小学校社会科学習指導要領補説=昭和23年 に示された「社会科学習の系統」
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三、社会科学習の系統
社会科学習の系統はどんなものであればよいかということは大きな問題であります。
この問題について熱心に研究している人々の中には、学習の系統はあらかじめ学年ごとに固定させられてしまうべきものではなく、むしろそれは児童の活動の中から生じてこなければならないと説く人々があります。一方これに対して、学校は児童を導いて十全な公民にする重大な社会的責任をもっていますから、そのような不確かなものではいけない、学習の系統は学年ごとに一段一段、注意深く予定されなければならぬと主張する人々もあります。これもたしかにうなずかれる主張です。現在のわが国のように、学級の人員が多く、しかも教師に社会科指導の経験が乏しい状況においてはとくにしかりです。
だからといって、学年ごとに固定した、しかも全国一律に通用するというふうな知識や活動の系統案を予定することは、単に望ましくないばかりでなく、事実不可能のことです。したがって社会科学習指導において考えられる系統は固定したものではなく、大きな融通性をもった弾力的な系統でなければなりません。各学年の児童に解決を要求してくる問題や、その解決の活動や、その際必要になってくる理解や知識が、どんなところから生まれてくるか、どんなことに関連しているかという予想に基づく系統であります。それは結局児童の経験領域の発展の系統です。
児童たちの社会生活の経験は、年とともにしだいに広くなり深くなっていきます。それはまず自分たちに親しみ深い家庭や学校や近所の社会とか地域社会の経験からはじまっていきます。そしてやがて空間的に広がって国全体の、また世界の他の社会の生活やその相互依存関係などにおよんでいくと同時に、時間的に広がって、時代をさかのぼり、原始時代から現代に至るまでの文化や社会生活の発展を学ぶことに興味をもつようになります。
このような経験の範囲の広がっていく順序を考慮しておくことは、社会生活の理解を指導するために有効なことでもあり、必要なことでもあります。
学習指導要領社会科編(一)には、各学年の児童の経験する社会生活の領域が示されています。これは各学年の児童の心身の発達やその特性、また学年の目標および参考とすべき問題の例を通じて示されております。これを簡潔にまとめると、次のようになります。
第一学年 家庭・学校および近所の生恬(この時期の児童は自己中心的であって、身近な社会を、かれらに直接関係ある限り、行動を通じて理解することができます。)
第二学年 家庭・学校および近所の生恬(一年に比べて経験が一段と広まり深まってきます。ことに近所の社会生活の経験が深くなります。近所の社会での人々の協力や種々な職業や公共施設をある程度まで理解できます。)
第三学年 地域社会の生活〔大昔の生活比較として〕(経験領域が身近な生活からしだいに広がって、村や町にまでおよんでいきます。自然環境と人間との間の相互の適応が興味の中心となります。そして全く文明の開けない不自由な時代の人々の生活にも、しばしば興味を示すことがあります。)
第四学年 私たちの生活の現在と過去(経験領域はさらに広がって県あるいは日本にまでおよぶでしょう。自然環境と人間との相互の適応が、依然として興味の中心でありましょう。歴史的な意識がようやく芽ばえますが、時代の観念はまだ分化せず、過去の時代はすべて現在と対比された昔として一概に考えられる程度であると考えられます。)
第五学年 現代日本の生活(発明発見に興味をもち、日本の生活が発明発見によって変化して現代に至った点を理解するでしょう。)
第六学年 日本の生活と諸外国(発明発見に興味をもつことは、前学年と同様でしょう。そして、発明発見によって、世界的規模をもつようになった産業・交通・通信等の理解を通じて、わが国の生活を、とくに世界との関連の上でみることができます。)
このような経験の領域は、青少年の社会生活の経験の発展のおおよその基準であって、決して絶対的、固定的なものではなく、児童個人により、また児童の生活する社会生活の状況によって変動してくるものです。したがってこれを、重点をおくべき一般的経験領域、あるいは簡単に主要経験領域と呼ぶことにします。それはこのような領域についてのさまざまな経験が、その学年の児童たちに与えられるのが自然であり、また児童たちがそれを必要としてくると予想されるからであります。
このような経験領域の系列を考えておくと、教育の全体計画に対して一般的な大きな方向を与えたり、その学校の児童がとくに触れるべき材料を見とおす基礎を与えますし、社会科として取り上げる学年ごとの重要な理解や知識の範囲を選ぶ助けになり、無意味に重複したり反復したりするのをふせぐことができます。
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同じ年齢の子どもが,みんな同じような社会生活を経験しているわけではありませんから,このような発想でカリキュラムを編成しようとすると,とても大きな困難が伴うことは言うまでもありません。
今,話題になっているのは,「相対的貧困」の中で暮らしている子どもたち。
「相対的貧困」とは,一般社団法人チャンス・フォー・ チルドレンの代表理事,今井悠介さんによれば,国民の標準的な所得の半分以下で生活し ている人たち・・・4人世帯でいえば,年収250万円以下くらいの方々・・・のことで,「相対的貧困」の中で暮らしている日本の子どもは約6人に1人の割合でいる,ということです。
いわゆる「教育格差」が,どのようなかたちで子どもの将来に影響を与えているのか。
何だか公教育の存在価値が本当に薄れてしまって,教育の民営化が本格的に始まる気配を感じてしまうような話でした。
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