小中一貫と小中連携を勘違いしている人たち
「小中一貫」というタイトルをつけていながら,
そして,「小中一貫教育」を実践している学校の話だと書き始めておきながら,
中学校のダメ授業とあいかわらずの「見た目」重視の授業観に関することだけをだらだらと書き連ねている教育ブログがある。
教育関係の話で,
「子どもの目が輝いていた」
「いきいきしていた」
「子どもが主体の」
「子どもが活躍する」
などという言葉が出てきたら,まずは役に立たない内容であろうと想像がつく。
日本独特の「感覚的」「情緒的」教育観である。
「ムード」「空気」で評価が決まってしまう。
こういう「教育観」を広める「古典」があるのが原因なのだが。
これを言葉で直接耳に入れることを想像すれば,その「意味のなさ」に気づくはずである。
さて,紹介されていた事例は,「小中連携事業」をしているところの話と何の違いもない。
中身のない「小中一貫」はすぐにバレる。
そもそも,進学する中学校の選択肢がないような小学校では,
これまでも形式的には小中一貫校であった。
今,求められているのは実質的な「小中一貫」だが,
現行の学習指導要領では,小学校は小学校,中学校は中学校である。
文言は似ていても,別々のカリキュラムである。
「小中一貫教育」のメリットは,
1年でも早く子どもに「充実した学校生活を送らせる」ことにある。
たとえば,6年生でも中学校の学習ができるようにすることができる。
5年生になっても,2年生と同じような「ぐだぐだ」の「学び合い」をやっているから,
高学年の子どもが教師に背を向けるようになるのである。
教師が話している言葉が聞き取れない中学生は,本当に気の毒だが,
それは子どもとばかりおしゃべりをさせて,まともな大人の話を「しっかり聞く力」を育てることを怠った教師のせいである。
大人の話を聞く力のない小学校7年生は,入学直後からすぐに目立つので隠しようがない。
このような,学習指導上の課題を最小化することが大切なのは言うまでもないが,小学校と中学校の決定的な違いがどこにあるかが分かっていない人が多い。
日本は,あいまいなことをあいまいなままで実施することが許される国であることがよく分かる。
書いている本人が「小中一貫教育」とは何かを理解していないのだから仕方がないことだが,
誤解というか無理解のまま,ああだこうだと言ってみたところで,日本の教育は
変わっていくはずがない。
学力調査の結果を見てほしい。
子どもや保護者から選ばれる「小中一貫教育」を目指す人の中には,
「7・5・3」からの脱却を進めたいと考えている人が多い。
小学校では7割程度,中学校では5割程度・・・なんて学力では,
先が思いやられる。
せめて小学校では9割程度,中学校では7割程度くらいには底上げを図っていきたい。
その願いはどうしたら実現するか・・・・という関心の持ち方である。
小中一貫教育の目的,効果,現状等については,平成24年7月13日付で出された
『小中連携、一貫教育に関する主な意見等の整理』
(中央教育審議会初等中等教育分科会
学校段階間の連携・接続等に関する作業部会)
に詳しい。
これすら読んでおらず,基本的な知識のない人間が
小中一貫にたずさわれば,ただそれだけで「一貫校」は崩壊する。
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