学力上位層を「消した」教師 ふり返り366日【08/1/30-2】
公立の先生方とお話をすると、東京での話ですが、最近は都立の中高一貫校が増えたり、私立中を受験する子どもが増えたりしていて、公立中に進学する子どものうち、学力上位層がいなくなってきている、・・・昔の感覚で言うと、成績が「5」の子どもがいなくなり、せいぜい「4」どまりだと・・・。
(それなのに、「絶対評価」では「5」をとる子どもが多くなってしまっていますが・・・)
このような話をしながら気がつくのは、多くの教師は、「5」がとれる子どもというのはあらかじめ決まっていて、中学校に入ってから伸びてできるようになっていく、という感覚をほとんどもっていないということです。
このような感覚は、非常に根深いものがあって、観点別評価の煩雑さとその無意味さを強調する教師たちにとっては、「できる子はできる」し「できない子はできない」、という実感にしばられながら指導をしていることがよくわかります。
「学力低下」「学力格差」という流行語のおかげで、そういう教師のうちのほとんどは、自分の考えに「確かさ」「社会的な同意」を感じて、揺らぎのない「学力観」をいだきつつあるように思います。
ただ、子どもを学校にあずけている親の立場からすると、無意識にでもそのような教師の「学力観」「指導観」「教育観」があるということは、少なくとも学力が低いことに悩んでいる家庭にとっては有害なことであるように思えます。
長い経験をもつ教師ほど、「子どもの限界」というよりも、「自分の指導の限界」というものがわかっています。
その限界を突破させようと、社会は考え得るあらゆる試練を教師に課していこうとする風潮は今後も変わることがないでしょう。
教師たちは、そういう風潮への反発の方法を誤っているので、さらにそれを強めさせるという逆効果を生んでいます。
08/1/30 学力については格差拡大を否定できない 学校の教師なら塾の講師以上に実感できることとして、「学力格差の拡大」という問題があります。 公立中は小学校での上位層が進学校に抜けてしまっているので、相対的な意味での上位層ですが、全体として、学力はきれいな正規分布になりにくくなっています。二極化まではいかなくても、上と下がはっきりしている。 学力上位層というのは、やればやるほど実力が身につくので、塾での学習などは能力向上の対時間効率がよく、それだけ学力下位層との格差が広がっていくわけです。 この「格差拡大」を嫌がる教師の心理は、塾などに通って学力を向上させるような方法に忌避感をもつことにつながっていきます。 夜スペに反対する人の中には、教育の機会均等とかそういう問題以前に、学力差が広がることが嫌な人がいるはずです。 しかし、教師はこのような上位層の学力向上に歯止めをかけることができないので、「格差拡大」を食い止めるには、学力下位層の指導に力を入れるしかありません。ただ教師の最大の悩みは、「勉強の強は強制の強」と言って机に向かうのが嫌いな子どもに、学習習慣をつけることが困難なことと、学力向上の対時間効率もあまりよくないことがあげられます。 よく下位層への指導の手立てとして少人数指導が実施されることがありますが、その場では理解できても、次の日には忘れているとか、そもそも家庭学習などの習慣の改善までいかないとか、決して高い効果は得にくいのが現状です。(ですから5人にしても難しいので、30人学級にしたから学力が上がるという保障はありません。もともと少人数である学校について調べてみても、成績が特に優れているというデータはないのです。) 私が考える公立学校の手立てとしては、勉強が得意な生徒も、苦手な生徒も、「ともに生き生きと学び合う場」をつくるという姿勢を教師が絶対にくずさないということです。学力上位層の生徒をないがしろにすると、「学び合い」の空気が崩れます。授業の場でさまざまな生徒の「生かし方」を工夫することが教師にとっての責務になります。
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