「責任」のスルーパスが大好きな学校づくりに荷担する行政
ニュースが出てから,
「私がもし『いじめ対策教員』になったら,どうやって仕事をするか」
を考えながら,過ごしてみた。
今は学級担任なので,「担任でなかったら」という想定をしなければいけないのだが,まずはそれが難しい。
当然,授業を受け持っていない学年の生徒にまで,目を向けなければならない。
まず,すべての生徒の名前と,生活上のアンケートなどのデータを頭の中に入れなければならない。
所属している部活動と,そこでのポジション,出席状況,
成績上の課題,
過去の生徒間のトラブル・・・・・
それらすべて,全学年のデータを頭の中に入れるのは,規模が大きい学校ではなかなか大変そうである。
独自のアンケート調査をつくる。
当然,親向けの調査もする。
大津市の問題以後,すでに実施している自治体も多いようである。
アンケート結果を見て,場合によっては呼び出して話を聞く。
授業以外の時間帯で,呼び出して話を聞く時間というのは,中学校の場合,案外難しい。
その時間をぬって,話を聞いている・・・・うちに,あちこちで問題が発生する。
その問題の背景に,「いじめ」がからんでいないかどうかを瞬時に判断し・・・・・。
ここまで考えて,
「いじめ対策教員」は無駄である以上に,
さらに学校教育の質や教師の質を低下させるものであることに気づいた。
次の一文が,中学校教育を語る上で,最重要なことである。
「いじめに対応できる能力」のある教師を,「担任をもたせない」でいることは,あり得ない。
「いじめ対策教員」などという,担任をもたないで,「いじめ」の問題にかかわる「専門家」など,中学校現場には「いらない」のである。
「担任をもつ」力量がない教師が仮に「いじめ対策教員」になろうものなら,問題の解決どころか,
「泥沼化」しかねない重大な結末を招きかねない。
生活指導が「充実した」中学校に勤務している教師なら,直感でわかることである。
「事務方」=素人の発案なのか,どうかは,問い合わせてみればわかるだろう。
「余った教師」をまわされて,「いじめ」に関わらせるのは,危険である。
無責任な担任教師が,能力のない教師に問題をふって,課題が山積してくる。
日本人が大好きな「責任のスルーパス」のオンパレードになる。
よくよく考えるべきである。
そのうち,「いじめ対策教員の仕事マニュアル」ができるだろう。
すでにその中身の想像はつく。
しかし,まずやるべきなのは,一人一人の教員の意識改革である。
そう。
今この瞬間に,「いじめ」に荷担している教師がいる。
こういう問題の解決に学校が努力しなければならない。
« 「いじめ対応教諭」導入で「いじめ件数」激増 | トップページ | 子どもは教師を選んで態度を変える »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「いじめ問題」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 現場感覚のない人が社会感覚のない人にアドバイスを送る教育の世界の不思議(2018.12.01)
- いじめや暴力行為が多い自治体の「いじめ」対策の共通点(2018.10.31)
- いじめがない(認知されていない)学校で,いじめがある学校よりもたくさん実施されていることとは?(2018.10.30)
- データから見える「いじめ」発見の難しさ(2018.10.29)
「ブログネタ」カテゴリの記事
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 「功を焦る子ども」に成長が阻害される「弱者たち」(2017.09.26)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント