教えないことの大切さ ~気づく機会を与える~
教育実習生の授業は,よく生徒の「学習発表会と同じレベル」と呼ばれてしまうのですが,
確かに「教えたい」気持ちは分かります。
でも,やはり生徒に「気づく」チャンスを与えて,できたら自分の力で「理解する」ための機会も提供したい。
・・・・ただそれを現場の教員も,なかなかできないで「流している」のが現状の学校も多いことでしょう。
指導案で,「~が~であることを~を通して気づかせる」という目標があるのに,
教師が自ら「~を通して,~が~であること」を話してしまう,という場面をときどき目にします。
子どもは納得している。
その様子を見て,参観者も,「子どもはよく理解できた」と感心している。
しかし,目標は「子どもに気づかせる」ことだったはず。
自己教育力は,「自ら学び,考えて,目標を達成することができた」という「成功体験」を積み重ねることで,身についていくものです。
教育力の低い現場では,この「成功体験」はただ「テストでいい点をとる」だけのことであり,
「テストがなければどうなるのか」
を想定した教育になっていないのです。
「気づき」を提供したいのなら,「教えてはいけない」のです。
何も語っていないのに,多くを語っている,
こういう書き方,話し方は,難しい技なのかもしれませんが。
自治的な活動をするときに,
「こうすればうまくいくよ」というアドバイスを「我慢できない」教員がいます。
「それを今,言ってしまったら,その子が気づくチャンスを奪うことになる」という意識がないのです。
「こうすればうまくいくよ」
という本に群がる教師たち。
やはり,のどから手が出るほどほしいものを,我慢するのは難しいのですね。
逆に,そういう人に,「教えてあげたくてしかたがない」人も,大勢いるのですね。
教育者と,商売人の違いです。
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コメント
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この記事参考になると思います。
http://www.u-gakugei.ac.jp/~ohkawara/yukinaka3.html
投稿: 匿名 | 2012/06/03 12:28