「普通の学校」と「普通の生徒」
「普通の学校」の「普通さ」に最も満足感を抱きやすいのは,教員です。
特に,比較できる学校の勤務がある場合は。
生活指導がめちゃくちゃたいへんではない学校。
進学指導でプレッシャーを非常に強くかけられることがない学校。
管理職の指導が徹底しすぎていない学校。
保護者の要求が強すぎない学校。
こういう経験のできない子どもたち,保護者たちにとっては,自分の学校が「どんな学校か」はなかなかわかりません。
「特色のある教育」という「教育課程で示している決め事」が何かを知っている,あるいはそういう教育を受けている実感をもてている,そういう学校は別として,部活動の戦績などでしか比較ができないのが公立学校の特徴です。
しかし,そういう意味でも,学校というのは「ふつう」であるのが「ふつう」なのでしょう。
「いい学校」であることの評価は,子ども,保護者,教員一人一人によってとらえ方がまちまちで,特定の評価を強いる必要はないのです。
問題は,学校ではなく,児童や生徒が「ふつう」と表現されるときです。
教師が「普通の子ども」と表現した時点で,一人一人の子どもの特徴を知る努力を怠る名目になっている場合は,注意が必要です。
こう考えてみると,もしかしたら「普通の学校」のとらえ方も考え直してみなければならないかもしれません。
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雲のうえに頂をもつ高山を登ろうとするのに、その山相のすさまじさに圧倒され、おじけづいていては何もはじまらない。最初の一歩を踏み出さねば、山頂は近づいてこない。
参考 「楽毅」第四巻(宮城谷昌光著)新潮文庫
177頁
教師の失敗-53
「普通の子どもです」と言ってしまう
教育現場にいると、見えていないものの本当の大きさに愕然とさせられることが多くあります。
見えているもので一喜一憂するような人間や、事件に飛びつく商売の人たちにはほとんど関心のない部分に、教育の真価が問われるものが点在しています。
毎日汚れたシャツを着てきている生徒がいれば、家庭内の不和が予想できるように、不幸を味わっている者はわかりやすいサインを発する場合があります。サインだらけの「荒れた学校」を見ると、「教師は何をしているんだ」「どんな親なんだ」と外部の方は言いたくなるかもしれませんが、そんな甘えた成長途上人よりも、それなり
に精神的に成長して、悩みをもちながらも他の人に心配をかけないように生きている多くの子どもたちには目が向けられにくいことが問題です。
以前ここで書いた、「数に入れられていない」子どもたち、「普通の」子どもたちです。
個性を重視すると教育課程でうたっておきながら、「普通の子」と平気で「個性がないこと」を強調するようなことを言う教師がいます。
崖を滑り落ちようとしている子どもを救うのももちろん必要ですが、崖下の人間と引っ張り合いをしている場合でないことも認識しなければいけません。
子どもとともに雲の上を目指せるような教師でありたいと思います。
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