批判されない時代の教師がなぜ優秀に見えたのか?
教師は,厳しい評価にさらされる時代を迎えている。
それだけ教育の質が落ちてきていることに,危機感をもっている人が多いということでもある。
しかし,厳しい目で見られているのであれば,それだけ教師は努力して,よりよい成果を残してきているはずだ,という見方もできる。
逆に言えば,厳しい目が向けられなかった時代・・・・「先生」としてあがめられていた時代・・・・には,教師はもっと手抜きができたはずである。
しかし,そういう時代の教師の多くは,「優秀」に見えた。
どうして,教育の質は向上しにくいのだろう。
あれこれ言われることがなかった時代は,教師が「伸び伸び」仕事をすることができたからであろうか。
書類の量が少ない時代の方が,教師は子どもにかかわっていたのだろうか。
今の私なりの考えはこうである。
子どもの数が少なくなってきている。
学級数が減ったり,1学級の生徒数が減っているのは,どこでもおこっている。
子どもへのかかわり方は,以前よりも密になっているはずである。
実はそのことが,子どもが伸びない原因になっている。
子どもは,教師の力量を「過信」することで,自分の力を伸ばすことができていた。
不思議な現象であるが,私にはそう感じられる。
今,子どもが,教師の力量をより強く肌で感じることができるようになってきた。
というか,教師の力量を等身大で見るようになってしまった。
以前は,教師というのは「遠い存在」であった。
しかし,クラスの人数が減ったことで,「近い存在」になった。
そして,教師の力量が見えてきてしまった。
教師たちは,「人数が少ない方が,きめの細かい指導ができる」なんて言っている。
本当にそうか。
そもそも,「きめの細かい指導」とは,どんな指導のことを言っているのか。
表面的なことしか答えられない教師が多い。
極端な話,「1対1」の教育を,公立学校の教師はどれだけ責任をもってできるのか。
一人ひとりの子どもと,「1対1」の関係をきちんと築くことができるのか。
できない教師が多い。
このことが,子どもの側もわかるようになってしまった。
小規模校では,教師の総数が少ないから,学校の教師集団も等身大で見えてしまっている。
学校そのものに期待を抱くことが困難になってしまった。
このことは,学校の存在価値そのものにかかわっている問題である。
私も教師生活の半分は,公立学校の「学校神話」の中でくらしてきたから,よくわかる。
「学校神話」は,すでに崩れ去ったのである。
昔の教師に力量があったのか。
決してそうではない(人もいる)。
今と同じである。
今より恵まれていたのは,「力量以上の見え方」がされていたのである。
今の教師が不幸なのは,「力量以下の見え方」しかされないことである。
最高でも今の力量である。
この問題を解決するには,力量を向上させる以外に方法はない。
今,中学校では平成20年版という,すでに4年も前に示された学習指導要領のもとでの指導を行っている。新しい教科書が使われ,内容が変わったのは今年度からである。
まだ学習指導要領の改訂の趣旨が理解できていない教師が多い。
「教科の専門性」があやしい。
それを生徒に気づかれている。
力量を向上させなければならない。
それも,学校をあげて。
そして,また,「学校神話」を作り出すのである。
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