卒業式の事前指導で学校は立て直せる
公立中学校では間もなく卒業式を迎えます。
今の学校現場というのは,どういうところがうまくいっているかというと,
「学校生活は楽しかった」
「学校生活は充実したものだった」
と思い込ませる「暗示機能」です。
では,学校生活の,何がどう楽しかったのか。
まるで「道徳」の授業の「正解」のように,みんな同じような答えが返ってくるでしょう。
「友達との時間が・・・」
実は,教育課程で学校が子どもに「こういう力をつけさせますよ」とうたっていることの最終的な検証は何もなく,だれかが記事にしていたように,「3歳,歳をとったので,さようなら」になっているのが今の学校です。
「何がどこまで不十分だったのか」
子どもには「通知表」で結果が知らされますが,学校ではふつう,その結果に終わったのは本人の責任である,ということをきちんと「暗示」にかけて卒業させていますね。
でも,そういう学校では出会ったこともない教師に上級校で,あるいは大学生になって実習校で出会ってしまう人たちは,「真実」を知ってしまうわけです。
卒業式前に,きちんと謝罪しておいた方がいいですね。
もちろん,形式的な謝罪ではなく,心からの謝罪です。
これが,荒れた学校を立て直すための第一歩です。
日本の社会の特徴は,「終わりではすべてを水に流す」ことにありますが,
これが学校では顕著です。
卒業式の前の日まで破壊活動を行っていた生徒が,卒業式では大泣きして,担任に感謝して去っていく。
こういう「水に流す」社会は,「恨みの連鎖」「報復の連鎖」のある社会よりは,とても「平和」な世の中と言えるかもしれません。
しかし,「それはおかしいぞ」という感覚がどこかにないと,
特に荒れた学校は,いつまでたっても正常化しません。
中学校では「卒業式までの我慢」「嵐が去るのを待つ」なんていう非常に消極的な対応になり,
そういう教師の指導方針?のもとで生活している上級生の状況を知っている下級生によって,延々と「荒れ」は繰り返されることになるのです。
卒業式前に毅然とした生活指導ができる学校でないと,「荒れ」は消えることはありません。
私が経験した荒れた中学校は,以前から教員の多くが3年で入れ替わっていたそうです。
つまり,転入してきた人間がみんなで中1をもち,持ち上がって,荒れて最悪の状況を3年間我慢して,卒業させるのと同時に中学校を去っていく。
「ご卒業おめでとうございます」は,子どもの心に届かせる言葉ではなくて,教師のためにある言葉である学校が,「荒れた学校」です。
こんな学校が簡単にまともになるわけがありません。
正常化の過程で多少の抵抗を受けたのは,卒業式までの厳格なきまりについてです。
生徒が守ってくれたので,次の学年以降に示しがつきましたが,この学校では「下の学年への示しがつく指導」がしきれなかったのが最大の弱点でした。
荒れている子どもたちの面倒を,自分たちは必死で見てきたんだ,というアピールを,卒業式間際になってはりきってしたがる教師もいることでしょう。
でも,違うんですね。この勘違いに,最後くらいは気づいてほしいものです。
そして,この最後の段階で「示しをつける」ことで,学校は立て直すことが可能です。
必死で見てあげなければならなかったのは,荒れている子どもではなくて,教師たちが荒れている子どもに気を取られている間でも,まじめに学習や生活を送ろうとした子どもたちの方なのです。
ですから,罪滅ぼしのためにも,卒業式前くらいは,荒れている子どもではなくて,3年間,ひどい環境の中で耐えてきた他の子どもたちが本当に満足できる時間を過ごさせてあげなければならないのです。
そこに集中しなければならないのです。
荒れている学校は,問題行動を起こす生徒が多いから荒れているのではないのです。
勘違いしている人が,今も近くにいませんか。
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