せまい意味の国語力(読解力)だけでは社会を生きていけない
学生時代,国語が苦手で,非常に点数が低いのに,いえいえ,それどころか,学校もやめてしまったのに,世界的な発明をした人は,その国の「国力」の発展を支えることになった人と言える。
国語という教科が嫌いで嫌いでしかたがなかった人が,世界的な小説家になる。
ある人に言わせれば,こういう人は「頭が悪い」人間で,国力の低下を招く,「元凶」なのだそうだ。
学校の成績が悪くても,社会を引っ張っている人は,いくらでもいる。
逆に,学校の成績がある程度よくて,教員にはなったが,「頭のよい人」がつくれないでいる人はいくらでもいる。
なぜ,国語という教科で「読解力に欠ける」と評価された人が,企業の人事部で優秀な人を採用し,社員の配置を見事にこなすようになれてしまうのか。
それは,人間の社会には,言葉によるコミュニケーション以外に,非常に多くの「情報」のやりとり・・・・たとえば,表情の意味を探るとか,その人の性格を熟知しているとか・・・・・がなければ,うまく機能していかない側面があるからである。
国語の問題は,きちんとした「正解」が導き出せるような「根拠」になることが,問題文の中にきちんと示されている。
だから,「筆者はこういうことも考えているはずだ」と予想して,答えると,誤答になってしまう。
笑い話で,文章の作者が示されている問題で,その問題文の中ではなくて,ほかの著書に書いてあった論の趣旨を答えてしまったら,×になったが,その作者が自分で採点したら,×にされたものが正解だ,ということがある。
こういう「読解力」の育成は,裁判官のような職業の人間を育てたいなら,大事かもしれない。
でも,社会でうまく生きていけない人間をつくるおそれがある,という自覚はもっておくべきである。
誤解をされる文章を書いておきながら,「誤解した相手が悪い。国語力が劣っているからだ」なんて開き直るような人間は,社会ででしゃばれば,トラブルの種をあちこちにまいていく。
文章が書かれた「背景」が理解できない人間は,リアルな会話でも,微妙な「ニュアンス」が読み取れないと,交渉事ならきっと失敗する。
国語教育が重視しているのは,「読む」力だけではない。
こういう基本的な理解がない元教員が教育論・教育問題で政治を皮肉っている。
他人に対する文句は矢のごときはやさで文章にするが,大事なことは書かないで逃げる。
自由と言えば自由だが,本当に公教育の信頼性を踏みにじる行為(ありのままを示す行為)である。
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