なぜ小学校の統廃合が必要か?
都市部で小さい規模の小学校は,できるだけ早い時期に統廃合を進めていかなければなりません。
これには,たくさんのメリットがあります。
「小学校までの距離が遠くなる」というデメリットがありますが,たとえば今,私の住んでいるところから15分程度で着く小学校は,5~6校あります。
歩いて5分のところの学校がなくなって,10分かかる学校に通うことになっても,それは深刻な問題ではありません。
30分以上歩かなければならないとしても,これは健康にもいいですよ。
財政支出が減らせるということをここで強調したいわけではなくて,今,小規模校を襲っている深刻な問題の解決を教師としては強く願っているということです。
小学校で学年1~2学級程度の学校は,その学年の担任が1人か2人,ということですよね。
こういう学校に,新規採用の教員がどんどん入ってくるような事態になったらどうですか。
私の見てきた小学校では,新規採用で1年目に担任を持った教師が,翌年は保護者の強い要望で担任を持てなくなった,ということがありました。「もうたくさんだ」「二度とごめんだ」という評価です。
今,50歳代の教師が小学校にもたくさんいますが,この方々が退職される今後10年間,新しく入ってくるのは20歳代,30歳代の人たちということになります。競争率がおそろしく低い,かつ,「ゆとり世代」,という「双子の恐怖」を背負った世代が教師になっていくのです。
小学校の教師というのは,中学校と比べて,校内で学べる機会が少ないのが現状です。
中学校よりもはるかにたくさんの「校内研修」を実施していても,です。
だから平日だというのに有名校の公開授業,研究発表会は満員御礼になるのです。
休日に部活指導もない,「気ままな暮らし」を営むことができる代表的な公務員の小学校教師で,こういう公の研究会に参加せず,独学もせず,たまにある授業参観日だけどきどきしていればいい,という人たちが,勤めはじめて20年くらいして初めて学級崩壊を経験し,それが「いつおきてもおかしくはない自分の指導力の低さが原因だった」ことに気づいても,教育を受けた子どもにとっては「手遅れ」なのです。
そもそも小学校レベルの教育内容で問題が起こること自体がおかしい。
小学生にそっぽを向かれることがおかしいのですが。
小学校は各学年,少なくとも3クラスか4クラスはあって,同じ学年の教師が切磋琢磨や学び合いができ,子どもも運動会や学芸発表会で盛り上がれる,そんな「規模のメリット」を享受できる環境が,特に今は求められているのです。
統廃合の「汚れ役」は,地元の教育委員会です。
しかし,この「汚れ役」を堂々とつとめることができる教育委員会を支援する自治体が,「教育の自治体」として信頼を勝ち得ていくでしょう。
学校の統廃合に反対されている方々には,かつて,自分たちが,大規模校で教育を受けてきて,「多くの大人に囲まれるメリット」をもう一度,思い起こしていただきたいと思います。
教師になりたてで学年主任となる人間と,多くの現場で切磋琢磨して指導力を鍛え上げられている担任と,教師を選べるとしたら・・・なんて話は必要ないでしょうね。
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