気に入った仲間同士でつるむ大人集団
さまざまな学級文化をもった「元小学生」が集まってくる中学校では,
「新しい人間関係づくり」の実現をめざして,非常に多くの時間を費やして,指導します。
ときには,いつも「元の仲間」とつるみ,教室を離れて廊下でわいわいやっている連中を教室に戻させます。
「小学生気分」が抜けない子どもたちは,学校による組織的な取り組みやよほどの偶然のきっかけがない限り,「幅の広い新しい人間関係づくり」ができないために,少人数の塊を維持しようとします。
これは小学校の教師の姿そのままとも言えるでしょう。
小学校の教師は,日常的に何人といっしょに仕事をしているという自覚があるでしょうか。
研究校などでは,3種類,4種類の会議が連続する,という一日を体験することができるかもしれませんが,孤立して自ら命を絶つ若い教師がいたように,ごくごく狭い世間,人にとっては王国にひきこもって,教室から外に出ず,子どもだけと毎日を過ごしているような人がいます。
こういう人間の生き方を子どもはまねてはいけません。
中学校に入ると,生徒たちは,とても多くの先生方の名前を覚えなければならない,「社会」の現実を知るようになります。
中学校という「社会」の広さは,「学校」という場では本当にごくごく限られているのですが,中学1年生の4月には,教科の部屋がどこにあるのか分からずに迷うような,そういう広がりのある場所になります。
部活動の試合で外に出れば,どの学校の先生か分からない人に,挨拶ができていないと叱られたりもします。
小学校教師にとっても,「小中一貫校」に入ると,担当によっては「9年生」の生徒を相手にしなければいけないようになり,とても視野が広くなっていくはずなのですが,
あくまでも「小学校」という枠にこだわり続け,
子どもに正対しようとしない,というより,自分の果たすべき役割を自覚するに至らない,そういう教師がいることがわかりました。
小学校教師の「小学校」というせまい領域の付き合いと,まだ思春期の多重的な問題が発生しない,のどかな子どもとの付き合いになれきって,広い世界に足を踏み出そうとしない,
そういう生き方があたかも推奨されているかのような教育ブログは,子どもにとっては何のプラスにもなりません。
情意の問題でみんな片づけられてしまうような,責任能力のない大人の社会が成立するのは,幼稚園か小学校くらいでしょう。それも,公立の学校のみです。
こういう状況から抜け出さなければならないという自覚をもってほしい相手は言うまでもないのですが,それを邪魔するのが好きな人がいるようです。
« 名古屋人の勤勉性と「放課」 | トップページ | 小中一貫校には,大切な時期に大切な人と出会える12歳児がいる »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「学校選択制」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 大規模校と小規模校の違い(2017.08.24)
- 女性社会が男性社会に変わることが中1ギャップの最大の原因か?(2017.08.13)
- 若い先生が増えると,子どもや管理職の悩みも増える(2017.08.12)
- 美味しくなってきたペットボトルのお茶(2017.08.07)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「ブログネタ」カテゴリの記事
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 「功を焦る子ども」に成長が阻害される「弱者たち」(2017.09.26)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
「教師の逆コンピテンシー」カテゴリの記事
- 遠慮しないで情報を提供しろ!~いじめを見逃す環境との戦い(2018.12.29)
- 偶然の重なりと緻密な演出~インスタレーションから受けた刺激(2018.12.22)
- 子どもから有能感を奪い取る方法(2018.11.25)
- 量より質が大事なものと,質より量が大事なものとは?(2018.04.23)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント