のよい方法を見出だす。

 1.昔の人が東海道五十三次やその他の街道を旅行した当時の有様を絵で見,物語で読み,劇化する。
 
 2.わが国に鉄道が取り入れられた当時の物語を読み,汽車や停車場の絵を見る。

 3.スチブンソンの発明した蒸気機関車の物語を読む。

 4.鉄道連絡線の絵や写真を見,古いものと新しいものとを比較する。

 5.鉄道博物館を訪ね,わが国の交通の変遷について,資料を見,説明を聞く。

 6.蒸気機関車や電気機関車の写真を見,速力の増大について,図表で比較する。

 7.時代によって比較された鉄道網の図を見て,発達の状況について話しあう。

 8.京浜・阪神・名古屋等の各地方の交通網の図(電車を含む)を見て,比較し,話しあう。

 9.鉄道の電化区間及び電化工事区間を地図に示す。

 10.わが国の急行列車の走っている線路を地図で示す。(回数もあらわす)

 11.列車時間表の見方を研究し,旅行計画を作り,展覧する。

 12.修学旅行の際,自分たちで資料を集め,旅行後,報告会をする。

 13.わが国各地の絵・写真・パンフレット等を集め,国土めぐりを計画し,報告しあう。また一部は実行して作文をつくる。

 14.交通公社や鉄道関係の人を招いて,旅行や鉄道事務・交通道徳などを聞く。

 15.自動車旅行・キャンプ旅行について聞く。徒歩旅行等を計画し,実施する。

 16.各都市が交通上どんなところに発達しているかを地図を見ながら話しあう。

 17.わが国及び世界の航空図を作る。

 18.各国のすぐれた旅客用・貨物用の汽船の物語を読み,写真を見る。

 19.航空路の発達に関する文献を読む。


問題七 外国人との交際はどのようにして行われるか。

~学習活動の例~

(一) 外国及び外国人を理解する。

 1.外国人がこれまで日本を訪れた理由を年代によって表にする。

 2.外国へ行った人を招き,外国の風習その他につき話してもらう。

 3.外国の衣食住に関する風習を示した物語を読む。

 4.外国の子供の生活の話を聞いたり,読んだりする。

 5.外国の様子や風習をあらわす絵を集め,できれば映画を見る。

 6.外国の子供の一日の生活を劇化する。

 7.船員から外国に航海した時の話を聞く。

 8.外国人や外国に行ったことのある人を招いて,外国の子供と日本の子供とを比較してもらう。

 9.外国人が日本について書いたものを集めて読む。

 10.諸国の旗を作り,または描き,その由来を調べる。

 11.なぜ国旗を尊重しなければならないかについて話しあう。

 12.わが国の国旗の制定についての話を聞く。

 13.汽船などで用いる万国共通の信号を学ぶ。

 14.簡単な世界地図を作り,おもな国々を書き入れる。

 15.絵,写真その他いろいろの資料を集めて,世界めぐりの催しをする。

 16.外国の切手を集める。

 17.諸外国の国歌を聞く。

 18.外国へ行った人を訪ね,外国の品物や絵葉書を見せてもらう。


(二) 外国人と交際する方法を発見する。

 1.ことばや習慣の違った友だちと親しくなった経験を話す。

 2.外国人の礼儀や習慣について調べる。

 3.外国人と交際するための注意事項を表にする。

 4.外国人の特に好むこと,好まないことを表に示す。

 5.外国に行った人に聞いたり,物語を読んだりして,外国へ行った時の不自由さや心細さ及びそこで受けた親切の有難さについて知る。

 6.島国根性ということについて,自分たちの生活をもとにして反省し,話しあう。

 7.わが国の文化が外国の影響を受けて発展して来たことについて本を読む。

 8.青少年赤十字の話を聞く。

 9.万国赤十字社の起源と歴史とについて学びナイチンゲールの話を聞く。

 10.なぜ人種によって差別されてはいけないかを話しあい,リンカーンの伝記を読む。

 11.外国の子供たちと通信する。

 12.オリンピック大会及びその記録について調べる。

 13.いろいろなスポーツの世界選手権や世界記録を調べる。

 14.極地探険やエベレスト登山の物語を読み,ナンセンの一生について聞く。

 15.過去における外国人との交歓の物語を読む。

 16.幕末維新のころ,日本人と外国人とが,おたがいにどんな感じをもって交際したかについて話を聞く。


問題八 私たちの生活を楽しくするためには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 楽しい時間をもつよう個人的に工夫する。

 1.仕事・遊び・休養・団らんを適当に配合した一週間の時間割を作り,実行できたかできなかったか記録する。
 
 2.自分たちに適した物語やゲームの表を作り,報告する。

 3.簡単な遊び道具を作る。

 4.お客をもてなす時は,どんなふうにすればよいかを話しあい,実行する。

 5.いろいろな厚生慰安の方法と健康との関係を話しあう。

 6.各自の厚生慰安の方法と他人のそれとを比較する。

 7.ひまなとき畑いじりをすることの価値を話しあう。

 8.畑の手入れを計画し,実行する。

 9.物語・詩・歌・俳句・脚本を創作する。

 10.物語を紙芝居に作りかえる。

 11.ひまな時に読む物語や詩を集める。

 12.竹や木で木琴を作る。

 13.音楽を鑑賞したり,歌ったりし,また各時代の各他方のものをも鑑賞したりする。

 14.ラジオ放送を選んで聞く。

 15.発明によってかわった楽器のことを読み,話しあう。

 16.各国のいろいろな楽器を調べたり,その音を聞いたりする。

 17.額ぶちを作って,家や学校で使う。

 18.美しい風景を写生し,絵の具でも描く。


(二) 団体的に楽しい時間を持つよう工夫する。

 1.ひまな時にするいろいろな団体活動をあげ,その効用を話しあう。

 2.土地の子供会その他に加わる。

 3.小さな子供を集めて,お話をしてきかせる。

 4.工作部屋を用意して使う。

 5.演芸会を計画して実施する。

 6.ハイキングクラブを作って,珍しい場所や物を見に行く。

 7.自治会やクラブの歌を作る。

 8.ハーモニカバンドを作って演奏する。

 9.いろいろな楽器を持ち寄って,バンドを作る。

 10.合唱団を作る。

 11.紙芝居や影絵芝居の会を開く。

 12.みんなで指人形を作り,人形芝居をする。

 13.家や学校,その土地などの慰安施設を改良する計画をたて実行する。


(三) 厚生慰安とその施設のかわった原因を発見する。

 1.ラジオ・映画・旅行などのような,発明の結果できた厚生慰安の施設を読んだり,聞いたり,見たり,話しあったりする。

 2.昔の厚生慰安の施設を読んだり,聞いたり,話しあったりして,今のそれと比べる。

 3.近代的機械の発明や交通・運輸・通信方法の改良などによって,時間の余裕のできたことについて調べ,報告する。


問題九 国家の統治にはどんな施設が必要か。

~学習活動の例~

(一) 国家の政治機関に関する知識を獲得する。

 1.議会と憲法の話を聞く。

 2.議会政治の歴史を調べる。

 3.国家及び他方の自治体の機構について大略の図表を作る。

 4.官庁の種類を調べ,その仕事について簡単な説明を聞く。

 5.都道府県会議員を招き,その仕事について話してもらう。

 6.都道府県会の議場を見学する。

 7.最寄りの裁判所を見学し,法廷で説明を受ける。

 8.鉄道その他全国の行政区画を調べる〈鉄道局管区,裁判所管区,営林局管区等)

 9.地図に都道府県庁所在地とおもな都市を書きこむこと。

 10.昔の地図をかき,そのころの行政の中心だった都会を書きこむこと。

 11.昔の政治形態を年代に分けて調べ,国民の声がどれだけ取上げられていたかを話しあう。

 12.なぜ配給が必要か,どんな配給法があるかを話しあう。

 13.警察官を招き,警察のおもな仕事について聞く。

 14.税の話を読んだり聞いたりする。


(二) もっとよい自治の方法を発見する。

 1.規則の発生とそれを守ることの必然性を話しあう。

 2.団体の人たちにとって,一番よいと考えられることを決めるための手続きについて話しあう。

 3.よい指導者と指導される者の特性を考え,人々がおのおの指導者になる場合も指導される者になる場合もあることについて話しあう。

 4.指導者を選定したり,選挙したりするための基準を表にする。

 5.指導者や委員を決定する最良の方法について話しあい,実行する。

 6.指導者や委員の心得なければならないことを表に作る。

 7.よい規則を決定したり,規則の変更をしたりする方法について話しあう。

 8.不満や要求や争いが起った時の解決法を話しあう。

 9.全員が責任を持つような活動を工夫する。

 10.学級における自分の責任を報告する。

 11.自分の行為に対して責任を明らかにするために,自分だけの反省録を作る。

 12.「いかにすれば全員が学級の向上に積極的な協力をすることができるか」という題で,懸賞論文をつのる。

 13.決議の実行を確認する手段について話しあう。 


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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小4・社会科の学習活動例

問題一 私たちの祖先は,どのようにして家の場所を定め,家を建て,家具を備えつけたか。

~学習活動の例~

(一) 地理的条件が家の場所に与える影響を知る。

 1.渡り鳥を観察したり,その話を聞いたり読んだりする。
 
 2.渡り鳥の旅を話に作ったり歌に作ったりする。

 3.遊牧民の話を聞いたり読んだりする。

 4.遊牧民が定住するようになった理由を調べる。

 5.水の近くに家を定める必要について話を聞いたり話しあったりする。

 6.自然の環境が家を保護するのに役立っている有様を見たり話しあったりする。

 7.いろいろな形をした家を見て,おのおのそのわけを考える。

 8.パルプか砂で大きな箱庭を作り土地の建物の模型を作る。


(二) 私たちの祖先がどういうふうにして郷土に住みついたかを明らかにする。

 1.郷土で一番古い建物の位置を調べ,それについて話しあう。

 2.祖先はいつどんな理由でこの土地に住みついたかを明らかにするため話を聞いたり読んだりする。

 3.郷土の歴史を読む。

 4.老人をよんで郷土の昔の有様を聞く。

 5.人々が土地に住みつこうとする時の有様を示す劇を計画し準備し実際にやる。

 6.児童の多くがこの土地に住み続けて来た理由を明らかにするため調査する。

 7.人々がこの土地に旅して来たり通り過ぎて行ったりする理由を報告する。

 8.昔,定住した頃の人名を調べるために,役場やお宮の記録を調べてみる。

 9.親たちがその生地を去って移って来た理由を聞き報告する。

 10.家のまわりの地図を書き,自分の家の位置がもたらす便宜について説明する。

 11.物語を読み,郷土の発展の有様を知る。

 12.地勢の特徴をあらわした模型図を使って,家を建てたり部落を作ったりする場所について話しあう。

 13.昔の城のあとに行き,その周囲を観察する。

 14.城下町の話を読み,その絵を見る。

 15.その土地の地名の由来を調べる。

 16.祖先が移住して来た道すじを地図で示す。


(三) 昔の家屋の形を調べる。

 1.年代順に家屋の絵を書く。

 2.郷土のお宮やお寺の絵や見取り図を書く。

 3.日本の昔の家屋を見て,それに関する話を聞く。

 4.貝塚や昔の住居のあとを見て,それに関する話を聞く。

 5.日本の家屋をあらわした絵巻物を作る。

 6.自分の住みたいと思う理想的な家の設計をしたり模型を作ったりする。

 7.自分の家の建てられたのはいつか,またどんなところに便不便があるかを調べる。

 8.郷土で歴史的に重要な建物の絵を集め,どういう点がたいせつか説明してもらう。

 9.建具の歴史について話を聞く。


(四) 昔,光と熱とがどのようにして得られたかを知る。

 1.祖先が用いた光や熱について読んだり絵を見つけたりする。

 2.教室のいろいろな場所で明かるさを測定する工夫をする。

 3.戸外に炊事用のかまどを作る。

 4.なべ,かま,つぼ,やかん等の材料及び使用法について昔と今とを比較してみる。


(五) 家とその周囲を美しくする。

 1.学校を美しくする活動に,だれもが必ず加われるように計画を立てる。
 
 2.家とその周囲を美しくするために自分のした事がらを表に作る。

 3.自分たちで「清潔週間」を計画する。

 4.花園や運動場の手入れをする。


問題二 私たちの祖先は,どのようにしていろいろな危険を防いだか。

~学習活動の例~

(一) 祖先が危険を防いで来た方法を知る。

 1.人々は,どのようにしてほかの動物を威圧し自分の身を護って来たかについて話を聞く。

 2.人間がほかの動物と異なる点を挙げ,それについて話しあう。

 3.いろいろな天災とそれによる被害とについて報告する。

 4.自然に関する昔の迷信について簡単な話を聞く。

 5.防風林を見る。

 6.水害の話を聞いて話しあう。

 7.堤防やダムや水門など水害を防ぐ施設を見て,その絵を書く。

 8.水害を受けた時,人々がどんなに助けあうか話しあい,またその話を聞く。

 9.その土地の治水に尽くした人の話を聞いたり読んだりする。

 10.昔から現在に至るまでの衣服の絵を書き,その長短について話しあう。

 11.火の使用の歴史について簡単な話を聞いたり読んだりする。

 12.大昔の人の方法をまねて火をおこしてみる。

 13.原始人の生活を劇化する。

 14.火事の怖しさについて話しあったり書いたりする。

 15.消防発達の話を読んだり聞いたりする。

 16.昔の防火具の話を聞き,それを集める。

 17.防火ポスターを作る。

 18.防火演習を実施する。


(二) 危険を注意する手段を知る。

 1.半鐘やサイレンを聞いて,その合図を覚える。

 2.危険を予告するためにラジオや電話を使う場合について聞く。

 3.天気予報の放送をまねる。

 4.危険を避けるため登山者の準備すべきことがらについて報告する。


(三) 健康を維持する方法を発見する。

 1.医者のない,医薬の備えのない土地の話を聞く。

 2.医者も医薬もないのに健康を維持しようとすればどうしたらよいか話しあう。

 3.薬草を集め,絵を書く。

 4.遠足や登山の準備をする。

 5.外地で開拓に従事した人々の健康法について聞く。

 6.友だちに応急処置を施してみる。

 7.昔の医者の話を聞く。

 8.現在存在する医療上の迷信を列挙してみんなで研究する。


(四) 現在ある施設の働きを知る。

 1.学校の医者・歯医者・看護婦を呼んで児童の健康問題やいろいろの施設について話してもらう。

 2.健康を維持するために土地の人たちが協力していることについて話しあう。

 3.保険の利用について話しあう。

 4.杉田玄白やその他の先覚者が西洋医術を学んだ話を聞く。


問題三 動植物,鉱物等の天然資源はどのように利用することができるか。

~学習活動の例~

(一) 郷土における天然資源を調べる。

 1.山へくり拾いやきのこ狩りなどに行った時のことを話しあい,作文や絵を書く。

 2.魚つりに行ってりょう師やつり師を見る。

 3.炭焼きの有様を観察し,校庭で実地にやってみる。

 4.植林の有様を観察し,学校の植樹を伝う。

 5.森の樹を伐採する有様を観察する。

 6.森林をいっせいに伐採するのと間引くのとの長短を話しあう。

 7.附近の森林や原野について観察し,その有用性を話しあう。

 8.森林と川の水量との関係について,話を読んだり聞いたりする。

 9.近くの海,川,湖沼等にいる魚貝類を集め,標本を作る。

 10.貝塚で見つけた貝を分類する。

 11.家庭にある毛皮を挙げ,その産他を調べる。

 12.近くの鉱山を見学し鉱物の標本を集める。

 13.近くの石切り場を見学する。

 14.すゞめのような野鳥の持つ利害を話しあう。

 15.益鳥や魚類その他の保護について話を聞く。


(二) わが国における天然資源を調べる。

 1.毛皮獣の生活する有様を示す絵や写真を集める。

 2.各季節にとれる魚貝類の名を挙げ,その産地を地図に示す。

 3.わが国における魚貝の産額を示す絵地図を作る。

 4.食用に供せられる海草類の名を挙げ,その産地を地図に書きこむ。

 5.わが国における食用になる海草の産額を示す絵地図を作る。

 6.世界の三大漁場について物語を読む。

 7.りょう師の生活について話を読む。

 8.捕鯨船の話を読んだり聞いたりする。

 9.建築に用いられる材木を表にする。

 10.材木屋に行っていろいろな材木を見,その産地を調べる。

 11.松林の風景の特色をあらわした絵を書く。

 12.日本地図を作って松,すぎ,ひのき等のおもな産地を示す。

 13.家庭や学校で用いられている鉄製品の表を作る。

 14.かじ屋や鋳物屋へ行って,その仕事を見る。

 15.日本地図を作って鉄の産地を示す。

 16.世界のおもな国々の鉄の産額をグラフに作る。

 17.自分の土地ではどこでどういうふうに石炭を使っているかを調べ,地図でその産地を示す。

 18.貯炭所へ行き,石炭はどういうふうにして運ばれるかを知る。

 19.炭鉱のいろいろな労働者の絵を見たり,かれらの苦心について読んだりする。

 20.石炭の産地と産額とを示す日本地図を作る。

 21.世界のおもな国の石炭の産額をグラフに作る。

 22.石油機関を観察する。

 23.家から石油ランプを持って来て,老人にその話を聞く。

 24.油田の絵や写真を見る。

 25.石油が地層のどの辺にあるかを示す絵を見る。

 26.わが国における石油の発見について物語を読む。

 27.日本地図を作って石油の産地を示す。

 28.世界のおもな国の石油の産額をグラフに作る。

 29.資源の利用を妨げる偏見や特殊な習慣(特に食物の)について話しあう。


問題四 困難な自然環境のもとで,いろいろなものを作ったり手に入れたりするには,私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 今日の困難な環境で工夫する。

 1.ほご紙の裏を利用してノートブックを作る。
 
 2.いろいろなもののくずを持ち寄って,おもちゃや道具を作る工夫をしたり実際に作ったりする。

 3.ローソクのくずを集めて再生の工夫をする。

 4.貝がらを拾い集めて,おもちゃや小道具やいろいろな飾りを作る。

 5.草や竹切れで簡単な編み細工をする。

 6.みそやしよう油の製品を見たり聞いたりする。

 7.潮干狩りをして,浅い海にいる動植物の生態を観察する。


(二) 近代的な利便の発達とその歴史について考える。

 1.先史時代の石器や骨角器を見たり,その話を聞いたり読んだりする。

 2.先史時代の人になったつもりで石や木で道具を作ってみる。

 3.粘土で茶わんや食器を作る。

 4.土器の話を聞き,土器を見る。

 5.水車小屋を見学する。

 6.水車を作って小川にしかける。

 7.浜で,なわやむしろに塩水をかけて,濃い塩水を作ったり,小さな塩田を作ってみたりする。

 8.果汁やなべずみや川原の色石などを使って木や石や木の葉に絵や模様を書く。

 9.簡単な弓矢を作って友だちと的にあてる。

 10.染料を作って簡単な染め物をする。

 11.老人をよんで織機の使い方を習う。

 12.昔の親たちが子供のために作ったおもちゃを作ってみる。

 13.ロビンソン クルーソーの話を聞いたり読んだりする。

 14.ロビンソン クルーソーの話を紙芝居にする。

 15.時計を使わないで時間を知る方法を工夫してやってみる(たとえば日時計・水時計・砂時計・ローソク時計等)


(三) 開墾についての人々の努力を知る。

 1.開墾地に行ってその状況を見たり,その苦心について聞いたりする。

 2.明治時代の北海道開拓の歴史を聞く。

 3.知っている人で,北海道その他の開拓地に行っている人を挙げ,その人たちからの便りを学級で読む。

 4.郷土の耕されていない荒地を観察し,田畑にならないわけを聞く。

 5.いろいろな土を集めてその土質を調べ,土質と作物との関係を知る。

 6.その土地の切り通し,堀割り,貯水池等を観察し,その由来を聞く。

 7.古代人や未開人の耕作法について,話を聞いたり読んだりする。

 8.焼畑農業を観察してそのわけを聞く。

 9.自分の家で開墾をした時のことを作文に書く。

 10.その土地の樹の年齢について,古くから住んでいる人々に聞く。

 11.木の切り株を見て,その年齢を知る方法を発見する。

 12.郷土の植林を見て,いつ植えられたか,役に立つまでにはあと何年かゝるかを知り,話しあいをする。


(四) 不便な土地の有様を知る。

 1.山奥や離れ島に住む人の生活について,読んだり聞いたりする。
 
 2.探険隊や漂流者の話を読んだり聞いたりする。

 3.不便な土地に郵便物を運ぶ方法を郵便業務に関係している人から聞く。


問題五 困難な環境のもとでいろいろな物や施設を使うには,私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 困難な環境のもとで物を取り扱う方法を見つける。

 1.児童に現在不足している学用品について話しあう。

 2.鉛筆・紙その他学用品の不足を補うために工夫をし実行する。

 3.家庭で使う燃料の種類と量とを調べる。

 4.掃除道具を作る。

 5.家や学校の垣根を作る。

 6.昔からききんの時に使われた食物を調べ,今でもそれが用いられるかどうか明らかにする。

 7.まだ一般には用いられていない自然の資源たとえば野草・海草・こん虫・魚・枯れ葉・枯れ枝などを集める。

 8.自分たちの育てた野菜や採集した食物で昼飯を作り,いっしょに食べる。

 9.廃物利用のよい例を集めて展覧会をする。

 10.教科書を保護する方法を工夫し実行する。

 11.現在家庭で計画的に配給されているものを調べて表にする。

 12.着物を長持ちさせて母を助ける。

 13.くつ下やその他の簡単な衣類を洗う。

 14.キャンプ旅行の計画をし,準備をとゝのえ実行する。

 15.ガラスのない窓をなおす方法を話しあい実行する。


(二) 資材保存の方法を見つける。

 1.家庭に貯えられる食物の種類を挙げる。
 
 2.家庭で行われている食料貯蔵法を報告する(乾燥・漬物・冷凍・土むろその他)

 3.アラスカ,アフリカ,スカンヂナビヤ等他国で使われる食料貯蔵法について読み,報告する。

 4.貯蔵された食料が児童や家族たちの役に立った時のことを話す。

 5.食用になる野草を採集して乾したりする。

 6.魚肉,野菜,果実を保存するいろいろな方法,すなわち冷凍,くん製,乾燥,かん詰,塩づけ等を示す図を作る。

 7.乳製品の種類を挙げ,その保存に必要な事がらを話しあう。

 8.いろいろな地方や季節で食料を冷凍する方法の違いを知る。

 9.夏の昼食時に飲む清涼飲料水を準備する。

 10.冬,弁当を温かくしておく方法を工夫し,そのための施設を作る。

 11.いろいろな漬け物を調べ,試食する。

 12.ききんに備えて貯えられている特別の食料を集めて展覧する。この際外国ではどんなものがあるかも聞く。

 13.郷土のごうくら(郷倉)を観察しその由来を聞く。

 14.倉や長持ちや唐びつの見取図を書く。

 15.みそやしょう油が食物を保存することのできるわけについて話しあう。


(三) 商業の発達について知る。

 1.郷土で行われている物々交換の表を作る。

 2.未開人や古代人の物々交換の話を,聞いたり読んだりして,物々交換や交易と探検や発見との関係について考える。

 3.貨幣や紙幣の発達についての話を,読んだり聞いたりして,その実物あるいは絵を集める。

 4.郷土における見返り物資となる品物の生産法を調べる。

 5.自分の都道府県の移出品と移入品を調べ,製品と原料とに分けて図表に作る。

 6.その土地で,運輸が発達した結果食料の種類がどのようにふえたか調べる。

 7.商業を中心として発達した部落や町を調べて地図に書きこむ。

 8.昔の職業を図表に作る。

 9.昔の(例えば武蔵国)の話を読んだり聞いたりする。


問題六 交通運輸の道すじはどのようにしてきまるか。

~学習活動の例~

(一) 地理的条件が交通運輸の道すじに及ぼす影響を知る。

 1.家や学校の附近にある道路の略図を作り,その行先や幅を調べて略図の中に示す。

 2.町(村)の道路を示す地図を作り,自動車が通行できるものを特に区別する。

 3.附近の水路を地図に示し,どんな舟が通れるか調べる。

 4.パルプ地図か砂地図で,郷土の地勢と道路や鉄道をあらわし,地理的条件が交通運輸に及ぼす影響を観察する。(地図は大きいほどよい。)

 5.昔の親しらず,子しらずの話を聞く。

 6.昔の街道について話を聞き地図に書きこむ。

 7.宿駅や一里塚の話を聞き地図に示す。近くにあればその跡に行って見る。

 8.郷土から江戸や大阪へ行く旅の話を聞いたり,読んだり,それに関する絵を集めたりする。

 9.「昔の旅」を劇にする。

 10.関所の話を読んだり聞いたりして劇化する。

 11.山の道のない場所と道のある場所とを比べて,道はどんなところに発達するかということを話しあう。

 12.郷土に塩が運びこまれて来た道すじを発見する。

 13.汽車や電車がなかったころの陸運や水運について話しあう。

 14.大和やその他のある地方が早く開けた原因について話を聞く。

 15.鉄道の開通によって,その都市町村や昔の宿駅がどのように変わったかという話を聞き,それについて話しあう。

 16.道路や水路の発達に貢献した人(行基,川村瑞軒,伊能忠敬など)の話を読んだり聞いたりする。


(二) 交通の自然条件克服について調べる。

 1.青の洞門の話を聞いたり読んだり劇にしたりする。

 2.トンネルのある所を旅行した話をする。

 3.(できれば技師を呼んで)トンネルを作る話を聞いたり,あるいは本を読んだりする。

 4.日本や世界の有名なトンネルを調べその長さを表にする。

 5.海底(あるいは川底の)トンネルの話を聞き絵を集める。

 6.トンネルの附近の地勢を見て,トンネルがどのように交通路を短縮したかを発見する。(地図または実地の調査による。)

 7.アジアやアメリカへの新しい交通路を発見する物語を読む。

 8.大井川やその他の川について橋のできたことがもたらした交通上の変化に関する話を聞く。

 9.大井川やその他の川の渡し場の話を読んで劇化する。

 10.いろいろな橋の絵や写真を集めて展覧する。

 11.世界の有名な橋の絵を集め,それについて話を聞く。

 12.運河を見学する。

 13.オランダやヴェニスや中国の運河の話を聞く。

 14.雪崩の話を聞いたり読んだりしてそれについて話しあう。

 15.雪崩を防ぐ防雪林や雪よけトンネルを見学したり,その話を聞いたりする。

 16.砂で雪崩の実験をしその対策を話しあう。

 17.昔の街道と現在の鉄道とを地図に書きこんで比べる。

 18.人力車の発明と改良について話を聞く。

 19.道しるべになる星や月や太陽の話を読んだり実地に調べたりする。

 20.航海や探険でコンパスが役立つ話を聞いたり読んだりする。


問題七 ほかの土地の人と仲よくするには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 日常接触するほかの土地の人々を挙げてみる。

 1.町村別部落別の友人の名簿を作り且つそれを示す地図を作成する。

 2.部落の間に行われている競争とそのわけについて話しあう。

 3.ほかの町村から通学している者はその理由を話す。

 4.級友や現在町(村)に住んでいる人の中でほかの土地の出身者を挙げる。

 5.それらの人たちが,なぜ現在の場所に住むようになったか話しあう。

 6.その土地に通勤その他で毎日やって来る人々を表に作る。


(二) 親しい関係にある他の土地の人々を挙げてみる。

 1.親類や仲のよかった友だち,級友などで今はほかの土地に住んでいる人々の表を作る。
 
 2.今まで交際しているほかの土地の人々の話をする。

 3.別の土地に移られた先生方の様子を聞く。

 4.用水池や用水ほりの水をいくつかの部落や村の人々が協力してたいせつにしている有様を作文に書く。


(三) ほかの土地の人との間に親しい関係を作る。

 1.部落同志町村同志で協力している仕事の話を聞く。
 
 2.都市の人といなかの人のよい点をおのおの挙げてみる。

 3.都市に住む人の生活といなかで農,漁,鉱業などの仕事にたずさわる人の生活とを比較する。

 4.ほかの土地に住んでいる人たちからの手紙や葉書を掲示する。

 5.ほかの土地に住んでいる人たちからの贈り物について話す。

 6.ほかの土地に住んでいる人たちに通信したり贈り物をしたりする。

 7.新しくその土地に来た人の不便とその人たちが居心地よくなるための手段とについて話しあう。

 8.戦災地に行き親類や友人知己の消息をたずねる。

 9.外国の児童に手紙を書く。


問題八 私たちの祖先に寺社はどのような役目を果たしたか。


~学習活動の例~

(一) 寺社が有用だということを知る。

 1.自分の町(村)ではお寺やお宮がどんな場所にあるか,また昔はどこにあったかを,話しあい絵図に書き入れる。
 
 2.自分の町(村)のお寺やお宮やほこらなどの由来と伝説を聞く。

 3.お祭の時子供だけの余興を計画し実行する。

 4.お祭に集まって来る商人を観察しその人たちについて話しあう。

 5.お寺やお宮のそばにはどんな商店があるかを観察し絵や略図を書く。

 6.年の市,とりの市,豊年祭を見てその話を聞く。

 7.門前の話を読んだり聞いたりする。

 8.お祭の時の儀式にはどんな人が集って何をするかを話しあいその有様を絵に書く。

 9.(できたら老人を呼んで)寺子屋の話を聞く。

 10.寺子屋の歴史を聞いたり絵を見たりする。

 11.自分の学校の歴史を調べる(いろいろな種類の学校の話を聞く。)

 12.老人を呼んで,昔お寺の鐘の音がどんなに人々の役に立っていたかを聞く。

 13.除夜の鐘を聞いてそれに関する伝説を調べる。

 14.お寺の和尚さんを呼んで,昔お寺と土地の人々との関係がどんなふうであったか話してもらう。

 15.仏教渡来の話を聞いてそれを劇にする。

 16.すぐれた坊さんの話や世の中のためになった坊さんの話を聞く。


(二) 古代の信仰と原始信仰について知る。

 1.アイヌの宗教や風習について聞く(もし見ることができれば見る)。

 2.かまどの神,火の神その他の神について伝説を聞く。

 3.日本各地の伝説を聞いたり読んだり劇にしたりする。

 4.いろいろな伝説を歌に作ったり紙芝居にしたりする。


問題九 社会生活を統制して行くには,どんな施設が必要か。

~学習活動の例~

(一) 家庭におけるいろいろな役割の分担について知る。

 1.家庭を楽しく気持よくするために父親や母親のしている仕事を挙げてみる。
 
 2.子供たちやそのほかの家族の家庭における役目について話しあう。

 3.家庭を楽しく気持よいものにするのに必要な,そとからの援助について話しあう。(たとえば物資調達・危険防止・衛生・教育・厚生等)


(二) 学校におけるいろいろな役割の分担と統制とについて知る。

 1.学級の委員,役員,当番の一覧表を作る。

 2.委員や当番などの仕事について話しあい,家庭ではだれがその役目をしているか考えてみる。

 3.学級自治会の仕事について話しあう。

 4.受持の先生の仕事について報告しどうすれば手伝えるかを話しあう。

 5.学級新聞を作る。


(三) 町村における統制について知る。

 1.町村(学区)の地図を作り,そのなかに部落の区分を記入する。
 
 2.その地図に役場・警察・組合事務所・郵便局・消防署等の符合を記入する。

 3.役場に行っていろいろな係りのあることを知りその仕事を見学する。

 4.市長村長の名を挙げる。

 5.町(村)の役員の種類を表にする。

 6.昔の村や市町村制の沿革について読んだり聞いたりする。

 7.役場に行って市町村に尽くした人の話を聞き写真を見る。

 8.学校に記念室を設けてその土地に功労のあった人を記念する。


(四) 社会生活を維持するために必要な諸施設について知る。

 1.自分の府県の郡市別の地図を作る。

 2.日本の府県別地図を作る。

 3.府県や市町村の役人および議員を訪問してその職責をたずねて,学級に報告する。

 4.消防署,警察署,配給所その他の施設を訪問してその仕事に関する知識を集める。

 5.交通巡査を招いて交通の安全に役立つような子供たちの仕事について聞く。

 6.消防署の人を招いてどうしたら火事が防げるか,家庭や学校などで火を使う時にはどんな注意がいるか話しあう。

 7.電話局があれば見学する。


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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その8 TRANSFORM~

 change だけでも刺激的な言葉だと思いますが,

 transform ともなると,完全に変わってしまうことを表します。

 変化に鈍感な,あるいは,変化に対して拒絶的な反応をしやすい学校の教師たち・・・

 本当に,この世でもっとも「保守的」だと思われる教師たちにとって,

 あまりなじみがない単語かもしれません。

 しかし,

 The development of information technology has transformed how people communicate.

