「大人の言葉」と「大人の社会の言葉」
「大人の言葉」を,もう少し詳しく説明すればよかったと後悔している。
私が使っている「大人の言葉」という「言葉」のなかには,
「大人の世界の言葉」「大人の社会の言葉」という意味が多分に含まれていた。
社会科などは特にそうだが,歴史的な分野になると,
一般的な子ども社会のなかではまず耳にすることがない「大人の社会の言葉」が
たくさん登場する。
学術的な用語も,増えてくる。
こういう「大人の社会の言葉」に適応できない子どもが,
「社会が苦手」「社会が嫌い」になっていく。
「研究」の面白さを語ることができない教師自身に,
「難しい用語」への嫌悪感がにじみだしているのだろう。
「難しい用語」は「理解させるのが難しい」というのは,
ただの思い込みである。
それよりも,「分かったような説明」で「分からせる」くせはやめにしてほしい。
「参勤交代はどのような目的で始まったのか」
という問いを中学生にぶつけると,たいてい,誤った答えが返ってくる。
だから,「大名」の立場から答えなさい,という条件をつける。
そうすると,答えることができなくなる。
そこで,武家諸法度の寛永令を読ませる。
こんな調子で,「分かったような気になっていること」がたくさんある一方で,
小学校時代に,本当に考える価値があることには,
ほとんどふれてこなかったのではないか,という中学生が見受けられる。
「子どもだから,別にいいのではないか」という人がいるかもしれないが,
それなら大人である教師は学校に必要がなくなる。
授業で小学校の担任の教師がどの程度の「語彙」を駆使していたかによって,
中学生の「聞く力」はもちろん,「読む力」もかなり規定されてしまう。
「聞く力」の乏しい子どもは,「読む力」も乏しい。
「読む力」の乏しい子は,「考える力」も乏しい。
「考える力」とは,「思いつき」をべらべらと話す力ではない。
根拠を挙げて,何がどうして何であるかを説明することができる力のことである。
それを何百パーセントか,補ってくれているのが塾だとすると,
塾をなくしてしまえとは主張しにくい。
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