<公立高入試>の「正しい見直し」の方法
入試制度が複雑になっている理由を,行政の立場から説明すると,次のようになります。
平成9年の中教審第二次答申。
テーマは,「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」。
ここで,「今後の教育改革の指針」の一つとして,
過度の受験競争の緩和を図る観点から、大学・高等学校の入学者選抜の改善を推進すること
が示され,大学では
学力試験の偏重を改め、選抜方法・尺度の多様化の推進
高校では
選抜方法の多様化、評価尺度の多元化(同一高校での複数の選抜基準の導入、子どもや保護者の自己申告書の活用など)
「生きる力」の育成を目指す中学校以下の教育を尊重(調査書の活用、推薦入学の推進など)
などがすすめられたのです。
今振り返れば,「過度の受験競争」とは何を指していたのか,これを具体的に示す指標があったのか,ということが大きな疑問として浮上します。
人気のある学校があれば,どうやっても競争は激しくなるのです。
過度の受験競争をなくすためには,「どの学校も同じくらい入りたくない学校」ようにすればよいのですが,それは冗談です。
学習指導要領が,この後,二度,改訂されました。
知識基盤社会を生きる上では,「確かな学力」を身に付けさせることが欠かせない。
だから,やはり学力検査を重視する方向へ,転換しなければなりません。
「学力試験に偏重」という表現はマイナスイメージですが,「学力試験に重点を置く」といえば,強いメッセージを発することができます。
そして,入試の見直し方法として最も力を入れなければならないのは,思考力・判断力・表現力の有無をしっかり判断できる問題をつくること,と言いきれるでしょう。
現場の大目標は,テストと言えば,暗記,という単細胞人間を,教師からも子どもからも根絶するのです。
テストと言えば,「思考力を使い,表現力がなければできない問題」のことだと思われるような土壌を現場でつくるのです。
センター試験のような,選択式でやさしすぎる問題ではだめなのです。
すると,どういう障害が出てくるかというと,「採点に莫大な時間を要する」ということですが,そもそも人を正しく評価するためには,そういう時間と労力がかかるものなのです。
当たり前ですが,作問をする側にも,とてつもない時間と労力,思考力,表現力,創造力などの能力が必要となります。
学校現場にも,定期考査などで,「どれだけの良問が作れるか」という課題がのしかかります。
これは,つまり,「どれだけよい授業ができているか」と同じ課題なのです。
昔,「入試が変わらなければ指導は変わらない」という言葉がはやりました。
そんな言い訳ができない「入試」は,本気になれば実現できるはずです。これが喫緊の課題です。
中教審第二次答申のときのような「いい加減ですまされる」時期ではないのですから。
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