 という例文にふれたりすると,

 それは学級づくりにおいても目指すべき「進歩」「進化」なのかもしれない,と思えてきます。

 今,多くの学校が「言語活動の充実」をテーマとした研究や研修に取り組んでいますが,

 これを支えるのは「豊かな人間関係」です。ここを抜きにして,「言語活動の充実」はあり得ません。

 だから,本当の意味で「言語活動の充実」にすぐに取り組める学校というのは,そう多くはない。

 「ひどい授業」をよく見てきましたが,

 この背景には「ひどい学級経営」があるとも言えるのです。

 「もっとましな学習活動ができないのか」という指摘は,

 指導している教師ではなく,生徒に向けて発することができるような授業さえあります。

 こういう学級に必要なのは,まさに

 transformation  です。


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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小3・社会科の学習活動例

問題一 世の中で一人前になるには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 家で自主的にふるまう。

 1.家でしているお手つだいを話す。
 
 2.家でする自分の時間割を作る。

 3.三年生の児童が自分でできる仕事について話しあう。

 4.自分たちでできる仕事の表を作る。

 5.家の人たちの誕生日などに,お祝いを言ったり,贈り物をしたりする。

 6.一人でお使いに行ったことを話しあい,学級の者が一人でお使いに行った場所を書いた地図を作る。

 7.簡単な家具の修繕法や,簡単な家庭用具の作り方を話しあう。


(二) 学級で自主的にふるまう。

 1.学級内で分担している自分の仕事を話す。

 2.学級内での仕事の分担をきめる。

 3.学級日誌を作って,交替でつける。

 4.指導者を選んで,その下で協力する。

 5.クラス会を開いて,遠足,誕生会その他の学級活動の相談をし,各自の分担をきめる。

 6.教室をきれいに気持よくするため,ともに働き,工夫する。

 7.病気欠席の級友に見舞状を出したり,贈り物をしたりする。

 8.学級生活についての簡単な決議事項を公表する。

 9.ほかの教室を見てその組のよい点について話しあう。


(三) 遊びなかまの間で自主的にふるまう。

 1.自分の遊びなかまを報告し,いろいろな場合のきまりを話す。

 2.いろいろな団体活動を話しあい,それぞれの規則を研究する。

 3.遊びなかまとする楽しみについて話しあったり,書いたりする。

 4.自分がどんなふうになかまのために尽くそうとしているか,ということを報告する。

 5.指導者としての責任と資格とについて話しあう。


(四) 進んだ勉強法を実行する。

 1.知りたい事の表を作り,知ることができたものにはしるしをつける。

 2.学校に不思議なもの,おもしろいものを持って来て,みんなで研究する。

 3.日の出・日没・気温・天候,豆の発芽,おたまじゃくし・養蚕などの共同観察と実験を計画し実行する。

 4.新聞や雑誌からためになる切り抜きをとって,それを掲示板にはる。

 5.疑問が起ったらすぐノートに書きつけておき,できるだけ早く解決できるようにする。

 6.自分だけのために,家で研究する問題や時間を作る。

 7.自分が読んだ話で,みんなの役に立つと思うものを,ほかの人に話して聞かせる。

 8.学習自治会を作って,勉強をする時のさまたげになるものを克服するように協力する。


問題二 適当な着物を選ぶには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 着物の原料を知る。

 1.子供の着ているいろいろな着物を見て,それぞれの材料について話しあう。
 
 2.着物の材料はどんなものから作られているかということを,本を読んで知る。

 3.土地の工場に行って,着物や布地が作られる有様を見学する。

 4.も綿・絹・麻・羊毛・皮などで作られているいろいろの品物を見て,表に作る。

 5.衣服地の原料を絵図に書き示す。

 6.簡単なものをせんたくする。

 7.お母さんがせんたくの時どんなことに注意し,どんなことをするかを話しあう。

 8.仕立屋や洋服屋に行って,衣類の仕立方,仕立道具,ミシンなどを見て報告する。


(二) 天候,気候に応じた着物を用いる。

 1.季節季節の衣類を絵図に書き示す。
 
 2.天候の図表を作り,人が天候に応じて衣類をとりかえる有様を見,それを書き入れる。

 3.寒帯・熱帯各地の着物の型を示す絵図を作る。

 4.お人形に季節季節や特別な時の着物を着せて見る。

 5.雲と風を観察して,その関係を話しあう。


(三) 着物の種類を知る。

 1.いろいろの職業の人の服装を絵に書き,話しあう。
 
 2.都会やいなか・山村・漁村それぞれの特徴を示す衣類について話しあう。

 3.祝祭日に人々が着る着物について話しあう。

 4.寝巻にどんなものを使っているかを報告し,一番適当だと思うものについて話しあう。

 5.お祭や儀式,行事などの時見た,わが国の昔の着物類の絵を書き,話しあう。


問題三 家はどのようにして建てるか。

~学習活動の例~

(一) 家はどんなふうにして作られているかということを知る。

 1.家や学校の間どりを簡単な見取り図に書く。

 2.材木・れんが・ガラス・石・土・わら・紙・鉄その他の金属・布地・その他家の各部に使ってある資材を見つけて図表を書く。

 3.家を建てる有様を見て,絵に書く。

 4.家を建てるのには,どんな人が入用かということを話しあう。

 5.炉やかまど,暖房用具の絵を書き,それぞれの特徴を話しあう。

 6.家庭用照明具の絵を書いたり集めたりする。

 7.いろいろな照明具を比べて,どれが一番明かるく,気持がよいかを調べる。

 8.寒さや暑さ,湿気,虫やねずみなどによる破損に対処するため家で行っている方法について話しあう。

 9.学校をきれいで,換気よく,気持よくしておくために,各自が活動できる計画表を作る。

 10.校庭の水はけをよくするため,みぞを掘って,それに踏み板をわたす。

 11.室の改善のために,ペンキや壁紙を選んで買う。

 12.家のこわれた個所をその原因を考えながら修繕する。


(二) いろいろな家の形を知る。

 1.郷土に建っているいろいろな家の絵を書く。

 2.農家・漁師の家,その他の模型を作る。

 3.気候の違う各地の家の絵を集めて,その構造や建築材料を調べる。

 4.わが国の家と外国の家を比べて,似た点を話しあう。

 5.日本の家の建て具と外国のそれとの相違と,その相違の原因を話しあう。

 6.探険家の住居の絵を集め,どんな用意をして行くのかを調べる。

 7.テントを張ってみる。


問題四 動植物はどのように人間に頼っているか。

~学習活動の例~

(一) 動物がどんなふうにして身を守っているかということを知る。

 1.きりん・北極ぐま・らくだなどが自然環境に適応した形を持っていることの話を読んだり話しあったりする。
 
 2.うさぎや雷鳥その他の動物が,季節に応じてその色や毛や羽を変える有様を観察する。

 3.ちょう類の一生を調べて絵に書く。

 4.鳥類の移住を観察して報告を書く。

 5.すゞめ・つばめ・からす・とび等,虫や獣の害を減らしてくれる野鳥の効用を話しあう。

 6.なぜ動物は冬になると移住したり,冬眠したりするかを話しあう。

 7.かえるの卵を水の中で育てて,かえるになるまでの有様を観察する。

 8.ありの巣を観察して,ありが食物を集めたり貯えたりするようすを調べる。

 9.いろいろな動物の物のたべ方,眠り方を調べて,話しあう。

 10.毒や角・肢・歯・尾・羽・色や模様・悪臭・針など動物が身を守るために持っている道具の話を読んたり,見たりする。

 11.へびやくも・がま・もぐら・毛虫などのようにあまり気持のよくない動物でも,何か人間の役に立っていることを発見する。

 12.動物の巣について読んだり話しあったりして,なぜあるものは地下に,あるものは地上,あるものは樹上,あるものは水中に巣を作るかを調べる。

 13.かたつむりを見て,そのからの効用を話しあう。

 14.鳥の巣箱を作って,適当な所に置く。

 15.校庭のすみに動物小屋を作って,いろいろな動物を飼う。

 16.野外遠足をして,いろいろな動物の巣を見る。

 17.動物の親が子の世話をする有様を読んだり話しあったりする。

 18.菜園の害虫・害鳥・害獣の話を読んだり聞いたり話しあったりして,その表を作る。

 19.動物になったつもりで,動物は人からどんなふうにされたいか,ということを話しあう。


(二) 植物の生育するようすを知る。

 1.いろいろな種を集めて,どれがどんなふうにまかれるのかを話しあう。

 2.種を植えて,どんなふうに育つかを調べる。

 3.別々な場所に種子を植えて,日光や水のあんばいが,どんなにその生長に影響があるかを調べる。

 4.野外遠足をして,しめった土地,かげった土地,かわいた土地,日当たりのよい土地に育つ植物を見て,その区別を知る。  

 5.暑くて,湿気のある地方と,乾燥地帯の植物の生態の違いを知るため本を読む。

 6.熱帯・温帯・寒帯・低地・山地を世界地図で調べ,おのおのに生えている植物の種類を知る。

 7.とげ・いが・から・木皮・毒・悪臭等,植物が身を守るための方法を読んだり,話しあったりする。

 8.箱庭を作って若い雑草を植え,それが繁茂して行き,やがて枯れて土になる有様を観察する。

 9.実験に使った材料の量を記録しておく。

 10.常緑樹・落葉樹・一年草・多年草の表を作る。

 11.植え木鉢,植え木箱を作る。

 12.学校や家の植え木ばちや庭に植物を植える。

 13.公園その他公共地や他人の家の,木や草をいためないための方法と,なぜたいせつにしなければならないか,ということを話しあう。


問題五 動物はどのように人間の役に立っているか。

~学習活動の例~

(一) 食用に使われている動物のことを知る。

 1.今までに食べたことのある動物性食料をあげて報告する。

 2.食用動物の種類をあげる。

 3.魚をとるいろいろな方法を読む。

 4.魚市場やさかな屋に行って,どこから,どんな方法で,どんなふうにして魚貝類が運ばれて来るかを知る。

 5.山村・漁村・都市その他で手に入れることのできる動物性食料の表を作る。

 6.日本料理・中華料理・西洋料理のおのおのによく使われる動物性食料の絵を書く。

 7.各自が好きな動物性食料の味について話しあう。

 8.家や学校で,山羊・羊・鶏その他の世話をする。

 9.鶏や山羊や牛が,どんなうまいたべ物を私たちに提供しているか,その種類について話しあう。

 10.搾乳場に行って,牛乳のとり方を見る。

 11.ふだんの食事にどんな肉や魚があったかを記録する。

 12.さかな屋や肉屋に,魚や肉がどんなふうにして配給されて来るかを知る。


(二) 旅行,運搬に使われている動物のことを知る。

 1.土地の人々が動物を運搬のために使っている有様を書いた絵本を作る。
 
 2.山地では動物をどんなふうに運搬や交通のために使っているかを知る。

 3.さばくの旅でらくだが使われている有様を知る。

 4.雪で犬やとなかいが交通,運搬に使われているようすを知る。

 5.牛や馬が交通,運輸にどんなに役立っているか,ということを話しあう。

 6.世界各地でいろいろな動物がいろいろな方法で交通,運搬に使われているようすを示す絵巻物を作る。

 7.犬がどんなに忠実な動物か,ということを話しあい,その家畜化した歴史を調べる。

 8.犬が人間を助けるいろいろな場合のことを話しあう。

 9.伝書ばとの話を読んだり,伝書ばとを見たり飼ったりする。

 10.牛や馬のいろいろな用途を絵に書く。


(三) 動物がどんなに人々を楽しませているか,ということを発見する。

 1.家で飼っている愛がん動物を観察して,それについての話を書く。

 2.世界各地の子供が飼っている愛がん動物の話を聞いたり読んだりする。

 3.動物園や水族館に行って,その絵巻物を作る。

 4.さるとさるのなかまの統率者の話を読む。


(四) 衣類の材料に使われている動物のことを知る。

 1.着物類の材料を提供している動物の絵を集めたり,書いたりする。

 2.いろいろな毛皮獣の話を書いた本を読む。

 3.うさぎ・しか・とら・くまその他の狩の話を聞く。

 4.学校でうさぎの世話をする。

 5.動物の毛皮や皮が高価な理由について話しあう。

 6.熱帯・温帯・寒帯等,各地で使われている動物性衣料の話を読み,地図で調べる。

 7.毛皮製品を調べ,一番よい手入れ法を発見する。

 8.皮革製品を調べ,一番よい手入れ法を発見する。

 9.学校で養蚕の実験をし,農家に行って養蚕を見学する。

 10.土地の絹製品工場を見学する。

 11.養蚕業の現状を調べたり聞いたりする。

 12.まゆの選択や仲買人への売り渡しの状況,そのための準備を見たり聞いたりし,生糸や絹布製造の過程の話を聞く。

 13.絹の歴史を,聞いたり読んだりする。

 14.貝がらの用途を発見する。

 15.貝がら細工を作る。


(五) 農業に役立っている動物のことを知る。

 1.牛馬がどんなに農耕の役に立っているかを見て報告する。

 2.動物が作り出す肥料について話しあう。

 3.農家にはどんな動物が飼ってあるか,それがどんなふうに役立っているかということについて報告を書く。

 4.各地の動物性産物を示す地図を作る。


問題六 いろいろの物を手に入れるには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) どんなふうにして食料が提供されるかということを発見する。

