どうしたら「一人前」の教師になれるか?
優秀な教師の養成は,国家的な課題である。
しかし,日本は横並び意識が非常に強い国で,一般社会も学校も,「優秀な教師を育てる」という意識は皆無に等しかった。
だから,「優秀な教師は昇給を早める」なんて言われたら,優秀な教師も含めて反発するようになる。
教師たちはお互いの顔色を気にしながら,できるだけ「優秀」にならないように,
人から見えないところで「全力」を尽くすようになった。
部活動(だけ)に命をかけているというか,他より明らかに「本気さ」が際立っている教員がいる。
日本は,「全力は尽くしている」が,「実力のない人」にとても甘いというか,やさしい国である。
自分より少しでも「優秀なにおい」がする教員に対して,露骨に「嫌な目」をしたり,投げやりな言動をする教員がいる。
教師教育の「高度化」を大学院に担わせようとする人間には,こういう小中学校現場の教員の「習性」が理解できていない。
だからほとんど「逆効果」に近い現状が生まれている。
自分を「優秀」だと勘違いしている教師でも,自校ではおとなしくしている。
しかし,一歩,学校から足を踏み出すと,急に「元気」になる。
「よそもの」になると,学校内のヘンな「習性」が消える。
これが際立っているのが「小学校」である。
小学校教師は,「すべて」を求められるために,どうしたって学校内では「ボロ」がでる。
しかし「外」に出て,自分の得意なこと,成功したことだけを語っているうちは,そんな「ボロ」には気づかれないですむ。
お互いにその「ボロ」を知らずにすむ間柄では,非常にスムーズにコミュニケーションが進む。
「優秀」になりたい小学校教師が「外に出たがる」理由がここにある。
そして最後に行きつく先は,大学の教員。行き止まりである。
どうしたら一人前の教師になれるか?
そのためには,「優秀な教師をつくろう」という,「優秀でない自覚がある経験豊富な教師たち」の強い信念が必要なのである。
「一人前の教師になったな」
という声をかけてくれる教師集団,その瞬間の言葉に本当の意味を感じられる教師集団が,真に「一人前の教師」をつくるのである。
「優秀な教師」になる道は,容易ではない。
特に,安易に「優秀な教師」の真似をしようとする人間,させようとする人間が,そういう教師が生まれる道を閉ざしてしまっている。
小学校では特に,「こういう方法でうまくいく」ということが語りやすい。
実際に,「こういう方法でうまくいった」という実践もあるだろう。
しかし,そこには教師が「一人前」になれない重大な問題が隠れている。
ここを教師教育の場面でしっかり理解させることができれば,大学や大学院は使命を果たしたことになる。
私が教えた大学院生は,最低の指導案で最低の授業をしたおかげで,最高の教訓を得た。
実践紹介をしてくれる人間=餌をくれる人間には,本当に近づきたくなるだろう。
しかし,それが実力のつかない最大の原因なのである。
« スマホにおされ,デジカメが売れなくなったように・・・・ | トップページ | アマチュアに説教するプロ? »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「「ゆとり教育」」カテゴリの記事
- 「働き方改革」の前に必要な「学び方改革」(2017.07.01)
- 義務教育でアクティブ・ラーニングに取り組ませる目的(2017.05.21)
- 中学校の先生は,同時にいくつの仕事を進めているか(2017.05.01)
- 理解するよりも誤解する人が多い教育論(2017.03.13)
- 小学校による子どもの違い(2017.03.09)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント