経営方針は何のためのものか
11 戦略遂行力(B 実行力の④戦略)
小学校に入学したての子どもが「今日は日直だ」と学校にはりきって出ていったのですが、その後しばらく、テレビや一人遊びで現実逃避に沈んでいました。たずねてみたら、日直で学級を静かにさせようとして、何度も注意したのに、みんな言うことを聞いてくれなくてショックだった。「先生は何してたの?」と聞くと、「おたよりを書いていた」とのこと。
小学校の一日の使い方というのは、担任によってそれぞれいくらでも自由になるようで、前日の予定の授業と平気で別の科目をやっていたりします。週ごとの指導計画を見ればわかりますが、小学校の指導内容は量的に限られているし、個別児童の達成度に劇的な差は生まれないので、要領のいい先生は自習の時間を増やして内職をしているようです。
この内職には学級通信づくりや家庭ノート書きから、職員会議の資料作り、管理職試験の勉強まで、さまざまあって、給料日になると何回数えても同じ枚数のはずなのにずっとお札の枚数ばかり数えている人もいました。短い時間で自習課題を終えてもっていくと、迷惑な顔をされてしまうのです。
教育の目標達成の難しさは、そもそも目標が単一なものでないだけでなく、ある目標を達成しようとする(保護者に学校の様子を知らせるための資料をつくる)ために、別の目標を捨ててしまう(日直の子どもに自信を失わせる)こともあるのです。
考える力、生きる力をつけさせようと自主教材で授業をすると、「それでは受験で点が取れない」と批判され、教え込みの授業に戻さざるを得なくなる、そんな「教師」と「保護者、子ども」の目標の不一致という問題もあります。
こういう問題を乗り越えるためにあるものが、「学校経営方針」「学年経営方針」「学級経営方針」「教科等の指導計画」です。これらの方針や計画の中で、目標達成の過程で生ずるような問題を予想し、それをいかに調整しながら効果的な教育を行うかという戦略が語られているかどうかが大切です。
よく「マニュアル型」人間ではいけないといいます。これは臨機応変な行動がとれない人間を非難する言葉だと思いますが、教育の世界では、臨機応変をそのときのムードや気分、経験の力と勘違いして行動をおこす人が多い。しかし、個人の力でなく組織の力、つまり、だれでもできる戦略をもっておかなければ、○○先生が異動したからさあたいへん、ということになってしまいます。経営方針や指導計画というマニュアルは、「ああ、こういう問題がおこったら学校はこう解決してくれるのだな」「こういうねらいでこうしてくれているのだから、この活動については反対するのはやめよう」という安心感を保護者に与えるものであるべきです。
子どもには「先生がお仕事で忙しそうなときに、学級のみんなで取り組める遊び」をしこみ、「自治というのは・・・」などとわかりもしない話をしましたが、さて、成功するかどうか・・・。
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