 1.その土地で作られるいろいろな野菜の図表を作り,自分の家で作られているものにしるしをつける。

 2.菜園を計画し,耕作,栽培,手入れをする。

 3.米・麦・麦粉・じゃがいも・さつまいもその他の主食を示す図表を作り,一人一日の配給量を書きこむ。

 4.青物市場に行って,よその土地から来た野菜や果物を見る。

 5.家で食べている食糧で,よその土地でできたものを報告する。

 6.ある種の植物がなぜその土地で育たないのか,その理由を発見する。

 7.ある食料がなぜほかの土地から移輸入されなければならないか,その理由を知るため本を読んだり話を聞いたりする。

 8.気候の違う土地で育っている食用植物の話を読んだり聞いたりする。

 9.地震・台風・大水・かんばつ・火山・さばく・山岳地帯等,食糧生産に影響を及ぼす自然力について聞いたり話しあったりする。


(二) よその土地でできるものが,どんなふうにして移入輸入されるか,ということを知る。

 1.砂糖・塩・麦粉・絹織物・綿織物・毛織物・石炭・石油等や紙・鉛筆・鉄製品等土地で使われているものがどんなふうにして作られるか,どこから来るかを発見する。

 2.おもしろいと思って特別に調べている物の生産地を示す地図を作る。

 3.物がその土地に入って来るものをさまたげている障害を発見する。

 4.物々交換の話を聞く。

 5.駅や港,倉庫などに行ってどんなものがよその土地から来,どんなものがよその土地に送り出されるかを見る。

 6.近所にある工場の人を学校によんで来て,原料品がどこからどんなふうにして持って来られ,製品がどこに送られて行くのか,話をしてもらう。

 7.工場の製産状況や土地の特産物を見て,それについて書く。


(三) よその土地から来ている品物について調べる。

 1.食料・衣料,その他の日用品等,よその土地から移入輸入しなければならない物を調べて図表を作る。
 
 2.よその土地の特産物を調べるため絵を集めたり,本を読んだりする。

 3.日常使っている物の原産地を示す絵地図を作る。

 4.外国の産物を集め,展覧会を開く。

 5.外国に行ったことのある人をよんで,外国で買った物を見せてもらい,その話を聞く。

 6.博物館や商品陳列所に行って外国の産物を見,それと自然環境との関係を調べる。

 7.輸出向けの産物を調べる。


問題七 水や電気やガスなどを私たちはどう使えばよいか。

~学習活動の例~

(一) 水の効用を知る。

 1.日常生活に水がなくてはならないことについて話しあう。

 2.あらゆる生物には水がなければならないという話を聞いたり読んだりする。

 3.植物の成長に水がなければならないことを知るための実験を計画し実施する。

 4.世の中に水がなかったらどんなことが起るかということについて話しあう。

 5.水がどんなふうに使われているか,家や学校で水を手に入れるのにはどんなふうにしているかということを観察し報告する。

 6.飲用水を保護するため,家や学校で使っている方法を話しあう。

 7.わき水や井戸のある場所を調べ,井戸を掘るにはどんな所がよいかということを話しあう。

 8.水道をとおして,家まで水がどんなふうにして運ばれて来るかという話を聞く。

 9.貯水池・配水所・浄水池を見学する。

 10.その土地のかんがい状況を示す地図を作る。

 11.動力源・飲料・かんがい・清掃等水の効用を話しあう。

 12.水の保全法について話しあう。

 13.水に不便な所を調べ,その人々がどんなに苦労して水を手に入れているかということを話しあう。

 14.水道料金を調べる。

 15.水を手に入れるいろいろな方法を見つけ比べあって,どれが古い型でどれが新しい型かということを話しあう。


(二) 水の害を発見する。

 1.洗たくや飲用,耕作用に適しない水を区別し,その原因を知る。
 
 2.近所のたまり水を調べて,汚物が入っているかどうかを見る。

 3.下水をためておくとどんな弊害があるかを話しあう。

 4.水たまりや,汚い流れで遊ぶのがなぜよくないかということを話しあう。

 5.なま水や悪い水を飲んで腹をこわした経験を報告する。

 6.水には病気を媒介することがあるという話を読んだり聞いたりする。


(三) 水をじょうずに使う。

 1.家や学校で水をじょうずに使っている方法を話しあう。
 
 2.顔を洗ったり,ふろに入ったりする時に,水やお湯をじょうずに使う順序について話しあう。

 3.航海をしたことのある人を呼んで,船中では水をどんなふうに使うか,話してもらう。

 4.家で一日に使う水の量を用途別に調べる。

 5.家で一箇月に使う水の量を調べ,それとその料金を記録する。

 6.自分が毎日飲む水やお湯の量を記録する。

 7.教室を掃除する時の水の運び方,使う順序,残り水の処理のしかた,などについて話しあう。

 8.用水路をこわしたり,用水をよごさないために必要な注意事項を報告する。


(四) 電気の効用と使用法について学ぶ。

 1.電気の効用を話しあう。
 
 2.停電の時,家や学校でどんな故障が起るかということを報告する。

 3.家の安全器やスイッチのありかを知る。

 4.家で使っている電気を利用した器具の表を作る。

 5.電気アイロン・電熱器・電動機等の電気器具や電気装置使用上の注意事項を話しあう。

 6.配電会社の人の仕事と漏電による危険についての話を読んだり聞いたりする。


(五) ガスの効用と使用法を学ぶ。

 1.ガス製造の話を読む。

 2.家にあるガスパイプやガスコンロを調べて表を作る。

 3.家で一筒月に使うガスの量とその料金を記録する。

 4.ガス使用上の注意を聞く。


問題八 土地によって交通運輸の方法がどんなに違っているか。

~学習活動の例~

(一) 土地で使われているいろいろの交通運輸の方法を発見する。

 1.物を運んで行ったり来たりする人や動物や車を見て記録しておく。

 2.あるものが運ばれるにはどんな方法があるかを表にして書く。

 3.ある方法で(例えば牛車,リヤカー)運ばれるものにはどんなものがあるかを表記する。

 4.駅に行ってどんな物が運ばれて来るか,どんなふうにして運ばれて来るかということを見たり聞いたりする。

 5.駅に行って,汽車または電車で,人や物がどんなふうに運ばれているかを見る。

 6.駅の付近の絵地図を作る。

 7.山の上や不便な所にある家から物が運ばれて来る有様について話しあう。

 8.車の発明と発達に関する話を聞く。

 9.車輪の効用とその用途について話しあう。

 10.交通を阻害している障害物を示す絵の掲示板を作る。

 11.交通を阻害する事がらについて話しあう。

 12.小包を作るお手伝いをする。


(二) 山岳地方の交通運輸の方法を知る。

 1.登山の時の物の運び方,いろいろな困難や楽しみについての体験を報告する。

 2.山の茶店で売っている品物とその値段を表にする。

 3.荷物を運ぶ動物の絵を書く。

 4.薪や炭が運ばれて来る方法を話しあう。

 5.山岳地帯で車がそんなに役立たないわけを話しあう。

 6.ケーブルカーやその絵を見る。


(三) 河川や湖沼地帯の交通運輸の方法を知る。

 1.渡し場や波止場に行っていろいろな船を見る。

 2.交通機関としての車・船・動物それぞれの効用を話しあう。

 3.橋や渡し舟の絵を書く。

 4.船の旅のおもしろさを話す。

 5.運河の話を読む。

 6.船で運ばれる物を見る。


(四) 大洋航海の船の絵を集めたり,話を読んだりする。

(五) 熱帯や寒帯地方の交通運輸について話を読む。

(六) さばくの旅の話を読み,隊商の絵を見る。

(七) 各国の旅行の方法を示した映画を見る。


問題九 ほかのなかまの者と仲よくするには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 自分たちのなかまをよくして行く。

 1.友だちの名を上げ,遊ぶ時にうまく行ったこと,うまく行かなかったことを書く。

 2.いっしょに勉強する友だちの名を上げ,いっしょに勉強する時のよいこと悪いことを話しあう。

 3.いっしょに仕事をする友だちの名を挙げ,いっしょに仕事をするのがどんなによいかということを話しあう。

 4.自分のなかまとほかのなかまを比べて,どっちがよくなかま同志で尊敬しあっているか,仲よくしているかを考え,その結果がどんなふうに現われているかを報告する。

 5.なかまで相談して,学校や土地のためになることを計画し,実施する。

 6.近所の掃除をし,学級備品をとゝのえ,学校の燃料に使うための枯れ枝を集める。

 7.なかまのためによい意見を出し,それをやりとげた人の話を見つけて,級友に読んで聞かせる。

 8.読書クラブ・運動クラブ・科学クラブといったクラブを教室で作り,これを活用する。

 9.教室掃除・用紙分配・動植物の世話等を処理するための学級委員を選ぶ。


(二) ほかのなかまの者と仲よくする。

 1.なかまの者と遊んだり,勉強したり,仕事をしたりした経験を話しあう。
 
 2.なかま以外の者とうまく行かない理由を発見し,その解決の方法を話しあう。

 3.なかま以外の者を呼んで来て,いっしょに遊んだり勉強したりする。

 4.ほかのなかまと気持よく,進んで協力する。

 5.新しい友だちをなかまにひきあわせる。

 6.引揚者を土地の新しい生活になじませる方法を話しあう。

 7.学級にいる引揚者の子供に,紙ばさみとかふとんとかいった物を作って分けてやる。


問題十 国や宗教上の祝祭行事は各地で,どのように行われているか。

~学習活動の例~

(一) 土地の祭や年中行事について学ぶ。

 1.国民的祝祭日・地方的祭日及び年中行事の暦を作り,おのおのの日に子供がする仕事や遊びを書き入れる。

 2.国民的祝祭日や地方的祭日の由来の話を読んだり話しあったりする。

 3.国旗の立て方を学んだり,祝祭日の歌を習ったりする。

 4.正月のお飾りを用意し,その由来を聞く。

 5.神社・佛閣・教会で行われる年中行事を見たり,聞いたり,話しあったりする。

 6.家の人たちが祭や行事の用意をする有様,どれくらい前から用意をしはじめるか,といったことを話しあう。

 7.祭や行事の時の特別なごちそうについて話しあい,その由来を聞く。

 8.祭や年中行事の時の特別な風習や行事を話しあう。

 9.祭や行事のある日によそからやって来る人について話しあう。

 10.祭や行事の日に使われる特別な器具や装飾を見たり話しあったりして,その由来を聞く。

 11.学校で節句その他の特別の日に父兄を招待する会を計画し実施する。

 12.祭の日に使った小づかいについて報告する。


(二) よその地方の祭や行事について学ぶ。

 1.よその土地から引っ越して来た人を呼んで,よその土地の祭や行事の話を聞く。

 2.自分が見て来たよその土地の祭の絵をみなに聞かせる。

 3.日本各地で行われている珍しい祭の絵を見たり,話を聞いたりする。


(三) 外国の祭や行事のことを学ぶ。

 1.外国に行ったことのある人を呼んで,外国の祭や行事の話をしてもらう。

 2.世界各地のクリスマスや新年の行事の話をしてもらう。

 3.欧米人がどんなにクリスマスを待ちわび,それを楽しみにしているかの話を聞く。

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 小学校3年生でも,「ここまで!」と驚くような学習活動を想定していますね。

 もう現在の中学生レベルを超えているのではないか,というものまであります。

 こういう活動は,学校だけで完結するものではもちろんありません。

 家庭の教育力の大切さを,あらためて痛感させられます。

 今は,何でも,「じゃあ,塾で」っていうことになってしまうのですが,

 お金がなくてもできること,親としてできることを真剣に考え,実践できるような時代に生まれてきたかったですね。


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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小2・社会科の学習活動例

 さすがコアになる教科。

 小学校2年生で,クラブをつくり,その規則までつくらせる教育がイメージされていました。

 法教育はここから始まっていたわけですね。

 掲示板に,時事問題を掲げるというのも,すごいことです。

 このようなレベルの小学校のカリキュラムを実践するなんていったら,大人気校になるかもしれません。


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問題一 世の中になれるには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 児童の使用する場所を見つける。

 1.大きな地図(床や地面に白ぼくやペンキで描いてつくる)を校庭か室内運動場に作り,郷土の街路を示し,主要な建物の小さな模型を配置する。
 
 2.郷土の一部分を模型に作り,そこで模擬的な生活活動を行う。

 3.商店・配給所・線路・(自動車などの)停留所・寺社・教会・警察署・派出所・病院・火の見やぐら・ポンプ置場・学校・郵便局その他郷土の公共建築物を示す大絵図を作る。

 4.家の住所を書く。

 5.よく目に触れる道路標識,方向指示標を読む。

 6.自分のよくお使いに行く場所への道すじを示す。

 7.東西南北の方向を知り,目じるしを作る。


(二) 世の中のためになっている人々とその仕事について知る。

 1.商店ごっこをする。

 2.教師か上級生といっしよにみんなで学級用品を買いに行き,あとでその費用を調べる。

 3.汽車,自動車,電車,船等で働いている人たちについて話しあったり物語を読んだりする。

 4.電気会社や配給所の人のしてくれる仕事について話しあう。

 5.消防署や警察署へ行って消防夫や警察官が人々を護る有様を実地に見る。


(三) 他の人の手助けをする。

 1.自分のできる家業の手伝いを報告する。

 2.お使いがうまくできたことについて報告する。

 3.小さい弟や妹をどんなふうに世話することができるか話しあう。

 4.どんなふうにすれば親や大人たちの手をわずらわさないで自分のことを自分でやれるかを話しあい実行する。

 5.一年生が困っていることを見つけて話しあい援助する。たとえば学校へつれて来てやったり,愉快に遊べるように世話してやったりする。


問題二 私たちはどうしたら健康で安全でいられるか。

~学習活動の例~

(一) 食物を選んだり準備したりする。

 1.成長期の男児女児に適した食物について話しあう。

 2.成長期の子供が毎日たべなければならない食物の表を作る。

 3.郷土でできる食物をとり入れて簡単な献立を作る。

 4.商店や市場に行ってその土地で入手できるいろいろな種類の食物を手に入れる。

 5.付近の農家や農園の有様を見る。

 6.各季節における食物の貯蔵法(かん詰,冷凍,乾燥等)について話しあう。

 7.各季節に家庭で行われる食物の保存のしかたを調べて報告する。

 8.清潔に食物を取り扱うことについて話しあい実行する。

 9.保健上の実施事項について校医や養護訓導及び教師と座談会を行う。

 10.自分の身長体重,胸囲の増大を記録する。

 11.皮膚を鍛練する目的について聞き,その方法を話しあって実行する。

 12.歯科医を招いて歯の衛生に関する話をしてもらう。

 13.用便後,作業後,帰宅後,並びに食前に手を洗う習慣をつける。

 14.皮膚病や眼病になった時,しなければならないことについて話しあう。

 15.換気の必要について先生から話を聞く。

 16.正しい鼻のかみ方を実行する。

 17.毎週互につめを切っているか,きれいなハンケチや手ぬぐいを持っているか調べあう。

 18.手で目をこすってはいけないわけについて話しあう。

 19.昼食の後,静かに話しあったり室内での遊びをしたりする。

 20.道路通行中,乗車中,及び運動場での遊戯中の安全について話しあって,よいやり方を実行する。

 21.火災の訓練をする(どうしたらうまく逃げることができるか,着物に火がついたらどうするか)。


(二) 安全な衣服やはき物を選ぶ。

 1.不適当な衣服やはき物によって生じた危険を示す絵をかく。

 2.ポケットに手を入れていることの危険について話しあう。

 3.汗でぬれた着物を着ていて感冒にかゝった経験を報告する。

 4.雨降りの通学の際,かさやオーバーのために交通事故が起ることについて話しあう。

 5.運動,通学,遊戯にそれぞれ適当なはき物を図で示す。


問題三 草木の世話をしたりそれを利用したりするには,私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 郷土に成育する植物の名をあげる。(たとえば米,麦,野菜,竹,松,桜,杉,梅,その他野生の植物を含み児童の目につくもの)

 1.農民が市場に持って行くもの,また町から買って来るものについて読んだり話しあったり観察したりする。

 2.人間や家畜(牛・馬・豚・やぎ・鶏等)の食料となる植物の絵を書いたり,その展覧会をする。

 3.根,葉,種子等その食用になる部分によって分類した植物の表を作る。

 4.学校給食用の野菜を作ったり持って来たりする。

 5.郷土における木材の使用(土木,建築,製紙等)について読物を作る。

 6.桑の葉と養蚕のことについて読物を作る。

 7.家の各部に使われている草や木を発見し,それについて話す。

 8.教室や家で花をいける。

 9.花屋に行って美しい花の種類を見る。

 10.郷土の花や植木を作っている人の所へ行って鑑賞用の植物を見る。


(二) 植物の世話の仕方を知る。

 1.花園や菜園を作ってその世話をし,日光,雨,肥料及び耕作(土質)の及ぼす影響を見たり話しあったりする。
 
 2.花園や菜園にとって有益な動物や有害な動物(こん虫,小鳥,鶏等)について観察したり,読んだり話しあったりする。

 3.家庭で採集した種子や球根や苗を学校に持って来て友達と交換する。

 4.種子や球根を水で育てて種子や球根の中にある養分の働きを観察する。

 5.種子をまいてその発芽する有様を見る。

 6.戸外観察を行って,いろいろな種子のいがや,からなどのおおいを見る。

 7.家で行われている草や木の霜除けや風除けのいろいろな方法を調べて報告する。

 8.噴霧器による害虫駆除,病害予防の方法(郷土で行われているもの)を見たり,それについて話しあったりする。

 9.採ってよい野花を採集し,採ってはいけない野花を実地について調べる。

 10.公園,神社,寺院その他公共の場所の植物を世話する方法について話しあう。


問題四 私たちは日常生活に必要ないろいろなものを,どういうふうに作り,どんなにして分配しているか。

~学習活動の例~

(一) 日常必要な品物について考える。

 1.日常生活に必要なものを挙げる。

 2.母親から家で買うおもな食物の名を聞く。

 3.おやつにたべたい食物を挙げる。

 4.台所に必要な道具にはどんなものがあるか話しあう。

 5.おけとか,たらいとか,飯びつその他,木で作っったいろいろな台所道具を示す絵をかく。

 6.おけ屋に行っておけやたらいの作られるようすを見る。


(二) 茶と果物について調べる。

 1.お茶の産地とか種類等について話しあったり観察したりする。

 2.茶の輸出の話を読む。

 3.茶を売る店の絵をかき茶の値段表を調べる。

 4.茶をつくる話を読む。

 5.茶摘みの唱歌を歌う。

 6.私たちの日々の生活にお茶がなくては困ることについて話しあう。

 7.郷土における果樹を調べる。

 8.暦を作って各季節にとれる果物の絵を入れる。


(三) 日用家具の歴史を発見する。

 1.なべ・かま・茶わん等の大きさを調べる。

 2.自分の家のなべやかまや茶わんがどこで作られたかどこで修理されるかということを調べる。

 3.自分の家のなべ・かま・おけ・たらい・飯びつ・茶わん等が何で作られているかまたいつ買い求められたものか調べる。


問題五 日常生活に必要な品物を有効に使うには,私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 物を長持ちさせるために工夫する。

 1.はき物のはき方について母から受けている注意事項を報告する。
 
 2.家ではどこにはき物をしまつし,またどのように手入れをしているか調べる。

 3.くつ,げた,ぞうりがどのくらいでだめになるか報告する。

 4.はなおのすげ方を学ぶ。

 5.紙,鉛筆,帳面のよい使い方を工夫するために記録を作る。

 6.学校で紙を共同購入してその使用を記録する。

 7.家庭や学校の紙くずを調べその処分法を話しあう。

 8.学級の掃除道具(ほうき・ちりとり・バケツ・はたき・ぞうきん等)の整とんのしかたを調べる。

 9.こわれたおもちゃを持ちよって新しい使い方の工夫を話しあう。

 10.怒った時に他人の食物や所持品,衣服を損ずる悪いくせについて話しあう。

 11.かばんやランドセルを長持ちさせる工夫をし,それについて話しあう。

 12.道具や機械の使用法を誤った時の悪結果について話しあう。


(二) 家庭における光と熱の供給について調べる。

 1.電気がどこを通って家の中に導き入れられているか観察する。

 2.電気や木炭が家庭でどんなふうに使われているか報告する。

 3.発電所に行き送電線を見てそれらに関する話を読む。

 4.燃料になるいろいろな物を集める。

 5.木炭の配給所に行って薪や炭がどごで作られどうして運ばれて来たかについて聞く。

 6.木炭や薪の種類とその作られる場所とを調べる。

 7.炭や薪を作る場所を見に行って観察する。


問題六 手紙を送ったり受け取ったりするには,私たちはどうするか。

~学習活動の例~

(一) 手紙を出したり受け取ったりする。

 1.通信のいろいろな種類(葉書,封書,電報のごとき)について読んだり話しあったりする。

 2.なぜ郵便に切手をはるかについて話しあう。

 3.切手を調べて十銭切手,三十銭切手等がどんなふうに使われているか話しあう。

 4.手紙を書き,切手を買い,友人や親類の者に手紙を出す。

 5.病気で欠席中の同級生に見舞い状を出す。

 6.学級の切り抜き帳を作り,郵便配達人・郵使局・電話・放送局・受信器等の絵や写真を集めてはりつける。

 7.学級の催しものへ招く案内状を書く。

 8.毎日の集配度数を調べ,それについて話す。

 9.手紙の旅行(輸送経路を示す)についての物語や詩をつくる。


(二) 電話と放送のことについて学ぶ。

 1.電話や放送によって人々が意見を交換したりする有様を話しあう。
 
 2.電話ごっこや放送ごっこをする。

 3.ラジオの子供の時間を聴き,それについて話しあう。

 4.電話番号による呼び出し方をしらべ,電話のかけ方を学ぶ。


(三) その他の方法を実施する。

 1.同級生の経験を知らせる学級新聞をつくり,教師の助力を得てその複写あるいは印刷をする。

 2.学級の掲示板に時事問題をしるす。

 3.学校からの手紙を名あての家に配る。


問題七 私たちはどうしたら楽しい時間が過ごせるか。

~学習活動の例~

(一) 戸外で楽しむ。

 1.家の庭や校庭,公園等でのなかまとの遊びについて相談し計画していっしょにやる。

 2.新入生や遊びになれない友だちを誘っていっしょに遊ぶ。

 3.ふだんはいっしょに遊ばない友だちをなかまにして遊ぶ。

 4.家庭菜園の手入れをし,家でとれる野菜の話を書く。

 5.公園や山林,川,池などに出かけて,動植物を見たり,自然の美しさを楽しんだりする。

 6.葉や幹によって木の名を見分ける。

 7.その土地にありふれた木の葉や幹(樹皮)を示す図表を作る。

 8.まゆを集めて来て,教室におき,ちょうやがの一生を観察する。

 9.色や特徴や鳴き声で小鳥を見分ける。

 10.郷土の美しい景色や愛すべきもの(日の出,日の入り,川,丘,樹木,花等)を見たり話しあったりする。

 11.四季特に春さきや秋の野外の自然の色彩を観察しあう。

 12.その地方における愛らしい動物,役に立つ動物の話を読んだり聞いたりする。

 13.家畜やその他の動物が人間に対し好感を示す時や,敵意を示すときに見せる習慣について話す。

 14.森や野原を歩いて小枝を集めたり,食用になる雑草を採集する。


(二) 室内で楽しむ。

 1.一家だんらんの楽しい時間について話す。

 2.雨の日に遊ぶ道具を作る(十六むさしとかダイヤモンドゲームとか)

 3.大きな積み木を作ったり使ったりする。

 4.病気の友だちに贈るおもちゃや本を作る。

 5.木やおもちゃの修理をする。

 6.映画や紙芝居,影絵を楽しむ。

 7.簡単な楽器を作って使用する。

 8.なかまと合唱する。

 9.朗読会,俳句の会,歌の会を催す。

 10.学校で友だちといっしょに使うのに都合のよいおもちゃを持って来る。

 11.レコードを聴き,これにあう絵を書いたり動作をしたりする。

 12.リズムバンドを作り演奏する。

 13.美しい詩歌や物語を読む。

 14.芋,大根などではんをつくって紙に押す。


(三) お祭や年中行事を楽しむ。

 1.一年中のお祝いをできるだけたくさん挙げる。

 2.祝祭日の表を作る。

 3.ひな祭その他に人を招く文を書く。

 4.招待状の返事を書く。

 5.お祝いの日に友だちの家に行って楽しかったことを話す。

 6.友だちを訪ねて帰宅がおそくなった時,両親がどんなに心配するかについて話す。

 7.年中行事の話を読んだり聞いたりする。

 8.その土地や他の土地のお祭のときの経験を話す。

 9.お祭や行事のときの出来事の絵を書いたり物語をつくったりする。

 10.年寄りから,その人たちの若かったころのお祭のようすを聞く。

 11.学芸会に合唱,斉読,お話,遊戯等を計画し実施する。

 12.学芸会その他に両親や兄姉等を招く。

 13.お祭,祝日,学芸会その他の集会の準備をする。


(四) クラブをつくって楽しむ。

 1.仲のよい者とクラブをつくり,なかまをふやして行く。

 2.クラブの名まえをえらぶ。

 3.クラブの規則を作る。


問題八 どうすれば,私たちは身のまわりのものを美しく,また清潔にすることができるか。

~学習活動の例~

(一) よごれた場所を美しくする。

 1.家や学校その他を美しく清潔にしておく手つだいの方法を挙げて表にする。

 2.よごれた場所やこわれた場所を美しく清潔にする工夫を話しあい実行する。

 3.紙くずを紙くずかごに入れる。

 4.教室や家の掃除をする。

 5.ハンケチや手ぬぐい等小さなものを洗う。

 6.村(町)学校などを美しくしておくために働いている人々の話を書いたり読んだりする。


(二) 身のまわりを整とんする。

 1.机の中をきれいにしておく。
 
 2.自分のものを整とんしておく箱や引き出しを作る。

 3.成績品をしまっておく紙ばさみを作る。

 4.教師や母の整とんを手つだう。

 5.学級の道具や用品をしまっておく。

 6.衣服やはき物,雨具等をきちんとしまう。

 7.衣服を保護する方法について話しあい実行する。

 8.美しい掲示板をつくって絵や切り抜きをはる。

 9.絵や額を上手にかけたり,つるしたりする。


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「ゆとり世代」による自己分析

 「ゆとり世代」による「ゆとり世代」のための自己分析。

 興味深い記事を読みました。
 
 まず,「ゆとり世代」であることの自覚は,7割の人(調査対象の大学生の場合)にあるそうです。

 おもしろかったのは,「ゆとり」への自覚のあるなし,「ゆとり」と呼ばれることへの抵抗のあるなしで

 将来像を4タイプに分けたこと。

 「あせり層」

 「きっちり層」

 「つっぱしり層」

 「真のゆとり層」

 ・・・・どれがどこにあてはまるでしょうか。

 考えてみてください。


 「ゆとり」世代に忘れてほしくないことは,

 「ゆとり」のために「ゆとり」があったわけではなくて,

 「生きる力」を身に付けるために,「ゆとり」のなかでしっかりと本物の力を養う,という趣旨の教育だったということです。・・・・それを教師も自覚していなかったために,あるいは,自覚してもそのような趣旨の教育ができなかったために,・・・そして何より,各教科の授業時数が減ってしまったために,「損したかもしれない」という自覚を芽生えさせてしまった・・・。

 そもそも,「生きる力」とは何かを,それを身に付けるために教育を受けてきた「ゆとり」世代は,説明することができるでしょうか。

 どこかのお役所の事務の人の自己満足だけで終わってしまったのではないか・・・という悪い想像を払拭できるのは,「ゆとり」世代の人しかいません。

 「生きる力」・・・・・最近では,「グローバル人材」づくりが「流行」ですから,

 「ゆとり」世代の人たちは,日本の大学に通うのをやめて,みんな海外に留学してしまえば,

 「やっぱり,生きる力を育てていたんだ!」と

 立案者を満足させることが可能かもしれません・・・・。

あと,大事なことを書き忘れました。

 「ゆとり世代」には「ゆとり世代」なりの問題もあるのでしょうが,

 教育現場には,「ゆとり世代」を育てる時期に教員になった人たちの指導力不足が問題になり始めています。

 教える内容が増えました。

 それだけではない。活動させる内容も増えました。

 今まで通り,やっていたのでは,時間が足りないのです。

 頭を使わなければ,指導計画通りに授業が進まない。

 これに対応できない教師の問題は,今,現在進行中なのです。


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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その7 FULFILL~

 「使命感を持って,自らの職務の責を果たしている」という意味で使う

 fulfill という単語。

 改めて,教育の本来の機能,

 original function とは何か,考えるべきときかもしれません。

 私たちは,

 fulfilling our original function

と言えるかどうか。

 たとえば,学力がついていない子どもを,

 「この子は本当に性格の良い子ですから」

 といって上級学校に送り出すことに,意味があるのかどうか。

 教師たちは,自分たちに厳しい「職務目標」を設定するのが苦手です。

 「勉強できないのは子どもが勉強しないからだ」と逃げることばかり考えている。

 私たち教師は,何を実行することが求められている存在なのでしょうか。

 何を要求されているのでしょうか。

 何を約束しているのでしょうか。

 何が期待されているのでしょうか。

 そういう自覚をもつことは,私たちの仕事にやりがいを持たせるものになっているのでしょうか。

 To fulfill is to carry out a duty or a role as required, promised or expected.


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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小1・社会科の学習活動例

 小学校1年生の「社会科」は,現代では,親が学び,子どもに教えるべき内容として通用しそうです。

 銭湯でのマナーも,「社会科」で教えようとしていたわけですね。

コアとしての社会科。これからの時代に求められるのは,これか?

