「パワハラ」を絶対に「パワハラ」と言わせない「パワハラ」
行政の場合は,法令が最大の武器ですから,どんなに強い指導をしても,それは「パワハラ」には該当しません。
そもそも,そういう「圧力」に抵抗してまで,自分のやりたいようにやる,という気概のある人は官僚にも公務員にもなりませんから・・・というか,そういう人は法改正をするために議員になるべきなのでしょうが,ある程度の裁量が認められる範囲の問題については,行政の担当者も苦慮する場合があるのです。
校長が判断に迷うことの例として,インフルエンザに感染している人の「試験を受ける機会」は奪えるのか,どうかという問題があります。
中学校や高校で,定期試験のときに体調不良の生徒がいた場合,「保健室受験」とか「別室受験」という対応がとられているはずです。
つまり,「出席停止」の扱いとするのは,「ほかの生徒への感染を拡大させないため」であり,特別な事情がある場合には,「ほかの生徒への接触ができないような処置」をとる方法もあるのです。
これを,入学試験のときにはやらない,と宣言してしまうと,どういうことが起こるかというと,
「インフルエンザに感染していることを隠して受験する」生徒が出てくる・・・・それは,当然のことでしょうね。特に,熱が下がったばかりのタイミングなら,出席停止中だから受験=志望校への進学をあきらめる,なんてなかなかできないことでしょう。
これが,新型インフルエンザなんかの場合はとくに怖かった。
私が問い合わせた当時の教育委員会の答えは,「中学校の校長が,出席停止扱いにしているのだから,インフルエンザに感染した生徒は受験会場には来ない」というものでした。
こういう答え方なら,責任は受験生の学校の校長に負わせることができる。
「中学校の校長」と「受験生である中学生」を信頼する,という何とも「美しい」言葉での回答ですが,私の危惧は当然のことであり,そもそも,「インフルエンザだから受験機会を失う」というのも,受験生,そして中学校側からすると,「納得できない」ものでした。
生徒が受験する可能性のある高校,前任校で進学した先の高校に,「隠れ患者への対応」「事前に申し出て対応を相談できるか」と問い合わせたところ,すべての学校が,「教育委員会の指示待ち」になってしまって,結局は質問した私に対する教育委員会からの恫喝となり,上司でもなんでもない公務員から「お前の学校の受験生に不利になるぞ」と言われる結果となりました。
まさか私がその声を録音していたとは思っていないでしょうが,ちょうどそのころ,恫喝で有名だった人間が内部にいるのを知っていたので,そこで育った人は同じような対応をするのを予想していた私は,「受験生が不合格になったときのため」に証拠をとっておいたのです。
教育委員会から,名指しで電話がかかっているというのは,めったにないことですからね。
結局,私は,内部で学んだ知恵をはたらかせて,「感染症対策本部」というところを動かして,「適切な対応」をとってもらうことに成功したので,恫喝した人間も「事なきを得た」のです。
「お前の将来がどうなってもいいのか」
という公務員が使うパワハラというのは,精神的に弱い人には効き目があるのでしょうが,
私のように好んで教育委員会にいたわけではない教師の場合は,
「自分の将来よりも子どもの将来の方が大事だ」
という気持ちの方が強いので,内部にいて言われても「パワハラ」としては認識しなかったでしょう。
ただ,やはり,「お前のところの子どもがどうなってもいいのか」にはハラハラさせられる。
本当のパワハラというのは,パワハラだと訴えさせないくらい,強力にやる必要があるのです。
そして,中途半端に相手に響くのではなく,立ち直れないくらい刺激の強い言葉を浴びせないと,パワハラだと訴えられてしまうので,徹底的にやるのです。
そういう人が,今の行政にはいませんか。
「お前の大学にはもう金はやらないぞ」
と言われた人はいませんか。
行政では,パワハラと訴える人がいなければ,「パワハラは存在しない」と言えるのです。
いじめもそうですね。アンケートで「ない」という結果が出たら,「ない」ことになるのです。
子どもが「いじめではない」と答えたら,いじめは「ない」ことになるのです。
でも,人の記憶から消え去ることはありません。
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