「やる気を引き出すため」の「学び合い」は失敗する
「学び合い」をした結果,子どもたちがこうなった。
という話は問題ありません。
問題は,子どもたちを「~」の状態にするために,「学び合い」を取り入れる。
こういう発想の人が出てくることです。
「学び合い」などの本を買う人のほとんどは,こういうタイプなのではないでしょうか。
「本当にうちのクラスの子どもはやる気が出てこないなあ」
→「学び合いをすると,やる気がでるようになりますよ」
→「じゃあ,学び合いをやらせてみよう」
・・・・こういう「思考形態」の小学校教師は大勢いますよね。
KJ法の川喜田二郎も,「野生の復興」という本の中で,次のような話をしています。
「わが社がKJ法に力を入れるのは,別によい結果を得るためではないのです。KJ法を使ったって,別に問題が解決できるわけじゃありません。しかしあれをやると,社員がヤル気を出します。だからモラールアップのためなんですよ」
これはまったく見当違いである。こういう教育担当者は,まともなKJ法を何も知らないのである。問題解決のためにKJ法があるのに,まったくふざけた話である。
真剣に問題解決と取り組み,達成の醍醐味を得たときには,「結果的に」ひじょうに士気が揚がる。ところが,結果的に揚がる士気高揚を,「目的に」してひと仕事をやるのは,見当違いなのだ。それにはどことなく「いや味」も伴う。
私の場合,研究授業などで,どれだけ「いや味」を感じたことか。
小学校の教師たちというのは,こういう「いや味」は慣れっこになっているのか,自分では完全に感覚がマヒしているのか。割り切って,ねらってやっているのか,純粋にわかっていないのか。判断できません。
いずれにせよ,非常にいやらしい「操作主義」がそこ・ここに感じられる。
純粋な子どもたちが,(授業者にとっては)おもしろいように「踊らされている」。
教材研究をろくにしないで,ただの「話し合い」をさせれば何かの成果が得られると期待する,そういう姿勢だけは一掃してもらいたいものです。
« 教師の「忙しさ」の相対評価 | トップページ | 「個性重視」という「きれいごと」 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「リーダーシップ」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- マリオが総理大臣ならピカチュウを防衛大臣,ハローキティを外務大臣に(2017.12.02)
- 「大人になったら教師はいなくなる」は大間違い(2017.11.27)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
「学習の評価」カテゴリの記事
- 創造性を奪うポートフォリオ評価(2018.06.05)
- ペーパーテストだけで「評価」ができる「教科」はない(2018.05.26)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
「学力向上」カテゴリの記事
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
- 普遍性,汎用性があると誤解する「研究者」たち(2017.11.10)
- 小学校の授業を参考にする高校教師(2017.11.08)
- 最低限の教育の場の確保を!(2017.11.06)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
「仕事術」カテゴリの記事
- ネガティブ・ケイパビリティ~解決困難な問題に正対し続けられる資質能力(2017.12.04)
- 準備体操なしで全力疾走させるような授業はアウト(2017.11.26)
- 歴史用語半減による「ゆとり」が生むもの(2017.11.19)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- 成長をとめないために(2017.11.18)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント