蚊帳の外にいた人に「学力観」は語れない
総合的な学習の時間の指導は,移行期間を含めると4月には13年目に入ります。
中学校の場合,選択がなくなる分,より充実した総合的な学習の時間の指導が可能になります(これまで,選択教科の指導やその準備等が通常の教科の授業に加わっていて,時間的に大きな労力がかかっていました)。
そして充実した指導になるかどうかは,校内で議論を尽くした「学力観」と「指導観」にかかっています。
どのような手抜きが行われているかは,教育課程調査で一目瞭然なのですが,「調査で成果が問われない」分野については行政もテコ入れをしないというのが現状です。
「ゆとり教育」でただ「ゆとり」を満喫していたのは,今,学力観を語れない教師たちであり,そういう教師に不幸にも出会ってしまった子どもたちなのです。
中学校社会科は,歴史はより「歴史的」分野らしくなった一方で,「地理的分野」はただの「地理」になってしまいました。大きな後退です。公民的分野は,スタートが後ろにずれることになりましたので,それも後退でしょう。学校によっては,これが総合的な学習の足を引っ張ることにつながるかもしれません。
唯一,中学校3年間にわたって学習する「歴史的分野」では,今まで以上に「自分なりの言葉や図」で表現する活動を通して,思考力等を育成することができるようになりました。学習の中では,「公民的分野」の内容を先取りして盛り込んだ学習も行われるでしょう。
地理的分野では,総合的な学習の時間のスタートとともに,「学び方を学ぶ」代表的な学習指導が行われてきたはずでした。
そして,この指導の成果をもって,PISA型学力も何の問題もなく高い成果が得られるはずでした。
しかし,最も肝腎なところで「十分とは言えない結果」になってしまった。
学力を向上させよう,といったときに,A問題だけでなく,B問題の方にもきちんと目が向いているかどうか。
平成24年度の総合的な学習の時間の指導計画案がそろそろどの学校でも出来上がる時期でしょう。
今の義務教育で,「学力」をしっかり語れるのは,校内体制が整わなければ実施できない「総合的な学習の時間」の計画・立案・実践・評価等に深くかかわっている教師のみです。
これを他人任せにしていたり,そもそもこの指導に(目標もろくに理解せずに)かかわっていない人には,「学力観」を語る資格はありません。
困ったらすぐにどこかの映像を引っ張ってきてお茶を濁すような発想では,創造力が発揮できるような人間は育成できないのです。
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