**********************

問題一 家庭や学校でよい子と思われるには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 家庭や学校をきれいにする。

 1.家庭でしているお手伝いを報告したり,絵に書き表わしたりする。

 2.教室に花を持って来て飾る。

 3.学級文庫を作る。

 4.学級文庫の簡単な飾りつけをする。

 5.写真や絵,作文,新聞・雑誌の切り抜きを壁に掲示する。

 6.教室に飾る絵を書く。

 7.簡単な植木ばちを作って草花を植える。

 8.家や学校の水そうや菜園の手入れをする。

 9.記念樹を植える。


(二) 家庭や学校で危険防止をする。

 1.お父さんやお母さんが,家で危険なことを防ぐためにしていることを話しあう。

 2.家庭や学校で気をつけなればらないものごとを話しあったり,書き取ったりする。(ランプ・電気装置・ガラス片・さびくぎ,有害な動植物,七輪の残り火等)

 3.廊下・階段の通行,運動場での活動,運動用具の使用その他で危険防止をするために必要なきまりを話しあい,その理由を発見する。

 4.飲用水を正しく使う。

 5.対火訓練をし,非常口を覚える。

 6.けがをした時の経験を話しあう。

 7.有害な植物を見分ける。


(三) 自分のことは自分でする。

 1.朝から晩まで自分のすることを全部示すような図表を作って,その中で自分だけでやれるものに印をつける。

 2.自分だけでやっている事がらについて話をする。

 3.自分のことを自分でやろうとしても,うまくできなかったり,自分だけでさせてもらえないことを話しあう。

 4.自主的にふるまうのにつごうの悪いことをどう処置したらよいかについて話しあう。

 5.学級の者がみな自分だけでやるようにしようと話しあった事がらの表を作り,これと対照して各人の進歩を報告する。

 6.右のうち,うまく進歩しない事についてその事情を教師に説明する。

 7.「勇気のある子というものの正しい意味について話しあう。

 8.「勇気のある子」といった簡単な劇を作る。


(四) 父母・兄姉及び教師の言いつけに従う。

 1.父母から何度もくり返される言いつけについて報告する。
 
 2.ふだん教師から言いつけられている事がらの表を作る。

 3.目上の者の言いつけに従わなかったために生じた,まずい結果について話しあう。

 4.両親の言いつけに従いにくい事について,その事情を話す。

 5.右の事情を解決する方法を話しあう。
 
 6.両親から言いつけられている事の中で,一番たいせつと思うことを絵に書き示す。

 7.両親の言いつけを守ったときは○印をつけて記録しておく。

 8.両親その他の人にほめられたときの事を話す。


(五) 行儀をよくする。

 1.毎朝,朝のあいさつをするかどうか,どんな人にするかを報告する。

 2.食事のときの行儀について話しあう。

 3.教室での行儀について話しあう。

 4.友だちの名まえを正しく呼び,あだ名を言わない。

 5.家の人の外出や帰宅のときにあいさつをしているかどうかを報告する。

 6.つい行儀が悪くなってしまう場合について話す。

 7.お客様ごっこをする。

 8.来客の際お茶を運ぶかどうかを報告し,その時の作法について話しあう。


(六) 幼い者をいたわる。

 1.弟妹たちの名まえや年齢を報告する。

 2.幼い者の絵を書く。

 3.幼い者に親切にしてやると,どんなに喜ぶかを観察して話しあう。

 4.幼い者のかわいらしさについて報告する。

 5.教室で兄弟ごっこ,親子ごっこをする。

 6.幼い子を遊ばせるときの注意を話しあう。

 7.遊ぶときに,幼い子におもちゃをあてがってやったことがあるかどうかを報告する。


問題二 私たちはどうすれば丈夫でいられるか。

~学習活動の例~

(一) 適切な食物をとる。

 1.いろいろな食物の図表を見て,からだのためになるよい食物について話しあい,しるしをつける。

 2.右について好きな食物,きらいな食物をあげ,なぜ好きか,なぜ嫌いかを話しあう。

 3.家で作っている野菜の種類を報告する。

 4.学校給食の材料を家から持って来る。

 5.食事の時間と間食の時間及び量をきめる。

 6.買い食いについて話しあう。

 7.体重を記録し,増減の理由を考える。

 8.身長を測る。


(二) 食物の取り扱いと,準備のときの清潔さを観察する。

 1.家や学校で食物を清潔にしておく方法を発見し,実行する。

 2.果物やなま野菜はよく洗ってたべる。

 3.食前と用便後に手を洗う。

 4.家や学校ではどのようにして飲用水をきれいにしておくか,報告する。


(三) 適切な衣服を選んで使う。

 1.季節季節に家や学校でする準備について話しあう。

 2.いろいろな着物の材料が,季節やいろいろな場合に適しているかどうかを検討する。

 3.各季節で日が長くなったり,短くなったりすることを観察する。

 4.冬の着物について,各自が何枚着ているか比べあう。

 5.夏と冬との適当な衣服を示す絵本を作ったり,人形を作ったりする。

 6.衣服の色について観察し,季節・場合,着る人などに合うかどうかを話しあう。

 7.天候の変化を記録する天候表を作る。

 8.暦を作って,衣がえその他衣服の変化を記入する。


(四) よい習慣を実行する。

 1.からだ,身のまわり,家,家のまわり,学校等を清潔にしておくための,いろいろな習慣を報告する。

 2.学校ではやった病気(百日ぜき・はしか・感冒等)を両親に報告する。

 3.用便のよい習慣を話しあい,実行する。

 4.校医や養護と健康の習慣について話しあう。

 5.せきをするとき,手で口をおゝい,またはハンカチか紙をあてる。

 6.歯科医をよんで,歯の清潔を維持することがどんなにたいせつかを話しあう。

 7.日々守るべき健康の習慣を絵に書く。

 8.睡眠時間を記録する。

 9.学校で行われている保健施設を見て,両親に説明する。

 10.個人別の湯のみを使う。

 11.鉛筆・貨幣・玉・指などを口に入れることの危険について話しあう。

 12.すわるとき,歩くとき,立っているときのよい姿勢を明らかにし,これを実行する。

 13.室内の通風をよくし,温度を適当に保たせる。

 14.大きな筋肉を使うような遊戯をする。

 15.物をたべるにふさわしい時間について話しあう。

 16.学校で,休み時間にはできるだけ戸外で遊び,十分日光をあびる。

 17.学校での窓の開閉について話しあう。

 18.日の当たる所や,暗い所で本を読むことについて話しあう。

 19.入浴(特に銭湯での)の際注意すべきことについて話しあい実行する。


問題三 自分のものや人のものを使うには私たちはどうすればよいか。

~学習活動の例~

(一) 家に飼ってある小動物の世話をする。
 
 1.家で飼っている小動物について報告する。

 2.家で飼っている小動物の飼育法を表に作ったり,読んだりする。

 3.小動物に関する物語を読む。

 4.動物がその子をかわいがり,世話するようすを話しあう。

 5.小動物の絵を書き,飼い主の名まえをつけて展覧する。

 6.学校や家にいる小鳥にえさをやる。

 7.学校や家の庭や近くに来る小鳥の種類を書きとめる。


(二) 使用品を清潔にし整とんする習慣をつける。

 1.教室の清潔整とん法を相談してきめる。

 2.校内をまわって,小使や上級生その他が学校を清潔な気持のよいものにするため,どんなことをしているか,見たり聞いたりする。

 3.校舎に入るとき,がいとう類やげた・くつ・かさなどをぬいで,きまった場所に整とんする。

 4.がいとうなどを,きちんと伸ばしてかけたり,たゝんだりする。

 5.勉強した後で,いろいろな品物をもとの場所に片づける。

 6.おもちや・道具・薬品等の正しい置き場と使用法を話しあったり,示したりする。

 7.衣類やおもちゃ・道具等を入れる箱や袋を作って,使う。

 8.手ぬぐい・ハンカチ・タオル等を水洗いする。

 9.書物・筆箱・かばん・ぼうし・はき物・ハンカチ・手ぬぐい・おもちゃ・道具その他に自分の名まえをつける。

 10.夜,床につく前に学習用具をそろえておく。


(三) 物をうまく使う。

 1.毎日の勉強に必要な,品物の表を作る。

 2.紙・帳面・鉛筆・クレヨン等を残さず,きれいに使う方法を話しあう。

 3.これらの物を一週間・一箇月・一箇年ではどのくらい使うかを記録する。


問題四 私たちは食物や衣服住居をどんなふうにして手に入れるか。

~学習活動の例~

(一) 日々の食物について調べる。

 1.毎日の食物について報告し,表を作る。
 
 2.食物の材料になるいろいろの品物を列挙する。

 3.食糧品を,その産する場所,動物性,植物性の違い,作る人,その他の点からいろいろ分類してみる。

 4.季節季節のおもな食糧品を示す図表を作る。

 5.食物ができあがるまで,どんなに多くの人の手がかゝっているか,できるだけたくさん勘定させる。

 6.米・魚・野菜の旅行といった話を作る。

 7.米を作る農夫の作業について聞いたり読んだりする。

 8.田畑・農場などを見学に行く。

 9.米の配給所を見学する。

 10.八百屋・魚屋に行って,どこから,品物を仕入れて来るかを聞く。

 11.米が作られ,配給される過程を示す絵を書く。


(二) 日々の衣服について調べる。

 1.各季節にふさわしい衣服を調べる。
 
 2.母親がどんなにして子供の衣服を手に入れたかを話す。

 3.自分の衣服の表を作り,修繕されせんたくされた度数を記録する。

 4.洋品店に行き,いろいろな衣料を見,その材料について話しあう。

 5.木綿・絹・人絹・スフの話を聞いたり読んだりする。

 6.衣服の材料となる布のはしを集めて見る。


(三) 食物を作ったり,衣服をとゝのえたりする母親に手伝う。

 1.畑や八百屋その他に食糧品をとりに行く。

 2.お母さんの食事の準備をじょうずに手伝ったことについて話をする。

 3.まゝごと遊びをする。

 4.農繁休業にやったお手伝いについて報告する。

(四) 住居について調べる。

 1.家はどんなもので作られているか報告する。

 2.家にはどんなものが備えられているか報告する。

 3.今の家にいつから住んでいるか,聞いて話をする。

 4.学校と家の違う点同じ点を話しあう。


問題五 私たちは旅行の時にどんなことを心得,どんなことをする必要があるか。

~学習活動の例~

(一) 交通の安全につとめる。
 
 1.警察官を呼んで交通安全について話しあいをし,質問をする。

 2.横断歩道による横断,車に対する注意,信号を見ること,バスや電車に乗る時のきまりなどを話しあい実行する。

 3.右(左)側通行と,道路上にひろがって歩くことの危険とについて話しあう。

 4.旅行の際の安全に関する注意について話を作ったり,書きとめたり,読んだりする。

 5.交通安全の規則を守っている子供の絵を集める。

 6.安全に関する映画を見る。

 7.家と学校との間にある注意すべき場所を地図に書き入れる。

 8.お使いに行く道について話す。

 9.学校や家までの道順をいう。

 10.通学の往復で道草をすることの悪結果について話しあう。

 11.いなかや町で迷い子になった時どうすればよいかを工夫し,話しあう。

 12.学校や道路上のいろいろな地点で東西南北を見わける。

 13.通学途上のいろいろな危険について話しあう。

 14.家族のした旅行の絵を書き,話をする。

 15.自分のした旅行の物語を作ったり,絵を書いたりする。

 16.いろいろな人の旅行を書いた物語や詩を読む。

 17.積み木や箱などで汽車,自動車,飛行機などを作る。

 18.汽車ごっこ,自動車ごっこ,飛行機ごっこ,船ごっこをする。

 19.いろいろな乗り物を使う旅行の計画をみんなといっしょに立てる。

 20.運賃を計算したり,切符を買ったりする。

 21.時間の見方を覚え,それが通学や旅行になぜたいせつかを話しあう。

 22.車中でのよい行儀についての絵を書く。

 23.旅行に必要な身のまわりのもの(服装)について話しあう。

 24.旅行に関する唱歌を歌う。

 25.手荷物がどんなにして運ばれるかを話しあう。


問題六 私たちはどうすればみんなといっしょに楽しい時間が持てるか。

~学習活動の例~

(一) 音楽を楽しむ。

 1.音楽を選び,歌い,また聞く。
 
 2.適当なレコードを聞く。

 3.音楽に合わせてリズムをとる。

 4.音楽に合わせて身ぶりをする。

 5.リズムバンドを作って,演ずる。

 6.「もしもしかめよ」のような歌をうたい,そのリズムに合わせて劇をする。

 7.「待ちぼうけ」のような音楽を物語りにする。

 8.音楽を聞いて色や線で感じを出してみる。


(二) 競技をする。

 1.学校でやる競技を計画し,実行する。

 2.得点を記録する。

 3.競技の人員を数え,加えたり,引いたりする。

 4.家で両親や兄弟姉妹とする競技を工夫する。

 5.みんながおもしろくするには,どうすればよいか話しあう。


(三) 集まりをする。

 1.誕生会や祝祭日,節句などの集まりや遠足を計画し,実行する。

 2.クラス会などを計画し,簡単なたべ物や飲み物を準備する。

 3.集まりのときの作法について話しあい,またこれを観祭する。

 4.お客様ごっこをする。

 5.簡単な招待状を書く。

 6.その返事を書く。

 7.集まりの時の遊びを工夫する。


(四) 戸外の楽しみを味わう。

 1.野外を歩いて野生の花や,動物や草木や虫などを覚える。

 2.野外で見たものの表を作ったり絵を書いたりする。

 3.野外での採集物に名札をつけて展覧する。

 4.散歩で集めたおもしろい物を学校に持って来る。

 5.野外での昼食の計画をたて,実行する。


(五) 本を続む。

 1.ほかのものに物語を読んで聞かせる。

 2.両親や教師,他の子供の読んでくれる物語を聞く。

 3.読み物を作る。

 4.詩の朗読を聞く。

 5.学級の文庫を作る。


(六) おもちゃで遊ぶ。

 1.家からおもちゃを持って来て友だちに使わせる。

 2.簡単なおもちゃを作る。

 3.古いおもちゃを修理する。

 4.おもちゃ屋さんごっこをする。

 5.物語を劇にする。

******************

 小学校1年生から,本当に多彩な体験活動,言語活動を教育のなかで取り入れようとしていたことがわかりますが,これは学校だけでは無理。

 家庭では何ができて,ほっといても子どもができることは何で,学校に限って何をすべきか,という議論が必要になったことでしょう。


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小学校学習指導要領・社会科編(試案)=昭和22年版 に示された,小1~小6児童への配慮点

 現代でも使えるものがたくさんあります。

 具体的に,どのような「対応」がなされていたのか,知りたいものです。


****************

 【小1児童への留意点

 一 教師・友だち・校舎その他の環境に不慣れのため,不安であること。

 二 友だちを作りたいと望むこと。

 三 友だちに物を貸したり,友だちの物をたいせつにしたり,遊びなどの際,順番を待たなければならなくなること。

 四 学校の規則に従う必要を感じはじめること。

 五 新しい複雑な環境に入ったために,神経質になり,むやみに小便に行きたくなったり,もらしそうになったりすること。

 更にこの学年の児童が身体上の欠陥や,言語上の欠陥,あるいは家庭における教養の欠陥などのために,非常に各個人によって違う問題を持っていることにも,注意しなければならない。


 【小2児童への留意点


 一 第一学年の児童を迎えて,非常に大きくなったような気がし,その世話をしたりまたこれをいじめたりすること。

 二 非常に活動が盛んで,過労に陥りやすく,適当な休息を与えないと,いらいらした気分になる恐れがあること。

 三 他人の所持品とか権利について注意をしはじめること。

 四 女児では,男児よりも社会性の発達が著しくなること。

 五 関心が家庭や学校に限られず近隣の社会にひろがって行くから近所の人たちからも,しっかりした子だとみとめられるように,はからってやる必要があること。

 身体的に欠陥のある児童は,みんなといっしょに行動するのに不自由なことをよけい強く感ずるようになっているし,家庭のよくない児童は,学校外で,はゞのきかないことを感じはじめるから,教師は各児童に固有な問題に十分注意しなければならない。


 【小3児童への留意点

 一 団体的な競技や遊びを好み,負けたり,なかまはずれになったりすると,気持を悪くする傾向があるから,正々堂々とふるまうことを教える必要がある。

 二 団体的活動を意識してするようになるから,どの児童にも,うまく活動ができるように,十分機会を与える必要がある。

三 好奇心が非常におう盛であるから,これを科学的教養の基礎としてやる必要がある。

四 自信の無い子や栄養の悪い子は,姿勢が悪くなる傾きがある。

五 遠足などの際事故を起しやすい

六 歌ったり,物を作ったり,絵を描いたりするのに,自信がなくなり,きらいになる子があらわれる。

七 一,二年の間に養成された知識や能力・態度等を維持する必要がある。


 【小4児童への留意点

一 初等科のちょうどまん中であって,低学年のなかまに入れられるのはきらうし,高学年ともいっしょにはなれないので,むずかしい学年である。泣いたりじだんだをふんで感情をあらわすことはもうできないが,家庭や学校で尊重されないと,反抗的になる。

