教育界で最も怪しい言葉は,「学び合い」
「学び合い」を登録商標?にしている人がいるようなので,直接的にその人を批判するものではないことを,あらかじめお断りしておきます。
だれも勉強の「おいてきぼり」にはしない,クラスの全員が,生き生きとして学習にのぞむ・・・・そういう「教師の心構え」は大切なことです。
でも,その手段として,「学び合い」の形態を安易にとるのは,逆効果になる場合があることを知っておくべきでしょう。
ごくごく当たり前のこととして,
「自分の考えをしっかりともつ」時間がなく,いきなり「話し合い」に入るのはよくない,
なんてことはだれでもわかることですが,
では「自分の考えをもてない」子どもがいた場合に,
「他の生徒の考えを聞く」ことは,その子どもにとってどのくらいプラスになることなのでしょう。
中学校の場合,私の感覚では,
自分の考えをもてない子どもが,他の生徒の考えを「聞く」ことはできても,「理解する」ことにいたるまでには,相当のステップを踏んでいかなければならないと思われます。
本当は,教師がこの「ステップ」を超える方法を指導していくのが,「授業」であるはずで,私が読んだことがある「学び合い」の指導案は,こういう指導を完全に放棄しているものとしか見えませんでした。
教材研究をする必要のない,あるいは,した形跡のない指導案を見たときは,教師として本当に情けなく思います。
子どもは,・・・・素直でいい子どもほど,
「学び合い」「話し合い」をした結果,「よくわかりました」という感想を言いやすいでしょう。
しかし,「よくわかったかどうかがわかる質問」をその場で教師は投げかける作業をしているでしょうか。
そういう「問い」をもっているのでしょうか。
「よくわかりました」と聞いて安心してしまう教師,それで「よしとする」教師はいないでしょうか。
「学び合い」は,「教師の責任を最も巧妙な形で回避する」方法として使われてはいないでしょうか。
多くの教師が安易に飛びつく「教育方法」ほど,教師の力量が高まらないものはない,というのが私の考えです。
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