新学習指導要領の道徳について
新学習指導要領の総則に示された教育課程編成の一般方針の中の、道徳教育に関する記述を文科省HPから引用します。下線部のところが、2月に出された案では書かれていなかった内容です。
学校における道徳教育は,道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳の時間はもとより,各教科,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,生徒の発達の段階を考慮して,適切な指導を行わなければならない。
道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき,人間尊重の精神と生命に対する畏(い)敬の念を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,豊かな心をもち,伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造を図るとともに,公共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に努め,他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓(ひら)く主体性のある日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。
道徳教育を進めるに当たっては,教師と生徒及び生徒相互の人間関係を深めるとともに,生徒が道徳的価値に基づいた人間としての生き方についての自覚を深め,家庭や地域社会との連携を図りながら,職場体験活動やボランティア活動,自然体験活動などの豊かな体験を通して生徒の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない。その際,特に生徒が自他の生命を尊重し,規律ある生活ができ,自分の将来を考え,法やきまりの意義の理解を深め,主体的に社会の形成に参画し,国際社会に生きる日本人としての自覚を身に付けるようにすることなどに配慮しなければならない。
ここで「我が国と国土を愛し」の部分が加えられたことに批判的な方がたくさんいらっしゃいます。
改正教育基本法の理念を受けているところなので、唐突すぎる加筆ではないのですが、「他国を尊重し」という文言が入ったとしても、やはりインパクトが大きいようです。
(なお、内容の「4 主として集団や社会とのかかわりに関すること」の(9)に「日本人としての自覚をもって国を愛し,国家の発展に努めるとともに,優れた伝統の継承と新しい文化の創造に貢献する。」とあるのは、案と変更がありません。)
実はこのようなこと(学習指導要領に「国を愛する」という記述があること)に批判的な考えをもっているのは大人だけではなくて、子どもたちの方にも、マスコミ等を通じて定着しようとしています。
社会科を教えていてここ十数年の子どもの変容を見ていると、「国」「政府」「政治家」に対して感じているマイナス印象は強まるばかりです。
「できて当たり前」の部分はいっさい報道されませんから、「悪いことばかりしている」印象しか子どもには残りません。
教育現場でもマスコミの後追いをした方が子どもの受けはいいし、「リベラル」の空気はいかにも快適なのでしょう。
しかし、問題は、批判するしか能のない人間ではなく、本当に日本の舵取りを任せられる人材を育成できるかどうかが教育に問われているわけです。何も政府の言いなりになる人間が期待される「国を愛する」人間ではなく、国を支えていけるような人材というものを育てていきたいものです。国を支えるのはエリートだけではないことは言うまでもありません。



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