二 ちょう笑されたりすることは,打たれたりすることより,ずっときらいである。

三 健康的,活動的でやかましい。むしゃむしゃ食べるし,戸の開けたてなども乱暴であり,自分の外見などについても無関心である。

四 男の子と女の子との間に敵対関係があらわれることがある

五 新しいことやおもしろいことを発見するのに興味を持ち,身辺にいろいろなものを集めたり,好んで冒険的なことをしたりする。

六 芸術的な自己表現が,低学年から上手に指導されていて,自由にできると,感情の圧迫を防ぎ,また高しょうなものを理解するのに有効である。

七 みずから計画したり,みずから説明したりすることができるようになり,道理にあわないことをしたり欺いたりすることができない。

八 外見とか行儀とかを構わなくなるから,低学年で養成して来た衛生の習慣やよいしつけが崩れないよう,気をつける必要がある。

 この学年の児童は,卒直に且つまじめな態度で取り扱う教師を信頼する。身体的に欠点のある子,その他個人的に問題のある児童には特に注意する必要がある。


 【小5児童への留意点

一 児童に対する理解が十分でないと,児童と教師との間に,大きなみぞができる。なかまにほめられるために,自己を誇示したりするのが,思春期に入ろうとしている,この学年の児童の特色であることを,忘れないようにする必要がある。

二 創造的な自己表現は,よほど注意しないと止まってしまう。なかまのものと違うことを恐れるし,ちょっとしたことでくじけてしまうからである。しかし自分自身に適した方法で感情の表出をさせるよう鼓舞し,助けることは,感情の緊張を解き,気持を安定させる上に,必要である。

三 身体的の発達が,非常にまちまちである。大人びた子と,子供らしい気分のぬけない子,身長のむやみに高い子と低い子などができて,それぞれひけ目を感じ,からだのことを心配したり秘密にしたりする。

四 女の子は男の子に比し,著しく成熟が速い。

五 身体的な欠陥のある児童や,学習速度のおそい児童等については,特に考慮を払って自信をなくさせないようにする必要がある。

 この学年で特に挙げていなくても,各種の能力(例えば辞書を引くこと)や態度(例えば共同して計画をし実行する態度等)を維持することに留意しなくてはならないことはいうまでもない。


 【小6児童への留意点

 一 成人の社会に独立した位置を占めようとする。すなわち成人が自分の意見を尊重するか,家庭や学校でその役に立つことをしていると思えるか,自分たちのやっていることをまじめに評価してもらえるかというようなことに,気を使うから,どんな時に助力をしてやるか,どんな時にその望みを尊重してやるかなどに,注意する必要がある。

 二 みずから求めて新しい経験をしようとするのを助け,また児童各自のその学習方法を尊重してやることも,(一)と関連してたいせつである。

 三 社会的な義務を理解させ,事実に正直に立ち向かう能力を発展させることは家庭及び学校の共同責任である。自分たちが加わって計画し,価値ありとみとめる仕事を遂行させることは,社会の一員たることを自覚させる上に,特に有効であり,共同作業もまた,民主的なやり方を味あわせる上にも重要である。

 四 創造的な自己表現も,自己の独立性を打ち立てさせるために重要であり,且つ現在のような大量生産の時代に,個人的な良い趣味を発展させる上からもたいせつである。

 五 健康や姿勢,容姿等についても注意の要がある。過食,ねこ背の傾向があらわれるし,皮膚の清潔も大きな問題であり,過労に陥らないように,休憩や気分転換を工夫してやることもたいせつである。
 小学校の最後の学年であるから,十分に自信を与えるとともに,低学年以来獲得して来たよい習慣や態度を,しっかりと身につけさせなければならない。

**************

 今となっては下線部の語句など気になってきますが,それ以外の内容について,今とどのくらい変わったことがあるでしょうか。
 

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小学校学習指導要領 昭和33年版と平成20年版の比較

 授業時数の単純比較をしてみましょう。

 左が昭和33年(1958年),右が平成20年(2008年)のものです。

 35(週)で割れば,1週間当たりの授業時数になります。

1 総授業時数
 
 第1学年   816→850
 第2学年   875→910
 第3学年   945→945
 第4学年  1015→980
 第5学年  1085→980
 第6学年  1085→980

 小学校合計 5821→5645

2 国語

 第1学年  238→306
 第2学年  315→315
 第3学年  280→245
 第4学年  280→245
 第5学年  245→175
 第6学年  245→175

小学校合計 1603→1461(9%減)

3 社会

 第1学年   68→ 0
 第2学年   70→ 0
 第3学年  105→ 70
 第4学年  140→ 90
 第5学年  140→100
 第6学年  140→105

小学校合計 663→365(45%減)

4 算数

 第1学年  102→136
 第2学年  140→175
 第3学年  175→175
 第4学年  210→175
 第5学年  210→175
 第6学年  210→175

5 理科

 第1学年   68→ 0
 第2学年   70→ 0
 第3学年  105→ 90
 第4学年  105→105
 第5学年  140→105
 第6学年  140→105

6 音楽

 第1学年  102→68
 第2学年   70→70
 第3学年   70→60
 第4学年   70→60
 第5学年   70→50
 第6学年   70→50

7 図画工作

 第1学年  102→68
 第2学年   70→70
 第3学年   70→60
 第4学年   70→60
 第5学年   70→50
 第6学年   70→50

8 家庭

 第5学年   70→60
 第6学年   70→55

9 体育

 第1学年  102→102
 第2学年  105→105
 第3学年  105→105
 第4学年  105→105
 第5学年  105→ 90
 第6学年  105→ 90

10 道徳

 第1学年  34→34
 第2学年  35→35
 第3学年  35→35
 第4学年  35→35
 第5学年  35→35
 第6学年  35→35

11 生活

 第1学年  0→102
 第2学年  0→105

12 総合的な学習の時間

 第3学年  0→70
 第4学年  0→70
 第5学年  0→70
 第6学年  0→70

13 特別活動
 第1学年  0→34
 第2学年  0→35
 第3学年  0→35
 第4学年  0→35
 第5学年  0→35
 第6学年  0→35


 ここに,「ゆとり教育」とよばれるようになってしまった平成10年のものを載せたら,驚愕してしまう社会人になりたての人,大学生,高校生が多いでしょうね・・・・。

 「生活科」や「総合的な学習の時間」の誕生もあって,最も時数が削られているのは「社会科」です。

 「道徳」の時間は,昔からずっと変わっていません。

 「規範意識」とか,「社会に貢献しようとする態度」などが失われている背景として,

 「社会科」の時数削減があることは,大きいと言えるか,どうか。

 戦後の「社会科」は,どのような教科として学ばれることが望まれていたのか。

 もっと前の,昭和22年の「試案」を次回から,眺めていくことにします。
 

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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その6 IMPROVE~

 改善,向上,進歩,上達・・・・・

 どの訳語を見ても,前向きになれる言葉です。

 教育に携わる経験の中で,最も
 
 improve できる時期,

 それはやはり「教育実習」と「初任者」のときですね。

 しかし,今,最も

 improvement

 が求められているのは,現職の先生たちです。

 20年売れ続けているような「定番商品」ですら,

 継続的な研究,消費者の声を生かす改善が行われている。

 しかし,先生たちというのは,

 「忙しい」「時間がない」という「言葉」だけをたよりに,

 その努力から遠ざかっている。

 本来は,そのために忙しくあるべき,というものに,忙しさが割かれていない。

 では,どうしたらいいのか。

 多くの人がチャレンジしているのは,

 「朝の時間の活用」です。

 教員は「遅く帰る」ことで,「忙しさ」の勲章だと思っている人が多いですが,

 「朝早く来て仕事をすること」で「忙しそう」と思われている人はあまりいません。

 最も簡単な仕事の改善方法は,朝の時間のつかいみちです。

 「若い人が,朝一番に学校に来て,職員室の掃除をする。先生方の机の上をきれいに拭く。」

 といった習慣が続いている学校は何%くらいあるでしょうか。

 「机の上にたくさんものが乗っていて,勝手に触ったらおこられそうだ」

 なんて机は,何%くらいあるでしょうか。

 「教頭先生(副校長先生)より早く学校に来ている人が5人以上いる」

 学校は,何%くらいあるでしょうか。

 学校は,こうした簡単な「実態調査」だけで,

 くらでも改善が可能な場所なのです。

 We have plenty of room for improvement.
 

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研究授業や公開授業の参観で自分が教師に向いているか,いないかを確かめる方法

 現職の先生も,これから先生になろうとしている人も,

 自分が教師に向いているかどうかを確かめる方法がある。

 それは,あらかじめ配布されている「指導案」を見ずに授業を参観することである。

 参観後,10分くらいでその授業の「指導案」を予想して書く。

 もちろん,実際の授業は,「指導案」とは異なる展開になる場合もあろうが,

 一応,「指導案」どおりに進んだものと考えて,書いてみる。

 何が今日の授業の「目標」だったのか。

 その「目標」を達成するために,どのような手立てをとったのか。

 中心の「発問」をどこに,なぜ,配置したのか。

 生徒の実態はどのようなものなのか。

 予想される生徒の「反応」はどのようなものだったのか。

 どこで今日の「目標」が達成されたかどうかを判断することができたのか。

 今日の「教材」に対して,あるいは「単元そのもの」について,どのような考えをもって臨んでいたのか。

 そして次の10分で,自分なら,この単元の,この時間の授業をどのように展開したのか。

 この2つを,提出してもらう。

 そうすれば,教科に対する専門性のレベルはだいたいわかるし,

 教師に向いているかどうかもわかる。

 授業を見て,批判するのは簡単なことだが,それはまず,

 自分がこうだと思った「指導案」と,実際の「指導案」をしっかりと比較してからすべきことである。


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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その5 CHALLENGE~

 学校現場で何か新しい取り組みを始めようとすると,

 「安月給の上に給料は増えないのに,なぜ仕事を増やすようなことをするのか」

 という人がいます。

 そう言う教員に限って,「安月給」どころではなく「給料泥棒」「税金泥棒」みたいなところがあるのは全国共通でしょうし,そもそも一般社会から見ても,教員が安月給なんて,「ふざけんな」の一言なのですが,公務員には

 challenge

 の精神が育ちにくいという現実は確かにあります。

 子どもたちには

 challenge が大事,前向きにいこう,とかいって,自分の方は完全に後ろ向き。

 だから信用はされないし,結果として子どもにも challenge 精神は芽生えない。

 そんな現状を打破しようとするには,

 未来の日本を支える人づくりをしよう,という強力な使命感と責任感,

 そして何よりも challenge する精神が必要です。

 「失敗がこわい」

 「余計なことをして,苦労だけで終わったらいやだ」

 ・・・そんな「言い訳」が,「教育」の世界では通用しないのに,

 自分の仕事にはあてはめてしまう。
 
 つまり,「教育」の仕事につく資質,資格がないような人が,

 大失敗さえしなければ定年まで安心して給料がもらえる,

 そんな「仕組み」自体が足を引っ張っているのが学校現場の問題ということです。


 一応,解決策は模索されています。

 「職務目標」とその成果の報告を,給与に反映する「人事考課」の仕組みは,まだまだ始まったばかりです。

 その「職務目標」は,達成の困難度によって,自分なりにいくつかの段階を設定することができます。

 これを,管理職との面談で,「こうすればもっと容易にできるのではないか」

 「これは~と協力すればいいのではないか」

 などと調整し,実践,評価,という流れが全国に普及するまでは時間がかかるかもしれませんが,

 だれから見ても

 That's a challenge.

と呼んでもらえるような目標を設定し,それを分掌なり学年なり学校全体の努力で達成することができれば,その中心の目標を設定した人がいなければ何も変わらなかったという意味で,成長した子どもたちにとっても,日本の将来にとっても,特別な評価に値することをした教員になれるわけです。

 企業でいえば経営者が,・・・・本来,学校でいえば校長がこのような目標を設定すべきなのですが,

 それをやりきれる力量のある校長はなかなかいません。

 どちらかというと,職場のなかでそれなりの人望がある教員にチャンスがあります。

 そして,学校として取り組むべき issue があるタイミングなら,

 challenge のし甲斐もあるし,成果も出しやすいわけです。

 この目標が,「学力調査B問題の平均点を80点にしよう」だったとします。

 そうすると,「テストのための教育にするのか」という批判が必ずおこるでしょう。

 「テストのための学校なのか」と。

 当たり前ですが,職務目標は,それだけではありません。

 これはあくまでも学習指導の分野における目標です。

 ほかに,生活指導,進路指導,研修や研究などの目標もある。

 それに,たとえば100マス計算や単純ドリルのように,時間さえあれば機械的に

 専門家も必要なくやらせることができるような授業をしていては,

 B問題の高得点は期待できません。

 学級の中の人間関係を豊かにしていかないと,

 協力的に問題解決をする場面がつくりにくく,当然,話し合い活動などができません。

 学力を高めるには,ただひたすらプリントや宿題をやらせればいい,というのは大間違いです。

 子どもが本当に充実感をおぼえるような授業をしていかなければなりません。

 国語だけ,算数や数学の時間だけ,充実していても,だめなのです。

 話が長くなりました。

 前向きな姿勢で,挑戦しようとする意欲を示せる,日本人ならだれでも知っている単語である challenge 。

 × We are facing a big problem.

○ We are facing a big challenge.

 余談ですが,英語の「facing」っていい表現ですね。

 日本語には「目をそらす」「後ろ向き」「顔向けできない」という表現もありますが,

 「直面する」「正対する」「真面目に向き合っている」っているニュアンスが確実に伝わる感じがします。
 


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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その4 ISSUE ~

 problem ではなく,

 issue 。

 学校では,生活指導上の「問題」がよく発生します。

 問題ばかり起こす生徒は「M(ラージエム)」とか「m(スモールエム)」という隠語で呼ばれることがあります。

 (クラス替えの資料には,こういう記号をつけて,特定のクラスに「M」や「m」が集中しないように配慮します)

 また問題か・・・。

 こういうときの問題は,

 problem でよいのかもしれませんが,

 何でもかんでもマイナスイメージ,厄介ごとだ,というニュアンスの problem と呼ぶのではなく,

 「前向きに緊急に対処すべき課題」という意味のある

 issue

 と呼ぶようにすれば,少しは後ろ向きでない姿勢がとれるようになりませんか?

 「問題」と「課題」という,日本語の区別で対処してもいいのかもしれませんが・・・。

 私たちの教育の仕事は,

 important issue

 なんですよね。

 いつでも

 focus on an issue

 でいきたいものです。


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教育の機能の「二極化」現象は,学校を解体に向かわせるか?

 経験のある方はご存じだろうが,中学受験では,本来は中学校で学ぶような内容を,「暗記っぽく」小学校時代に学んでいく。

 たとえば日本の地理。中2で学ぶような内容は,小学校5年生には終わってしまう。

 「考える力」が邪魔になる前に,「覚えさせまくる」のが中学受験の単純な近道である。

 塾のテキストが圧縮されたような本も出版されているので,「手の内」はよくわかる。

 日経の記事で,中堅の私立学校が塾と提携関係を持つようになっていることが紹介されている。

 そのうち,小学校ではなく,

 塾からの「学習履歴書」が「内申書」の代わりになる時代が来るだろう(もうすでに始まっている)。

 小学校の担任が知らないうちに,中学校の進路が決まっている,そういう時代が来るかもしれない。

 小学校のカリキュラムと,

 中学受験のカリキュラムは明らかに異なっている。

 つまり,塾に行かなければ,能力に応じたパフォーマンスを入試で発揮できない。

 これは公立中高一貫でも同じ。

 「近道」の研究を企業としてやっているのだから,そのノウハウが「売り物」になるのである。

 そして,成果が出るから,ビジネスとして成り立っている。

 どうしてこういうカリキュラムが,公立小学校ではダメなのか。

 現行の学習指導要領の内容は,実際の時間の半分でできてしまう,なんて教師もいるだろう。

 公立小学校の場合,こういう教師は,残った時間を新聞作りとか,お遊びの企画の時間とかでつぶしたりする(要は自分の授業の用意がいらないことで時間をつぶす)のだが,

 余った時間を「発展的な学習」にふりあてるカリキュラムを編成する小学校ができてもよいのである。

 ・・・・中学校だから,そんな無茶なことが言える・・・・なんて言われるかもしれないが,

 確かに,中学校だったら,余った時間は部活動や行事に使いたい教師がほとんどだろう。

 つまり,いつの時代からか,中学校(高校も?)は部活動や学校行事のために存在するようになってしまっている。
 
 「それが今の日本の強さだ!」

 「日本人の協調性の高さは,そこで培われている!」

 なんて力説したい人もいるかもしれない。

 「教育」の機能の「二極化現象」は,本当にとどまるところを知らないようだ。

 
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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その3 UNDERTAKE~

 仕事を引き受ける(請け負う)ときに使える単語ですが,

 UNDER+TAKE なので 何となくイメージしやすい(正しいイメージかどうかはともかく)単語ですね。

 undertake a difficult task ・・・・

 それは「教育」という仕事そのものだという気もしますが,

 過去形にすると,日本語では「挑戦した」というニュアンスに近くなるということです。

 undertaker というと,「葬儀屋さん」という意味もあるそうですが,

 それくらい悲壮感が必要な「クラスの受け持ち」というものがある学校現場が存在します。

 そもそも,教育活動そのものが「困難」なものです。

 「困難」ついでに,「そういうクラス」も受け持ってみましょう。

 教師のなかの何%か(何十%か?)は,地獄のように厳しいクラス経営を経験します。

 しかし,それは同時に,一生分の記憶に残る,「生きたしるし」です。

 堂々と undertook ~ と言える教師になりたいものです。

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PISAの結果で文科省が喜びにくいこと

 今回発表されたPISAの結果は,2012年の15歳(高校1年生)の成績である。

 平成23年度に義務教育を修了した生徒たちだから,現行の新しい学習指導要領のもとで学んだわけではない。

 次の調査・・・2015年の調査は,新しい学習指導要領のもとで学んだ生徒が受けることになる。

 もしここで読解力なり,数学的リテラシーなり,科学的リテラシーの順位が低下したら・・・・。

 タイミングとしては,そんなに喜んでもいられない,年の巡りあわせであった。


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近況報告ありがとうございました

 苦しい問題に対処されている方から,近況報告をいただきました。

 ありがとうございます。

 私も様々な「内部の敵」と日々闘っています。

 自分自身,組織の中,そしてこっちは相手が「外部」だと思っているのに,向こうがこっちを「内部」だと思っている人たち。

 教育という仕事は,本当に厳しいものですね。

 そもそも「教育」=悪,みたいな考え方もありますし。

 「学習」=善・・・なぜなら,主体的なものだから。

 「教育」は,供給側のレールに沿って,どうしても「強制」するものだから,悪。のような・・・・。

 とても孤独な仕事です。

 特に,相手の力が伸びていかないときは,

 「責任感」が自分にとっての重しになっていく。

 でも,それも,所詮は「感覚」にすぎません。

 200kgの巨体に乗っかられてしまうと本当に身動きがとれなくなりますが,

 「責任感」はそれが体を動かしてくれる原動力にもなります。

 「使命感」というともっと悲壮感を帯びてきますが,

 そこに居続ける「使命感」。

 その答えは,少なくとも教育の素人たちには理解できないものでしょう。

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「PISA型学力」の結果が向上したとしても

 何も変わらないものがいまだに残っている。

 この「変わらないもの」を10個くらい列挙できる人が,文部科学省にどのくらいいるだろう。

 それに別の10個を組み合わせて,100通りの「問題」が残っていることに気づいている人はどのくらいいるだろう。

 一方,「PISA型入試」が増えてきているというデータがある。

 今,教育で一番進んでいるのは,中学入試の塾産業かもしれない。

 結局,そこを通過した人だけが,これからの厳しい社会での「勝ち組」になっていくとしたら,

 公立学校の教師たちは本当に空しい思いを繰り返すだけとなろう。

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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その2 COMMIT~

 Are you committed to excellence ?

 私たち教師は,日々,どんなことに「真剣に取り組んで」いるのでしょうか。

 授業? 生活指導?

 これらの仕事は「質」が勝負ですから(中には,子どもの「手を挙げる数」を真面目に数えている人がいますが・・・),なかなか「数字」では表現しにくい。

 こういう時に使うのが

 COMMIT

 で,be committed to ~
  
 という表現をすれば,「がんばっている」という気持ちが表現できるということです。

 be committed to something で,「~に献身する」「真剣に取り組んでいる」という意味に。

 ちなみに,

 COMMITMENT は,「(破れない)約束」,「(義務に対する)責任」という意味。

 そういう単語を意味を知っていれば,

 COMMITTEE 「委員会」

 に参加する「真剣さ」も向上する?


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ビジネス英語で変わる教育への姿勢~その1 AIM~

 英語で自己紹介するよりも,気の利いた日本語の俳句を詠む方が難しい。

 楽天の社内公用語化から,もうかなり時間が立つが,「たかが英語」という姿勢はなかなかである。

 さて,NHKの入門ビジネス英語で,いくつかの「単語」の使いみちを知ることができたが,それをまとめたテキストが2年前に出版されている。

 『ビジネス英語に効く英単語101』(関谷英里子著,NHK出版)から,仕事の改善,教育現場での指導言の改善に役立つと思われる「単語」をピックアップしてみたいと思う。

 「やる気を見せる英単語」の最初に取り上げられているのが,AIM。

 Do you have high aims?

 教師がそう問われて,いくつ「具体的な目標」を答えることができるだろうか。

 もちろん,日本語でもかまわない。

 教師は,生徒にこのような質問をしているだろうか。

 ビジネスの世界では,

 「ベストを尽くします」とか,「がんばります」という姿勢には意味があるが,言葉には意味はない。

 「ベストを尽くしたとして,どのような成果が出せるのか」

 「がんばった成果として,どのような数字が出せそうなのか」

 を答える習慣が求められているのがビジネスの世界である。

 学校現場での教育という仕事は,ビジネスではない。

 しかし,子どもたちの多くはビジネスの世界に飛び込んでいく。

 ビジネスの世界とあまりにもかけ離れた教師の言動に毒されると,

 子どもたちはビジネスの世界に入るときに拒否反応を示してしまう。

 そして,ビジネスの世界には向いてないから,という消極的な理由で,公務員を選んでしまう。

 そんな負の連鎖に陥るのはよくない。

 だから,教師は,多くの子どもが飛び込んでいくビジネスの世界の常識を知っておくべきであり,

 自分はともかく子どもたちには,将来を生きるために必要なものの考え方,最低限の技能を身に付けてあげるべきである。

 教師の仕事に,数値目標などそぐわない,という人。

 こんな目標から初めてみたらどうか。

 朝8時までに終わらせる事務的な仕事を50%増やしてみる。

 昼休みに体を動かす時間を20分は確保する。

 声をかける子どもの人数を,10人ほど増やしてみる。

 具体的な行動目標が,教師の「動き」を変えることがある。

 そして,それは自発的に定めた目標でないと,意味はない。

 こういうことを習慣化した教師を見て育った子どもが,当たり前のように

 自分なりの「具体的な目標」を定めて日々の活動を充実させている姿を見るのはうれしいことである。


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【提言】 市区町村の統廃合よりも,市区町村教育委員会の統廃合の方が現実的かつ効果的か

 「人口水増し」をするような自治体でも,それなりの存在意義があると思える。

 何より首長が選挙で選ばれているから。

 しかし,機能が十分に果たせない状態になっている教育委員会が,市区町村ごとに必要だろうか。

 首長の権限が教育委員会に及ぶようになったとしたら,それは必要だと言わざるを得ないが,

 市区町村教育委員会が都道府県教育委員会や文部科学省の言いなりになっているだけだとしたら,

 市区町村教育委員会に独自の特色がある取り組みがなかったとしたら,

 別に存在しなくても困ることはないかもしれない。
 
 事実,教育委員会とはいいながら,その事務的な作業をしている人たちは市区町村の職員である。

 そこに指導主事として派遣されるのは,都道府県が採用した教員である。

 施設等の管理のための事務と,指導事務を分離して,

 指導事務を中心とした教育委員会は,複数の区市町村を管轄にしても,特段の支障はないだろう。
 (東京都の場合,島しょ部など,指導事務は実際にそうなっている)

 初任者研修の実施等では,すでに連携している教育委員会はいくつもあるはずだ。

 こういう場があると,指導主事同士の研鑽もはかることができ,非常に有効的であるが,

 たこつぼにはまったままの市区町村だけで仕事をしても,指導主事として成長できるかどうか,私にはわからない。

 学校の統廃合を進めるべきだという主張と,趣旨としては重なってくるところが多い。

 市区町村教育委員会の指導事務部門は,数を少なく,少数精鋭にして,徹底的に「指導」を行うべきではないか。

 中学校で言えば,このような仕組みをとることで,教科の指導主事が全教科分そろえることができる。

 今,それができるのは都道府県レベルの教育委員会だけではないか?

 (大きな市の実態は知らないのだが)

 そう。大きな市の教育委員会は指導が充実していて,小さい市区町村の教育委員会ではそれができない,というのでは,教育の質の確保,向上は望めない。

 昨年度の教育課程まるうつしのようなものを受理する教育委員会では,地域の教育は劣化していくばかりである。

 
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朝日新聞の社説の一節が事実なら・・・・

 今日の朝日新聞の社説

 ~「道徳」教育―教科化にこだわるな~

に,こんな一節がある。

>今の「道徳の時間」は正式な教科ではない。教科書も成績もない。

>道徳の授業は軽くみられ、往々にして他教科に振り替えられる

 下線部を私が引いた部分は,何を根拠に記事にしたのだろう。
 
 教育課程の実施状況調査では,そのような事実があることは示されていない。

 「往々にして」がどの程度の頻度で,どの程度の学校で行われているか,

 朝日新聞は独自の調査で事実を把握しているということだろうか。

 そうすると,学校は虚偽の報告を市区町村教育委員会にあげ,

 市区町村は虚偽の内容が紛れた報告を都道府県教育委員会にあげ,

 都道府県教育委員会は虚偽の内容が紛れた文部科学省にあげ,

 文部科学省は虚偽の内容を調査結果として公開しているということになる。

 実は,こんなことは朝日新聞が書かなくても,中学校時代に学校に通っていた・・・・

 月曜日の1時間目に遅刻をせずに登校していた大多数の人は,

 知っている事実なのだろう。

 道徳が教科になると,他の数学や体育を社会や理科にすることがないように,

 「今日はかわりに社会科にします」ということができなくなる。

 (ただ,小学校では起こり得るのかもしれない。担任教師が本当のことを報告しなければよいだけだから。)

 それだけでも教科化する意義はあるだろう。

 そして,相変わらず「評価」への問題を記事にしているが,

 「どのような態度で議論に望むことができたか」は十分に評価可能である。

 「発表のための準備をどの程度することができたか」

 「議論のなかで,自分の主張を明確に相手に伝えることができたか」などなど,

 評価すべき項目はさまざまである。

 もちろん,道徳的な価値にかかわる評価は,道徳の授業のなかだけで行うべきものではないし,

 教師が一方的に生徒に対して行うべきものではない。

 だから,「360度評価」というものの意義が認識されてくる。

 いわゆる自己評価,相互評価の意味も重要性を帯びてくる。

 これらを「教科にしなくてもできる」というのは,間違いではないが,

 「教科にすればよりよくできる」というのであれば,前進する方がよいだろう。

 今のままだと,担任教師が何をどのように評価したかが見えない。

 だから,記事の実例であったように,

>「森を守るより工場を造って雇用を増やそう」と言ったらペケがつく。

 ということがおきかねないのだ。

 そう。道徳が教科でないから起こっている問題(指導の時間数をごまかすなど)の方が,

 教科にするから起こるだろうと言われている問題(国家による統制が強くなる)よりも大きいのである。

>「この随筆で愛国心が育つのか」と突き返されるようなことも起きかねない。

 検定でそこまでのことが起こるというのは,時代錯誤である。

 メディアとして,釘を刺しておく,という機能を発揮していることは理解するが,

 当たり前の話として,検定を通過した教科書に,そのような批判が集まる可能性はゼロではない。

 思想・表現の自由とは,そういうものである。

 一方では,それで十分だ,という人がおり,他方ではそんなのでは不足だ,という人がいて,

 それぞれが自分の主張を堂々と表明できるのが理想である。

 だから,新聞というのは「すでに偏っている」と見られてしまい,子どもからも敬遠されてしまうのである。


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宮城谷昌光の言葉

  • 雲のうえに頂をもつ高山を登ろうとするのに、その山相のすさまじさに圧倒され、おじけづいていては何もはじまらない。最初の一歩を踏み出さねば、山頂は近づいてこない。
    「楽毅」第四巻より
  • みごとなものだ。斂(おさ)めるところは斂め、棄てるところは棄てている。楽氏が棄てたところに、われわれの生きる道がある。
    「楽毅」第四巻より
  • 去ってゆく千里の馬を追っても、とても追いつかぬぞ。千里の馬の尾をつかむには、その脚が停まったときしかない
    「楽毅」第四巻より
  • ・・・つくづく人のふしぎさを感じた。道を歩く者は、足もとの石をたしかめようとしないということである。千里のかなたを照らす宝石がころがっていても、気がつかない。それほどの名宝は深山幽谷に踏みこまなければ得られないとおもいこんでいる。
    「楽毅」第三巻より
  • この城をもっとたやすく落とすべきであった。たやすく得たものは、たやすく手放せる。
    「楽毅」第二巻より
  • なにかを信じつづけることはむずかしい。それより、信じつづけたことをやめるほうが、さらにむずかしい。
    「楽毅」第二巻より
  • からだで、皮膚で、感じるところに自身をおくことをせず、頭で判断したことに自身を縛りつけておくのは、賢明ではなく、むしろ怠慢なのではないか
    「楽毅」第二巻より
  • こうする、ああする、といちいち目的と行動とを配下におしえつづけてゆけば、配下はただ命令を待つだけで、思考をしなくなる。この四人はいつなんどき多数の兵を指揮することになるかもしれず、そのときにそなえて自立した思考力をもつ必要がある。
    「楽毅」第二巻より
  • 人は自分の存在を最小にすることによって最大を得ることができる
    「楽毅」第三巻より
  • 勇と智とをあわせもっている者は、攻めるときよりも退くときに、なにかをなすときより、なにもなさないときに、その良質をあらわす
    「楽毅」第二巻より