NHK大河ドラマ「平清盛」制作と似ている「教科書づくり」
「平清盛」の視聴率が低迷しているそうである。
福原遷都の会は見たが,「おもしろくなくはなかった」。
平安時代末期というのは,時代区分で言えば中世である。
しかし,この「中世」という時代のイメージは,非常に捉えにくい。
王朝文化は継続していくが,
小学校教育の影響で,「武士の時代」というイメージがあまりに強く,
歴史の専門家から見れば,非常に偏った時代像が教育現場からも生み出されている,と思われるだろう。
教科書作りでも,「わかりやすさ」が重視される。
特に,「売れる教科書」作りには。
教師は,「教えやすい教科書」を求める。
子どもは,「わかりやすい教科書」なら開いてくれる。
かくして,「面白くも何ともない,事実の羅列に過ぎない教科書」ばかりが生まれてくる。
そして,「歴史は暗記モノ」という評価が定着する。
「わかる楽しさ」
「考える楽しさ」
などを喚起してくれる教科書は少数派である。
教科書づくりは,それだけ大きな悩みを抱えているといえる。
結局,売るための編集方針となる。
「平清盛」は,視聴率かせぎをねらったというより,「玄人受けするおもしろさ」を追究している。
教科書づくりも,そういう方向性を本当はとりたいのである。
しかし,「わかりにくい」という印象が共有化されると,もう「おわり」である。
まだ,戦国や江戸,幕末や明治維新といった「ドラマ」が楽しめる時代は,興味を引きやすい。
しかし,時代の転換期は,そこだけではない。
平氏政権が維持できなかったのはなぜか。
もし平氏政権が続いたら,平清盛が理想とする国家づくりを次世代の武家政権が引き継いだら,どうなるか,そういう興味・関心を喚起できるような教科書はあるだろうか。
歴史の授業は,つまらない。
平清盛のドラマは,つまらない。
同じような理由なのだろうか。
大衆受けするものづくり,番組づくり,授業づくり,教科書づくり・・・・
そういえば,それがまさに小学校の発想である。
中学校教師の多くが,「小学校化」していると考えれば,とても納得がいく。
大河ドラマ制作は,小学校レベルでやっていく,というのが大原則なのだろう。
そういう意味では,来年も厳しそうだ。
« そろそろ偽の評価の看板をおろすとき ~学力向上の足を引っ張る評価~ | トップページ | 「合言葉」の誤解で学力低下に拍車がかかる »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「ニュースより」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 五輪ボランティアの数字を見て(2018.12.27)
- 南青山に似た環境の公立学校は,頑張った。(2018.12.23)
- 愛校心によって大切なものを失った経験から(2018.12.16)
「学習指導要領」カテゴリの記事
- なぜ新しい学習指導要領が失敗に終わることがわかっているか(2018.01.17)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「歴史学習」カテゴリの記事
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- 正倉院展を訪れて(2018.11.06)
- 日本における戦後の急速な発展を支えた教育とは?(2018.09.22)
- 近づきにくい人に近づく方法(2018.09.10)
- 縄文女子と飯盛山のさざえ堂(2018.08.15)
「社会科」カテゴリの記事
- 止まらないビールの需要減(2018.12.30)
- 皇族への言論弾圧(2018.11.30)
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 1000人当たりの暴力行為発生件数ワースト5は(2018.10.29)
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
「社会科教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- ありえない課題設定・・・EUが1つの国?(2018.11.24)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- アメリカの反知性主義を輸入した人たち(2017.06.28)
- 選挙が違憲だと,国民審査が機能しなくなる?(2017.06.01)
- 「アカデミアの世界」からこのブログへ投げかけられた言葉とは?(2017.05.29)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
この記事へのコメントは終了しました。
« そろそろ偽の評価の看板をおろすとき ~学力向上の足を引っ張る評価~ | トップページ | 「合言葉」の誤解で学力低下に拍車がかかる »
コメント