教師として現場に立つ前に・・・宮部みゆき『ソロモンの偽証』の一読を!
自分自身を,社会を,教師を,親をふくめた大人たちを,徹底的に批判的な目で見ることができる中学生の存在。
とても重たい台詞が多い小説ですが,この「重さ」に耐えられる覚悟がない人は,教師にならない方がいいでしょう。
教師がよく「世間知らず」と非難されますが,そう言われるケースの一例は,
「あまりに楽観的すぎる」から。
一般の社会人からは「無責任」に見えるわけです。
『ソロモンの偽証』を読めば,少なくとも,心情的には「無責任」ではいられなくなるはずで,そういう意味では分厚い三冊の本ですが,教師(になろうとする人)を覚醒させる効果があるかもしれません。
100ページに3行ずつくらいの割合で,思わずうなってしまう内容が入っています。
子どもが怖くなって,教師になるのをやめよう,と思うようになる人も増えるかもしれませんが・・・・。
5行ほど,引用させてもらいます。第Ⅰ部の374頁です。
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同級生や級友だからといって,一切の隔てがないわけではない。現実は逆だ。成績。容姿。運動能力。適切な場面でみんなにウケることを言えるかどうか。性格の明るさと暗さ。ありとあらゆる物差しで,生徒たちは互いを計り,計られる。そうして付き合う相手を決める。先生たちは,人間はみんな平等につくられているというけれど,そんなのは嘘だ。大人の社会に区別や格差があるように,学校のなかにもそれはある。子供は誰でもそれを知っている。理解している。認めている。
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