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学習指導要領・社会科編Ⅱ(試案)=昭和22年版 に示された現在の中3・社会科の学習活動例

 今回は,第9学年・・・現在の中学校3年生の単元と学習活動例をご紹介します。

**********************

単元一 われわれは,過去の文化遺産を,どのように,うけついで来ているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 自分の日常使っている学用品について一覧表を作り,両親,祖父母あるいは近所の年とった人にたずねて,それらの人々が少年少女時代に用いた品物と比較すること。いつごろから現在のようなものを使うようになったか。それはどこから伝わったものか,なぜ変化したのだろうか。書物などによって調べること。

(二) 自分の家の古いアルバムを調ベて,両親や祖父母の若かったころの服装,髪の形,着物の模様や身のまわり品について,現在のものと比べてみること。それは,いつごろ,どのようにして変わって行ったであろうか。日本人が洋服を着るようになったのは,いつごろからか。洋服が次第に多く用いられるようになった理由について,学級で討議すること。モンペがなぜ流行するようになったかを,討議すること。

(三) 昔の絵や写真を集めたり,また,博物館を訪問して模型を調ベて,昔風の家と現代風の家,農村風の家と都市風の家とを,構造の点から比較すること。和洋風を兼ねた家が自分の近くにないか。あれば,その長短,便,不便について,討議すること。

(四) 日本人が精白した米をたべるようになったのは,いつごろからであろうか。「日本人もできるだけパンとバターと牛乳の食生活を採用すべきである」という主題について,その賛否を学級で討論すること。

(五) 書物を読んだり,先生に話を聞いたりして,書物の歴史について調ベること。人類が事件や物事を書き残す必要が生じたとき,どんな方法で,何を使って,その必要をみたしたか。それは,どういう不便を持っていたか。その後いかなる点が改善されたか。改善されたについて,直接間接に影響を与えたのは,どういう発明や発見であったか。このようにして現在のような書物になるまでの歴史を絵や写真や文章でまとめて学級に報告すること。

 新聞の歴史についても調べること。同じく手紙の歴史について,調ベること。

(六) ことばや文字は,どのようにして現在の形にまで発展して来たか。日本や中国の材料によるばかりでなく,ヨーロッパの場合についても研究してみること。

(七) 昔の手紙や書物を読んで,文章やことばの表現の仕方の違いについて,調ベること。それは,次第にどのような方向に変わって来たであろうか。候文と口語文との得失を論じてみること。

(八) 書物を読んで貨幣の歴史を調ベ,物々交換時代から,石の貨幣や貝殻を貨幣に代用した時代,硬貨金銀・銅・ニッケル貨など)を用いるようになった時代,紙幣時代,さらに小切手や証券を用いる時代と順序に調ベ,知識の発達との関係について,討議すること。

(九) 薬の歴史について,書物を読んだり,薬剤師や医師に話を聞いて調ベること。毒草や食用植物の区別を,昔の人はどうしてやって来たであろうか。現在のわれわれは,これをどうして調ベているか。人類の経験の重要なことと,試行錯誤について,討議すること。

(一○) わが国の法律制度を歴史の書物によって調ベ,それがどのように発達して来たかを比べて学級に報告すること。

(一一) 「解体新書」や「蘭学事始(ことはじめ)」について,先生から話を聞き,わが国における西洋医学の発達について,研究すること。実験や観察や調査ということが,学問の進歩に,いかに必要であるかについて考えること。東洋においては,一般に自然科学の発達がおくれたのはなぜだろうか,討議すること。

(一二) 家や村(町)の生活を中心として,迷信や禁忌をできるだけ集めて表にし,それが自分たちの生活にどんな影響があるかを話すこと。カレンダー(こよみ)はこの数箇年の間に非常に変化した。現在使っているこよみで,われわれの日常生活を営むのには何か不便があるであろうか。このことを両親や祖父母からも聞いて,比較すること。

(一三) 明治以来現在までの間に,われわれの日常使っている道具や,衣食住の材料や,身のまわり品,生活の様式,ことばなど,さまざまなものについて著しい変化のあったものと,余り変化のないものの例をできるだけ挙げて,表にすること。また,都市と農村とでは,どちらが変化が早いか。明治から大正・昭和にかけて,ある時期に急に服装や生活の様式に変化が著しく進んだ時がなかったか。あったとすれば,その原因は何であっただろうか。以上のことを材料にして,社会の変化と生活の伝統について,話し合うこと。

(一四) 歴史や人類の文化に関する書物を読み,人類が昔から使用して来た用具によって,人類の発達を時代的に区分したやり方を研究すること。石器時代,金石併用時代というように分けて考えてみること。現代を,もしこのような区分によって位置づけようとすれば,どういう時代だといえるであろうか。

(一五) 建築や土木工事に,ガラスやセメントを材料として豊富に用いるようになったのは,いつごろからであろうか。また,生活のあらゆる方面にわたって,機械を使用するようになったのは,いつごろからであろうか。それはわれわれの生活をいかに変化させたか。

(一六) 人間の生活が,ある発明や発見によって著しい変化を起した例が,過去においてどのくらいあっただろうか。発明発見家の名まえと,その発明発見の年代を調ベて年表を作り,教室の壁にはりつけること。同じように,それまで人間の使用して来たものに改良を加えて進歩させた例についても,調ベること。

(一七) ある発明や発見や技術的改良によって,社会生活はどのように変化したか。特に工業的世界といわれる現代の世界についてくわしく調べ,学級に報告すること。

(一八) 西洋史の書物を読んで知識を得て,ある地方の文化(例えばキリシヤ文化・ローマ文化など)が盛んになった原因として,遠い外国文化の影響がいかに働いたかについて調ベること。マルコ・ポーロ,コロンブス,マゼランなどの探険家の旅行したコースを調ベ,それらの探検家のもたらした異境の文化が,ヨーロッパ文化の発展にどのような影響を与えたか考えること。

(一九) 奈良時代の文化(例えば法隆寺や正倉院の御物など)について,写真や解説書を読んで,日本の上代文化に及ぼした大陸の影響についてのベ,学級に報告すること。大陸文化の影響は,その後,日本でどのように変化して行ったであろうか。鎌倉,室町時代の文化についても調べ,日本文化の特質を代表するような芸術・工芸・彫刻・建築・生活様式などが次第にととのった形をとるようになった時代について,研究すること。

(二○) 明治維新後,わが国がとり入れた外国文化によって,どういう方面が最も大きな変化を受けたであろうか,種々のものについて具体的に例をあげて研究すること。西洋文化の輸入によって,わが国の伝統的な文化は,すっかりこわれてしまっただろうか。その影響の著しかった方面と,余り影響を受けなかったと思われる方面とを比較し,各々について理由を考え,学級で討議すること。

(二一) 衣服について,その形式や材料が歴史的にどう変化して来たか。晴れ着・平常着・労働着使用の場合の相違,及び地域的または民族別,気候風上別に衣服の違いを調ベて,学級に報告すること。

(二二) 家屋の構造に関し,農村では一般農家と地主及び昔の名主の家,都会では一般民家と商家(しにせ)との違いを比較し,その相違の意味及び家庭生活に関するその役割について,討議すること。

(二三) 日本の家屋には,昔からどんな種類と形式があったかを調べて,報告すること。

(二四)世界の各民族の家の構造を調べ,それらが,住居としてどの程度要求をみたしているかを比較研究して,討議すること。

(二五) 家の構造や方位などについて,どんなの禁忌があるかと調ベ,それらが,現在の生活にどの程度の影響力を持っているかを調ベて,報告すること。

(二六) 主食として,昔からどんなものが食べられたか,世界の各民族の主食はどうか,なぜ各地で主食が違うかについて調べ,学級に報告すること。

(二七) 食事に関する禁忌を調べ,その可否について討議し,結論をまとめて先生に報告すること。

(二八) 食器の種類及び変遷,どうしてそのように変化したかを調ベること。

(二九) 本家と分家の関係,及び親せきの機能について調ベ,それがわれわれの生活にどの程度の力を持っているか,また,そのよい点と悪い点について討議し,われわれの生活をよりよくするためにはどうしたらよいかについて,結論を出して報告すること。

(三○) 郷土附近には,どんな姓が最も多いか,これを調べて統計表を作ること。

(三一) 家庭では,どんな年中行事が行われているか,それは,今日どの程度保存されているかを調ベて,報告すること。

(三二) 婚姻はどんな方式によって行っているか,また,結婚は村内同志が多いか,村外あるいは,他地方のものが多いか,結婚に関する慣習がその地方の思想にいかに影響しているかについて調べること。

(三三) 村はどのように治められているか,また,昔はどうであったかを老人に聞き,よい点と悪い点とを討議して,報告すること。

(三四) 村内の団体(若者組・娘組など),講(頼母子(たのもし)講など)について,その種類及びそれがどんな働きを持っているかについて,各組を作って調査して,報告すること。

(三五) 村民が共同で行っている行事について,その種類,それが今日の生活に対して,どんな意味を持っているかを調ベて,報告すること。

(三六) 「郷に入っては郷に従え」ということわざについて,そのいろいろな場合について討議し,そのよい場合と悪い場合とについて報告すること。

(三七) 道路やみぞの修理,あるいは共有地の労力は,どのようにして提供されているか,それはだれが指揮し,またいかなる方法で行っているかを,村役場や古老について聞き,よい道路とその輸送能力について調ベること。

(三八) 村の歴史の基本的なものについて調ベること。

(三九) 農耕に関係した儀礼にはどんなものがあるか,それはどんな意味を持っているか,また,それはどんな方法で行われているか,できれば写真にとったり,絵に書いたりして報告すること。

(四○) 農具の種類及びその変遷を,時代別,地方別に調ベ,その特徴や,改良すべき点などについて,討議して報告すること。

(四一) 村民は,商家への支払いにおいて,「かけ売り」あるいはその他の制度によっているか,それは,盆及び正月の二回か,現代の商業の発展と消費者の立場から,それはよいか悪いか,学級で討議すること。

(四二) 問屋の機能を調査し,現在それがどの程度の力を持っているか,それはどう変化しつゝあるか,近代商工業の発展という点からこれを批判討議して,報告すること。

(四三) 行商人,例えば,富山の薬商人などについて,その組織・歴史・機能などを調ベて,報告すること。

(四四) 民間療法としてどんなものがあるか,療法はどうか,薬の種類にはどんなものがあるかを調ベて,報告すること。

(四五) 商家における主人と番頭とでっちとの関係を調べ,それは,現在どう変化しているか,また,そのよい点と悪い点とを指摘して,報告すること。

(四六) 郷土附近の地名は,明らかにある地形にその起源を持つと考えられるものがあるか,これらについて調べ,また,この地名がどこの地点から起ったかをも調査して,報告すること。

(四七) 郷土附近の地名には,その昔の開墾や耕作方法から発生したと考えられるものがあるか,これについて調べて討議すること。

(四八) 郷土附近の地名には,昔の交通に関係して発生したと思われる地名がないか,これについて調べて,報告あるいは討議すること。

(四九) 郷土附近の地名で,それが明らかに昔のあることから発したと思われるものについて調ベ,討議すること。

(五○) 郷士附近の地名には,最近新たにつけられたものがあるか,その種類・地点・意味について調べ,報告すること。

(五一) 自分の近隣に,辰(たつ)市・とり市・二日市・三日市・四日市・五日市・八日市・二十日市・馬市などの地点があれば,それについて,また地形・産業の点から,それがどうして発生して来たものか,またそれが衰えたことによって,日本人の生活にはどんな影響があったかを,討議すること。

(五二) 商業・工業における仲間について,その種類・機能,そのよい点と悪い点とを調ベて,討議すること。

(五三) 親方と徒弟の関係について,昔はどうか,現在はどうか,徒弟の修業年限及び義務などについて,親方と称するものから聞き,近代商工業の発展といら点から,そのよい点と悪い点とについて調べ,討議すること。

(五四) 交通の用具としてどんなものがあるか,また,交通用具の発達について調ベ,報告すること。

(五五) 市(いち)について,その種類・場所・日数・市のたつ回数,神様との関係,また市の開かれる日をなんというか,農業休みその他の休日とどんな関係があるかを調ベて,報告すること。

(五六) 市では,地方によってどんな品物が売買されるかを調ベること。

(五七) 自分の村に,どんな口碑や伝説があるか,また彰徳碑などがあれば,それについて,それが村の発達とどんな関係があったかを,古老や旧家などに行って聞き,学級に報告すること。

(五八) 盆踊りについて,その変遷を古老に聞き,それは農村にとって必要なものかどうか,必要であるとしても改善すベき点はないか,などについて討議し,報告すること。

(五九) 古老から昔の説話についてできるだけ聞き集め,その現在の生活に対する影響について,先生を交えて討議すること。

(六○) 中国の年中行事について調べ,日本のそれとどんな関係があるかを考えること。

(六一) 中国の伝説を集めて報告すること。

(六二) 中国の廟会について,その時日・意義などについて調ベ,報告すること。

(六三) 娘々祭(にゃんにゃんまつり)について調ベ,報告すること。

(六四) インドネシヤ人の農耕儀礼についてそのだいたいを調べ,報告すること。

(六五) 日本の家と,中国の家と,西洋の家の構造を比較し,その得失を討議すること。

(六六) 日本服と,中国服と,洋服とを比較し,その得失を討議すること。

(六七) 日本食と,中国食と,洋食とを比較し,その得失を討議すること。


単元二 (イ) われわれの芸術的な欲求ご満足させるために,社会はどんな機会を与えているか。
~学習活動の例~

(一) 子供たちは,歌をうたったり,絵を書いたりしているであろうか。そういう欲望を,どういう形で表わしているであろうか。自分の弟や妹を観察して,その種類・機会などについて,表を作ってみること。

(二) 原始人たちは,どんな形で芸術的欲望を表現したか。浜田靑陵著「博物館」というような本を説んで,報告文を書くこと。

(三) 未開人の楽しみは,どんな形でなされているか,映画や,書かれた書物などによって,そのありさまを知り,学級に報告すること。それは,われわれの現在の楽しみと似たところがあるであろうか。それで,どんな美的な欲望がみたされているのであろうか。

(四) 未開人の装飾について,それと実用との関係を調ベてみること。家の装飾は,たゞ美化するだけのためのものか,それとも,必要から生まれて来たものか,写真を集めて研究すること。

(五) 日本の古代人は,どんな遺跡を残しているか。歴史の書物を続んだり,陳列してあるものを見学したり,地方の家の所蔵の美術品を見たりして研究すること。それは,現在の生活と,どんな関係を持っているであろうか。

