5分で読める23分間の奇跡
これから教師を志す人には,ジェームズ・クラベルの「23分間の奇跡」(青島幸男訳,集英社文庫)を読んでもらいたいと思います。
あとがきの紹介文を引用します。
******
物語は午前九時に始まり,九時二十三分に終わる。一つの国が破れ,占領され,教室に新しい教師がやってくる。そのクラスでの二十三分間のできごとがこれである。
その状況設定からいえば,アルフォンス・ドーデの名短編《最後の授業》の続編に当たり,いわば《最初の授業》ともいうべき作品である。
クラベルは,ここで古い教師のマンネリズムを摘発すると同時に,子どもたちの集団心理というものが,教職に当たるものの手によって,いかに簡単に誘導されてしまうかというサンプルを提示し,教育問題を改めて考えさせるよう,問題を提起している。
******
amazonのレビューには,「洗脳の恐ろしさ」という言葉がおどっています。
しかし,今までの価値観を子どもがどのようにくつがえしていくのか,その道筋の正しさも示してくれてはいます。
私はこの物語を読んだとき,何も「国家」レベルではなく,「教師」レベルでも十分に考えられることだと思いました。
たとえば,部活動の指導です。
指導者が変わることで,突然,強くなっていく部活がありますね。
反対に,今までの勢いは何だったんだ,という事態に陥ることもあります。
ある中学校では,たった一人の指導者のときだけ,賞をのがした,ということがありました。
おそらくその教師は今もそのことで悩んでいることでしょう。
この本を読めば,
教師というもの,指導者というものの影響力の大きさに,愕然とさせられるかもしれません。
ただ,そこで感じ取ってほしいのはやはり「使命感」です。
子どもが魅力を感じる教師の本質を見取ってほしいと思います。
「わかくてきれいな女の先生」
「新しいふくをきちんと着ている」
「でも,それよりすごいのは,この先生がにっこりとほほえんだことだ」
「話すのを聞いていると,言葉になまりがない」
「香水の,いいにおいがした。さっぱりした,いいにおいだ」
先生は,すべての子どもの名前を覚えていた(座席の位置で)。
「天使のようにやさしく,ゆかの上にすわって,サンドラをだいたままうたいはじめた」
「新しい先生のかおがかがやいていた」
・・・・この先の十数分の中から,本質を探し当ててほしいと思います。
« 教師自身が持っていたいアナロジー思考 | トップページ | 教師の仕事術 »
「教育」カテゴリの記事
- 教員になりたての人がすぐ辞める理由(2019.01.12)
- 教育は「願ったもの勝ち」「言ったもの勝ち」ではない(2019.01.08)
- 「一人も見捨てない」は罪な要求である(2019.01.04)
- 列で並ぶこと自体が好きな?日本人(2019.01.01)
「書評」カテゴリの記事
- 「7つの大罪」によってモノが溜り「4つの基本道徳」によって整理ができる(2018.05.13)
- 「一呼吸おく」ことの大切さ(2018.04.27)
- 教師の成長力を奪う力(2017.11.19)
- かえってくるブーメランが見えない人たち(2017.11.11)
- リーダーシップの意味がわからない人たちに翻弄されるだけの校長たち(2017.09.18)
「教育改革」カテゴリの記事
- 改正教育基本法第16条の問題点(2018.12.28)
- 今,手を抜いていると,公教育の民営化が本格化したとき,・・・(2018.11.24)
- 国後島で考えたこと~日本の教育(2018.10.02)
- 都合の悪いことに目を向けさせなくする教育(2018.09.08)
「教職教育」カテゴリの記事
- 「総合的な学習の時間」の指導ができるように教育できるのはだれか(2019.11.24)
- 生徒との対話の中から自然に目標達成へのルートをつくる(2018.12.26)
- 私でなくてもいい,私ではない方がいい(2018.12.14)
- 現実的な教育内容や教育方法の議論がなぜ小学校や高校では役に立たないか(2017.12.29)
- 日本の教育に欠けている「適時的で適正な評価」の発想(2017.12.25)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント