劣等感への対応が左右する小中学校教育の質
教育学者はこういう研究のためのデータをもっているでしょうか。
日本には,教師の実態をきちんと把握している専門家はいるのでしょうか。
そんなものを研究しても,「残念な結果」しか出てこない,と感じるか,
「おもしろい結果」が得られそうだ,と感じるかも,人によって違うでしょうね。
私は,小学校教育の質を左右している要因の一つに,「学力的な劣等感」があり,
中学校教育の質を左右している要因の一つに,「コミュニケーション能力に対する劣等感」がある,
と考えています。
そして,教育の成果のよしあしは,それぞれの課題の影響力が少なくなるように,どれだけの「工夫」がなされているかによるのです。
私の考えとしては,小学校の場合,教師も子どもも,「学力的な劣等感」を克服するというよりは,それを覆い隠す方向に向かい過ぎているのが問題であり,
一方の中学校では,「コミュニケーション不全が起こらない」ような取組を教師も子どもも積極的に進ようとするのが一般的です。ただ,残念ながら,子どもは小学校のときよりは「話さなくなる」し,反対方向へとひきずろうとする教師も少なくないため,成果が出せないでいる学校が,「荒れて」いきます。
教師にとって,
中学校教育の場では,自分自身の学力が問われる場面があまりなく,
小学校教育の場では,不特定多数との「コミュニケーション」を必要とする場面があまりない。
だから,劣等感を覚える場面が少ないということなのですが,実は,このことも,学校教育の質の向上のためには,よくない現状なのかもしれません。
小学校の教師は,「クラスの子どもの人間関係」の問題で困ったとき,校内で相談できる教師は何人いるでしょう?
中学校の教師は,「教科書に書かれていることの根拠」を知りたいと思ったとき,校内で相談できる教師は何人いるでしょう?
教師間の「つながり」は,それほど「広く」も「強く」もないかもしれない,ということに,初任者などは気づいて愕然とするようになるかもしれません。
だから,「外に出ていく」機会が増える。本を買う。
個人の力量を高めることは,とても重要なことです。
小学校でも,中学校でも,できること。
しかし,中学校でなければできないこと,やらなければならないことがあります。
教科担任制であり,学年経営が非常に重要であり,子どもの成長が著しい時期である中学校。
教員間のコミュニケーションの質が,学校教育を左右していきます。
子どもへの教育は一定程度の成果をおさめるとしても,教員間ではどうか。
実は,互いに「評価」は(おそらく正確な「評価」です)なされている。
問題は,子どもと違って,「低い評価」しか得られない人が教師集団の中で放置されていることです。
「子どもと違って」と書きましたが,学校によっては,「子どもと同じように」,です。
小学校教師が,中学校現場を見ると,自分自身の劣等感をもとにして,中学校教育の問題を指摘するという特徴がありますが,どうしても大事なところがずれてしまうのですね。
また,劣等感ではなく,優越感をもっている人が現場を語ると,また大きなズレを生じることになってしまいます。
それについてはまた別の機会で。
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