(六) 日本の古代には,芸術文化の上で,大陸からどんな影響を受けたか,歴史の書物によって研究すること。また,正倉院の御物について,先生の講義を聞くこと。石田幹之助著「長安の春」というような本を,先生に読んでもらい,それにもとづき,東西文化の交流について討議すること。今日のわれわれの生活で,こういう文化の表現は,どんな意味を持っているであろうか。

(七) 東洋古代の芸術文化は,現在の日本の文化にどんな影響を及ぼしているか表を作って研究してみること。

(八) 西洋の古代の芸術文化に関する写真を集めること。エジプト・ギリシヤ・ローマなどの芸術文化が,現在のわれわれにとって,どんな関係があるか,調ベてみること。

(九) ギリシヤ神話に取材した文芸作品を集めてみること。

(一○) ギリシヤの彫刻と近代彫刻とを比較して,その特色について調ベてみること。また,現代の生活の中に残るその影響を探してみること。

(一一) 仏教美術・キリスト教美術の写真を集めてみること。キリスト教の教会・仏教の寺院・回教の寺院・神社の写真などを集めることもよい。

(一二) 国語でならう日本の古典を調ベ,「古典と時代精神」という題で作文を書くこと。「日本の美の伝統と特色」という点について,研究すること(能・生花・茶の湯・和歌・俳句・庭園など)。

(一三) 明治以前の日本人の一般の楽しみは,どんなものであったろうか。音楽・舞踊・演劇などについて調ベてみること。それは現在までどんな影響を与えているであろうか。

(一四) 機械の発明が行われてから,芸術文化にどんな変化が起ったであろうか。印刷術を例にとって討議すること。また,美の世界は,どんなに拡大されたであろうか。

(一五) 日本は,明治以来,どんな国々の文化の影響を受けたであろうか。交通・通信の発達が,芸術文化に及ぼす影響という点で,代表的な例を考えてみること。

(一六) 科学はどんな新しい楽しみを人間生活に与えているであろうか,その例を考えてみること。それは,どんな点で過去の芸術に影響を与えているであろうか,それについて討議すること。

(一七) 学級で,趣味の調査をしてみること。その項目は,小説・詩・和歌・俳句・絵画・彫刻・音楽・映画・写真・ラジオなどとすること。

(一八) 自分の郷土には,どんな種類の文化団体があるであろうか。文化団体の名まえ・目的・会員数などを調ベること。

(一九) 自分の郷土からは,どんな芸術家が出ているか,調べてみること,郷土に住んでいる芸術家をたずねて,地方文化の向上という点について話を聞くこと。

(二○) できれば,学校が主催して,地方の絵画展覧会を開くこと。在住の画家などと相談して,その計画を立てること。

(二一) 自分の郷土には,どんな工芸品が生産されているか,その歴史について調ベてみること。学校にそれを報告し,一つ一つの工芸品について,将来性があるかどうか,討議すること。最近それらはどんなに変わって来たか。自分の家庭にはどんな道具,調度,工芸品があるか。それらはどこで出来たか,その製作過程を調べてみること。

(二二) 自分の郷土では,盆踊りはどんな程度に行われているか,どんな歌詞がうたわれているか,どんな歴史を持っているか,などについて調ベてみること。盆踊りは,地方の生活にとってどんな意義を持っているか,その利害について討議すること。できれば,盆踊りの歌詞を作ってみること。

(二三) 日本音楽と西洋音楽との違う点,似ている点について討議すること。ラジオの音楽番組で,日本音楽と西洋音楽の比率を,一週間を通じて調べてみること。それは中央局と地方局とで,どう違っているか。

(二四) 郷土出身,あるいは郷土在住の音楽家を中心に,音楽会を計画すること。

(二五) 世界の大音楽家の伝記を書いて,学級で朗読すること。

(二六) 学級のレコード・コンサートを計画し,すぐれた音楽を,他の学級の者も,聞かせること,その際,学級の数名が選ばれて,解説の役目を引き受けること。

(二七) 世界及び日本の名画の模写を集め,その下におのおのの解説をつけて,学級展覧会を開くこと,学級として,すぐれた絵画展を見学し,図画の先生から説明を聞くこと。

(二八) 学級や学校で,読書傾向を調査し,項目に分けて図表を作ること。それによって,読書指導について,討議すること。

(二九) 自分の好む文学作品について,そのあらすじをまとめ,学級に報告し,それに含まれている思想や理想について説明し,学級討議を行うこと。

(三○) 地方の図書館に行き,人々の読書の趣味や傾向,そのおのおのの人数,書物の種類などを調べること。また,書店に行って,書籍・雑誌などについて,その売れ行きを調ベ,統計をとってみること。

(三一) 地方の図書館は,どういうふうに経営され管理されているか,財政はどうなっているか,調ベてみること。全国にはどれくらい図書館があるか,それぞれ,どういうふうに経営され管理されているか,財政はどうなっているか,調ベてみること。政府や社会は,図書館に対して,どんな関心を示しているか,数字を挙げて学級に報告すること。また,望ましい状態は,どうかという点について,討議すること。

(三二) 自分の地方には,映画館はどのくらいあるであろうか,過去一箇月間にどんな映画が上映されたか,表にあらわしてみること。自分の町の映画館の上映写真について,学級で投票を行い,その人気の高下,及びその理由を明らかにすること(製作会社名も明らかにすること)。

(三三) 「映画と青年」という題で作文を書くこと。映画は,地方文化に対し,どんな利害を与えているか,それは文化生活に対して大きな価値を持っているか。

(三四) 地方の商業劇場では,どんな出し物が行われているか,学級の生徒の家庭では,どのくらいの割合で見に行くか,統計をとってみること。できれば,劇の種類(かぶき・新劇など)と,見に行く人の年齢・職業などを調ベてみること。また,学級の者は,どういうものを要求するか,討議すること。

(三五) 地方のしろうと演劇を調べてみること。どんな人たちが主になってしているか,その利害などについて報告書を書くこと。

(三六) 学級で,脚本朗読をしてみること。できるだけ望ましい脚本を選び,できれば自分たちで簡単な脚本を書いてみること。

(三七) 自分の家庭でラジオ劇を聞き,まず家庭で批評会を行い,それをもとにして,学級で討議してみること。

(三八) 自分たちの地方には,有名な建築物はないであろうか。県の有名な建築物の写真を集めて表を作ること。地方や中央の政府は,それに対して,どういう保護を加えているか,研究すること。自分の町の美しい建物(古くても,新しくても)を調ベ,なぜ美しいかについて,討議すること。

(三九) 産業の発達にともなって,装飾品にどんな変化が起って来たかを調ベてみること。自分たちの周囲を調ベて,どんな新しい材料が使われているかを研究すること。例えば,筆入れなどの材料や形が,どんなに変わって来たか図示すること。自分でも,新しい装飾品の設計図を書いてみること。

(四○) 政府は,国民の文化生活を改善するために,どんな仕事をしているか,あらゆる領域にわたって調べ,それを図表にあらわしてみること。もっと政府に期待すベき点について討議すること。

(四一) 自分の町の当局者に会い,都市の美化についての計画を聞くこと。できれば,学級で,都市の美化という立場で,自分の町の都市計画を考え,鳥かん図を作ってみること。

(四二) 学級あるいは学校で,読書会・音楽会・音楽同好会・美術同好会・短歌会・俳句会・書道会などの同好会を作り,地方の人たちと協力して,どの程度まで成功するか,研究してみること。

(四三) 学校あるいは学級の図書は,どういうふうに利用されているか,それと地方の人たちに公開することの是非について,討議すること。公開するとすれば,学級の生徒は,どんな責任のある仕事をすることができるか。

(四四) 「図書館のよき利用者」,「劇場のよき観衆」,「音楽会のよき聴衆」というような題で,公共の施設を利用する。よき態度について表を作ること。

(四五) 学級で,文学作品を発表し,回覧雑誌を作ること。

(四六) 学級あるいは学校で,自分たちの作品で,美術展覧会を開くこと。

(四七) 教室を美しくするための委員会を作り,交替で,責任をもって,その計画に当たること。

(四八) 学校に花壇を作り,責任者をきめて,その管理を行うこと。

(四九) 衣服のがらや型の流行の美について討議すること。また,生活のいろいろな角度から討議すること。


単元二 (ロ) 宗教は,社会生活に対して,どんな影響を与えて来たか。

~学習活動の例~

(一) 自分の地方の宗教の種類や土俗信仰を調べて報告すること。

(二) 自分の地方で行われている収穫の祭やその他の宗教行事について調ベること。それらは地方の人々の生活にとってどんな価値があるか。よく調べた後で討議すること。

(三) 仏教の成立とその発展について調べて報告すること。仏教はどのようにして日本に伝来し,どんなに日本人の社会生活を変えたか。現在どのような影響を与えているか,学級で討議すること。

(四) 鎌倉時代には,いろいろの仏教の宗派が発生した。これはどういう理由によるのだろうか。またそれらは従来の仏教とどのような点で異なっているか。その点について学級に報告すること。

(五) 歴史の書物などによって,キリスト教はどうして成立したかについて調ベ学級に報告すること。それはいつ日本に伝えられたか。それはわれわれの社会生活にどんな影響を与えているか。

(六) キリスト教と仏教の教義は実際にどう違うか。儀礼などもどう異なっているか。またその教義や信仰で共通な点はどこにあるか。これらについてよく調べた上で討議すること。

(七) 同教の成立とその発展について調ベ,簡単に報告すること。

(八) 神道にはどんなものがあるか。その種類を調ベて報告すること。それらは自分の地方の社会生活にどんな影響を与えているであろうか。

(九) 儒教や道教の影響はどうであろうか。それは家庭や社会的にどんな形で現われているか。それについて研究し討議すること。

(一○) 世界のおもな宗教の時代分けと分布を地図の上で示してみること。

(一一) 自分の近所の神社や教会や寺院が社会生活に対してどんな意味をもっているかについて報告すること。

(一二) 教会や寺院の果たして来た社会的責任の重要なものは何かということについて討議すること。

(一三) 宗教団体による救済機関としてはどんなものがあるか。またそれによってどれぐらいの人々がどのように救済されているかについて調ベて報告すること。

(一四) 自分の近所に宗教団体によって,経営されている幼椎園・学校及びその他の教育施設があれば,方針・内容,及び社会貢献する教育活動について調べて報告すること。

(一五) 日本の宗教の中で,社会事業の点でどの宗教の宗派が活動的であるか。それらはどのような方面に活動しているかについて調ベて報告すること。

(一六) 自分の近隣に宗教団体によって経営されている学校があれば,その教育はどこに重点をおいているかについて報告すること。

(一七) 信仰に一生をさゝげ社会に影響を与えた人々を主題にして,物語を書き学級で朗読すること。

(一八) 信教の自由を求めて戦かった人々のうちからひとりを選んでその人について短い伝記を書き,それを学級で朗読すること。

(一九) なぜ信教の自由は必要なのであろうか。日本では,信教の自由はどんな発展をして来たか。明治憲法にも信教の自由について明記してあるが,新憲法であらためて,これを強調しなくてはならなかった理由について討議すること。


単元三 われわれの政治は,どのように行われているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 家のしきたりを挙げて表にし,そのうちで興味のあるものを選んで,討議すること。家のしきたりはどうしてできたのであろうか,なぜそういうしきたりは必要なのか。

(二) 隣近所の人々が,互に協力して働いたり,手伝い合ったりする時があれば表にすること。例えば,

 (イ) とむらい講(組)

 (ロ) ゆい・てまがえ・もやい

 (ハ) てつだい
 このやうなしきたりは,いまでも盛んに行われているであろうか。どんなふうに行われているだろうか。その組の仲間の人は,これらのことを喜んでいるだろうか。それともきらっているだろうか。これらの協力は,将来どうなると思うか。学級で討議すること。

(三) H・G・ウェルズの「世界文化史大系」や,バンルーンの「人類解放物語」その他のものを読んで,原始社会や未開社会について知識を得ること。社会が成り立つためには,そこで,どんな条件が必要か(生活の規則や義務とかそれらによる統制とか)を明らかにすること。どんな単純な社会でも,秩序があることを明らかにすること。そういう社会と,自分たちの社会とを,個人と証会との関係がどんなふうに発展して来たかという点で比較して明らかにすること。

(四) 自分の学級や学校のいろいろの規則を集めて,調ベること。

 (1) 校則や校訓のできたわけを,調査すること。どういう時にできたか。だれが作ったか。どういう機会にできたか。それらは,いまでも必要であろうか。

 (2) もっとよいものを自分たちで作るには,どうしたらよいか。

 (3) 校長先生と他の先生たちと生徒との関係を,図表に書いてみること。

 (4) 学校の仕事や,日々の行事をなめらかに進めて行くために,自分の学校には,どんな組織や設備があるであろうか。生徒の協力できる範囲を,明らかにすること。

 (5) 学校の生徒が,不都合なことをした場合には,どんな処置がとられるか,悪いことや,困ることや,危険なことが起らないように,学校では,どのような工夫が払われているであろうか。これらを調ベ,改善案を考え,先生といっしょに討議すること。

(五) 自分の学校に適用される国・県・その他の法令を集めて研究すること。それらを討議して,一つ一つの規定が,学校に及ぼす影響を正確に調ベてみること。それらの法令の範囲内で,できる改良について考え,それから明らかに現在の規則を変えた方がよいと思われる例について,考えてみること。

(六) 自分の学校の衛生委員会と設備改善委員会を作ること。この委員会は視察を行って事情の報告をなすこと。問題が見出だされたら,それを学級で討議して,解決をはかること。もし自分たちで取り扱えない問題があれば,学校教育当局や専門家(校医・学務委員・学校父兄会・後援会会長)の注意を促す方法を考えること。

(七) 学校内の生活に例をとって,よい指導者や,よい協力者の特色を挙げて学級で討議すること。在学期間中に,学級のすべての生徒が指導者として活動できる機会を作ること。

(八) 人々が,共通の目的のために,いかに協力して来たかを明らにするために,自分たちの市・区・町・村内にある重要な組織について,研究すること。市・区・町・村民の組合や,協会全部の表を作り,それぞれその指導者に会ってみること。できれば,いつでも個人または委員会の一員として,会合に出席するようにはかること。

 労働組合・婦人の会・青年の会・休養娯楽の会・厚生組織・宗教の会などの現在の仕事について討議すること。一年間のうちに,本を一冊編集して,各組合組織の発生・目的・存在理由・活動・形態・組織・内容などを書きこむこと。もし,ある組織が,価値のある目的のために働いていると思い,自分たちもその力になれると思ったならば,進んでそれに参加すること。

(九) 学校の生徒は,かならず学校の規則を守るだろうか。市・区・町・村の人人が,その市・区・町・村の規則を堅く守ることによってもたらされるいろいろな利益を挙げて,学級で表にすること。もし現在のわれわれを統制しているいろいろの規則が,全部なくなったとしたら,そこに起ると思われる混乱を挙げてみること。規則や法律はなぜ時代の変化とともに,改良され,進歩していかなくてはならないであろうか。

(一○) 自分の家庭,及び自分の地方の他の家庭の生活が,政府のやり方によってどういう影響を受けるか,政府から受ける利益について,表を作ること。

(一一) 市役所・区役所・町・村役場,都道府県庁,及び政府と,自分との関係を示す図表を作ること。

(一二) 委員会を組織して,市・区・町・村長及びその他の地方役場の公務員をすべて訪問し会見してみること。その人たちの職責・資格・給料・任命方法を知ること。自分の知ったことがらを,すべて学級の生徒に報告し,討議すること。新憲法は,地方公共団体公務員の公選を規定しているが,自分自身でも,その公選の計画を立ててみること。それを立てる前に,外国の市・区・町村役場を研究すること。

(一三) 市・区・町村役場の組織を示す大きな図表をかいて,級友に説明すること。

(一四) もしできるならば,自分たちの市・町・村会の会議を傍聴すること。会議の進行状態を注意して観察すること。市・区・町・村会議員の選出法・資格・給料・職責を研究すること。選出法で変えた方がよいと思うことについて,討議すること。自分の生活に影響のある市・区・町・村会の活動を表に作ること。

(一五) 市・区・町・村役場の活動に関係した題材を,新聞から拾い出し,それを切り抜いて整理保存すること。また市・区・町・村役場の公務員を学校に招き,その活動について,説明を受けること。

(一六) 模擬市・区・町・村議会を,自分の学級か学校に組織し,市・区・町・村問題を,討議すること。

(一七) 自分たちの地方の人々には,どんなふうに税が課せられているかを調ベること。税金がどのように費やされるかを調べること。徴税と支出とを示す図表を作ること。地方の人が,それらの支出によって,どんな恩恵を受けているか,個々の場合に当たって調べること。

(一八) 外国の市・区・町・村行政組織に関係する資料をすべて集めて,研究すること。それらを,日本のものと比ベてみること。

(一九) 自分たちの地方にある法廷をたずねること。法廷の手続,進行法などを研究して,(他の国々の裁判手続きを勉強して)他国における手続きと比較すること。裁判官や,他の法廷官吏の選抜法を明らかにすること。法廷勤務の公務員に会って,その職責と,法廷の手続きとを,説明してもらうこと。

(二○) 学校に模疑法法廷作り,正確な法廷手続きを完全に履行すること。自分から進んでその役とやろうとするある生徒を被告にして,犯罪の疑いをかけてみること。

(二一) 警察署をたずね,その仕事を研究すること。警官の探用法を調在し,現在の警察制度で改全したほうがよいと思う点について,級友と討議すること。警察官吏を教室に招き,その職責についてたずねること。

(二二) 逮捕・拘引は,どうして行われるかを調ベること。(憲法三十二・三十四・三十五条参照)。罪の確証を得るために,拷問の方法が現在用いられているか,過去はどうであったかを調べること。被告と証人から証言を得る仕方ば他国で用いられているのと同しであろうか。(憲法三十六・三十八条参照)。

(二三) 自分の地方で,防火の責任に当たる人の任命法・資格・職責について,明らかにすること。消防署に行って,消防士の仕事,そのやり方を調ベること。

(二四) 自分の地方の政治に関するある程度の欠陥を示し,それを改善する方法を取り扱った劇を作り,上演すること。

(二五) 自分の市・区・町・村役場の公務員や,地方事務所や,県の公務員で,だれが公衆の健康について仕事をしているかを明らかにすること。その人たちをたずね,その仕事について話し合うこと。

(二六) 自分たちの地方の食糧配給機構を,調ベること。闇市場のある範囲を明らかにすること。闇市場を,正しい統制のもとにおく方法手段について,討議すること。

(二七) 自分たちの地方で,衛生状態の悪い場所を見つけ出すこと。その問題について討議し,改善策と提議すること。公衆便所は整備されているか,下水は完備しているか,ちりあくたは完全に処理されているか。地方の当局や,私設団体が,公衆衛生のためにどんな活動をしているかを,調ベること。

(二八) 成人教育の団休の会合を傍聴すること,地方の教育とレクリエーションについて論じている新聞記事に,注意すること。地方の学校の改良に関する意見を集めて,討議すること。

(二九) 都道府県庁に関する記事や,書物を,自分の府県の役所を特に参照しながら,読むこと。府県会をたずね,できるならば会議を傍聴すること。地方行政改正案を参照して,この立法機関の構成・職責・成員の資格・組織及び手続きを明らかにし,学級に報告すること。

(三○) 自分の府県の知事及び府県庁の他の公務員を十分研究すること。知事は現在どうして任命されるか,他の公務員はどうか。知事及び府県庁の公務員の職責及び活動について表を作り,学級に報告すること。知事の職は,現在どうなっているか,新憲法のもとではどうなるかという問題を,学級で討議すること。もしできれば,府県民に対する恩恵という点から,この数年になしとげられた仕事の記録を,研究すること。新憲法は,府県の公務員の身分に,どんな変化を与えるか。

(三一) 日本の歴史や,日本の政治の発展について,書物を読んで,政治上の事件について,関係した重要な人物・年代・事件の内容などを,簡単な年表に作ること。

(三二) 日本の政治の組織について,歴史の書物などによって,次のことを明らかにすること。

 (1) 公家政治と天皇との関係(院政を含めて)。

 (2) 武家政治と天皇との関係(特に幕府政治について)。

 (3) 明治政府と天皇との関係。

 (4) 現代の政府と天皇との関係。

(三三) 郷土の古老で,明治維新のことをくわしく知っている人があれば,これを訪問して話を聞くこと。また,明治維新について,日本歴史の書物を読んで,これを学級に報告すること。特に,それが「革新」であったとともに「復古」であったことを具体的な事実について研究し,学級で討議すること。次のような点では,維新前と維新後では,どんなに変わったであろうか。

 (1) 政治の仕方とその組織。

 (2) 階級制度(士・農・工・商の別)。

 (3) 租 税

 (4) 交通・通信・運輸。

 (5) 工業・商業・貿易。

 (6) 武士の生活。

 (7) 町人や農民の生活。

 (8) 教育と文化。

 (9) 宗 教。

(三四) 明治憲法が,外国の影響を受けている点について調ベてみること。(例えば,プロシア・イギリス・合衆国・フランスなど)。

(三五) 明治憲法について,特に,次の点を明らかにし,学級で討議すること。

 (1) 立憲君主制。

 (2) 代議政治組織。

 (3) 天皇権と三権分立。

 (4) 政党政治。

 (5) 国民の権利と義務。

(三六) 明治憲法が発布されてから,最近に至るまでに行われたその精神に反する事実を,歴史的に挙げること。その理由を討議すること。満州事変から太平洋戦争までの間を,特に,注意して調ベること。なぜ日本はこの憲法のもとで,民主的な生活や政治に達することができなかったのか。なぜ日本は,昭和二十一年に新憲法を制定したのであろうか。どうして明治憲法は,不十分だったのであろうか。

(三七) 新聞・週刊及び月刊雑誌,パンフレット・書物,その他の刊行物で,新憲法の問題を取り扱ったものを学級でできるだけ集め,「新憲法発布記念学級文庫」を作ること。特に,新聞に発表された憲法に関する記事の切り抜きを作ること。また,文献目録を作ること。

(三八) 学級内に「新憲法研究委員会」を組織して,定期に会合して憲法の研究とその実践について,相談すること。委員は,学校にその結果を報告し,報告ののち,学級で自由討議をさせること。

(三九) 新憲法の全文を読んで,重要だと思われる条項にしるしをつけ,学級に報告すること。新憲法と明治憲法とを読み合わせてみること。どちらがわかり易くできているかを比較すること。わかり易い憲法の長所を挙げて,グループで討議すること。

(四○) 地方で,憲法にくわしい学者か法律家か代議士を招いて,新憲法の精神について話を聞き,その後で,質疑応答をする計画を立ててみること。

(四一) 委員を選んで,第九十回憲法審議議会の議事録を官報によって調ベること。重要な点や,憲法正文によっては明らかでない箇所を,それによって確めること。その結果を学級に報告して,討議すること。

(四二) 現代の他の国家の憲法の研究をするために,委員を選ぶこと。個々の場合に当たって,日本の新憲法を,他の憲法と比較してみること。

(四三) 学級に憲法前文を研究する委員会を組織し,明治憲法と比較しながらその重要な点を明らかにし,学級に報告して自由討議を行うこと。特に,次の点を中心として,

 (1) 民主主義的

 (2) 戦争からの解放。

 (3) 主権在民。

(四四) 第一章天皇の項を研究する委員会を設け,新憲法の規定のもとにおける天皇と政府,天皇と国民の関係を定義してみること。特に『象徴』としての天皇の地位について,十分研究すること。これを学級に報告して,討議すること。

(四五) 第二章国民の権利及び義務の項を研究する委員会を設け,従来の憲法に比ベて,権利条項の発展したあとをたどること。新憲法の中から,権利条項といわれる箇所を取り出すこと。それが,個人としての自分に保障している特殊な権利を表に作ること。おのおのの権利が,義務と責任とを同時に含んでいる状態を図によって示すこと。自分が十分に責任を果たすことのできる方法について,討議すること。そのような権利は,なぜ自分にとって重要なのか。

(四六) 憲法の各章(特に,一・二・四・五・十など)を参照し,新憲法において規定された日本の政治の姿と,イギリス及び合衆国のそれと比較すること。

(四七) 第三章戦争の放棄の項を朗読して,憲法前文と対照しながら自由討議を行うこと。

(四八) 国の憲法を模範として,試みに校務に関する根本規則を書いてみること。この場合,国の憲法に保障された権利を,侵害しないように,注意しなければならない。

(四九) 政治の数種の型についての報告を準備するいくつかの委員会を設け,その各々が研究したところを,口頭で学級に報告すること。おそらく,合衆国・イギリス・スイス・フラソス・ソ連・ニュージーランド・スェーデンなどのものが参考になるであろう。

(五○) 日本の歴史の書物によって,ある時代の政治の姿を調ベ,これを新憲法施行後の政治の姿と比ベてみること。この歴史についての史料を,報告書や口頭の報告や,学級討議,物語などのいろいろの方法で提出すること。

(五一) 最近の選挙の方法について,研究すること。他の国の選挙法を勉強すること。日本の方法の利害を表にあらわすこと。

(五二) 有効な選挙法を用いて,生徒の役員を選挙すること。

(五三) 議会において,「選挙には教育上の資格がいる。」と決議されたとして,これについて討議すること。

(五四) 現議会の機構を示す図を作ること。自分の地方から出た現議員の経歴を調査すること。法律は,議会でどうして作られるかを調ベること。模擬国会を組織して,公益に関する問題を論ずること。

(五五) 議会に行き,傍聴席から日程の議事を視察すること。それを,くわしく学級で報告すること。

(五六) 現在の有名な議員のことを書いた絵入りの伝記を作ること。近くに住む議員に会見すること。その人たちから,議会の選挙について,できるだけ多くの話を聞くこと。

(五七) 議会の活動及び議員に関し,参考になる最近の新聞記事を切り抜いて,整理保存すること。議会の活動について,しばしば集団討議を行うこと。

(五八) 憲法の内閣に関する部分を,学級で朗読すること。あらゆる方面から,内閣についての情報を手に入れること。グラフを用いて,内閣と議会の関係を図解すること。各大臣の職責を明らかにした表を作ること。

(五九) 閣員と,各省の活動に関する最近の新聞記事の切り抜きを整理,保存すること。その知識にもとづき,適当な時に,内閣の主要閣員の活動について討議すること。

(六○) これまで議会と内閣とを研究するために用いた方法で,司法裁判所を研究すること。

(六一) 政府は,政治を行って行くのに必要な経費を,どのようにしてまかなっているであろうか。歳入・歳出の予算や,決算に関して政府の発表したことがらを集めて,研究すること。なぜ,だれでも政府の経費を分担しなくてはならないのであろうか。

(六二) 租税のいろいろな種類を調ベ,直接国の経費となるものを明らかにすること。自分の地方の人たちは,どんな税を払っているか。税を払った結果として,どんな恩恵を受けているであろうか。

(六三) 一般に,民主的だと思われている行動の仕方を表にしてみること。自分自身で民主的だと考えた事業の表と,それとを比較すること。政府の活動の数々を調べ,自分のきめた民主主義と,それらが合致するかどうかを明らかにすること,政府をもっと民主的にする方法を討議すること。

(六四) 政党の研究をまず地方から始めて,次第に,国の段階まで及ぼして行くこと。個々の場合について,いろいろの政党の綱領の写しを手に入れること。各政党の組織を研究し,それを表にまとめて図示すること。自分の市・区・町・村の人々の地方政治関係を明らかにすること。人々に面会してその人々が,どれかの政党に属している理由を調ベること。政党は,どうして役員を選ぶか,役員選出法を討議し,もっとよい方法があれば,考えてみること。地方で,政党答を支配しようとする人があれば,どんな人か。前の選挙における自分の市・区・町・村及び府県の統計を調ベ,投票状態を明らかにすること。この知識にもとづいて,報告書をかき,何らかの方法で学級に説明すること。

(六五) 各国の政党の歴史や現状を調ベて,「国民のための政党」という題で,作文を書くこと。

(六六) 自分の学級の大部分の生徒が信じている重要な公共問題についての意見に関し,質問票を用いて,学級全体で研究すること。それを政党の政綱といちいち比較してみること。自分の市・町・村の多数の意見を明らかにする研究計画を作ること。ついで,少数の意見についても,同じようにやってみて,それらを既成の政党の政綱と比較すること。

(六七) 自分の町で行われた最近の政戦に関し,できるだけ情報を集めること。この問題の報告を書き,学級に提出すること。投票獲得のため,不正手段を用いなかったか。以前公職にあった者の何割が当選したか。政府の位置になぜ変化が起ったか,その理由について考えること。

(六八) 町の大人たちと,特殊な社会の問題について話し合うこと。その人たちに,直接にかゝわりのある諸問題を明らかにすること。人々が,町の問題にどんな解決法を考えているか,それを非公式でも,比較的完全な世論調査を行って,明らかにすること。全部の人が,その解決に対して,用意を持っているかどうかについて,また,意見の相違について,討議すること。意見の相違の理由を調ベること。

(六九) 地方の問題について,意見は多数あるであろうか。それとも少数であろうか。これについて明らかにすること。意見を発表する人は,非常に少数なのであろうか。人々が公共の問題について意見を発表するように,促すにはどういう方法によればよいか。

(七○) 政党の地方指導者に会い,あるいは新聞雑誌にあらわれたその人たちの声明を抜き書きしておくこと。地方問題に関する政党の態度を調査すること。政党はどんな方法で,また,どの程度まで世論に影響を与えているか。

(七一) 公共の問題についての討論会をやる機構をみつけ,ある問題についていろいろな人たちの政策と見解とを,調べること。

(七二) 自分の地方の人々が,読む新聞のすベてについて,論説や,記事や,雑報を集めて研究し,学級で朗読すること。新聞の論説と,町の人々の意見とに関係があるかどうかを調ベること。

(七三) 自分の地方の人々に,月ぎめで読まれているのは,どの新聞がいちばん多いかを調ベてみること。その人たちは,どんな部分にいちばん興味を持っているか。自分の読んでいる新聞の社説は,何を取りあつかっているか。自分の地方で読まれている新聞を,統制する者はだれか。政党に統制されている新聞があるであろうか。自分の新聞は,事実と意見とをはっきり区別しようとしていると考えられるか。自分の新聞は,どこから記事を取って来るか。政府あるいは公務員と関係はないか。自分の新聞は,どの程度まで,町の世諭を反映しているか。いろいろな意見をのせる新聞があるか。自分の読む新聞の収入のもとについて,知識を得ること。収入の何割までが広告費によるであろうか。広告主は新聞の編集方針に影響を及ぼすであろうか。新聞にあらわれる「投書」を研究すること。新聞の編集者は,政府を批判するであろうか。民主的な国民にとって,政府の活動に対して批判する自由を持つことが,なぜ必要か。地方の役所は新聞に広告をのせるというような方法で,新聞を利用したり,その方針に影響を与えたりしてはいないか。

(七四) 一定のラジオの時間を選んで,その番組を自分で聞いたり,委員に聞かせたりすること。どの程度に自分の地方の人々が,この同じ番組を聞くであろうか。ラジオの討議と世論の変化との間に,関係があるがどうかを明らかにすること。

(七五) 宣伝と宜伝方法について,書物によって研究すること。宣伝方法に理解を持ち,他人の意見に影響を与える方法を理解させてくれる人々に,手紙を書くこと。宣伝を見分ける能力について,自分の学級の水準を高めるように努力すること。宣伝を含んだ文書と書いて,他の生徒が,それを見やぶるかどうかを明らかにすること。

(七六) 戦時中の日本の宣伝について,調べてみること。戦時中に用いられた虚偽の宣伝の実例を選んで,これを分析すること。なぜそれを信じた人があったか,その理由を示すこと。

(七七) 映画(特に,ニュース映画)を見に行った生徒にその印象を学級に話してもらうこと。機会があるかぎり,学級で適当な映画を見ること。映画を見て,考え方にどれほど影響を受けたかを討議すること。

(七八) 公民としての権利と義務とについて,できるだけたくさん挙げて表を作ること。権利と義務との間の関係を,明らかにすること.


単元四 職業の選択に際し,また職業生活の能率をあげるために,どんな努力をしなくてはならないか。

~学習活動の例~

(一) 人間の協力関係

 (1) 自分の持ち物及び自分の家で日常用いられている品物について,どのような径路をたどって自分の手元にまで運ばれて来たかを調ベること。その品物を買ったのはどの店か。その店はどこで仕入れただろうか。また,そのおろし売り店に品物を集めて来たのはどういう人々だろうか。その品物は,どこで,いかなる人々の手によって作られただろうか。その原料は,どこから手に入れ,どんな方法で集められただろうか。以上のことがらについて,いかなる人々が協力したかを図表にかいてみること。

 (2) 学級の生徒の家庭で,日常使用している衣食住に関係のある品物をおのおの五種ずつ選んで,それらの品物が家庭で消費されるまでの間に,生産者や加工者や運搬に従事した人や,配給販費に従った人々の関係を詳細に調ベて図表にかき,学級に報告すること。例えば,
  
  (イ) 米は,農家でどのようにして生産されるか,たねまきから収穫までの間にどんな仕事があり,それらの仕事をするのにどのような労働力が必要だろうか。また,耕作や管理や脱穀調製に至るまでに,肥料や農具や薬剤などどんなものを用いるたろうか。それらを農家で手に入れるためには,どのような人々の協力を必要とするだろうか。供出された後,食糧営団の配給所から一般消費者の手に渡るまでに,いかなる人々の協力が行われるであろうか。以上のことを色分けにして図示すること。

  (ロ) われわれの着ている衣服のうちで,冬オーバのような毛織物,下着のような綿織物やスフについて,それが原料から製品になるまでに,いかなる人々の手にかゝって完成されるかを明らかにすること。毛織物の原料である羊毛は,どこで,どのようにして作られ,また,どんな径路を,どんな方法で,日本に輸入されるか,それがつむがれて織物になるまでの諸工程と,それに協力する人々とを明らかにすること。また,北海道の森林から伐り出された木材が,パルプ工場に送られてスフの原料となり,それがスフ織物となるまでの種々の工程で,いかなる人々がこれに協力するだろうか。それらの品物が一般消費者の手に渡るまで,さらにいかなる人々の協力を必要とするかを明らかにすること。

  (ハ) 一軒の家が建てられる(焼け跡の建築などは特に興味深い)までにどんな人々が力を合わせるだろうか。設計者・大工・左官・屋根ふき・畳・建て具・水道・ガス電燈の配線・配管・室内の調度などの整備されるまでには,多くの人々の協力が必要である。それらを実際に調ベること。
以上の調査や報告にもとづいて,われわれの生活が,いかに多くの人々の協力によって営まれているかについて,学級で討議すること。

 (3) 先生からアダム・スミスの「国富論」のはじめにある分業に関するところを読んでもらい,その説明を聞いてのち,われわれの日常生活の能率が分業によっていかに高められているか。また,分業組織によって,いかにわれわれの生活が便利になっているかについて,学級で討議すること。

 (4) 報徳記や二宮翁夜話や,その他二宮尊徳の伝記(佐々井信太郎著,下程勇吉著など)を読み,尊徳の事業と,その人格の発展の関係を明らかにすること。その他,渋沢栄一,森林太郎(鴎外),豊田佐吉,などの人々の伝記を調べ,それらの人々が,職業生活や事業の経営を通して,いかにその人格を発展させ,また個性を充実させたかについて,討議すること。

 (5) 自分の知っている立志伝中の人物のひとりを選び,その伝記を書いて学級で朗読すること。この際注意すべきことは,信用のできる事実と信頼できない宣伝や誇張とを厳密に区別することである。苦学力行し,正統な学校教育を受けることができなかったにもかゝわらず,その識見や能力が少しも劣らないような人物について,職業が人物を磨きあげるという点を明らかにすること。

 (6) 自分の地方で事業に成功した人物を訪問し,「職業と人格の修業」という点について話を聞いてきて学級に報告すること。実業家・宗教家・官公吏・芸術家・医者・社会事業家等について,学級で分担して訪問するがよい。

 (7) 自分の家に毎日いろいろなものを届けてくれる人々,例えば,新聞配達や郵便配達などが休んだとして,家に起る不便について考えてみよう。また,労働組合のストライキや企業家の事業経営がまずいことによって電気が消え,電車が止まり,石炭が出ず,ラジオが聞こえないような場合に社会の人々の受ける不便を考えてみよう。それらを中心にして,人間の生活が,多数の職業によって,たがいに持ちつ持たれつの関係にあることを明らかにすること。

 (8) 現在,物資の欠乏に悩み,各家庭が自給自足の方法によって,野菜を作ったり,塩を海水から取ったり,みそやなっとうやあめをこしらえたり,パンを焼いたりするようになった。こういうことは,社会の進歩という点からみて,望ましいことであろうか。将来も存続させる必要があるだろうか。学級で討議すること。

 (9) これから日本の社会的,経済的な復興のために,すべての人々が,その職業において,力いっぱいに働くことがたいせつであるが,そのために,多くの職業の中でも特に重要であると思われるものを十種挙げて,その理由を述ベること。また,日本の再建をじゃましたり,またはあまり望ましくない職業を考えられるだけあげて,その理由を述ベること。以上について討議して,その結果を表にまとめること。

 (10) 級友の家庭の職業を調査すること。自分の町(村)の職業を調査すること。職業の種類を男女別,年齢別,教育程度別に分類してみること。この際,内閣統計局の国勢調査報告書の産業・職業に関する調在を参照して,職業の種類を分かつこと。

(二) 昔の職業生活

 (1) 自分の県及び日本全国の人口を職業別に表わした統計によって,扇形グラフをかいてみること。また,この作業を五年ごと(あるいは十年ごと)に過去にさかのって五十年前までやってみて,職業構成の変遷を比較すること。また,特に昭和六年・昭和十二年・昭和十八年・昭和二十年のものについてもやってみること。以上を資料にして,「日本の近年における職業構成の変化とその原因」という作文を書いてみること。

 (2) 「日本の歴史」の教科書の中からいろいろな職業をひろって,時代別に表にしてみること。その時代の代表的な職業はなんであるか,また,時代がくだるにつれてどんな新しい職業が加わったか,また,それらは引き続いて存続発展したかどうかを明らかにして「日本人の職業の変遷」について学級に報告し討議すること。

 (3) 江戸時代のおもな職業には,どんなものがあったか。また,その特色はどういう点にあったか。家業や職分ということは,当時どんな重要な意味を持っていたであろうか。「封建社会における職業」という題で討論すること。このような職業上のしきたりは,明治になってどのように変化したであろうか。新憲法第二十二条に「職業選択の自由」とあるが,これを以上の歴史的な事情にてらしてその意味を明らかにし,学級に報告すること。

 (4) 江戸時代に町人と呼ばれた階級は,どんな職業にたずさわっていたか。町人の地位が低かったのはなぜか。また農民はどうであったか。

 (5) 徒弟奉公や女中奉公について調べて,昔の職業生活にはいる準備の方法について明らかにすること。主人や親方と弟子の関係は,どうであったか。労働時間や労働の条件はどうであったか。奉公の年期があけた場合は,どういうことになったかなどを,明らかにすること。一般に,昔は職業上の技術をおぼえる方法として,どのようなものがあっただろうか。子供の職業指導について,親はどのような努力を払っていたであろうか。先生から,西洋の中世におけるギルト制度の話を聞いて,これをわが国のものと比ベること。

 (6) 昔は一つの技術を徒弟に伝えるのに,奥儀だとか,秘伝だとかいうものがあって,免許を受けなければならなかった。今日でもこのような職業が残っていないか。あるとすれば表にしてみること。現在では,特別の技術を修めた者には免許状を与えて,資格を国家や地方の行政機関が保障している。このような,技術の資格を保証し保護する方法の昔と今との差異を明らかにして,その得失を討議すること。

 (7) わが国では,昔から「農は国の本なり」といって尊重されて来たが,その理由はどういう点にあったのであろうか。江戸時代に農民の重んじられたわけを考え,将来の日本において,農業は国の産業でどういう地位を占めるかを討議すること。

 (8) 明治以後において,自分の県及び国全体について,耕地面積はどのように増大して来たか。田と畑について調ベること。また農家人口の増減を明らかにすること。農産物の収穫高の変遷と,国民全体の人口の増加とを,年次を追って表にし,近年における日本農業の発展について,討議すること。

(三) 職業としての農業

 (1) 委員を選んで,自分の学校に近い種々の農園や代表的農家(地主・自作農・小作農・兼業農家など)を訪問し,その農業経営と農業労働の実際を見学すること。また農繁期に,有志のグループを編成して,勤労奉仕を実施して農業労働の経験をつんでみること。これらの見学記,体験記を,口頭または,文書で学級に報告すること。

 (2) 有畜農業や養鶏,養蚕を加えた農業を行っている農家を見学して,その労働の実際を調ベること。近くに酪農組合や酪農を行っている地方があれば,見学してその実状を学級に報告すること。

 (3) 農家の二,三男は,従来どのような職業を選んだであろうか。耕地の関係と農業経営の機会とについて研究すること。開墾事業の実際を調ベて,その国家的意味を明らかにすること。

 (4) 農業生産物の主要なものを選び,これと工業生産物とその価格を比較すること。なぜ農民が売る生産物の価格は安く,その購入する物品の価格は高いのであろうか。

 (5) 農家がいろいろな副業や兼業として行っているものについて,その種類,またその製品と販売方法や径路を明らかにすること。なぜ農家にとっては,このような農業や副業が必要なのであろうか。

 (6) 農民として必要な性格・身体知識・経験などの性質を挙げること。農村の生活と都市の生活とを比ベて,その利害得失を討議すること。

 (7) 日本の農業において,婦人はどのように働いているか。女手には農業の中でもどんな仕事が適当か。

 (8) 自分の地方にある農学校を訪問して,その教科や実習や課外活動の実際を見学すること。また,入学資格や卒業生に与えられる特典などがあれば調ベること。卒業生の就職状況を聞き,農学校の卒業生の進路について討議すること。日本では,農学校の卒業生が,しばしば「白えり(ホワイトカラー)」の労働者であったといわれるがなぜだろうか。

 日本における農科大学・農林専門学校・高等獣医学校などについても,上と同じような調査をすること。日本における農業関係の専門学校以上のものを,地図をかいてその分布を示すこと。

 自分の学校の先輩や自分の町の知人で,農業関係の専門学校にはいっている人に手紙をかいて,その学生生活についてたずねること。

 (9) 自分の県の農事試験所,あるいは研究所を訪問し,その仕事の実際を見学して来ること。そこで働く人々は,どういう経歴の人々か,どんな仕事をしているかなどを明らかにして,学級に報告すること。

(四) 職業としての林業

 (1) わが国の林業が,国全体の産業のうちで,どういう地位を占めているかを明らかにし,森林とこう水防止について論ずること。林業と農業の関係を明らかにすること。

 (2) 自分の郡・県及び国家の森林を表示したちょうかん図を作り,林産資源の量と林産物の価値などを示すこと。近くに製材所があれば,委員にそこを訪問させて,調査事項を学級に報告させること。営林署やその他山林に関する業務にたずさわっている人々を訪問して,かれらの仕事に関して,できるだけ多くのことを知ること。自分の知り得た事実を,ことごとく学級に報告し討議すること。

 (3) 近くの山岳地方にハイキングする計画を立て,その際,炭焼き小屋を訪問するようにすること。炭焼きをする人々の生活の実際について知識を得ること。

 (4) 製材・製箱・家具・紙などの工場をたずね,各種の木材とその原産地などを調ベること。また,製材所の労働条件を調ベること。

 (5) 山林関係の災害や不慮の事故として,どのようなものがあるか。また,森林の被害にはどんなものがあるか,その防止にはどんな専門的知識が必要であろうか。

 (6) 林業関係の仕事に,従来,中等学校以上の卒業生が従事することの少なかったのはなぜであろうか。

(五) 職業としての漁業

 (1) 日本人の食糧資源としての水産物の価値を論ずること。動物性たんぱく質の補給源として,欧米における肉類の消費高と,日本人の魚類の消費高とを比較して,図示すること。

 (2) 日本の主要な漁業地帯と,有名な漁港とを地図に記入し,漁獲物の種類と,年産額を表示すこと。どういう地域が漁業の中心地となるか。世界の水産業における日本の地位を明らかにすること。

 (3) 遠洋漁業についての知識を得て,学級に報告すること。まぐろ,ぶりなどの漁獲法,捕鯨船の南氷洋進出などについて,研究すること。

 (4) 自分の地方に近い漁港をたずねて近海漁業や沿岸漁業について見学し,また漁師の家をたずねてその仕事の実際を知ること。網元(あるいは船主)と網子(船員)との関係はどうであるか調ベること。その地域の漁業方法について,過去にどのような変動があったか,新しい漁業の技術はどのようにして採り入れたか。漁ろう組織の編成について,伝統的な慣習はないか。漁師の教育程度はどうか。青年は漁ろう技術をどうして学ぶか,漁師はよく金のつかい方が荒いといわれるが,その原因はなんであろうか。

 (5) 水産物加工場を訪問して,仕事の大要を見学すること。製品にはどんなものがあるか。乾燥・冷凍・塩蔵・かんずめ・くん製などについて種々の製品を表にして表わし,その時の相場で,加工したものと加工しないなまのまゝのものとの価格を比較すること。

 それらにはどんな技術が必要であろうか。また,技術者はどんな専門的教育を必要とするかを明らかにすること。以上のことを学級に報告して,水産物加工業の特来性について,論ずること。

 (6) 水産業会を訪問し,事業の大要を聞いて来て,学級に報告すること。

 (7) 水産学校や高等水産学校,水産講習所などを訪問したり,手紙を出したりして,そこで教育される教科や実習の大要,学生生活のようすや,卒業後の資格と卒業生の活動状況について,知識を得ること。また,水産試験所や研究所を訪問して,そこで働く技術者の仕事の大要と,教養や労働状態を調ベること。

(六) 鉱 業

 (1) 自分の郡・県及び国全体の鉱産物に関する地図を作ること。自分の住んでいる地域から出る鉱物の標本を集めること。仕事について調ベるため鉱夫に会うこと。図表やグラフをつかって,鉱業に従事する人々の数を他の工業と比較して示し,また,鉱産物の量によって,鉱業が,日本の産業において占める地位を明らかにすること。日本の隠された鉱産資源について役に立つ情報を集めること。

 (2) 書物を読んだり,映画を見たり,模型や写真を集めたり,またできれば,炭鉱を訪問することによって,石炭採掘事業についての知識を得ること。石炭事業が,日本の復興の最大の基礎産業である理由を明らかにすること。石炭の生産が低下すると,直ちに影響をこうむる事業にどんなものがあるか。それらの能率が下がると,その影響は次にどんな方面に及んでゆくであろうか。以上をもとにして,石炭産出高を低下させている条件を調ベ,その排除によって石炭生産が向上する方法を,討議すること。

 (3) 日本の近年における石炭の年産高をグラフによって示し,炭坑労働者の数の増減,石炭のトン当たり価格,労働者ひとり当たりの産出高を,表示すること。

 (4) 大会社の経営する有名な炭坑と,小資本の手掘り式に近い小経営炭坑業とをその設備・能率・労銀などについて比較すること。また,合衆国・イギリスなどの炭坑の能率と比較すること。

 (5) 炭坑を訪問することが可能ならば,炭坑の労働組織,(先山,後山,支柱夫,運搬夫,選炭夫など),労働時間(拘束時間と実働時間),経験年数と技術及び能率,坑外における生活の実情,余暇の善用法,厚生・福祉・娯楽の施設給与などについて調べ,学級に報告すること。

 (6) 炭坑に起る災害や事故の種類と,その原因・対策などについて研究して,学級に報告すること。炭坑夫が不慮の事故によって死傷した場合に,どんな救出方法が行われているか。

 (7) 炭坑の技師や,その他特別の技術を必要とする人々は,どういう経歴・技能・資格を持っているであろうか。大学の理工学部中,探鉱冶金(やきん)科や,鉱山専門学校について,炭坑技術者として必要などんな教育をしているかを調べること。

 (8) 日本では,従来,炭坑労働者になることをいやがるふうがあった。それはなぜだろうか。炭坑労働者に必要な身体的,精神的,技術的要件を挙げて表にすること。炭坑労働者は,われわれの日常生活にいかなる重要な位置を占めているだろうか。

 (9) 鉱山・油田その他鉱山資源や石材の採掘などに従事している労働者の数・年齢・教育程度・移動状況・賃銀・労働条件などを調ベて,学級に報告すること。

(七) 動力工業

 (1) 動力資源として電気事業の国家的重要性について研究し,討議すること。日本では,水力発電と火力発電とで出力何キロワット位の電力を出し得るか。賠償によって ,この動力資源は,どのくらいに低下しただろうか。日本の各河川における水力発電所の分布図を作ること。まだ開発できる地域が残されているであろうか。水力発電事業の将来性について,討議すること。

 (2) 発電所(水力・火力)を訪問して,技師から装置のあらましを聞くこと。また発電所から各家庭に送電されるまでには,どのような施設や機構を持っているか。それらのおのおのについて,働いている人々の数・資格・技術などについて話を聞き,学級に報告すること。


 (3) 国家の電気技術者や電気工事人に対する免許制度を調ベ,どのような教養や学力を必要とするかを調ベて,学級に報告すること。


 (4) 動力装置や気かんの運転,操作に従事する気かん士などの免許制度と資格試験制度について調査研究をし,学級に報告すること。

(八) 職業としての工業と商業

 (1) 委員を選んで,近くの製鉄所・製鋼所・鉄工所・鋳物工場などを見学すること。原鉱から銑鉄や鋼材や鋳物のできあがる過程を調ベ,そこで働く人々の職種にどんなものがあるかを調査すること。それぞれの職種の仕事の内容,技術や熟練の要,不要,労働条件,貸銀,教育程度などを明らかにすること。それらの工場での熟練工といわれる人々に会見して,その人の技術習得の苦心談を聞くこと。また,このような工場には,身体的に精神的にどのような人が適当であるかを聞くこと。以上を整理して,学級に報告すること。

 (2) 製鉄事業の国家再建における重要性について,多くの材料を集めて討議すること。近年における製鉄事業の変遷について研究し,賠償後の日本の製鉄事業の将来について討議すること。国民ひとり当たりの鉄材,鋼材の年間消費量を過去のそれと比較したり,また,諸外国のそれとを比べてみること。

 (3) 委員を選び,自分の地方のある種の工場や事業場を訪問すること。各委員は,種々の工場における各種の労働について,その労働条件のちがい,労働者の資格・教育程度・賃銀,その他,職業に必要と思われる条件をあげて,討議すること。

 (4) 都市を中心とする電気・ガス・水道・下水道・清そうなどの事業を調査して,その職種と特殊技能を明らかにすること。

 (5) 戦災都市や,鉄道・港湾・工場などの復旧工事や土木事業,進駐軍設営,また,開墾地造成干拓事業などに関する技術者・労働者には,どのような技術・能力・適性が必要であろうか。また,その労働条件,将来の見こみなどについても明らかにすること。

 (6) 物品販売業の種々の規模について,その経営,事業の概略を明らかにすること。例えば,百貨店・問屋・卸売店・小売店・露店・行商などについて,種々の販売品目を中心にして調査すること。経営主と従業員につき,労働条件・特殊技能・将来性などについて研究した上,討議すること。

 (7) 商業道徳と信用という問題につき,種々の販売業者の例について,学級討議を行うこと,老舗(しにせ)と呼ばれ,のれんの古いのを誇りとする商売人の気質について論じ,また,大商店に伝わる家訓,家憲を研究して,これらの特に今日における価値を評価してみること。

 (8) 銀行・信託業・倉庫業・証券業・質屋などの営業内容を明らかにし,その従業者に必要な性格・学力・資格や勤労条件などを調査して,学級に報告すること。

(九) 通信,運輪,交通業

 (1) 日本の交通関係事業について,その概要を調べて表示すること。官営と私営の関係,鉄道・電車・自動車・船舶によるさまざまの交通事業を,地域的に分けて調査すること。その従業員には,いかなる職種があるか。労働条件はどうか。技能や資格や養成法はどうしているかを明らかにして,報告すること。運搬・輸送事業についても,同様に調査すること。

 (2) 自分の町の鉄道の駅をたずねて,事業の種類や職種の分化を調ベ,その活動の実際を見学すること。駅員の資格・教養・養成方法や労働条件について明らかにすること。また,乗合自動車会杜についても同様の調査を行い学級に報告すること。

 (3) 自分の町の郵便局を訪問し,事業内容と従業員の職種などについて調ベること。従業員の技能・資格・労働条件など,鉄道の例にならって研究すること。

 (4) わが国の逓信事業の現状を,読書や逓信官吏との会見や見学などによって明らかにし,将来の発展の具体的方面について,明らかにすること。

 (5) わが国の放送事業の概略を明らかにするために,中央または地方の放送局を参観し,その実際を見学すること。放送局の従業員には,どういう職種があるか。その技能・資格及び労働条件と適性などを明らかにすること。

(一○) 公務自由業。

 (1) 職業としての教育事業を明らかにする目的で,教師・保母・教育行政官その他の教育官吏の職務の内容を明らかにすること。その資格・免許状制度・学力教養・性格及び勤務条件などについて,調査すること。

 (2) 宗教家・社会事業家の仕事の内容を調べ,その資格・能力・教養・学力・性格,及び勤務条件などを明らかにすること。

 (3) 医者や看護婦・保健婦の仕事の内容その他を,上にならって調査すること。また,法曹(弁護士・代書人・弁理士・公証人)芸術家・技師や科学研究員などについても,同様に調査すること。

 (4) 家政婦・給仕・美容師・女中その他家庭やホテルやその他の場所で他人の補助やその仕事を助けたりする人間関係の仕事についても,上に準じて調査すること。

 (5) 会社の計算係・タイピスト・書記・秘書・速記者などについて,調ベること。

 (6) 一般官公吏について,事務的な職務にあたるもの,技術的な職務にあたるものなどについて調査すること。特に官吏の資格試験・任用制度・給与公務員法などについて研究すること。

 (7) もしできるならば,上にあげた種々の職業のどれか一つを選び,夏休み中に実務の体験をするために雇われてみること。そこで,雇い主や,労働者,従業員と話し合って,仕事に関するいろいろな知識を得たり,また,熟練した労働者の仕事ぶりを観察したりして,自分の知り得たことを体験記として作り,学級に報告すること。

 (8) 「職業に貴賎はない」ということばを,どう思うか。今日,実際世間の職業について,このことば通りに職業に対する人々の考え方ができているかどうか,評論すること。醜業と普通いわれるものが,今日もあるかどうか。

 (9) 将来の職業を選択するに当たって考慮しなければならない条件として,どのようなものがあるであろうか。個人的な条件,家庭や社会から制約される条件,職業(仕事)の特殊性などを考えた上で表を作り,自分で自分の立場を正しく評価検討しつゝ,記入してみること。グループで,おたがいに級友のものを一人一人批評しながら,その個人に最も適当な職業選択の条件を,めいめいに決定すること。この表にもとづいて,これまでに研究してきた事実と比較しつゝ,自分に適した職業をかりに決定してみること。「私の選んだ職業」という題で,話をすること。

(10) 従来,ある種の職業,例えば紡績工・美容術師・看護人・速記者などは婦人だけに適した職業であるとし,他の大部分の職業は男子にのみ適するものだという観念が一般に行われてきた。イギリス・合衆国を含めた他の多くの国では婦人が行政官・技師・医師・法律家などにも十分訓練を受け経験のつんだ男子と同様に成功することが可能であることが,立証された。わが国の婦人の場合にも,このことは同様であると考えられるような理由があるかどうか。

(一一) 学校教育と職業との関係

 (1) 自分の学校の卒業生を,ある年代にわたって調査すること。どんな職業についているか,どんな上級学校にはいったかを調ベること。それに附随して,自分の町の職業調査を行うこと。現在の組織による学校は,自分が町の生活にはいっていくために必要な訓練をしてくれているかどうかを,明らかにすること。現在教わっている教科の中で,将来の職業生活に役立つと思うものを挙げてみること。(直接役に立つと思われるもの,間接に役だつと思うもの)。

 (2) 自分の在学している学校で,職業の選択に特に役だてる目的で備えている設備や便宜を挙げて,表にしてみること。他の学校のものと比較して改善すベき点があれば,学校に提案すること。

 (3) 諸種の専門学校や実業学校を挙げて,そこで卒業生に与える卒業後の特典・資格・免許状などを調ベて,表にしてみること。この表と(一○)の(9)の表とを対照して,働きながら学ぶことができる上級学校がありはしないか調ベてみること。

(一二) 職業の選択と就職

 (1) 学校に設備があればそれを利用し,なければ職業補導所,職業安定所,大学などの心理学研究室などを利用して,自己の適性を,科学的に調査してもらうこと。

 (2) 自分の希望する職業の経営者,雇い主などに面会しかれらの教育に対する態度,及びかれらが実業に就こうとする青年に必要だと考えている教育の種類を,明らかにすること。

 (3) 自分の希望する職業についての求人広告が,新聞やポスターなどによって募集されていないかどうか注意すること。自分が今後これ以上続けて学校で教育をうける見こみのない場合,職業安定所や職業補導所,職業紹介所などを訪問して,自分に適した職業のあっせんを依頼すること。

 (4) 理想的な職業人として備えなければならない条件を挙げて,学級で討議すること。また,成功の秘けつといわれるようなものも考えてみること。そのために,日本のみならず外国の著名な実業家・芸術家・学者その他の伝記を読んだり,その言行録を集めたりして,研究してみること。

 (5) それぞれの職業について,ながい仕事の経験をもっている人々に会見して,その人が,実際に仕事を通して作りあげてきた職業についての信条をたずねること。それらのものを持ち寄って,種々の職業について,特別に必要だと思われる職業の心がけを決定すること。

 (6) 次の諸問題について,学級で討議すること。

  (イ) 何か一つの技術を身につけるよりも,広い教養や学問を身につけることがたいせつだ

  (ロ) 女子はだれでも家庭的な仕事に熟達している必要がある

  (ハ) 親は,子供の職業の選択を統制すべきでない

  (ニ) 金持は働く必要はない

  (ホ) 「正直は最上の商略なり」

 (7) 職人かたぎとはどういうことか。自分の知っている大工・左官・指物師・表具師・宮大工などのような伝統的な職業にたずさわっている人から,技術・修業の経験談を聞くとともに,職人特有の気質について,話を聞くこと。このような気質は,両親や年長の労働者によって現在の若い職人に伝わり,または理解されているであろうか。そして,将来はどうなっていくであろうか。学級で討議すること。
 
 (8) 日本の商品が,外国において,しばしば悪評を受けた理由を明らかにすること。国家はそのためにどのような手段をとっているであろうか。外国貿易と国民に対する外国人の評価について,討議すること。

 正しい事業の発展は,どういう方法によって遂行されるべきであろうか。フエアー・プレーや,スポーツマン・シップと職業の道徳とを比較して,研究すること。

 (9) 事業における成功の手段として,営業方法や労働組織の合理化という点について,研究すること。生産力を増大し,能率を増進することと事業の合理化との関係について,討議すること。

 (10) ある職場に就職を希望するとして,就職試験に応ずるための準備を行うこと。履歴書の作成,身体検査表の作成,卒業証書,資格検査証,写真,学校当局の推薦状,知人のあっせん依頼状などを整えてみること。

 (11) 先輩の社会人を訪問して,ある職場に採用になった場合に心得ておくベきことがらを聞いて来て,学級に報告すること。公務員法(旧官吏服務規律)や,会社の従業員規則や,心得などを集めて研究すること。

 (12) この単元の活動の例として挙げられたものの学習によって,職業に関するたくさんの情報や,多くの職業の利害得失を知り,職業生活において成功するのに必要な性質についても学んだ。学校教育において受けた職業についての経験は,職業についてのいっそう実際的な知識と才能を与えた。ある一つの仕事に就くとして一時的な職業を定めてみるか,現在自分がやってみたいと思う職業を選んでみること。これについて,自分の両親や先生とともに相談すること。さらに上級学校にはいって学業を続けることができる場合は,その志望する学校についての計画を立ててみること。

 (13) 職業生活とレクリエーションの必要とを討議すること。余暇の善用をいかなる方法で行うか,具体的に計画を立てること。自分がこれまでにやって来たレクリエーションを,就職後も続けるか。何か新しいものを始めるか。

 (14) 労働者に多い病気の種類を調ベること。ことに,青年のかかりやすい病気は何か。また,未熟練者や初心者が受けやすい災害や事故を調べること。官庁や会社や工場などで実施している安全教育と健康維持,及び病気予防の施設,方法などを調ベて,その改善法を討議すること。

 (15) 職場における健康保険制度,共済制度の実際を調べて,学級に報告すること。

 (16) 職場の清潔保持ということについて,実際的な計画を立ててみること。種々の職場を見学して,清潔という点から改善案を研究してみること。

 (17) 青少年労働及び婦人労働を保護する立場から,政府はいかなる手段を講じているか,どんな法規を施行しているか,調ベること。労働基準法を調べて,労働保護について研究し学級で討議すること。

 (18) 労働運動及び労働組合について研究し,労働者の地位の向上のために,それがいかなる意味をもっているかを明らかにすること。労働闘争やストライキについての諸問題に対し,具体的解決策を考えて,討議すること。必要なことは日常に個人と国民全体の福祉増進に寄与し,生産力を増進するという立場において,問題の処理にあたることである。

 (19) 現在の失業問題の特別な性質を明らかにすること。国家の再建と失業対策とを,いかにすればうまく適合させながら解決する方法があるであろうか。資本主義経済組織と失業問題,完全雇ようの問題などについて知識を得て,わが国の現在と将来の失業問題を,評論すること。

 (20) かりに自分が失業したとして,その解決に次のいずれの方法を選ぷか。

  (イ) 他の地方に,今まで従事したと同じ職場を求めるために移転する

  (ロ) 別の職業に就くために,職業安定所に相談に行き,新しい職業についての技術的訓練をうける

  (ハ) なんでもかまわないから食える職業を求めて,その日暮らしをする

  (ニ) じっとして民生委員からの救済をまつ

 (21) 「日本の再建に対して,自分はこういう仕事をして貢献しよう」という主題で,作文を書くこと。


単元五 消費者の物資の選択に際して社会のカはどういう影響を与えているであろうか。

~学習活動の例~

(一) 物の価値と,われわれの欲望との間には,どんな関係があるであろうか。電球と水とを取って,研究してみること。経済学で,「効用」というのは,どういうことであろうか。自由財と経済財とを区別して列挙してみること。

(二) 万年筆その他のものを調ベて,その値段の中には,どんな原価が含まれているか,だいたいの計算をし,図に表わしてみること。

(三) 自分の家庭で,普通に用いられている品物を選び出してみること。その値段を,いろいろな店で比ベてみること。その結果を学級に報告すること。

(四) やお屋(青物市場)で買っている品物の表を,グループで作ってみること。その際,品質の標準をはっきりさせておくこと。その中の一種を選んで,同じ日にいろいろな店でその値段を調べ,その報告を集めて討議すること。

(五) いろいろな店に,違った時に行って店主に会い,日用品のうち重要なもの五種を選んで,その値段が上っているか,下がっているかを聞いて,学級に報告し,図表を作ること。

(六) 自分の家庭にあるいろいろの品物について表を作り,それらが,どこで作られたかを示すこと。自分の県で作られたのはどれだけか。自分の郡・県及び国全体の地図を作り,自分の町で用いている品物の作られた場所を示すこと。

 普通,外国から輸入される品物について,どういう方法でもよいから図を作ること。近くの工場をたずね,何を作っているか,その製造の正確な過程,製造量,必要ないろいろの仕事,生産品の配分などについて明らかにし,それを学級に報告すること。

(七) 自分の家庭で,普通に用いられている品物について,それが,どんな径路を経て自分の手もとまで運ばれて来たかを,調べてみること。即ち,製造・卸売・小売の径路など。

 自分の近所の小売店について,できるだけ調査するか,一定の範囲を限って調査を行うこと。そこで買られている商品の出所を明らかにすること。生産品の原料の値段を調べること。その生産に必要な産業における現在の労銀,及び生産に必要な労働時間をもとにして,できるだけ正確に労賃を計算してみること。さらに,生産価格と消費者の手に渡る時の販売価格の間の開きを,明らかにすること。自分の地域の卸売商について,研究してみること。

(八) 自分の家庭で日常用いている品物で,大正時代までは無かったものを十種挙げてみること。

(九) おもな生活物資の値段を,ある期間にわたって調査し,その変動を表にすること,さらに他の地方における値段を調ベて,相違のあるときは,その理由を考えてみること。

(一○) 衣・食に関する商品の一つを取り,各自が,その生産関係について図解し,できるだけ実際に近く,原料価格・労賃・運賃などを計算してみること。その際,商品の生産価格・販売価格などを,生産者に直接聞いてみること。

(一一) 運賃が,家庭で購入する商品の値段に及ぼす影響を明らかにすること。現在の商品の値段を,戦前のある時期の値段,及びその時期の運賃と比較すること。輸送のしくみを改善することができるか,討議すること。

(一二) 町の人たちが小売市場で購買する品目を,できるだけ多く思いだして,表に作ること,表を作った時のそれらの値段を,さらに表にすること。人に会って聞いたり,新聞その他の刊行物の古いものを読んだり,そのほかあらゆる方面から,手をつくして,同じ品物の一箇月前,六箇月前,一年 前,五年前の正確な値段を知ること。品目ごとに値段の変化を説明し,それを供給の変動と関係させてみること。物価指数とは,何であろうか。

(一三) 自分の町の営利機構を調ベること。農夫が,生産価格以上の値段で,自分の生産品を売ろうとする状況,くつ屋が同じく高く売ろうとする状況など。正確な数字が得られる場合には,いろいろな日用品について,利益の歩合を算定してみること。

(一四) 自由価格は,何を標準にしてきめられるか。需要と供給の関係から,調査・討議すること。米の自由価格の変遷を調べ,その理由を考えること。附近の市場について,その種類・組織・機能を明らかにするための委員を作ること,そのくわしい報告にもとづいて,市場の価値及び改良案を討議 すること。

(一五) 自分の市町村の小売販売で,商品の掛け売りされている程度を明らかにすること。適当な品物の値段について,現金販売と掛け売りの場合との相違を調ベること。

(一六) 物価変動の表,主要物資生産高の変化の表,及び通貨発行高・銀行預金高・貸出高の表を作り,その相互関係を調べること。

(一七) 専売について調べ,いろいろの知識をもとにして,学級討議を行うこと。その歴史を調ベ,また他国のそれと比較すること。

(一八) 価格統制について,政府の施策を調べること。食料品の取り扱いについて,法律あるいは規定があるかどうか,あれば,それらの性質を調べること。

(一九) 食糧問題,その他日本の生活水準に関するいろいろの問題につき,新聞の記事を集め,つゞりこみを作ること。それらの問題について,学級討議を行うこと。

(二○) 日本の歴史上のある時代の人々の生活水準と,自分たちの生活水準とを比較すること。

(二一) 諸外国の生活水準について統計や説明などから得た知識をもとにして,それと,日本の生活水準とを比較してみること。

(二二) 農村・小都会・大都会などの生活水準の平均について,算定することができるであろうか。食糧・衣服・住居・生活の科学化,便利というような点を中心にして調べてみること。

(二三) 自分の町の人たちの収入が,どのように消費されるかを明らかにするために,調査すること。わが国の家庭の平均所得を比較すること。この所得にもとづいて,支出を科学的にする方法について,学級討議を行うこと。

(二四) 一家庭の生活にとって,どれくらいの水準が満足すべきものであるかについて,討議すること。満足すべき最低生活水準に必要な一定品目と,その量を示すこと。その品目の価格を定め,平均所得を基礎として,それらの品物がどれくらい手に入れられるかを明らかにすること。

(二五) 満足すべき最低水準の生活必需品の表を作り,その生産に用いられるわが国の天然資源について,いろいろの書物から知識を得ること。どの程度まで必需品が実際に得られるか,その大略を明らかにすること。日本は,表中のどの項目について,全人口に対して,十分に供給し得られると考えるか。国家は,輸入品に対して,どんな余剰物資で支払うことができるか。

(二六) 日本における,国民所得についての情報を,どんな所からでもよいから集めること。例えば,所得源,家庭の平均所得など。それらに関して,自分の町を,国のその他の部分と比較すること。また国民総所得及びひとり平均額・所得高別・人口比などを,政府機関その他に問い合わせて,表を作ること。

(二七) 「日本における所得の分配」という問題について,役に立つ情報を集めた後,学級討議を行うこと。所得の公正な分配ということが,現在行われているかどうか,明らかにすること。

(二八) 地方一般の家庭の収入源を調ベること。それは,賃銀や給与によるものか,営業による利益によるものか,所有物の売却によるものか,それとも配当によるものか。その結果を組み合わせ,整理して,いちばん数の多い収入源を明らかにすること。これらの収入源は,社会全体として,代表的なものであるかどうか,明らかにすること。

(二九) 自分が,もの心ついてから町に生じた衣服の変遷について,論ずること。調査と討議によって,この変化の説明
につとめること。

(三○) 学級で流行している持ち物について表を作ること。学校ではやりだした理由について,説明を考えてみること。

(三一) 新聞その他の刊行物で,広告の見本を見つけること。誇張された広告の見本を選び出してみること。なぜ誇張と認めたか,その理由を説明すること。広告は,正確な内容を伝えるであろうか。

(三二) 新聞を数種集めて,広告記事が,全体の紙面の何割を占めるか,研究すること,広告記事二,三種について,その広告料を研究してみること。広告料は,だれが支払うのであろうか。

(三三) 自分が前に買った品物を学級に持って来て,これはよい買物であったか悪い買物であったか,その理由を説明すること。

(三四) 広告の中に用いられている標語を,数人で集めてみること。それから,商品の名まえをいわないで,それを学級の者に読んで聞かせ,その商品の名まえを当てさせてみること。広告の中に用いられる標語がどんな効果を持つかを研究するためである。

(三五) 季節と商品との間に,どんな関係があるであろうか。炭・野菜・魚類などについて,表を作ってみること。

(三六) 政府の物価政策について研究すること。経済安定本部・物価庁などに関する新聞記事を研究して報告し,討議すること。

(三七) 税には,どんな種類があるであろうか。新聞記事などを研究して,調ベてみること。税と家庭,及び個人の消費生活との関係をできるたけ明らかにしてみること。大衆課税とはどんなものか。

(三八) 次の項目について,表を作ってみること。

 (1) 標準家庭の員数。

 (2) 家庭一箇月の総収入。

 (3) 食料の費用の割合(総支出に対して)。

 (4) 住居の費用の割合(燃料・燈火を含む)。

 (5) 衣料の費用の割合(せんたく代を含む)。

 (6) 保健・娯楽・教養などの費用の割合。

 (7) 預金・保険の費用の割合。

 これを,現在の自分の家の一箇月の家計簿と比ベてみること。どんな点に改良の余地があるであろうか。自分の家の家計に均衡のとれていないところがあれば,その理由及び対策を考え,両親と話し合うこと。衣食住の支出額と収入との割合を,おもな諸外国のそれと比較し,その差がひどければ,原因を研究してみること。

(三九) 自分の町や地方に消費組合・購買組合があれば.その役員をたずねて,その目的・運営方法について話を聞くこと。一般市場の価格と,どれだけの差があるであろうか。差があれば,その理由について討議すること。よき組合の活動ということについて,研究すること。

(四○) 労働組合は,組合員の消費生活に対して,どんなことをしているか,組合の役員をたずねて話を聞くこと。

(四一) 自分の小づかいは一箇月間に,どんな割合で使われているか,学用品・教養・娯楽など,できるだけくわしく表に作ってみること。むだな買物はなかったか,浪費はなかったかを,研究してみること。

(四二) 消費者の心がけが,生産者にどんな影響を与えることができるであろうか。いろいろな場合を研究して,表に作ってみること。

(四三) 消費者の立場からいって,罷業はどういう影響を与えるであろうか,新聞の論説や,記事を集め,十分研究した後,「消費者と罷業」という問題で,討論会を行うこと。

(四四) 消費者と生産者は,どういう点で利害が相反するであろうか。商品経済という点から研究して討議すること。

(四五) 経済生活の変遷を,生産方法(衣・食・住の獲得方法)と,消費生活の発展について,調査研究してみること。

(四六) 繊維製品の生産額は,戦前と現在とでは,どう違っているか,比ベてみること。新聞・雑誌などを注意し,あるいは,しかるべき当局に問い合わせること。繊維製品の節約という点で,母や姉と話し合い,自分の家の一年間の衣生活の計画を立てること。それを学級に報告し,討議すること。

(四七) 家庭で,燃料は一年間にどのくらい消費されるか,電熱器を使うことなども含めて,自分の家の総額を計算してみること。その金額は,一年間の支出の何割になるか,燃料の節約という点で,工夫してみること。燃料の節約が,日木の経済の再建と,どう関係があるかについて,よく調ベた後,学級討議を行うこと。

(四八) 貯蓄の意義について作文を書くこと。本年度になってから,貯蓄は,毎月ふえているか,へっているか,それと,物価との関係を調ベること。貯蓄と消費生活という点について,研究すること。

(四九) インフレーションと消費生活という問題を,できるだけよく調ベて討議すること。インフレーションを防止するためには,消費者としては,どういう心がけが必要か。


単元六 個人は,共同生活にうまく適合して行くにはどうしたらよいであろうか。

~学習活動の例~

 (教師に対する注意)

(一) 自分自身,並びに自分の問題について理解するためには,生徒は,自分の成長について,二三の初歩的な原則を理解する必要がある。この年齢の水準では,心理学の形式的な研究を企ててはいけない。この問題については,この単元にそう教科書以外には適当な資料がないが,そうかといって,教師は成人のための教科書で心理学の資料を読むように指示したり,すゝめたりすることは避けなくてはならない。そのような教科書の内容を,おそらく生徒は誤解するであろう。青少年期における個人の成長に関する資料は,教師用の「教育心理」という新教科書の中に見出たされるであろう。この学習を進めて行く間に,適当な時に,教師は次に揚げてあることがらについて,簡単な説明を与え,理解と望ましい態度ができるように,それに続いて学級討議をするのがよい。生物学や心理学を含んでいる説明は,理解できる程度に簡単にすベきである。

 (1) 教師は,必要な時には,性格が両親から子孫に伝えられる生物学的課程であることについて,簡単な説明を行うべきである。生徒は,この過程の説明については生物学の新教科書で学ぶことができようし,教師は「教育心理」から資料を得られるであろう。生徒は,自分の生活に対する遺伝の影響を十分に理解できるように,このことがらについて学習しなくてはならない。

 (2) 自分についての問題を理解するために,生徒は,自分の身体的・精神的な発展について,幾分は知っておく必要がある。このことがらについては,信頼できる資料が不足しているので,この場合には,教師は青少年期の成長について,簡単な説明を与えてやる必要がある。「教育心理」の教科書は,このことがらについて多くの資料をのせており,その中には,個人の誕生から,成熟までの発達段階のおもな特色を示して,要約した形で掲げた表もある。各年齢水準について,次の四つの標題をもとに資料がまとめられている。即ち,身体発育,社会性の発達,情緒の発達,知的発達がそれである。この資料を与えたなら,続いて学級討議をすべきである。

 (3) 生徒は自分たちに,ある仕方の行動をとらせる衝動について,ある程度の知識をもっている方がのぞましい。教師は,個人の基本的な要求,――即ち,愛情を求める心,集団生活に加わろうとする要求,独立しようとする要求,自敬の念を維持しようとする要求,みんなに認められようとする要求――について,簡単な説明を与えるのもよい。個人の要求が明瞭にされれば,要求や目標が環境によって,しばしば妨げられるものであることについて,また,個人が妨げられた場合に,それに適合しょうとする方法について,さらにまた適合するのに失敗すると,行為や人格の発展にとって,どんな問題がおこるかというにとについて,説明が必要になる。

 このような説明は,決して形式的・組織的になされてはならない。学級生徒たち自身の問題や,自分自身の行動について,理解しようとする,生徒たちの意識的な要求がある場合には,教師は,できるだけ助力してやらなくてはならない。この年齢の生徒は,その家庭,学校生活,社会生活に対する適合の問題で,しばしば苦しむものであるから,教師が助力を与ええなくてはならない機会が多い。教師は,教育心理学や,社会学や,生物学について,知識と理解とを持たなくては,必要な助力を与えてやることができないであろう。

(二) 先行する諸学年のいくつかの単元大要には,個人に対する自然環境の影響について理解させる学習活動に対して,参考になるものが含まれている。ここでは,たゞ,二三の学習活動を附け加えて挙げてあるにすぎない。特に,第七学年の単元一及び第八学年の単元一が参考になる。そこに掲げてある学習活動の例は,第九学年にも用いられるであろう。教師と生徒は,気候,地形,天然資源,土じょう,動植物というような自然環境の要素が,各個人に与える影響に重点をおいて,学習活動を計画し,これを実行すべきである。

 (生徒に対して)

(一) 自分の経験や読書をもとにして,人間の身体を健康に保つためには,どういう条件が必要であるかを表にしてみること(例えば,きれいな空気,適度の睡眠等)。その反対に,健康を害するいろいろの原因を同じく表に作ってみること。それについて学級で討議し,自分の身体を健康に保つために必要な規則や習慣をきめること。不健康が,集団生活に十分に参加するのにどんなに障害になるかという点を,明らかにすること。

(二) 附近の医師を学校に招き,人間の身体の発達について,話をしてもらうこと。必要と思われる知識を得るために,質問すること。身体の発達のありさまを記録し,表にすること。(身長・体重の増加,死亡率について)

(三) よくない家庭の状況と少年犯罪の関係について,情報を得ること。家庭で得た教育が学校における自分の行動に,どんな効果を与えているかを,学校で討議すること。

(四) 「民主的な生活を学ぶ最適の場所は家庭である」という主題で,討議すること。家族集団の各成員が,家庭の仕事や,厚生の活動に対して力になれる方法を討議すること。

(五) よい家庭生活の特質について,次の観点から討議すること。

 (1) よい家庭は,和やかで,慈愛と思いやりにみちている。

 (2) よい家庭では最後の決定権は両親にあるけれども,家族がみんな加わっていろいろなことをきめる。

 (3) よい家庭は,家族の安全をはかる。

 (4) よい家庭では,各人が互に尊敬し合う。

 (5) よい家庭の家族は,自分たちの幸福ばかりでなく,社会やさらに大きい集団の福祉を思いやる。

(六) 生徒として学校における集団生活で果たし得る次のような責任について,討議すること。

 (1) 生徒の団体に招待する計画の番組を示す。
 
 (2) 安全対策に助力する。

 (3) 遺失物係をやる。

 (4) 学校衛生に助力する。

 (5) 書籍交換会をやる。

 (6) 学校新聞を発行する。

 (7) 学校図書の管理に助力する。

 (8) 運動場の監督の助力をする。

 (9) 体育の計画に助力する。――技の日割をきめる。応援団を組織する。観衆の席を整理する。

 (10) 生徒の厚生計画を推進する。

 (11) 生徒の同好会を推進する。

(七) 討議によって,学校や,家庭や,公共の集会で守るべき規則を書いた本を,学級で作ること。この規則表と対照して,生徒各自が,自分の行動を判定するように奨励すること。

(八) 河合栄次郎著「学生生活」を読み,わからぬ点は先生や先輩にたずねて,青年期と自覚ということについて,話し合うこと。

(九) 本を読んたり討議したりした後,好ましい人格の資質(集団とともに楽にたのしく生活できる資質)を,十あげてみること。このような人格の資質を得る方法について,討議すること。

(一○) 討議によって,「善」あるいは「悪」と考えられる行動数種を,表にすること。なぜそれらは「善」または「悪」と考えられるのであろうか。「悪」と考えられたものの中集団の利益と権利を害するようなものは,どのくらいあるだろうか。

(一一) 社会の福祉に反するという理由で,悪と考えられるような種類の行動をとりあげること。反社会的な行動の原因を明らかにしてみること。一例をあげると,空腹あるいは貧しさから盗みをした少年,その遊び仲間から仲間はずれにされたので,けんかをした少年などである。(学校のだれかを個人的に刺激しないような,場合を選ぶこと)。

(一二) 一日,すべての生徒が,他の生徒の権利を全然顧みないようなことが起ったなら,自分たちの学校でどんなことが起るか,想像してみること。

(一三) 学校の集団生活にうまく適合していると考えられる人について,記述してみること。

(一四) 農民と,漁師と,都会の工場勤労者の特質について調ベ,職業生活や,自然及び社会環境が,人々の性格にどのような違った影響を及ぼすかについて,討議すること。

(一五) 東北人,関西人(特に京都,大阪),土佐人(高知県人),三州人(鹿児島,宮崎県人)等の特質について比較し,その特色を表にしてみること。自分の地方の人々の特性について書いた書物を読み,その長所・短所を批判的に討議すること。

(一六) ことばについての研究を行うこと。ます自分たちの地方の方言と,なまりについて調査し,それをいわゆる標準語や標準音と対照し,その相違を表にすること。悪い方言やなまりをどうしてなくすことができるか,実際できるような方法について討議し,一応の結論を出してみること。

(一七) 勤労者や事業家に,職業人気質について話をきいて,職場が,そこに働く人々にどんな身体的・精神的な影響を与えるかを,討議すること。自分の性質や環境と照し合わせて,将来どういう仕事をしたいかということについて,作文を書いてみること。

(一八) 個性や人格の発展に,他のいかなる集団の影響よりも,家庭の影響が最も大きいといわれる。自分の行動の中のどんな点に家庭の影響のあとを見出だすことができるだろうか。「三つ子の魂百まで」ということわざを評論すること。このことわざに科学的な根拠があるかどうかを明らかにすること。

(一九) 個人にとって,その生涯の仕事を準備し,よりよい公民に育て,趣味や教養の豊かな人間を作り,理解力を増して,成功の機会に恵まれるようにするために,教育はどんな影響をもっているかを研究して,文書にして学級で朗読すること。

(二○) 統治者・詩人・政治家・技術者・教育者・医師・俳優等は,どんな才能と能力を必要とするだろうか。これらの人々の仕事は,他人の福祉にどのように貢献するだろうか。自分の仕事で得た経験や,自分の地方の人々の経歴についての観察,自分の教有及び自分の意志などにおいて経験したことの結果として,どんな種類の仕事や経歴に興味をもっただろうか。それに必要な資格をもつために,受けなくてはならない教育や,経験を明らかにすること。

(二一) 自分の郷土で,最も重要な職業をいくつか表にしてみること。これらの職業にたずさわる人々が,共同生活に貢献するありさまについて,討議すること。

(二二) 数人のものが集まって,ある仕事をしようとする場合に,各々が自分の意見を主張して他の意見を受けいれない時には,仕事を始める前に,ぜひしなくてはならないことはどういうことであろうか。次に計画がきまったとして,その仕事に成功するために,少なくとも行わなくてはならないことは何であろうか。

(二三) 町や村の治安を維持し,火災を予防し,子弟を教育し,飲料水を整えることについて,適当な計画もなく,またその実施について責任をもって世話しようとする人がいない場合には,町や村の生活はどうなって行くか,ということについて討議すること。町や村の人々の福祉を増進するために,人々が相協力することが絶対に必要であることを,明らかにすること。

(二四) 丹那トンネル・清水トンネル・また関門海底トンネルなどの工事に成功するのに,人々はどのように団結してその完成に努力したかを調ベて,学級に報告すること。また,「一枚の新聞が刷り上るまで」という題で,実際に新聞の編集,印刷の順序を調ベて,その仕事のために,どんなに多くの人々が協力しているかを明らかにして,学級に報告すること。

(二五) 「縁の下の力もち」ということはどういうことか。批判的に討議すること。共同の福祉増進のために,黙々と働いている人たち,その日常生活は目につかないが,意外に大きな影響を与える人たち,そういう人たちについて,討議すること。このような人たちに,社会はどういう待遇を与えるベきであろうか。

(二六) 古代社会に関する歴史を読んで,奴れい制度について調ベ,学級で討議すること。

 (1) 奴れいは,どういう場合に起ったか。

 (2) その生活は,どんな工合だっだか。

 (3) なぜ奴れい制度はなくなったか。

 (4) 個人の自由は,達成されたろうか。

(二七) 「人間の生命はなぜ尊いか」という題で,討議すること。

(二八) 自由と放縦との相違について,討議すること。真の自由は,どういうものであろうか。戦後の社会において,明らかに自由をはき違えていると思われる人々の行動について,具体的に例を挙げて討議すること。

(二九) 自分たちの生活でしたいと思うことと,しなくてはならないこととが,衝突する場合について,考えてみること。その場合には,どうすればよいかについて,考えてみること。

(三○) 福沢諭吉・新島襄・新戸部稲造・内村鑑三等の伝記や,著述を読んで,これらの人々のすぐれている点を明らかにすること。また,たがいに異なっている点を研究すること。

(三一) 平和に栄える社会生活にとって,欠くことのできないものと思われる個人的性質をできるだけ挙げてみること。即ち,寛容・親切・思慮・無私・威厳・信頼,明朗・独創性・勇敢・忍耐・いんぎん・協力的というようなものである。それらのうちから,特にたいせつだと思われるもの五つを取り出して,自分の知っている人物について,具体的な例をあげ,そのおのおのについて説明してみること。自己の性格を反省して,五つあげたものの中で,自分の持っていると思われるものに印をつけること。また,自分が将来努力して養う必要のあるものを取り出して,座右の銘として紙に大きく書き,それを適当な場所に張り出すこと。なぜこのような性質は「よい」性質と考えられるのであろうか。集団の福祉を増進するからであろうか。

(三二) 自分の尊敬する偉人の肖像を手に入れて,それにその国籍,年代を書き入れ,その下に賞詞を書いて自分の部屋に飾ること。時々,級友が交替で,自分の手に入れた肖像を学級に持って来て教室に掲げること。その伝記から,その人たちの性格的特色を研究すること。

(三三) 数種の慣習を研究し,それを自分の学級に報告すること。悪い習慣のきょう正について討議すること。慣習の起源について調ベること。生活における慣習の役割について知識を得て古い慣習が,すべて,今でも集団生活に役に立つかどうかについて級友と討議すること。

(三四) 自分の市・町・村の生活の仕方を,自分のよく知っている他の市・町・村と比較してみること。

 (1) 生活の仕方。

 (2) 厚生の方法。

 (3) 社会活動。

  行動に相違が見られたらそれについて考えて見ること。

(三五) 実際に観察した慣習を,書きとめておくこと。即ち,挨拶の仕方,食事の仕方,建築の方法,仕事の仕方など。このような慣習は,自分の行動にどんな影響を与えているかを示すこと。

(三六) 二三の団体(運動クラブ・美術団体・音楽団休)に入っている級友に,そのクラブの活動についてたずねること。クラブの他の成員といっしょに活動に加わることの利益や時間が束縛されることについて,また,級友自身の感想について話をしてもらうこと。クラブが性格の発達に及ぼす影響を具体的に明らかにすること。

(三七) 自分が属している集団で,意見の一致していない問題を,研究や討議をして選び出すこと。そういう問題の一つに,少年少女が学校で共同していっしょに勉強した方がよいかどらかということがあると,仮定してみること。この問題について,自分の地方のしきたりや慣習はどうだろうか。この問題について,新聞の論説を集めること。地方のいろいろな人々の意見を求めること。他の学校で,少年少女が自由にいっしょに勉強している例を探してみること,その意見を聞くこと。最後に,この問題について,学級でその際集めた事実をすべて用いて討議すること。男女共学の利害を表にすること。

(三八) 討議に入る前に,できるだけ多くの情報を集めて自分の学校の共同生活についてが重要な問題の研究を始めること。その問題の一つは,学校に生徒自治委員会のあることの可否の問題だと仮定してみること。他の学校の生徒自治委員会の例をさがして,これらが,どの程度に成功しているかをたしかめること。もし失敗していたとすれば,その原因を明らかにすること。生徒自治委員会に関して得られる情報をすべて,見出だした後,学級で,これについて討議すること。自分の学級または学校に,学級自治委員会を求める気持があるかどうか,また,学級または学校の組織が,実際にできるか,どうか,をきめること。

(三九) 学校当局との間の話し合いによって,もし生徒自治委員会が必要だときまったらそれを組織するように実際に着手すること。まず,どういう要求を生徒自治委員会は満足さすべきかを,はっきりさせること。それが実行すべき機能の表をつくること。学級すべてがいっしょになって生徒指導者選挙の方法,自治委員会の形式を確立すること。討議を十分して後,自治委員会の形式の輪かくや,指導者の資格をきめ,選挙の方法を規定する「根本規約」を起草するグループを選挙によって選出すること。この「根本規約」を,生徒団体の投票にかけること。もしそれが通過しなかったら,生徒の多数の意見に合致するように「根本規約」を書きなおすこと。それが承認されるようだったら,「根本規約」に従って選挙をやり,生徒自治委員会の設立を進めること。

(四○) 社会の統制ということについて,書物を読んだり議論を聞いたりして,その意味と必要とを明らかにすること。社会の統制に服するために必要な個人の正しい態度として,どういうことがあげられるか,研究すること。統制が意義あるものとなる前に,それは,集団全体によって課されなくてはならないということを示すこと。時々行動の規則が変化する必要があるのは,なぜだろうか。

(四一) 自分の属しているすべての集団生活を表にしてみること。それらのうちで,自分が進んで参加したものと自分が改めて参加するまでもなく,はじめからその一員となっているものとを,区別すること。この二つの集団に対して,自分はどちらにより多くの親しみを感じ心がひかれているか,自分に最も密接な関係があると思われるものを,順に番号で示してみること。級友のものと比較して,学級全体で表示してみること。

(四二) 自分の現在属している集団との関係は,いつどういう順序で結ばれて来たかを明らかにすること。学級の全員について,調査して,一つの表にまとめ,年齢といろいろの集団における成員の地位との関係を,図示してみること。

(四三) 社会のよき成員(団員)として必要な条件をあげてみること。それらの条件のうちで特に努力して練習をつむ必要のあるものをあげること。また準備を必要とするものをあげること。自分の将来入って行くと予想される社会において,必要とされる性質や,条件や,技術能力などについて調ベ,それを身につけるための実際の計画を立てること。

(四四) ことばを,上品,明せき(意志をはっきり伝えること,表現を明瞭にすること)という点から研究し,悪いと思うことばの表とつくること。自分たちのことばの修練を行う機会方法について,考えてみること。朗読会,討論会などを計画したり,あるいは,よいことばを学ぶという点から,脚本を書いたり,実演したり,新聞を発行したり,校内放送を実施したりするのもよい。

(四五) 美術,音楽,文学,運動,旅行などにおける自分たちの趣味を調ベること。趣味の洗練ということについて,研究すること。

(四六) 自分たちの生活を,いっそう満足なものにするための実際の計画を立てること。日常の起居,動作,容儀,服装,ことばづかい,表情などについて詳細に反省して,改善すべき点がないかどうかを調ベ,改善への具体的な計画を立てること。

(四七) 自分の家庭,近隣,町の生活を改善するための具体的,実際的な計画を立てること。この際,例えば,町の美観をそこなっているものを除く場合でも,自分ひとりの力だけでは困難であるから,他の人々と協力して,集団の力によって改善を進める工夫をなすことが必要である。街路を清潔にして,衛生的に改善するために案を考えて,これを近くの学校や,町の役場や,警察や,その他の公共機関とも連絡をとって,ポスターや標語などを工夫して,自分の学級が進めることのできた改善について,強力に運動を展開する方法を考えること。

(四八) 地方の共同生活の改善に力になろうとする有志によって,公民クラブをつくり,社会の改革に進んで奉仕する具体的な計画を立てること。


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宮城谷昌光の言葉

  • 雲のうえに頂をもつ高山を登ろうとするのに、その山相のすさまじさに圧倒され、おじけづいていては何もはじまらない。最初の一歩を踏み出さねば、山頂は近づいてこない。
    「楽毅」第四巻より
  • みごとなものだ。斂(おさ)めるところは斂め、棄てるところは棄てている。楽氏が棄てたところに、われわれの生きる道がある。
    「楽毅」第四巻より
  • 去ってゆく千里の馬を追っても、とても追いつかぬぞ。千里の馬の尾をつかむには、その脚が停まったときしかない
    「楽毅」第四巻より
  • ・・・つくづく人のふしぎさを感じた。道を歩く者は、足もとの石をたしかめようとしないということである。千里のかなたを照らす宝石がころがっていても、気がつかない。それほどの名宝は深山幽谷に踏みこまなければ得られないとおもいこんでいる。
    「楽毅」第三巻より
  • この城をもっとたやすく落とすべきであった。たやすく得たものは、たやすく手放せる。
    「楽毅」第二巻より
  • なにかを信じつづけることはむずかしい。それより、信じつづけたことをやめるほうが、さらにむずかしい。
    「楽毅」第二巻より
  • からだで、皮膚で、感じるところに自身をおくことをせず、頭で判断したことに自身を縛りつけておくのは、賢明ではなく、むしろ怠慢なのではないか
    「楽毅」第二巻より
  • こうする、ああする、といちいち目的と行動とを配下におしえつづけてゆけば、配下はただ命令を待つだけで、思考をしなくなる。この四人はいつなんどき多数の兵を指揮することになるかもしれず、そのときにそなえて自立した思考力をもつ必要がある。
    「楽毅」第二巻より
  • 人は自分の存在を最小にすることによって最大を得ることができる
    「楽毅」第三巻より
  • 勇と智とをあわせもっている者は、攻めるときよりも退くときに、なにかをなすときより、なにもなさないときに、その良質をあらわす
    「楽毅」第二巻より
  • 目くばりをするということは、実際にそこに目を遏(とど)めなければならぬ。目には呪力がある。防禦の念力をこめてみた壁は破られにくく、武器もまた損壊しにくい。人にはふしぎな力がある。古代の人はそれをよく知っていた。が、現代人はそれを忘れている。
    「楽毅」第1巻より
  • 知恵というものは、おのれの意のままにならぬ現状をはげしく認識して生ずるものなのである。
    「楽毅」第1巻より
  • 会う人がちがえば、ちがう自己があらわれるということであろうか。
    「奇貨居くべし 黄河編」より
  • 静寂に染まりきれば、ふたたび起つことはない。生きるということは、起つ、ということだ。自然の静謐に異をとなえることだ。さわがしさを放つことだ。自分のさわがしさを嫌悪するようになれば、人は死ぬ。
    「楽毅」第四巻より
  • 人というものは、自分のやっていることをたれもみていないと思い込んでいるが、じつはたれかがみており、やがて賛同してくれる人があらわれる。
    「春秋の名君」より
  • 寵を受けても驕らず、驕っても高い位を望まず、低い地位にいながら怨まず、怨んでもおのれを抑えることのできる人は少ない
    「沈黙の王」より
  • 小さな信義が、きちんとはたされてこそ、それがつもりつもって、大きな信義を成り立たせる。それゆえに、明君は、小さな信義をおろそかにせず、つねに信義をつむように、心がけるものである
    「歴史の活力」より
  • 奥の深いことと、表現がむずかしいこととは、むしろ逆の関係にある。むずかしい表現のほうが、ぞんがい簡単なことをいっている場合が多く、やさしい表現のほうが、奥の深いことをいえる。
    「歴史の活力」より
  • 黄河の流れは悠久とやむことはない。河床もあがりつづけるのである。いくら堤防の高さをましてもらちのないことであった。
    「侠骨記」より
  • 人はおのれのままで在りたい。それは願望とはいえぬほどそこはかとないものでありながら、じつは最大の欲望である。人の世は、自分が自分であることをゆるさない。
    「奇貨居くべし 春風篇」より
  • 外をもって仕えている者は信用するに足りぬ。つまり男でも女でも内なる容姿というものがあり、その容姿のすぐれている者こそ、依恃(いじ)にあたいする。
    「奇貨居くべし 春風篇」より
  • 橘という木があります。この木が淮水の南に生ずれば、すなわち橘となります。ところが淮水の北に生ずれば、すなわち枳となります。葉は似ておりますが、実のあじわいはことなります。なにゆえにそうなるかと申しますと、水と土がちがうからです。そのように、その者は斉で生まれ育ったときは盗みをしなかったのに、楚にはいって盗みをしたのです。楚の水と土は、民に盗みをうまくさせようとするところがありませんか
    「晏子」(第四巻)より
  • 倹より奢に入るは易く、奢より倹に入るは難し
    「中国古典の言行録」より
  • 礼儀という熟語がある。礼とは万物を成り立たせている根元に人がどうかかわるかという哲理のことで、儀とは礼をどう表現するかというレトリックをいう。その二つが組み合わさって礼儀ということばが生まれた。
    「春秋の色」より
  • 都邑が矩形であるのは、この大地が巨大な矩形であると想像するところからきている。したがってかぎりない天地と形容するのは正確さに欠ける。大地にはかぎりがある。ただし大地は四方を高い壁でかこまれているわけではない。とにかく独創とか創見というものは、思考が狭い矩形をもたぬということではないか。人はいつのまにか思考を防衛的にしてきた。他者を拒絶しがちである。思考の四方に感情という壁を立てて、他者と共有してきた天を極端にせばめてしまった。
    「子産(下)」より
  • 人というものは、恩は忘れるが、怨みは忘れぬ。
    「孟嘗君 5」より
  • 人はたれにもあやまちがあります。あやまちを犯しても改めれば、これほど善いことはありません。『詩』に、初めはたれでも善いが、終わりを善くする者は鮮(すくな)い、とあるように、あやまちをおぎなう者はすくないのです。
    「沙中の回廊(下)」より
  • 「わたしは侈っている者を烈しく憎まない。なぜなら侈っている者はおのずと滅ぶ。が、なまけている者はどうか。わたしはなまけている者をもっとも憎む」
    「沙中の回廊(下)」より
  • 人を得ようとしたければ、まずその人のために勤めねばならぬ。すなわち、晋が諸侯を従えたいのであれば、諸侯のために骨折りをしなければならない。
    「子産(上)」より
  • 知るということは、活かすということをして、はじめて知るといえる。
    「青雲はるかに(上)」より
  • 師はつねに偉く、弟子はつねに劣っているものでもない。弟子の美点に敬意をいだける師こそ、真に師とよんでさしつかえない人なのではないか。
    「孟嘗君 2」より
  • 人を家にたとえると、目は窓にあたる。窓は外光や外気を室内にとりいれるが、室内の明暗をもうつす。そのように目は心の清濁や明暗をうつす。
    「孟嘗君 2」より
  • 人にものごとを問うということは、質問そのものに、問うた者の叡知があらわれるものである。
    「孟嘗君 3」より
  • 人から嫌われることを、避けようとする者は、心の修養ができていないことである。
    「中国古典の言行録」より
  • 人を利用すれば、かならず人に利用される。・・・企てというのは、人に頼ろうとする気が生じたとき、すでに失敗しているといってよい。
    「太公望 中」より
  • 与えられてばかりで、与えることをしないことを、むさぼると申します。むさぼった者は、なべて終わりがよくない
    「孟夏の太陽」より
  • ・・・料理をつくりながら、人と組織とをみきわめたのか。素材が人であれば、素材を合わせてつくった料理が組織である。それ自体はにがく、からいものでも、他の素材と合わされば、うまさを引きだすことができる。煮るとか蒸すとかいうことが、政治なのかもしれない。
    「太公望 中」より
  • 他人を変革するためには、まず自己を改革しなければならね。
    「太公望 中」より
  • 人が何かを得るには、二通りあります。与えられるか、自分で取るかです。(中略)与えられることになれた者は、その物の価値がわからず、真の保有を知りませんから、けっきょく豊さに達しないのです。
    「奇貨居くべし 春風篇」より
  • みじかいなわしかついていないつるべでは、深い井戸の水を汲むことはできない。
    「奇貨居くべし 黄河編」より
  • 人は目にみえるものを信じるが、そのことにはかぎりがあり、けっきょく、人が本当に信じるものは、目にみえぬものだ
    「晏子」第二巻より
  • 人にはそれぞれこだわりがあり、そのこだわりを捨てて、変化してゆく現実や環境に順応してゆくことの、何とむずかしいことか。
    「奇貨居くべし 飛翔篇」より
  • 失敗を心中でひきずりつづけると、起死回生の機をとらえそこなう。それは戦場における教訓にすぎないともいえるが、大きな勝利とは、相手の失敗につけこむのではなく、自分の失敗を活かすところにある。楽毅の信念はそうである。
    「楽毅」第四巻より
  • 人の頭脳のなかの眼力は、木の幹にあたるであろうが、幹をささえるものは知識という葉ではない。根である。根は地上の者ではどうすることもできない伸びかたをする。その根は天から落ちてくる水を吸い、人からあたえられる水も吸って太ってゆく。
    「奇貨居くべし 春風篇」より
  • 大木にするためには、幹の生長に目をうばわれがちであるが、地中の根を大きく張らせることを忘れてはならない。花を咲かせることをいそぐと、花のあとの結実をおろそかにしてしまう。要するに、大木でなければ豊かな実をつけないということである。
    「奇貨居くべし 春風篇」より
  • あらゆる事態を想定して準備を怠らず、変化に対応できるようなトップでいなければならない。
    「中国古典の言行録」より